岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

ムラサキ科ムラサキ属の花、「ムラサキ」は白い花だ。その仲間ホタルカズラは何色?

2009-05-27 04:13:26 | Weblog
 (今日の写真は、ムラサキ科ムラサキ属の多年草の「ホタルカズラ(蛍葛)」である。岩木山では今が咲きどころである。何しろ、「小さい花」なので、見過ごしてしまうことがよくある花だ。
 一緒に写っている白い花は「ナデシコ科オオヤマフスマ属」の多年草、「オオヤマフスマ(大山衾)」だ。
 北海道、本州、四国、九州の山地の草原や林道脇の草地などに見られ、草丈は5~20cmだ。少しだけ分枝し、ヒョロヒョロと線の細い印象がするが、茎には細かい毛が密生している。
 漢字で書くと「大山衾」。衾は寝る時にかける寝具であって、建具の「襖」の意味ではない。「大山」などと、「いかつい感じ」がするが、草丈は短くて、花もせいぜい1cmだ。同じ仲間の「ハコベ」などと比べても、むしろ小さいくらいだ。
 なのにどうして直訳すると「大きな山の寝具」というおかしな名前が付いてしまったのだろうか。そのようなことについても書きたいのだが、今朝は本題の「ホタルカズラ」に絞って書き進めていく。

 この花には先日、「毒蛇沢」から降りてきて、自動車を置いた石切沢左岸の「駐車スペース」に戻る、その途中で出会った。もちろん、自動車も通ることの出来る「道ばた」である。歩いていたから「出会えた」のである。自動車を運転したり、同乗していると決して出会えなかったであろう。人間の「眼」という感覚器官は、その場所に停止して見る時にもっとも正常に働くものである。そして、正常に働いて視認出来るということは「歩いて移動する」スピードが限界らしい。それ以上に速くなると、もはや、「確認」出来なくなるのである。
 「車社会」に生きる人々は、毎日多くの「見落とし」の中で生きている。この「見落とし」は何も、花々や昆虫、小動物だけではない。人間自身に関わる様々な社会事象にまで及んでいる気がする。「自動車依存」の生活は「人間」から、その「視野」を奪い、心の「視野狭窄症」を発症させてはいないだろうか。

 「ホタルカズラ」は日本各地および朝鮮・中国・台湾にも分布する。日当たりのいい林縁の急傾斜地などに生育し、春に「はっと」するような可愛い花を咲かせる。
 茎は地表を這うか、または崖から垂れ下がり、所々から根を出して株を形成する。堆積岩の崖直上などに生育していることが多い。
 花は基本的に、紫色。花の中に白い隆起した白い線が入る。直径1.5~2.0cm。咲きはじめは赤紫で、次第にコバルトブルーに変わっていく。今日の写真でもそのことはよく分かるだろう。
 茎の先に目がさめるような青紫色の花を咲かせている。草丈は15~20cmだろうか。
 開花後、根元から地表を這うように、柄を伸ばし茎は針金のようになって長く地面を這い、新しい株を作るのだ。
 全体に粗い毛がある。葉は互生で、倒披針形。長さは3~6cmで、裏表に粗い毛があって、「可愛い」花とは、ちょつと似つかない感じがする。
 「青い花びら」の中に白い線があり、「星」のような形をしていて、一旦眼にすると、その「模様」は印象的である。だから、遠くからでもよく目立つのだ。
 不思議なことに、なぜか栄養もなそうで、他の植物が嫌がるような、まさに「貧栄養」である石ころだらけの場所や、道端に生えている。

 そのようなことを考えると、「ホタルカズラ」という「花名の由来」が気になってくる。
 これは「花の中央の白い星形から蛍の光に喩えたこと」のよるらしい。「草の間に点々と咲いている様子がホタルの光…」ということだろうか。しかし、どう見ても、私には「ホタルの光」には見えない。

 蛍は「火垂る」であり、尻に火を垂れ下げているという意味らしい。よく見ると確かにこの花の付け根(基部)には火のような赤みが僅かにある。花を観察すると「花の中心が燃える火のように赤いこと」が分かるだろう。
 「カズラ」は蔓状植物のことで、「ムラサキ」、「ハナイバナ」、「ワスレナグサ」、「キュウリグサ」などの仲間だ。
 その「花の青色」は「周りの緑や枯葉や地表」に比べると「喩えようもない」というくらい印象的な「青」で、それがホタルカズラの魅力であろう。
 木陰の草地の中で、青い花に木漏れ日が当たっているのを見ると「なるほど蛍だ」という思いを持たないわけではない。
 ここでいう「青い」とは「碧紫色」とか「瑠璃色」とか言われるものだろう。別名を「瑠璃草」ともいうのだ。

 出会った時の印象を、帰宅してから「短歌」にしてみた。次の二首である。

・緑葉の幹撃つ陽光その下にほたるかずらの青き群れ花

・コバルトに交じりて光る紅一点ほたるかずらの若花けなげ
                         (三浦 奨)

 私は、この花との最初の出会いを「明るく柔らかな動きの陰影にきらめくルリ色シジミ」と表現している。

 …かつての道もすっかり名残程度に微かなものになっていた。それを辿るために視線はおのずから足許に移っていた。
 まだ春だから踏み跡の確認も出来るが、草いきれの真夏ではすっかり下草に覆われて出来ない。数回歩いた道だといっても、「道という人工物」は自然への回帰を日々進めるのが常だ。
 突然私は立ち止まってしまった。佇立と凝視の前で明るい柔らかな動き、陽射しがこぼれる叢中に、飛び紛う数匹の陰影にきらめくルリシジミを見つけた。それは「ホタルカズラ」だったのだ…。 

注:「ルリシジミ」とは瑠璃色をした12mmから16mmの蝶で、活発に飛び回り木や草の花で吸蜜するほかに吸水することもある。足下を忙しげに飛び回ることがある。食草は藤などのつぼみや花だ。

 よく見られるムラサキ科の仲間には、キュウリグサ属、ハナイバナ属、ワスレナグサ属、ミヤマムラサキ属、ムラサキ属、ヤマルリソウ属などがある。「ホタルカズラ」はムラサキ属である。(明日に続く)