岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

初秋の小真弓、紅葉と果実、マユミ、ニシキギなど

2009-06-04 05:11:19 | Weblog
 (今日の写真は初秋の「コマユミ」だ。周囲の木々や草がまだ緑なのに、いち早く「紅葉」する。漆(ウルシ)や蔦漆(ツタウルシ)の紅葉も早いが、これも早い。
 だが、この写真の紅葉は「本当に始まったばかり」で、「紅」の艶やかさはまだない。果実も所々に見えるが、これも、丹色で「完熟」とはいえない。9月の上旬、小杉沢に行く途中で撮ったものだ。
その日はいい天気だった。小杉沢の「湧水」の現場に行く途中である。近くには「溜め池」があった。秋が始まったばかりで「残暑」という言葉がぴったりと合うような暑い日だった。
 こんな日には「草いきれ」という言葉も、この写真の藪を含めて、うまく当てはまる。「コマユミ」の葉だけに「秋」がやって来ていて、他の樹木や草花は、まだまだ夏の装いそのままだったのである。)

 昨日までずっと「ニシシギ科ニシシギ属」のことについて書いてきたので、今日もそのことを書くことにする。
 先ずは、ニシシギ科ニシシギ属「コマユミ(小真弓・小檀)」だ。これは落葉低木だ。樹高は2m足らずではないだろうか。これは北海道、本州、四国、九州の丘陵帯から山地帯に分布している。岩木山では中腹部の林縁から山麓部にかけて、どこでも出会える花である。
 藪の縁や林縁で他の樹木や草と混じって生えているので、その全長を目測するのが難しい。だが、数は非常に多く、どこでも簡単に目につく。特に、秋は、いち早く「紅葉」するので、とにかく「目立つ」のである。枝には「ニシキギ」のようにコルク質の翼がない。樹皮は灰褐色であり、葉は単葉で対生している。葉身は倒卵形、または長楕円形で長さは2~7cm、幅は1~3cmだ。葉の色だが、表面は緑色、裏面は淡緑色である。葉の縁には鋭くて細かい鋸歯がある。葉先は尖っている。 
 花は、集散花序を出し、「淡緑色」のものを数個つける。果実は「朔果(さくか)」(注)で、秋に橙赤色に熟し、縦に2片に裂開して朱色の仮種皮に包まれた種子をぶらさげる。
葉は紅葉した後に散るが、果実はしばらくついている。

 次はニシキギ科ニシキギ属の落葉小高木である「檀・真弓(マユミ)」だ。名前の由来は「弓を作る材料にした」ことによるものだ。
 日本各地の山野に自生していて、別に珍しい樹木ではない。樹高は、時に5mにもなるという。
 花は、「集散花序」(注2)で初夏の頃、淡緑色(または緑白色)の小花を多数つけて、下に垂れ下がる。葉は「ニシキギ」より長い「長楕円形」で無毛で対生している。「ツルウメモドキ」と同じように「雌雄異株」である。
 黒っぽく角ばった果実は、橙赤色の仮種皮に包まれて、熟すと4裂して、紅い種子をみせる。材は器具用。別名を「山錦木(ヤマニシキギ)」や「川隈葛(カワクマツヅラ)」という。「川隈葛」は「ニシキギ」や「マユミ」の異称であり、「本草和名」には「衛矛、和名加波久末都々良」とある。
 「檀の実」は秋の季語であり、「マユミ」は万葉集にも登場しているなど、古くから日本人が愛した樹木の一つである。

 最後が「ニシキギ科ニシキギ属」の「ニシキギ(錦木)」だ。「鬼箭木」や「五色木」という漢字を当てる場合もある。
 これは「コマユミ(小真弓)」の変種とされ、枝にコルク質の翼のある点が母種と異なるところだ。それ以外はすべてがそっくりである。
 私にはこの「コルク質の翼」が、何のためにあるのか、そして、どの様にして出来るものなのかなど、一切分からないのである。これは「謎」だ。樹木の「板状根」に似ていないわけではないが、どうもそれとも違うらしい。
 これは一体何なのだろう。不思議である。何か利益があるのだろうか。枝の強度(剛性)を増す役目なのだろうか。「丸い」枝や茎よりは「四角」のものには剛性があるといわれているから、そのためなのだろうか。
 「コルク」は細胞壁が厚くなった死細胞だ。多孔質で、脂肪を含んでいて、水などの通過を阻害する。このような「コルクの性質」がどのような役目を担っているのだろう。それとも単なる「添え物」で副産物的存在なのだろうか。

 ちょうど今頃の初夏、黄緑色を帯びた小花を多数咲かせる。果実は朔果で、晩秋に熟し、裂けて橙紅色の種子を見せる。
 紅葉も美しく、観賞用として庭などに植えられていることがある。材は細工用として使われるという。
 俳句の世界では「錦木紅葉(にしきぎもみじ)」などと呼ばれて、「秋」の季語にもなっている。色づいた紅い「葉」が際立って美しいので、秋の季語とされたのだろう。
 俳句を数句調べてみたが、この「葉」や「実」を句題にしたもの以外は見つからなかった。次に示す2句も初夏に咲く「花」が主題ではない。

・錦木のつめたき色となりにけり (田正子)
・池の辺のことに錦木紅葉かな (山崎ひさを)

 蛇足だろうが、可愛らしい「ニシキギ」の果実であるが、決して食べてはいけない。「種」や「果実」を食べると、吐き気や下痢、腹痛を起こすことがあるからである。

(注1)「朔果(さくか)」:
 熟すと果皮が裂開する果実。2枚以上の心皮(しんぴ)「花の各要素は葉の変形と考えられ、雌しべを構成する葉をいう」が合成した果実で、成熟すると乾き、各室ごとに縦列して種子を散らす果実。
(注2)「集散花序(しゅうさんかじょ)」:
 花序の上位の花から開きはじめ、しだいに側枝の花が開くもの。最初の軸の頂端は花で終わり、つぎにその横からでた枝の先もまた花で終わり、これを繰り返す花序。

  今日で「ニシキギ科ツルウメモドキ属ツルウメモドキ」に始まった「ニシキギ科」の花を終わる。あれこれと調べているうちに、人さまの殆どが、これらの「花」に関心を示さず、専ら花後の「果実」や「その付き方と風姿」にばかり、思い入れが強いことを知った。
 これでは、片手落ちというものだ。樹木も草花も「部分」や「個別」だけをとらえるものではないだろう。自然の中にある「総体」をとらえるべきであろう。
 そんな思いに駆られて、以上のようなことを書き連ねたのである。