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お気楽ビジネス・モード

ビジネスライフを楽しくする知恵や方法を紹介する

國貞克則『書いてマスター! 決算書ドリル』(日本経済新聞社)

2008-04-19 21:39:40 | 財務・会計
同じ著者の『財務3表一体理解法』を読んでよかったので、この本を買ったが、B4判と大きいのでこっちのほうがもっと見やすいし、ページを戻らなくてよいのでわかりやすい。
B/S、P/Lの当期純利益でのつながり、B/S、P/Lと間接法・間接法CSの当期純利益、現金および預金とのつながりなど一つの取引によって3つの計算書がどのように変化するか、また変化しないかがよくわかる。
アカウンティングを学ぶならこの本を最初に読むといいのだろう。
この人は入門書しか書いていないようだが、こんな感じで実務に役立つもう少し応用できる本も書いて欲しい。

山田真哉『食い逃げされてもバイトは雇うな』

2008-03-26 23:15:53 | 財務・会計
前作『さおだけ屋はなぜ儲かるのか』はアカウンティングの入門書として読むととても面白かったので、この本を買った。けれどかなり期待はずれだった。この本はアカウンティングというより見かけの数字や現象に騙されるな、というテーマの本である。簡単すぎて得るところはほとんどない。下巻までいっしょに買ってしまったのが悔やまれる。新書も一度売れると、その作家はブランドとして安易な売り方の対象になってしまうのか。この本の作り方じゃブランド損失だと思うが。

山田真哉『さおだけ屋はなぜつぶれないのか?』

2007-12-27 22:11:45 | 財務・会計
この本はてっきり詐欺師の話を経営学的に分析する本だとばかり思っていた。
読んでみると会計をわかりやすく説明した極めて質のよい本であることがわかる。さおだけ屋の話は、利益の出し方を教える事例なのだ。
連結決算は、儲からないフランス料理屋が、実は料理教室で儲けていることで説明している。
在庫と資金繰り、回転率、キャッシュフローなど重要な考え方はこの薄い本で網羅されている。
損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書の順番にその項目の意味を説明するのが、会計の入門書と相場は決まっていたが、この本はその常識を覆している。何のために会計という考え方が存在するのかを教えてくれる。

田中靖浩『会計力トレーニング』

2007-10-27 20:06:49 | 財務・会計
右脳でわかる!というキャッチフレーズとカラー印刷に惹かれて買った。
同業種の会社の売上が棒グラフで表現されていたり、セグメントが円グラフで表現されていたり、貸借対照表がカラーでわかりやすかったりする。
右脳でわかるというより、見た目で比較ができるというだけのことだ。
これで会計の知識が増えたりするわけではない。
まあ、見るには面白いが840円の価値はないと思う。

國貞克則『財務3表一体理解法』

2007-06-19 22:41:45 | 財務・会計
損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書(CS)の直接法と間接法の4つのつながりを一体的に理解できるというコンセプトの本。確かにこれはわかりやすい。どうしてこれまでこういう本がなかったのか不思議なくらいだ。PLの当期純利益とBSの利益剰余金が同じ額になるのはどのアカウンティングの本でも解説している。PLの税引前当期純利益を間接法CSの営業のキャッシュフローにもっていってからCSをつくるというのもみんなが解説する。しかしこの本が新しいのは、何かの取引がこの4つの表をどう変化させるのかを実例で見せてくれるところだ。借入金の元本を返済してもPLには表れないが、そういうときもPLからBS、二つのCSの4つの表の動きを見せてくれるので、「へえー、PLでは動かないんだ」とわかるしくみ。どうして間接法CSで減価償却費を足し戻すのか。これも直接法CSと間接法CSをいつも見せることで、足さないともともと税引前当期純利益から引いてあるので、キャッシュが合わなくなることがわかる。それで間接法CSで減価償却費を足し戻すのか、と納得する。こういう初歩的なことからPLとBSの操作の仕方という悪質な高度な技まで解説している。CSの8通りのパターンで経営状況と経営戦略を読む方法もわかる。新会計基準の税効果会計でどうしてりそな銀行が国有化されることになったのかまで解説してある。これが200ページそこそこの新書に収まっているからとても得した気分になる。

石野雄一『道具としてのファイナンス』

2007-05-26 21:23:13 | 財務・会計
難しい計算式はExcelにまかせて、道具としてのファイナスを解説するというコンセプトの本。確かにわかりやすい。それでもデリバティブやコーポレート・ファイナンスでブラック・ショールズモデルは???という感じだった。でもブラック・ショールズモデルを日産の為替変動プレミアムを計算する例で解説してるのには、こんな難しい式を財務の実務で実際に使うのかと驚いた。この本は今後ファイナンスを勉強するときに実際の計算で繰り返し使うことになりそうだ。全体を通して感じることは、最初に解説があったNPV(現在価値)の考え方や最後に例示があったリアルオプションにしても変数の内容をどのように決めるかで結果が大きく変わるということだ。例えばプロジェクトの現在価値を比較する場合、それぞれのプロジェクトが生み出す利益をどう見積もるかが最も重要である。リアルオプションにしてもボラティリティをどう設定するかで結果が逆にもなる。これらは計算方法や手順を覚えるかどうかという問題ではない。実務で経験しないとわからないことだ。それにしても日産にはこういう優れた人材が何人もいるのだ。きっとトヨタはもっとすごいのだろう。

森生明『会社の値段』

2007-05-24 00:01:42 | 財務・会計
企業価値=企業が将来にわたって生み出すキャッシュフローの現在価値
企業価値=現在のキャッシュフロー/(安定性-成長性)
という式で会社の値段を表すことができる。
これらの考え方はM&Aなどその会社の価値を計算しなければならないときにとくに力を発揮する。著者のいう企業価値とは株主価値のことである。企業価値を株主価値というと、日本ではライブドアvsフジテレビのときのように会社は株主だけのものなのかどうかという議論が出てくる。しかし、アメリカでも同じような議論は1960年代にあったらしい。経営者が独裁的権力でM&Aを行い、コングロマリット化する動きが活発だった時代である。ITTのハロルド・ジェーンもその一人のようだ。しかし景気後退期を迎えると、拡大成長に慣れ、コングロマリット化で身動きがとれない会社が切り売りされ、また株主のファンドを預かる投資銀行や機関投資家が活躍する。M&Aを行い、株価を上げるようになり、株主優位の時代になる。やがてその流れが加速化し、1980年代には敵対的M&Aが流行する。短期的収益だけで株の売買をする投資ファンドの活動も活発になる。この頃から毒薬条項などを設ける企業防衛策も当たり前になったとのことだ。しかし、これらの体験を通じて企業価値とは株主価値であることを経営者も自覚して経営を行うようになっている。日本はアメリカより20年くらい遅れた状況といえる。株価にのれん代や人的資産は表れないという論者に対しては、株価はそれも反映していると著者は主張する。楽天vsTBSでも最近では株主価値に関する委員会を設け、お互いに株主価値を優先的に認めるようになっている。議決権を得るために姑息に株主比率を上げることだけに精力を傾けていたライブドアvsフジテレビのときより進歩しているらしい。経営者は株主総会で株主が決めるのだ。ライブドアvsフジテレビのときも、株主価値を長期的視点で高めるにはどちらのビジョンが優れているのかを競うべきだったのだ。利害関係者の中で株主はもっとも高いリスクをしょっている。だから、上場会社にとって株主優先は常識なのだ。株主が短期的な利益だけでなく長期的な利益も考えて経営者を選んでくれるように現在、IR活動が活発になっているのも理解できる。しかし、トヨタのように株の持ち合いや系列会社を維持する経営スタイルをとるところもある。決してグローバルスタンダードとはいえない。けれど、そのほうが株主価値を上げるとなれば話は別である。トヨタはグローバルスタンダードより日本的経営のほうが優れているのだとIR活動を行うのもひとつの方法とのこと。会社に関する法律とファイナンスに強い実務家の著者の主張は説得力がある。

石野雄一『ざっくりわかるファイナンス』

2007-04-29 10:46:46 | 財務・会計
日産のゴーンのもとでファイナンスを担当していた著者のファイナンス入門本。著者の『道具としてのファイナンス』への入り口の内容だ。コーポレート・ファイナンスとは、投資、資金調達、配当政策に関する意思決定にかかわるものという定義。アカウンティングが現在から過去のことを扱うのに対して、ファイナンスは現在から未来のことを扱うという言い方もなるほどと思う。加重平均資本コスト(WACC)の説明でまず加重平均を説明するときに、ベルモットとジンからマーティーニをつくるコスト計算をするところなんかは初心者によくわかる。WACCを下げるためには、投資家のリスクを下げることが重要で、そのためにはIR(投資家への広報)が大切というのもよくわかる。アカウンティングの学習でよくわからなかったキャシュフロー計算書の営業におけるキャッシュフローでどうして減価償却費を足すのかも一から説明してある。そもそもどうして、キャッシュが動かないのに減価償却費という考え方があるのか。要するに税務署が税金を初年度から取りたいからだ。もちろん設備投資の準備の必要性の認識など他の理由もあるだろうが、税務署が会計をややこしくしているのも事実だと思う。著者がアメリカで受けたMBAの授業で、教授が黒板にリスクとは「危機」と漢字で書いたという話も面白い。リスクとは危険でもあり、機会でもあるのだ。リスクとは将来の不確実性をあらわすものにすぎない。ゴーンは「リスクのない会社なんてない。そんなものは死んだ会社だ」といってリスク管理に敏感になりすぎることを戒めたらしい。そう考えると株主は債権者より投資に対するリスクが大きいので、より大きなリターンを求めるのは当たり前ということも理解できる。しかしこの本を読んで、ファイナンスの基本を理解するにはお金の現在価値の考え方が最も重要だと思った。1年後に104万円をもらうより、今100万円をもらったほうが価値があるのだ。リスクフリーを国債利率5%とすると。

最新「ファイナンス」とケース分析

2007-04-08 22:29:56 | 財務・会計
ファイナンスに限らず何かの分野を理解するには、入門書を何冊か読むのがコツだと思う。共通して書いてあることがはおそらく大事なんだと見当がつく。ファイナンスで読んだ本はこれが初めてなので何が大事なのかよくわからなかった。ファイナンスの入門書なのに計算する演習がなくて割とスラスラ読める。しかし、デリバティブのところは読んでいて頭が痛くなったのでさすがに途中で飛ばした。ブラック・ショールズモデルについて、数式そのものよりそのモデルが生まれた経緯の解説が興味深かった。LBOについてはRJレイノルズ社によるナビスコ買収の実例解説が面白かった。ファイナンスは経営戦略、組織行動、人的資源管理はもちろん、アカウンティングより答えがはっきりしているようだ。その分、間違うと損失が大きい。これは実社会でも同じか。


ハゲタカ

2007-03-25 19:47:38 | 財務・会計
NHKで投資ファンドによる企業買収をテーマにした6回連続のドラマをやっていた。柴田恭平や大森南朋、栗山千明の熱演もよかったが、会社とは誰のものか、どういう企業を投資ファンドが買収の標的にするのかなど考えさせられることがあった。TBOやEBO、ホワイトナイトなど新聞記事でよく見かける単語をドラマ仕立てのなかで見ると逆にリアリティーがある。村上ファンド事件がちらつくのでこのドラマで描かれている「大銀行、外資ファンド」=悪、「日本ファンド」=善という図式には承認し難いものがあった。しかし、投資ファンドは株価と潜在的な企業価値のギャップを狙う。ギャップの要因は一族支配による放漫経営であったり、大企業ゆえの古い体質による経営の沈滞であったりする。上場企業は株式により不特定多数から資金を調達する。それゆえ会社は経営者のものとはいえず、株主優先主義にならざるを得ない。企業防衛のために関連会社に合法の範囲内で株をもたせるなどいろいろな対応策が検討されているようだ。ある規模までは従業員持ち株制を導入し、従業員が経営に関わる方法もあるだろう。しかし、従業員の名前が覚えられないくらいの規模を越えるとファイナンス技術と法的措置による企業防衛が必要になる。会社は経営者だけのものでも、従業員のものでもない。