はやぶさ2、初号機とは違うのだよ!
前回の記事でお知らせしたはやぶさ2の偉業を称えるため、物理を勉強中の高校生でも分かるよう、その制御技術の凄さを数字を使って説明したいと思います。光速で20分先の宇宙で、こんなことが行われているんだと理解していただければ幸いです。高速じゃありませんよ。
まず基本データから。これは簡単にWikiから拝借しました。
小惑星リュウグウの質量(M): 4.5 × 1011 [kg]
はやぶさ2の質量(m): 600 kg
重力定数(G): 6.6740831 × 10-11 [ m3/kg・s2]
さて、万有引力の法則から、はやぶさ2にかかる引力(F)は次のように導かれます。
F = f(r) = G・M・m / r2 [N]
そして、リュウグウからはやぶさ2にかかる重力加速度(a)は重心からの距離(r)の関数になるとします。
a(r) = F/m = G・M/r2 ≒ 30/r2 [m/s2]
さて、上式で r = 1 [m] とすると、つまり、リュウグウの重心から1m付近では、地球の3倍の重力(3G)ほどの力がかかることがわかります。
これを、距離rの関数としてグラフ化すると次の図のようになります。
図1:リュウグウの重心から距離と重力加速度
※その後補助線の位置と関連箇所を修正しました
リュウグウの直系は700m程度ということなので、仮に着陸地点を重心から300m位離れた表面と仮定すれば、その部分での重力加速度は上グラフより
a(300) = 0.00033 [m/s2]
つまり、地球の重力加速度の10万分の3.3という極めて低い数値になり、ほとんど浮遊している状態であると考えられます。ですから、「着地」というプロセスそのものに意味がありません。敢えて言うなら「接地」でしょうか?だからこそ、劇団JAXAさんは今回は「タッチダウン」という用語を使用しているのでしょう。
図2:デモCGにおけるはやぶさ2のタッチダウン体勢
https://www.youtube.com/watch?v=OR-vN1xyfF0
なので、はやぶさ2のデモCGにあるような、リュウグウからの重力に引かれて「よいしょ!」と接地するようなシーンは実際にはあり得ないと言えます。重力は殆ど働かないのですから、実際は、マッハ50以上の超高速でリュウグウと並走し、時間をかけて徐々に徐々に近づくしか、方法はないはずです。下手に角度を付けて接地すると、力積作用であっという間に宇宙の彼方へはじき飛ばされてしまいますからね。
デモCGであのように分かり易く表現しているのは、国費100億円以上も掛けた国家プロジェクトですから、一般納税者に分かりやすく説明しなければならない、そのために多少演出を入れた配慮の結果なのでしょう。本当にありがたい心配りで、私も嬉しくて涙が出そうです。
でも、劇団JAXAのCG担当者さん、これはやり過ぎですよ↓
図3:リュウグウを周回するはやぶさ2
リュウグウからの重力が殆ど働かない中、どうやって周回するんですか?並走するだけでもたいへんなのに、ぐるっと一周だなんて!燃料を使って自力で周回運動しないといけないんですよ?そんな制御を往復通信時間40分、時間の読取り精度は0.1m秒単位以上で本当にやれるんですか?帰りの燃料のこともあるでしょうに。
国民へのサービスに一生懸命なあまり、無理筋な説明をされても恐縮しますし、物理を勉強中の学生さんが勘違いしてもいけません。どうか、過剰な演出は以後控えて頂きますよう、それだけはお願いします。
最後に、宇宙劇団JAXAさん、いつも夢をありがとう。励ましの言葉を私から。
初号機とは違うのだよ、初号機とは!
すみません、ガンダム世代なもので・・・
* * *
えっ?爆薬による金属片発射は何だったのかって?そんなのは私たちを楽しませる冗談だって事くらい、さすがに分かりますよ(笑) 探査ロボットのマスコット然り。
図4:殆ど無重力なのでリュウグウに向かって自然落下しない
射出すればその反動で本体の軌道が変わる
参考図1:瓦礫は浮いてると思うのですが・・まあ、いいか。人類の歴史的偉業を影から支えてくれた映像スタッフを労いに、今度、狸の里を見学に行きたいと思います。劇団本体が世界的な注目を浴びて忙しいでしょうから、お出迎えは不要です。
参考図2:映像制作現場想像イメージ
参考図3:標高約700mの愛知県鳳来山を背景に、手前20m程先にある1m四方の物体がどのように見えるかをシミュレートしてみた。奥に見える鐘楼まで約400mなので、3番目の加工写真はリュウグウの400m上空では大体こう見えると言うこと。本当に着陸したなら、地平は遠くにもっと緩やかな曲率で見えるはず。劇団JAXAさんの提供するCG映像はもちろんとして、1km上空から撮影したとされる写真画像もスケール感がデータと全く異なるのは明らか。そもそも、小惑星を照らす光はどこからやって来てるの?露光を開いたとしたら手前の探査衛星がくっきり写り過ぎ。地表に影も写っていないし。まあ、演出だからどうでもいいのですが。
今年のアカデミー賞最優秀作品賞は、宇宙劇団JAXAさんに獲ってもらいたかったです。あまりにリアルに作り込み過ぎたのが仇となりましたかね?本気で学術映像だと思ってしまった方々が多いようです。
キリストの御国にて記す
管理人 日月土
まず基本データから。これは簡単にWikiから拝借しました。
小惑星リュウグウの質量(M): 4.5 × 1011 [kg]
はやぶさ2の質量(m): 600 kg
重力定数(G): 6.6740831 × 10-11 [ m3/kg・s2]
さて、万有引力の法則から、はやぶさ2にかかる引力(F)は次のように導かれます。
F = f(r) = G・M・m / r2 [N]
そして、リュウグウからはやぶさ2にかかる重力加速度(a)は重心からの距離(r)の関数になるとします。
a(r) = F/m = G・M/r2 ≒ 30/r2 [m/s2]
さて、上式で r = 1 [m] とすると、つまり、リュウグウの重心から1m付近では、地球の3倍の重力(3G)ほどの力がかかることがわかります。
これを、距離rの関数としてグラフ化すると次の図のようになります。
図1:リュウグウの重心から距離と重力加速度
※その後補助線の位置と関連箇所を修正しました
リュウグウの直系は700m程度ということなので、仮に着陸地点を重心から300m位離れた表面と仮定すれば、その部分での重力加速度は上グラフより
a(300) = 0.00033 [m/s2]
つまり、地球の重力加速度の10万分の3.3という極めて低い数値になり、ほとんど浮遊している状態であると考えられます。ですから、「着地」というプロセスそのものに意味がありません。敢えて言うなら「接地」でしょうか?だからこそ、劇団JAXAさんは今回は「タッチダウン」という用語を使用しているのでしょう。
図2:デモCGにおけるはやぶさ2のタッチダウン体勢
https://www.youtube.com/watch?v=OR-vN1xyfF0
なので、はやぶさ2のデモCGにあるような、リュウグウからの重力に引かれて「よいしょ!」と接地するようなシーンは実際にはあり得ないと言えます。重力は殆ど働かないのですから、実際は、マッハ50以上の超高速でリュウグウと並走し、時間をかけて徐々に徐々に近づくしか、方法はないはずです。下手に角度を付けて接地すると、力積作用であっという間に宇宙の彼方へはじき飛ばされてしまいますからね。
デモCGであのように分かり易く表現しているのは、国費100億円以上も掛けた国家プロジェクトですから、一般納税者に分かりやすく説明しなければならない、そのために多少演出を入れた配慮の結果なのでしょう。本当にありがたい心配りで、私も嬉しくて涙が出そうです。
はやぶさ2がリュウグウにはじき飛ばされる理由
はやぶさ2を質量mのパチンコ玉、リュウグウを質量Mのボーリング球に例えて図で説明します。高校生の読者諸君で理系専攻ならば高校物理の「力積」または「運動量保存の法則」でこれを習うはずです。教科書を読みながら考えてみましょう。
なお、速度V,vはベクトル表記です。vyを充分小さく、すなわちvの角度を充分小さくして接近しないと、パチンコ玉はボーリング球にはじき飛ばされるのが分かると思います。
これを、40分の通信タイムラグをものともせず、直系6mの指定範囲にタッチダウンさせるからこそ神業なのです。
図:パチンコ玉接近中
図:接触後にはじき返されるパチンコ玉
接触時に両者同じ力を受けるが、速度変化は軽いパチンコ玉の方が大きい
両者マッハ50以上で移動しており、僅かな速度変化も観測には致命的
この議論以前に、どうやってはやぶさ2をマッハ50以上まで加速したのかも謎なのですが、そこは宇宙劇団、あっと驚くウルトラC(神業)を考案したに違いありません。皆で考えてみましょう。
1. ISSでブースト用ロケットを組み立てていた
2. ガンダムに押してもらった
3. そもそもリュウグウに辿り着いてなかった
4. その他( )
はやぶさ2を質量mのパチンコ玉、リュウグウを質量Mのボーリング球に例えて図で説明します。高校生の読者諸君で理系専攻ならば高校物理の「力積」または「運動量保存の法則」でこれを習うはずです。教科書を読みながら考えてみましょう。
なお、速度V,vはベクトル表記です。vyを充分小さく、すなわちvの角度を充分小さくして接近しないと、パチンコ玉はボーリング球にはじき飛ばされるのが分かると思います。
これを、40分の通信タイムラグをものともせず、直系6mの指定範囲にタッチダウンさせるからこそ神業なのです。
図:パチンコ玉接近中
図:接触後にはじき返されるパチンコ玉
接触時に両者同じ力を受けるが、速度変化は軽いパチンコ玉の方が大きい
両者マッハ50以上で移動しており、僅かな速度変化も観測には致命的
この議論以前に、どうやってはやぶさ2をマッハ50以上まで加速したのかも謎なのですが、そこは宇宙劇団、あっと驚くウルトラC(神業)を考案したに違いありません。皆で考えてみましょう。
1. ISSでブースト用ロケットを組み立てていた
2. ガンダムに押してもらった
3. そもそもリュウグウに辿り着いてなかった
4. その他( )
でも、劇団JAXAのCG担当者さん、これはやり過ぎですよ↓
図3:リュウグウを周回するはやぶさ2
リュウグウからの重力が殆ど働かない中、どうやって周回するんですか?並走するだけでもたいへんなのに、ぐるっと一周だなんて!燃料を使って自力で周回運動しないといけないんですよ?そんな制御を往復通信時間40分、時間の読取り精度は0.1m秒単位以上で本当にやれるんですか?帰りの燃料のこともあるでしょうに。
国民へのサービスに一生懸命なあまり、無理筋な説明をされても恐縮しますし、物理を勉強中の学生さんが勘違いしてもいけません。どうか、過剰な演出は以後控えて頂きますよう、それだけはお願いします。
最後に、宇宙劇団JAXAさん、いつも夢をありがとう。励ましの言葉を私から。
初号機とは違うのだよ、初号機とは!
すみません、ガンダム世代なもので・・・
* * *
えっ?爆薬による金属片発射は何だったのかって?そんなのは私たちを楽しませる冗談だって事くらい、さすがに分かりますよ(笑) 探査ロボットのマスコット然り。
図4:殆ど無重力なのでリュウグウに向かって自然落下しない
射出すればその反動で本体の軌道が変わる
参考図1:瓦礫は浮いてると思うのですが・・まあ、いいか。人類の歴史的偉業を影から支えてくれた映像スタッフを労いに、今度、狸の里を見学に行きたいと思います。劇団本体が世界的な注目を浴びて忙しいでしょうから、お出迎えは不要です。
参考図2:映像制作現場想像イメージ
参考図3:標高約700mの愛知県鳳来山を背景に、手前20m程先にある1m四方の物体がどのように見えるかをシミュレートしてみた。奥に見える鐘楼まで約400mなので、3番目の加工写真はリュウグウの400m上空では大体こう見えると言うこと。本当に着陸したなら、地平は遠くにもっと緩やかな曲率で見えるはず。劇団JAXAさんの提供するCG映像はもちろんとして、1km上空から撮影したとされる写真画像もスケール感がデータと全く異なるのは明らか。そもそも、小惑星を照らす光はどこからやって来てるの?露光を開いたとしたら手前の探査衛星がくっきり写り過ぎ。地表に影も写っていないし。まあ、演出だからどうでもいいのですが。
今年のアカデミー賞最優秀作品賞は、宇宙劇団JAXAさんに獲ってもらいたかったです。あまりにリアルに作り込み過ぎたのが仇となりましたかね?本気で学術映像だと思ってしまった方々が多いようです。
キリストの御国にて記す
管理人 日月土
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