駒師「日向」のブログ 本店

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将棋駒作家のつぶやき

角落ち上手戦記 ~その1 下手二枚落ち定跡風~

2019年05月12日 | 対局日誌
角落ち上手の戦記を時々アップして行きたいと思います。

キッカケはある方からの

「駒落ちの上手ってどう指せばいいんですか?」

という一言でした。

当たり前ですが、駒落ちの「下手」について解説した本はいくつもあります。

ハンディ戦ですから必勝定跡もあります。

しかし、対局の数だけ「上手」も存在する訳ですが、

その指し方について解説したものはほぼ皆無ですね。

よく考えてみますと、

プロ的に言えば駒落ちは下手必勝であり、

「こうやれば下手が間違えやすい」

という様な不確定要素満載の本は、

正解が見えてしまうプロは

著す事ができないんでしょうね。

そこでそういう事に囚われないアマチュアならではの情報発信を試みます。

ただし、所詮アマチュアですから、

改善に向けたご意見ご感想をお寄せ頂ければ幸いです。

上手:日向
下手:某初段
手合い割:角落ち

●第1図までの指し手
△6二銀
▲7六歩
△5四歩
▲4六歩
△5三銀
▲4五歩



はじめて見る方は違和感を覚えると思いますが、
角落ち下手が二枚落ちと同じように指してくる形です。
結構多いです。
という事は、上手はその準備が必要という事です。

●第2図までの指し手
△8四歩
▲7八銀
△8五歩
▲7七角
△4二玉



角落ちの下手は矢倉か振り飛車が多いです。
しかし本局は二枚落ちの下手二歩つきっきり風、
有効か否かは私の実力ではわかりませんが、
歩の伸びが早いので、それに応じた指し方が必要です。
それが早めの△8五歩、
これで下手の応手が▲7七角なら急戦調、
▲7七銀なら持久戦、どちらなのかを尋ねました。
下手の回答は▲7七角、
上手は急戦を警戒し玉の安定を優先しました、
それが△4二玉です。

●第3図までの指し手
▲4八飛
△3二玉
▲3六歩
△4二金
▲3五歩
△2二銀



下手は玉の囲いを後回しにして、
▲4八飛から攻撃態勢の構築を急ぎます。
二枚落ちの場合は上手の玉の応援が利かず、
△2二銀+△3二金の形を強いられます。
しかし本局は角落ち、△3二玉+△2二銀の形が間に合います。

●第4図までの指し手
▲3八銀
△6四歩
▲3七銀
△5二金
▲3六銀
△6三金
▲5八金
△9四歩
▲9六歩



駒落ちの上手は下手の心理を読むことを常に求められます。
上手は最初から不利な局面を戦う訳で、
常に「どうやったら逆転できるか?」
を考えて指しています。
形勢逆転の訓練と言っても過言ではないでしょう。

では、この局面の下手の心理を推測してみましょう。
「角落ちなんてちょろいと思って、
二枚落ちと同じように指してみたけど、
意外と簡単じゃないな。」
といったところでしょうか。
上手からの△9四歩は
「簡単じゃないでしょ?」の意味、
下手も▲9六歩で
「そうですね」と答えています。

●第5図までの指し手
△7四金
▲4六飛
△6五歩
▲6八角
△6四金
▲7七銀
△5五歩
▲7八金
△7四歩



角落ち上手では右金将を使って局面を作ります。
平手の将棋ですと金将は守りの主役ですが、
駒落ちの将棋で平手の感覚のまま指していると、
ポイントを上げる事が出来ません。

動けるマスの数ですが、
銀将の5か所に対し、金将は6か所あり、
横への機動力に優れているんですね。
この違いを認識して活用するのがとても重要だと私は思います。
それが△7四金から位を張る一連の動きです。
これは金将にしか出来ない芸当ですね。

●第6図までの指し手
▲5六歩
△3一銀
▲4七銀
△5四金



下手の▲5六歩は角の活用を考えた一手でしょう。
しかし5筋の制空権は既に上手が握っており、
下手難局になりつつあります。
接近戦に弱い下手の飛車角を上手は金将一枚で相手にしています。
その隙にカベ銀を解消しつつ、
金銀の連携を強め、玉を広くしました。
こうやってポイントを上げて行きますが、
まだまだ角一枚のハンディは補えていません。

つづく
コメント
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