田舎の倉庫

Plala Broach から移植しました。

ユンディ・リ ピアノリサイタル

2008年01月17日 | 音楽三昧

1月17日

今日もニセコは大雪です。
昨日、札幌から帰宅すると自宅が雪に埋もれていてびっくりしました。
ウンウン言いながら雪かきをしてようやく屋内に逃げ込みました。

一ヶ月半ぶりのコンサート。
ユンディ・リのピアノリサイタル(15日、札幌kitara)を聴きに行って来ま
した。

ユンディ・リは、ご存知の方も多いと思いますが、中国重慶の出身で
人気、実力ともに世界の若手ピアニストを代表する存在です。2000年
のショパンコンクールに弱冠18歳で優勝し、翌年ドイツグラモフォンと
専属契約を結んで次々とCDをリリースする一方、北米、ヨーロッパ、
日本各地でリサイタルを開催。その正確で流麗なピアニズムで絶賛を
浴びました。また、端正で甘いマスクは「ピアノの貴公子」の愛称を
獲得、女性ファン憧れの的です。

会場は彼の人気を反映して超満員。若い女性ファンが多く、いつに
なく華やかな雰囲気です。

プログラムは、クラシックファンならどなたもご存知の曲ばかり。

 ・モーッァルト:ピアノ・ソナタ第10番ハ長調 K-330
 ・ショパン:4つのマズルカ Op.33(第22~25番)
 ・ショパン:夜想曲第2番変ホ長調 Op.9-2
 ・シューマン/リスト:献呈 S.566
 ・ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ
        変ホ長調 Op.22
 ・ムソルグスキ:組曲「展覧会の絵」

盛んな拍手でに迎えられて登壇し、一見素朴などこにでも居そうな
感じの青年でしたが、一たびピアノに向かうと印象がガラリと変わり、
鋭いタッチの流麗な音が会場に流れます。速いパッセージも一音
一音はっきりと聴こえ、しかもキラキラと結晶化したような音が響き
ます。

モーッァルトのソナタは、ただ、ちょっときれい過ぎて、旋律に酔うと
いう感じではありませんでしたが、第二曲の「4つのマズルカ」はすば
らしいと思いました。

もともとポーランドの民族舞曲で、リズムもメロディーも奔放な曲です
が、どれもショパンの意図を知り尽くしたような納得のいく演奏でした。
また、民族的色彩もよく表現され、この曲をこれほど見事に演奏する
のを聴いたことはありません。

そしてショパンの夜想曲。甘いメロディーに会場からため息がもれます。
これもすばらしいリストの「献呈」に続いて、ショパンの大曲「アンダンテ・
スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」は、彼が最も得意とする曲で圧巻
でした。聴衆は華麗でスケールの大きな演奏に酔いしれました。

休憩を挟んで、ムソルグスキの大作「展覧会の絵」が演奏されました。
この曲は、ラベルが編曲した管弦楽曲として聴く機会が多いのですが、
演奏されたのはピアノ曲の原曲で、細部のニュアンスも、また、最終曲
キエフの大門のようにスケールの大きさも求められる難しい曲です。

この難曲も彼のテクニックで無難に弾きこなしているようでしたが、曲の
持つロシア的な暗さや重厚さという点では、少し不満が残る出来だった
ように思います。この点では、ロシア出身のキーシンなどの演奏が一枚
上手のように感じました。

曲が終わって何度か挨拶に出て来ましたが、アンコールなしで会場に灯
が入りました。ちょっと拍子抜けがしてロビーに出てみると、若い女性
ファンの長い長い列が出来ていました。これからサイン会があるとかで
その数ざっと200人ほど。まだまだ増えそうな気配でしたので、この大勢
のファンにサインやら握手やらのサービスを考えると、アンコールは
カンベンしてということのようでした。

宿に向かう雪道で「よかったわ」を連発する家内も、いつになく上気した
顔をしています。どうも「貴公子」の弾く甘いメロデイーに酔うのは何も若い
女性に限ったことではないようです。