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伊坂幸太郎『重力ピエロ』新潮文庫

2009-03-30 00:35:45 | 文学・小説
今日、田舎でひとり暮らしをする父が入院したので、兄と見舞った。

その帰りに電車でこの小説を読んでいて、泣いてしまった。
テッシュ取り出して、涙とハナを拭いた。
泣いているのをごまかすために眼鏡をかけた。
でも、向かいに座っている2人の子ども連れの母親も、横に座っていた2人の女子大生も珍しそうにこちらを見た。

まあ、いいか、と思った。
本当に泣ける小説だ。
芝居を見て泣くというのではなく、自分の存在について泣ける。

どうして父親はひとりなんだろう。
どうしてすべてがうまくいかないんだろう。
どうして家族は捨てられないんだろう。
どうしてみんな生まれてきたんだろう。

日常考えないようにしていることが次々と湧き出る。
答えとして、「運命」や「家族の純粋な絆」のことを考える。


「嘘をつくのが下手なのは父親に似た」
とレイプ事件で生まれ、血のつながっていない成人した次男に父親が言う。
父親は癌で余命幾ばくもない。
この小説で一番泣けるシーンだ。

この本は、遺伝子と性、兄弟と家族について描かれている。

タイトルの「重力ピエロ」は、ピエロがサーカスの空中ブランコを飛んでいる時、みんな重力を忘れることから付けられている。

こんな難しい素材とテーマが面白いミステリーになるとは...。

重いテーマだのに小説は軽い。

この本が売れていると聞くと、日々の異常なニュースが不思議に思える。
読者は「運命」や「家族の純粋な絆」のことを考えるのだろうか。


今の自分の境遇と切り離しても素晴らしい小説だと思う。

この本に関してはどんな解説も著者のインタビューも読みたくない。
純粋に作品としてこれからも読みたい、と思う。


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