岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

花弁(花びら)と萼片の話し(その2)

2009-05-24 05:29:32 | Weblog
 (今日の写真はセンリョウ科センリョウ(チャラン)属の多年草の「フタリシズカ(二人静)」である。北海道から九州に分布する。山野の林下の陰地に自生している。直射日光に当たると葉が焼ける。葉は対生し、頂上部では節の間が狭いので、4枚の葉が輪生しているように見える。)

 春、茎の先に1~2本、または数本の穂状花序(花穂は長さ5cm程度)を出し、小さな白い花をつける。花序は2本のことが多いので、フタリシズカという優雅な名前をもらった。花弁はなく、3 個の雄しべが丸く子房を取り巻いている。地下茎でも繁殖し、群落を形成する。
 6月の始め、「フタリシズカ」の大群落に出会った。急傾斜の谷であり、低木はあまり生育しておらず、シダと「フタリシズカ」が草本層を覆っていた。以前に伐採などがあり、表層土が流れてしまったような形跡がある場所だ。
 このようなシダ類や「フタリシズカ」などの草本が密生している植生の成立は、亜高木層や低木層の欠落が発達の条件である。だから、過去に表土攪乱があったことは確実だ。
 小さな「花」に「花被」はなく、「ヒトリシズカ」の「花」が終わる頃になってから咲く。
 短い花柄の先に白い粒のように見えるのは、3本の「雄しべ」だ。「粒のような花」には花弁は無く、3個の「雄しべ」が丸く子房を抱くようになっている。
 花糸がブラシ状に伸びることはなく、子房を内側に丸く包むような形になっている。
 葉は茎の上部に、対生して2~3組を「十字状」につける。「輪生」のように見えるヒトリシズカと異なり、やや離れてつくので対生である。
 葉に「ヒトリシズカ」のような光沢はなく、鋸歯は浅く先端は尖っている。
 果実は「ヒトリシズカ」と同様に濃緑色の卵形だ。全体に無毛で、サイズは「フタリシズカ」の方が大きくなる。通常、「ヒトリシズカ」よりも深い山を自生地としている。

 花名の由来は、能の謡曲「二人静」の中で静御前の霊とその霊に憑かれた菜摘女が舞を舞う姿にこの花を見立てたことだ。それで「フタリシズカ」と呼ばれる。 
 それと、茎は分岐せずに直立し、先端に穂状花序をつけ、穂状花序が1本の「ヒトリシズカ」に対して、「フタリシズカ」はふつう2~5本と複数であるところから、「フタリシズカ」と命名された。

私はよく「道なき道探し(踏み跡辿り)」をしていて、この「花」に出会うことがある。その時に作った、短歌を二首紹介しよう。

・湧き上がる山霧深し崖頭に二人静の花穂寄り添う

・緑葉を揺らし飛び交い舞う蝶や二人静の触角白き
                  (三浦 奨)
「三浦奨」とは、私の俳句や短歌を作る時の「ペンネーム」である。

 序でに、「上井萩女」の俳句も一つ挙げておこう。

・そよぎつつ二人静の一つの穂    

 これは、「かそけさと生命の息吹」を詠んだ秀句だと思う。
 「柔らかい風が吹き渡って行く。同じ茎に二つの花穂を立てている二人静であるが、その一つの穂、一つの穂が風に微かにそよいでいるではないか。何と静で繊細なことよ」とでも理解すればいいのではないだろうか。

 ある日のことだ。
 …落ち葉のクッションは足に優しい。その優しさに助けられどんどんと下る。風がなくなり、日差しは斜面に遮られ、辺りはふと暗くなった。 そこは深緑に包まれた初夏の装いだった。その中に大きい葉を従え垂直に伸ばした触角のような穂状花序と清楚な白い小花が浮かんだ。「フタリシズカ」である。これは大きな緑の蝶だ。
普通は、名に示すように花序は二人(二本)であるはずなのに、私の目の前のものは花序が一本、これでは一人でしかない。驚いた。このようなものも偶にはあるのだ。
 その日の山行もまた、私は単独である。思わず独り言。「私と一緒で二人…だね。」
 また尾根の道に戻った。そして沢筋を覗いた。さっきの大きな緑の蝶が、沢筋の空間をふわりふわりと対岸の尾根に向かって飛翔しているように思えた。きっと義経を恋う静御前が霊と共に舞っているのだろう。…
 私は、この状況と情景を「大きな四枚羽に二本の触角静かに佇む優雅な緑蝶」としてある。因みに「フタリシズカ」の花言葉は、「面影・静御前の面影」、「美しい舞姿」である。
 …言われているが、「フタリシズカ」の「花」に見える部分は、花ではない。

          花弁(花びら)と萼片の話し(その2)

(承前)
 …ヒトリシズカ・フタリシズカ・ツクバネソウから「花弁」と「萼片」を考えてみよう。

 本題に入る前に、誰もが知っている「柿」で「花弁と萼片」について予備学習をしておこう。とはいうものの「柿の実」は知っていても、「花」は知らないという人は多いだろう。 「柿の花」は花弁を含めて非常に目立たない。地味な花であるからだ。
 中央の4弁の黄色のものが花である。その下にあり、花を支えて包み込んでいるように見えるのが「萼」である。花に比べると非常に大きい。
この「萼」は実になると、蔕「へた」と呼ばれるものになる。
 これが果実に残っている萼だ。柿以外ではっきりしているものには茄子「なす」がある。これを「宿存萼」ともいう。
 「柿」とは「カキノキ科」の落葉高木だ。高さ約10mにもなる。葉は革質で、関西方面の「柿の葉鮨」に使われている。6月頃に黄色4弁の雌花と雄花をつける「雌雄同株」の樹木だ。(明日に続く)

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