[※ 安田好弘さん 《「死刑反対。死刑をおかしい」と言うこと自体が、異端者になってくる》 (2018年7月28日 報道特集)↑] (2024年09月15日[日])
恥ずかしい…《「死刑制度を続ける日本は北朝鮮やシリアと同じ」―。…日本に向けられている厳しい視線》。死刑制度反対、裁判員制度反対。死刑存置反対、死刑反対。人権意識の低い国ニッポンと蔑まれている。(そういう「イメージ」がどこに在るのか疑わしいが)《◆「日本は親切で民主主義国家」というイメージ裏切る》。50年以上前にイギリスで《「誤審の危険性」と「死刑の不可逆性」に対する国民の問題意識が高まった》そうだが、ニッポンはどうなってるのかね? 今でも日本では死刑存置は8割を超えるのではないかと思うが、《◆廃止当時、イギリスでも70%が死刑を支持していた》そうだし、フランスでも同様だったと思います。カルトとヅボヅボな「利権」「裏金」「脱税」党のニッポン政府は死刑を続けたくて仕方ない訳だ ―――《現在は英国で死刑を支持する世論は40%台だが、死刑を廃止した60年代は70%台だった。「死刑廃止後に政治が世論を導き、国民は廃止を支持し続けている。新しい情報や事実に触れると意見が変化するのは当たり前のこと。重要なことは、さまざまな情報を提供し、幅広い議論を起こすことだ」と、死刑廃止に向けた政治のリーダーシップの重要性を訴えた。一方、日本では死刑制度を容認する声が根強いことを理由に、政府は死刑廃止に消極的だ》。演者は、《…死刑事件で再審無罪が確定。…袴田巌さん》などの《事件を引き合いに「間違いが起こる可能性を認める国こそ民主主義的な国だ」と述べ、死刑廃止に向けた議論が進むことに期待を示した》そいうだが、ニッポンは《民主主義的な国》ではないということだ。
『●(東京新聞社説)《死刑制度には普遍的な人権問題が潜み、その廃止・
停止は、もはや世界の潮流となっている》…死刑存置でいいのか?』
『●死刑台からの生還、島田事件・赤堀政夫さん「僕は無罪である以前に無実」
「青春を返してほしい」…そして飯塚事件・久間さんの〝命を返してほしい〟』
(東京新聞社説、2021年8月23日)《米国が連邦による死刑執行を一時停止すると表明した。死刑制度には普遍的な人権問題が潜み、その廃止・停止は、もはや世界の潮流となっている。日本でも廃止に向けた議論を進めるべきだ》。なんでも《米国》に従うのにね。《バージニア州は今年三月に「死刑は不公平で効果がなく非人道的だ」として、南部の州として初の廃止州となった》。消費税制が無いことや死刑停止・廃止には従わないのにね。ニッポンは、死刑存置でいいのですか? 《アムネスティ・インターナショナル…はこうした現状を「世界は死刑という残虐かつ非人道的で、品位をおとしめる究極の刑罰を過去の遺物に葬り去ろうとしている」と説明している》。
《普遍的な人権問題》としては、冤罪者を死刑にしてしまうこと。「飯塚事件」で死刑が執行された久間三千年さんが思い出される。罪なき人に対しての《国家による殺人》。政権が罪を認めるはずも無いし、最早責任の取りようもない、国家が無辜の人を殺したのですから。
三宅千智記者による、東京新聞の記事【こちら特報部/イギリス人が「目を丸くして驚く」制度が日本、北朝鮮、シリアに 知日派大使「いかなる場合も死刑反対」】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/353090?rct=tokuhou)/《「死刑制度を続ける日本は北朝鮮やシリアと同じ」―。英国のジュリア・ロングボトム駐日大使が、日本の死刑制度のあるべき方向性を議論している有識者会議で講演し、日本に向けられている厳しい視線を指摘した。55年前に死刑を廃止した英国から日本はどう映るのか。(三宅千智)》。
『●『死刑』読了』
『●死刑廃止集会』
『●「死刑制度 国民的な議論を活発に」…
「死刑制度存置派驚異の8割の我国」では全くそんな気配なし』
『●「彼を赦したわけではない。
しかし死刑にして問題が解決するわけではない」』
『●NNNドキュメント「死刑囚の子 殺された母と、殺した父へ」』
『●和歌山毒カレー冤罪事件: 安田好弘弁護士と林眞須美被告』
『●「新宿西口バス放火事件」: ある被害者の心の軌跡』
『●「殺すなかれ…」…「彼らを処刑することが「社会正義」なのだろうか」?』
『●冤罪で死刑執行、あってはならない!!』
『●贖罪:足利事件再鑑定から12日後の2008年10月28日朝、
飯塚事件久間三千年元死刑囚の死刑が執行』
「2008年10月16日 足利事件 再鑑定へ
2008年10月28日 飯塚事件 死刑執行
2009年 4月20日 足利事件 再鑑定で一致せず
……そう、足利事件で誤鑑定であることが分かった時には、既に、
久間さんの死刑が執行されていた。2008年10月16日に
DNA型鑑定に疑問が生じた時点で、死刑執行は停止されておくべき
だったのに…。なぜ、急いで死刑執行したのか?、大変に大きな疑問である」
『●NNNドキュメント’13:
『死刑執行は正しかったのか 飯塚事件 “切りとられた証拠”』』
『●①飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か?
廃止か?」…話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン』
『●②飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か?
廃止か?」…話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン』
『●飯塚事件冤罪者を国家が死刑執行、「この重すぎる現実」:
無惨…「死刑執行で冤罪を隠蔽」』
「リテラの伊勢崎馨さんによる記事【飯塚事件、なぜ再審を行わない?
DNA鑑定の捏造、警察による見込み捜査の疑いも浮上…やっぱり冤罪だ!】」
《冤罪が強く疑われながら死刑が執行されてしまったのが、1992年に
福岡県で起こった「飯塚事件」である。そして、この飯塚事件にスポットをあて、
冤罪疑惑に切り込んだドキュメンタリー番組が放送され、ネット上で話題を
呼んだ。3日深夜に日本テレビで放送された
『死刑執行は正しかったのかⅡ 飯塚事件 冤罪を訴える妻』だ》
『●飯塚事件の闇…2008年10月16日足利事件の再鑑定で
死刑停止されるべきが、10月28日に死刑執行』
「西日本新聞の二つの記事【死刑下した裁判官が関与 飯塚事件の
再審請求審 識者「公正さ疑問」】…と、【飯塚事件再審認めず
福岡高裁 「目撃証言信用できる」】…」
『●飯塚事件…《しかしもっと恐ろしいのは、そんな誤りを認めず、
国家による殺人を無かった事にする国家の強引さだろう》(清水潔さん)』
《赤坂自民亭》の酔いちくれぶりや、一部マスコミの異常なハシャギぶり、思い出すだけでも気分が悪い。《死刑を忠実に実行しているのは日本だけ》、本当に何もかも嫌になるニッポン。さらには、飯塚事件の久間三千年さんにどう責任をとるつもりなのか?
『●袴田冤罪事件を機に死刑制度の再考ができない我国』
『●善良な市民には関係ない??
死刑制度存置派驚異の8割の我国では全く揺るがず!?』
『●《死刑を忠実に実行している》のはニッポンだけ…
飯塚事件でも、《十三人の死刑執行》でも揺るがず…』
《今年七月、オウム真理教の死刑囚十三人全員の刑が執行された。
世界で死刑廃止の流れが進む中、大量執行は国内外に大きな衝撃を
与えた。だが、国内ではその後、死刑制度の存廃を巡る大きな議論
にはつながっていない。このままでいいのか。関係者を訪ね歩き、
考えた》
『●「死刑のスイッチ」を強制する裁判員制度:
「やった人でないと、この苦しみは分からない」』
『●「7人に死刑を執行する前日に乾杯する総理大臣と法務大臣
…これがこの国のグロテスクな現状なのだ」』
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【https://www.tokyo-np.co.jp/article/353090?rct=tokuhou】
こちら特報部
イギリス人が「目を丸くして驚く」制度が日本、北朝鮮、シリアに 知日派大使「いかなる場合も死刑反対」
2024年9月10日 12時00分
「死刑制度を続ける日本は北朝鮮やシリアと同じ」―。英国のジュリア・ロングボトム駐日大使が、日本の死刑制度のあるべき方向性を議論している有識者会議で講演し、日本に向けられている厳しい視線を指摘した。55年前に死刑を廃止した英国から日本はどう映るのか。(三宅千智)
◆死刑制度のあるべき方向性を議論する会合で…
発言が出たのは、8月29日に東京都内で開かれた「日本の死刑制度について考える懇話会」(座長=井田良(まこと)中央大大学院教授)。日本弁護士連合会が2月に設置し、法曹関係者や国会議員、学識経験者が参加。10月の提言とりまとめを目指し、犯罪被害者遺族や元法相、元刑務官ら関係者から意見聴取を重ねている。
(法曹関係者や国会議員らが参加した「日本の死刑制度に
ついて考える懇話会」=東京都千代田区で)
その1人がロングボトム氏。1986年に英国外務省に入省し、東京の在日英国大使館では90~93年に二等書記官として、2012~16年に公使として勤務し、21年3月から現職。知日派として知られ、講演は日本語で行った。
◆「日本は親切で民主主義国家」というイメージ裏切る
ロングボトム氏は「残念なことに、死刑存置という観点からみると、日本は中国、北朝鮮、シリア、イランなどの国と同じグループに入ってしまう」と述べた。22年の国連総会で採択された、死刑廃止を視野に執行の停止を求める決議案への対応が根拠という。125カ国が賛成したが、日本や米国、中国、北朝鮮など37カ国は反対した。
「私の英国人の友人は『日本は親切で民主主義の国家』というイメージを持っている。私が『でも、日本には死刑制度が残っている』と話すと、全員が目を丸くして驚く」。ロングボトム氏は明かす。
(駐日英国大使のジュリア・ロングボトム氏=在日英国大使館提供)
英国は1969年に死刑を原則廃止した。第2次世界大戦が命の尊さについて再考する契機になったという。政府が設けた死刑に関する委員会は53年の報告書で「どの殺人が死刑相当で、どの殺人がそうでないかを提示することは不可能」と結論を出した。50年代に誤審事件が起きたこともきっかけとなり、「誤審の危険性」と「死刑の不可逆性」に対する国民の問題意識が高まった。
◆廃止当時、イギリスでも70%が死刑を支持していた
現在は英国で死刑を支持する世論は40%台だが、死刑を廃止した60年代は70%台だった。「死刑廃止後に政治が世論を導き、国民は廃止を支持し続けている。新しい情報や事実に触れると意見が変化するのは当たり前のこと。重要なことは、さまざまな情報を提供し、幅広い議論を起こすことだ」と、死刑廃止に向けた政治のリーダーシップの重要性を訴えた。
一方、日本では死刑制度を容認する声が根強いことを理由に、政府は死刑廃止に消極的だ。内閣府が5年前に行った世論調査で「死刑もやむを得ない」とする割合は80.8%。「廃止すべきだ」は9.0%、「分からない」は10.2%。小泉龍司法相は今年3月の記者会見で、こうした世論調査結果に触れつつ「死刑を廃止することは適当ではない」との見解を示した。
(国会議事堂)
ロングボトム氏は「英国政府はいかなる場合でも死刑には反対の立場だ」と強調。理由として「冤罪(えんざい)の場合は取り返しの付かない事態になる」ことを挙げた。
◆「間違いが起こる可能性を認める国こそ民主的」
日本では80年代に「免田事件」「財田川事件」「松山事件」「島田事件」の四つの死刑事件で再審無罪が確定。66年に静岡県で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)を巡っても、今月26日の再審公判の判決で、無罪を言い渡される公算が大きい。
ロングボトム氏はこれらの事件を引き合いに「間違いが起こる可能性を認める国こそ民主主義的な国だ」と述べ、死刑廃止に向けた議論が進むことに期待を示した。
日本の死刑 殺人、現住建造物等放火などの重大な罪を犯した人に科される刑罰。刑法は、刑事施設内における絞首での執行を定める。刑事訴訟法は、法相の命令から5日以内に検察官や刑事施設長らが立ち会って執行しなければならないとしている。
法務省によると、9日時点で刑事施設に収容中の確定死刑囚は107人。直近の執行は2022年7月26日、東京・秋葉原無差別殺傷事件(08年)の加藤智大死刑囚=当時(39)=で、当時の古川禎久法相が命じた。
最も長く収容されているのは、1966年に福岡市の電器店で店員2人が殺傷された「マルヨ無線事件」で、強盗殺人などの罪で70年に死刑判決が確定した尾田信夫死刑囚(77)。
【関連記事】あなたが死刑判決を決断するかも…「死刑囚の実情、国民へもっと情報出して」元裁判員が法務省に要請
【関連記事】108カ国が廃止した死刑をなぜ日本は続けるのか? 「世界死刑廃止デー」に刑罰の本質から考える
【関連記事】<社説>週のはじめに考える 元死刑囚が語った死刑
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[↑ ※《第三者は捜査機関の者である可能性が極めて高いと思われる》(『報道特集』、2023年03月18日[土])] (2024年09月29日[日])
(東京新聞社説)《16世紀のフランスの思想家・モンテーニュにこんな言葉がある。 <無実者を罰することは、犯罪事実よりも犯罪的である> 捜査にも裁判にも誤りは起こる。無実の人を罰するのは究極の国家犯罪といえる。理不尽な刑事司法とはもう決別すべき時だ》。
償いようのない警察・検察による犯罪…せめて、再審法の改正を、《法規定の不備が救済の障壁になっているのは明白だ。無実の人にとっては「法との闘い」が強いられている。何という非人道的なことか》。
【<社説>袴田さんに無罪判決 再審に道開く法改正こそ】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/356843?rct=editorial)。《静岡県の強盗殺人事件で死刑が確定した袴田巌さんに静岡地裁の再審公判で「無罪」が言い渡された。無実の訴えから半世紀余。早く真に自由の身とするためにも、検察は控訴してはならない。「開かずの扉」と評される再審制度も根本的に問い直すべきだ》。
『●《いまも、死刑囚のまま》な袴田巖さん…《周囲に「自分は23歳だ」と吹聴
…「彼がプロボクサーとしてデビューした年齢…今も闘っているのだ…」》』
『●《袴田巌さん…静岡地裁…無罪(求刑死刑)を言い渡した》…当然の「無罪」
判決が漸く! 検察がこの再審判決に対して控訴するなど許されない!!』
『●再審判決・無罪…《事件当時、東京新聞は、袴田巌さんを犯人とする報道を
しました。袴田さんと家族の人権、名誉を傷つけたことを深くお詫び致します》』
自白偏重、人質司法、そして、あまりに酷い再審制度の不備。再審法改正が絶対に必要。弁護側が求める、権力を使って警察が集めた証拠や調書の開示だけでもすぐに実施すべき。事件発生から、投獄から、死刑判決から、一体何年を要しているのか!
さらには、死刑制度の廃止。例えば、取り返しのつかないことを仕出かしてしまっている飯塚事件。
『●《日本の刑事司法はおそろしいほどに後進的…
代用監獄…人質司法》…さらに、司法取引まで投げ渡す大愚』
『●《えっ、じゃあ日本はフランスより民度が高いの?》(鈴木耕さん)
…金(カネ)色の五つの輪と刑事司法等々』
『●事件から五十七年。無実を訴え続けても、なぜこんなに歳月を費やしたのか。
刑事訴訟法の再審規定(再審法)が大きな欠陥を抱えつつ放置されているからだ』
『●《冤罪を起こしてはならない。再審法の改正が待たれる。杉山さんや桜井
さんらが残した人間の笑い泣き、そして袴田さんの思いを見逃すまい》』
『●再審法の改正を…桐山桂一さん《冤罪ほど人生や人権を踏みにじる不正義
はない。…袴田巌さんの再審が決まった…大崎事件は…冤罪が疑われる》』
『●死刑台からの生還、島田事件・赤堀政夫さん「僕は無罪である以前に無実」
「青春を返してほしい」…そして飯塚事件・久間さんの〝命を返してほしい〟』
『●鹿児島県警、呆れた…《「再審や国賠請求等において、廃棄せずに保管して
いた捜査書類やその写しが組織的にプラスになることはありません!!」…》』
『●再審法改正…《法規定の不備が救済の障壁になっているのは明白だ。無実
人にとっては「法との闘い」が強いられている。何という非人道的なことか》』
《何という非人道的なことか》(桐山桂一さん)。《刑事訴訟法の再審規定(再審法)の改正》が全く進まないニッポン。《台湾では冤罪をなくすために、めざましい改革が進行中》だそうだ。羨ましい限りだ。《日本の司法は中世なみ》《日本の前時代的な刑事司法制度》…何の進歩も無く、《日本の刑事司法のガラパゴス化》(鴨志田祐美さん)。
言うまでもなく袴田冤罪事件、《日本の司法は中世なみ》《日本の前時代的な刑事司法制度》の例ではないか。《残酷で異常な出来事と欧米などでは受け止められている》、《日本でも放置し続けてきた再審法を整備すべきときが来ている。法務・検察はそのことも自覚すべきである》(東京新聞社説)。何十年にも渡って無実の袴田巌さんを牢屋につなぎ、しかも証拠が捏造されていたとまで裁判所が指摘。再審裁判で、「有罪」を主張するのはいったいどういう神経か? しかも、検察は再び死刑を求刑した。なんという冷酷…。(大谷昭宏さん)《この期に及んでなお、「死刑を求刑する」と言い放つ検察官に、いまも背筋が凍りついている》。《いまも、死刑囚のまま》な状況から、漸く解放された袴田巖さん。検察の控訴など、絶対に許されない。一体どこまで人権侵害すれば気が済むのか。控訴によって、さらなる人権侵害は許されない…(東京新聞社説、2023年10月28日)《無実の訴えから半世紀。日本の刑事司法の異様さをも表している。すでに87歳の高齢。残る人生と名誉をこれ以上、検察は奪ってはいけない》。
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【https://www.tokyo-np.co.jp/article/356843?rct=editorial】
<社説>袴田さんに無罪判決 再審に道開く法改正こそ
2024年9月27日 07時32分
静岡県の強盗殺人事件で死刑が確定した袴田巌さんに静岡地裁の再審公判で「無罪」が言い渡された。無実の訴えから半世紀余。早く真に自由の身とするためにも、検察は控訴してはならない。「開かずの扉」と評される再審制度も根本的に問い直すべきだ。
「わが国の刑事裁判はかなり絶望的である」-。1985年に刑事法の大家だった平野龍一・元東京大学長は論文にそう記した。
80年代に死刑囚が相次いで再審無罪となった。免田事件、財田川(さいたがわ)事件、松山事件、島田事件。まさに死刑台からの生還だった。
袴田さんは戦後5例目になる。事件は66年。それから58年もたって、やっと「無罪」の声を聞いた。気の遠くなる歳月を考えても、刑事司法関係者は深刻な人権問題だと受け止めるべきである。
異常な取り調べだった。袴田さんは強く否認したが、連日、平均12時間を超える過酷な調べを受け体調も崩した。取調室で小便もさせられた。拷問に等しい。20日目に「自白」したが、同地裁は再審判決で「自白調書は非人道的な取り調べで獲得されたもので、捏造(ねつぞう)と認められる」と指弾した。
死刑確定の証拠も怪しかった。みそタンクの中から発見された「血痕の付いた5点の衣類」は、確定判決の根拠とされたものの、そもそも事件から約1年2カ月後に見つかったこと自体に不自然さが伴う。血痕に「赤み」が残っていた点も鑑定で「1年以上では赤みは残らない」とされた。
この点についても同地裁は「捜査機関によって血痕を付ける加工がされ、タンク内に隠匿されたものだ」と断罪した。捜査機関が故意に袴田さんを犯人に仕立て上げたのだ。何と恐ろしいことか。
◆3重の不正義を許すな
袴田さんの裁判を見るだけでも、いまだ「絶望的な刑事裁判」が続いているのは明らかだ。
とりわけ無罪までの時間が長すぎる。最高裁は75年、「疑わしきは被告人の利益に」との刑事裁判の原則が再審制度にも適用されるという決定を出した。
この原則に立てば、もっと早く袴田さんに無罪が届けられたはずだ。死刑確定の翌年に第1次の再審請求がされたが、再審が確定するまで実に42年もかかった。
無実の人を罰する不正義。真犯人を取り逃がす不正義。無罪まで長い歳月を要する不正義。冤罪(えんざい)には3重もの不正義がある。これはあまりに絶望的である。
袴田さんの無罪はゴールではなく、刑事訴訟法の再審規定(再審法)を改正するためのスタートの号砲とすべきである。
再審法は約100年前の条文を使って、戦後もずっと放置されてきた。わずか19条しかない。再審法の改正は喫緊の課題である。
例えば無罪にたどり着くまで長い時間を要するのは、再審開始決定に検察官が不服申し立てをできる仕組みがあるからだ。
袴田さんの場合も、2014年に地裁で再審開始決定が出ながら、検察官が即時抗告をしたため、再審開始が確定するまで約9年も経過してしまった。
いったん再審が決まれば、検察官の不服申し立ては禁止する法規定が必要だ。冤罪の被害者は一刻も早く救済すべきなのは当然ではないか。今回の無罪判決についても、検察は控訴せずに無罪を確定させるべきである。
証拠開示の在り方も大きな問題だ。再審については明文の規定が存在せず、裁判所の裁量に委ねられているにすぎない。
「存在しない」と検察側が主張していた「5点の衣類」のネガフィルムが保管されているのが判明したのは14年のことだ。証拠隠しともいえる行為が再審の扉を閉ざしていたに等しい。
このような不正義を防ぐためにも、無罪に結びつく、すべての証拠を検察側に開示させる法規定を設けねばならない。
現在、超党派の国会議員による「再審法改正を早期に実現する議員連盟」ができている。衆参計347人の議員が名前を連ねる。
◆究極の「国家犯罪」犯す
法務省が再審法改正に後ろ向きならば、議員立法で進めてほしい。再審法改正を求める市民集会は19日も都内で開かれた=写真。世論の後押しこそ大事だ。
16世紀のフランスの思想家・モンテーニュにこんな言葉がある。
<無実者を罰することは、犯罪事実よりも犯罪的である>
捜査にも裁判にも誤りは起こる。無実の人を罰するのは究極の国家犯罪といえる。理不尽な刑事司法とはもう決別すべき時だ。
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[↑ 飯塚事件 冤罪で死刑執行「再審請求…08年死刑執行」(朝日新聞 2024年06月3日[月])](2024年06月12日[水])
死刑台からの生還、島田事件・赤堀政夫さん。「僕は無罪である以前に無実」、「名誉を返せ」、「青春を返してほしい」…そして、冤罪で死刑執行されてしまった飯塚事件の久間三千年さんの〝命を返してほしい〟。死刑存置派の皆さん、〝命を返してほしい〟です。
《赤堀さんの『死刑廃止』や『再審法改正』の闘い》、改善の兆しが見えない。(東京新聞社説)《逮捕から釈放まで、免田さんは34年、斎藤さんは29年、谷口さんは34年を要しています。…一家4人殺しの事件で死刑が確定したものの、今秋の判決で、再審無罪が確実視される袴田巌さん(88)…。48年間も獄中にあり、再審開始決定で釈放されてから10年後の今も、なお「被告」の立場の袴田さん》。つまり、《いまも、死刑囚のまま》な袴田巖さん。すぐさま、袴田巌さんに無罪を! マスコミももっと後押しすべきなのではないか。裁判所も自分たちの先輩の誤りを受け入れるべき…『●《読者はこうした報道を何日もシャワーのように浴びた。…裁判官たちも例外では》ない…袴田事件の《冤罪に加担したメディアの責任》』。
東京新聞に【<社説>週のはじめに考える 元死刑囚が語った死刑】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/332452?rct=editorial)によると、《フェルメールの名画「真珠の耳飾りの少女」の複製が掛かるリビングでくつろぐ、元死刑囚の赤堀(あかほり)政夫さん=写真。2010年、取材で名古屋の自宅マンションを訪ねた時の1枚です。今年2月に94歳で世を去りました。真珠の宝石言葉は「無垢(むく)」。「僕は無罪である以前に無実」と繰り返していた赤堀さんの思いが重なります》。
何度でも斎藤貴男さんの衝撃的なルポを。斎藤貴男さんのコラムの一部をもう一度引用したい ―――――― 最「低」裁を頂点とする司法に失望してばかりだが、最近、衝撃を受けたことを再掲。(斎藤貴男さん)《当時、「週刊文春」の記者だった私は、彼を殺人犯に仕立てた連中に、「今のお気持ちは」と尋ねて回る取材を仰せつかったのだが、凄まじい成果を得てしまった。「犯人は梅田だと上が言うから逮捕したまで。証拠なんかねえよ」と、元刑事は笑ったし、元裁判官は、「判決とは国家の意思なんだ。真犯人なんか誰でもいい。裁判所が死刑だと言えば吊るせばいい。無期だと言ったらつなげばいいんだ」と、力説してくれたものである》…。
大川原化工機でっち上げ事件にも、同じ匂いがする。飯塚事件の冤罪死刑にも。
もう一つ、飯塚事件に関する警察の問題。怒りがおさまらないのだけれど…。
『●目隠ししているヨーロッパの法律の女神、一方、ニッポンの法律の女神
は《目隠ししておりません》…冤罪で死刑執行されてしまった飯塚事件』
「《山方泰輔元捜査一課長…「…弁護士は証拠をつくる、うん。
と(いう弁護士)がまだ、おるとかなと思うてですね。ひっくり返す
ためには、新しか証拠をつくらんと、裁判所が、「そげな証拠ある
なら再審もう一ぺんせないかんな」いうようなのを
つくってこないかんですから。…」》…酷い言い分だ。自分たち
捜査側にこそ、でっち上げの恐れを感じている、冤罪者を殺して
しまったのではないかと感じているのではないのか?
《弁護士は証拠をつくる》、あまりに酷い主張ではないか。」
『●飯塚事件再審請求を却下…「女の子を見たのは2月20日ではなく別の日。
当時、捜査員に見ていないと伝えても『いや見たんだ』と押し切られた」』
『●飯塚事件…鈴嶋裁判長《「…覚えているのは不自然」…女性の証言…「捜査
機関が無理に記憶と異なる調書を作成する動機、必要性は見いだせない」》』
(山方泰輔元捜査一課長)《弁護士は証拠をつくる》ではなく、警察や検察は《証拠をつくる》ではないのか。事件をでっち上げた、犯人をでっち上げた、では無いのか? 裁判官は見て見ぬふりをした。
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【https://www.tokyo-np.co.jp/article/332452?rct=editorial】
<社説>週のはじめに考える 元死刑囚が語った死刑
2024年6月9日 07時27分
フェルメールの名画「真珠の耳飾りの少女」の複製が掛かるリビングでくつろぐ、元死刑囚の赤堀(あかほり)政夫さん=写真。2010年、取材で名古屋の自宅マンションを訪ねた時の1枚です。今年2月に94歳で世を去りました。真珠の宝石言葉は「無垢(むく)」。「僕は無罪である以前に無実」と繰り返していた赤堀さんの思いが重なります。
赤堀さんは1954年、静岡県島田市で女児が殺された「島田事件」で死刑が確定したものの、89年に再審無罪で釈放されました。
手にした写真で赤堀さんは、やはり再審無罪で死刑台から生還した「免田事件」の免田栄さん(右)、「松山事件」の斎藤幸夫さん(左)と肩を組んでいます。戦後、再審無罪になった元死刑囚は、「財田川(さいたがわ)事件」の谷口繁義さんを入れて4人。赤堀さんが亡くなり、4人とも不帰の客となりました。
◆無罪の前に「無実」だ
インタビューでの赤堀さんの発言からは、以前から指摘されていた刑事司法や再審制度の問題点がいくつも浮かび上がりました。
まずは、不条理な取り調べ。署長らが想像で事件の順序を書いて読み上げ「その通りにしゃべれ」と命じたそうです。「事件のことなど何も知らない」と言っても聞いてもらえませんでした。
そのくだりでは、普段は柔和な赤堀さんが興奮して猛烈な早口になり「○○が一番悪い。何十年たっても忘れない!」。後でICレコーダーをゆっくりした速度で再生して、やっと、刑事の実名が聞き取れました。
マスコミへの批判も。当時は、任意同行の時点で「犯人捕まる」と写真付きで実名・呼び捨て報道され、逮捕後も取材合戦は過熱。「刑事と記者は仲間だと思っていた」と語気を荒らげていました。
そういえば、福岡県の「飯塚事件」(92年)=先週、再審請求棄却=を追った今年公開の映画「正義の行方」で、同事件で特ダネを連発した新聞記者が、自嘲気味に語っていました。「自分はペンを持ったお巡りさんになっていた」
「当日告知」の問題もしかり、です。再審請求中、赤堀さんが仙台の拘置所にいたある朝、コツコツという靴音の後、独房の扉がガチャリと開きました。刑務官が隣の房と間違えたのだそうですが、死刑執行への“お迎え”と勘違いし、恐怖に打ち震えた赤堀さん。「僕の髪と眉は、1日で真っ白になってしまった」と唇を震わせていました。
大阪地裁が、執行を当日に告知する国の運用は違憲だとする死刑囚2人の訴えを、「運用には一定の合理性がある」として退けたのは、赤堀さんが身罷(みまか)って間もない今年4月。もし存命だったら、この判決に何を語ったでしょう。親族や支援者に会うこともできずに突然執行される仕組みに苦しめられ続けた本人。まして冤罪(えんざい)の当事者なのです。怒りの言葉がほとばしったに違いありません。
インタビュー取材の最後に「長い獄中生活で失ったもの」を尋ねました。「第一に、名誉、です」と赤堀さん。「無罪はもらえたけれど(裁判長らの)謝罪はなかったので」「報道などで、灰色無罪と言われて腹が立った時期もあった。僕は真っ白な無実なのに」
そして、ややあって、少し照れくさそうにこう言いました。「第二に、青春かな」
◆青春を返してほしい
25歳で逮捕され、釈放されたのは35年近くたった59歳の時。再審無罪までの道のりが長過ぎるほど長いのは他の元死刑囚にも共通しています。逮捕から釈放まで、免田さんは34年、斎藤さんは29年、谷口さんは34年を要しています。
今年5月、静岡市で「赤堀政夫さんを偲(しの)ぶ会」が催され、ゆかりのある50人ほどが故人への思いを語り合いました。島田事件対策協議会の長老、鈴木昂(こう)さん(85)は「客観証拠は全くなく、強制された自白だけが根拠の死刑判決でした。赤堀さんの『死刑廃止』や『再審法改正』の闘いを受け継ぎ、未完の宿題を背負いたい」と話します。
鈴木さんは、一家4人殺しの事件で死刑が確定したものの、今秋の判決で、再審無罪が確実視される袴田巌さん(88)の支援団体にも属しています。48年間も獄中にあり、再審開始決定で釈放されてから10年後の今も、なお「被告」の立場の袴田さん。ようやく晴れて「無罪」になる日を待って、きっと泉下の赤堀さんらも首を長くしていることでしょう。
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asahi.comの特集【冤罪で死刑制度は揺らいでいるか』(http://webronza.asahi.com/national/2014072800004.html?iref=comtop_fbox_d2_02)。
「絶えない冤罪で死刑制度は揺らいでいるのか」?・・・・・・死刑制度存置派が驚異の8割を占める我国では、死刑制度は全く揺るがず!? 善良な市民には関係ないとでも?? 裁判員制度で「死刑のスイッチ」を押すハードルが確実に下げられているのでは? ワタシャ、そんなもの押すのは嫌だね。
『●袴田冤罪事件を機に死刑制度の再考ができない我国』
『●試料が無い!! DNA鑑定も杜撰なら、
証拠保全も杜撰 ~冤罪死刑の飯塚事件~』
「法」に則り「粛々」と死刑執行を行っていった谷垣禎一法相は、内閣改造で幹事長へと交代した。さて、松島みどり新法相は?
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【http://webronza.asahi.com/national/2014072800004.html?iref=comtop_fbox_d2_02】
冤罪で死刑制度は揺らいでいるか
(現役のボクシング世界チャンピオンとファイティングポーズを
見せる元プロボクサーの袴田巌さん
=2014年5月19日、東京都文京区)
2014年7月30日
1966年に静岡県の一家4人が殺害された「袴田事件」で死刑が確定した袴田巌さんに3月、静岡地裁が再審開始を認める決定を下し、袴田さんは釈放された。80年代に死刑囚の再審開始が、48年の免田事件、50年の財田川事件、54年の島田事件、55年の松山事件と相次ぎ、社会的に注目を集めた。自白を強要した警察・検察は反省を強く迫られ、物証を重視する捜査を徹底したはずだったが、97年の東電OL殺人事件では無期懲役が確定したネパール人男性がDNA鑑定で無罪になった。郵便不正事件では物証が改ざんされ、遠隔操作ウイルス事件ではIPアドレスのみを証拠にして4人が誤認逮捕された。絶えない冤罪で死刑制度は揺らいでいるのか。
『死刑囚1割無実なら執行一旦停止は7割――治安の世論調査(2014/07/30)』(河合幹雄)【http://astand.asahi.com/magazine/wrnational/2014072300002.html?iref=webronza】
2009年末の内閣府調査によると、死刑を「やむをえない」と容認する者が85.6%と過去最高になったとの報道が2010年2月にマスコミ各紙から流された。これに対しては、質問調査の仕方、報道の仕方の両方に問題があって、さすがに反論も取り上げられた。おそらく日本人は、死刑制度について単純に尋ねれば「どちらかといえば」賛成も含めた賛成が7割台で、明確に賛成する者は4割台と、こちらは過半数を切っている。内閣府の調査でも、「将来も死刑を廃止しない」は6割かつかつであった。
これだけでは状況の判断が正確にできない。2012年の「治安に関する特別世論調査」において、「最近の治安は悪くなったと思う」と、間違って認識しているものが84.3%もいることを重視して、正しい情報が与えられるほどに、死刑の賛成者は減少するという仮説のもと、文科省科学研究費を獲得し6人で共同調査しているところである。「刑罰と犯罪防止――厳罰化と死刑の効果を信じる人々はどうすれば意見を変えるのか」が正式な課題名である。
犯罪者と刑罰について知識と経験が増すほどに、死刑と厳罰化を否定するようになることは経験則的には知られており、既に佐藤舞などの先行研究もある。しかし、犯罪状況、刑罰の抑止効果の測定、犯罪者の境遇などの知識を与えても、死刑制度賛成者の比率は、確かに減少するが半分は切らない。諸外国でも、ほとんどの国で死刑廃止になっているのだが、どの国でも世論調査すれば、存置論がやや優勢である。
討議型の調査も検討する中で、仮説として浮上したのは、人々が死刑制度について考えるとき、極端な凶悪犯の処遇をどうするかということのみを考えており、冤罪の可能性についてはあまり考えていないのではということである。
そこで、今春の全国意識調査で、「仮に、現在の日本の死刑囚の10%(13人)が無実だとわかった場合の死刑執行の存続」について尋ねたところ、7割が「いったんやめる」と回答・・・・・・・・・
『パソコン遠隔操作事件で考えた冤罪と可視化(2014/06/24)』(小俣一平)【http://astand.asahi.com/magazine/wrnational/2014062300002.html?iref=webronza】
パソコン遠隔操作事件で、威力業務妨害などの罪に問われた片山祐輔被告(32)の第11回公判が6月20日、東京地方裁判所(大野勝則裁判長)で行われ、片山被告になりすまされ、遠隔操作をしたとして誤認逮捕された三重県津市の29歳の男性が証人として出廷した。
この中で、被害者の男性は逮捕された際、「認めたほうが早く家に帰れると考えたが、家族の説得で否認を貫いた」と証言した。例え無実の罪で拘束されていても、「罪を認めてしまうかもしれない」人間の弱さをリアルに証言していて、これまでにも多くの罪なき人々が同様にやってもいないにも関わらず、逮捕、起訴されたであろうことを想像させた。
この事件は、インターネットを駆使した21世紀型の特異な犯罪の一つである。「なりすまし」という行為が、パソコン1台あれば簡単にできてしまうことが驚愕をもって受け取られると同時に、「今日は人の身、明日は我が身」であり、「対岸の火事」と眺めていられない戦慄を多くの人たちに与えたことは難くない。だからこそ、片山被告が主張する「私も被害者」はどことなく説得力があったし、冤罪事件で実績のある弁護士もベテランのジャーナリストも彼の言葉に耳を傾けた。その顛末を振り返ってみた。
5月20日、片山被告が、「自分が真犯人だと自供した」と伝えられた直後、編集者から感想を訊ねられた。
「驚きもせず、呆れもせず、笑いもせずっていうところですかね」というのが、口をついた第一声だった。
「驚きもせず」と思ったのは、これまでの新聞・テレビの報道、毎週届く雑誌の特集記事などを読んできて、江ノ島、雲取山と奇妙に一致する偶然や片山被告が勾留されている間は「真犯人」の動きがピタリと止まり、保釈されると動きが出てくる状況に、「被告の抗弁には無理がある」と、人より幾分長く事件記者として過ごしてきた体験から強く感じていた。
それ以上に、4人もの無関係な男性を誤認逮捕し、警察庁長官が謝罪までした、その後の逮捕が同様に誤認であれば、長官はもちろん関係幹部は軒並み辞表モノで、組織第一の警察が絶対的な自信無くして、「5人目の逮捕」という危険な賭けに出るはずもなく、またそんな逮捕を検察が容認するはずもないという発想があった。
もう一つは、東京地検特捜部の検事が投入されことを知り、かつて日本共産党国際部長宅盗聴事件の告発を受けた特捜部が、神奈川県警による組織ぐるみの犯行だと突き止めた実績を思い出したことによる。特捜検事投入は、「乾坤一擲」の勝負だと見定めるのも、かつての “検察担当記者”的発想に他ならないのではあるが。
「呆れもせず」は、表現に気をつければ、「パソコン偏愛者」もひとつ道を踏み外せば、「魔法の箱」を悪用するのだろうという認識が織り込み済みだったからだ。
「笑いもせず」は、片山被告を弁護し続けたジャーナリストたちの存在である。弁護士は、弁護活動の途中で、依頼人が真実を語っていないと思っても、依頼人の不利になる弁護活動をすることは禁じられている。職業上ある種の運命共同体として、擬似当事者となるケースもあるので、それほど驚くべきことではない。
一方、片山被告の”冤罪“を主張してきたジャーナリストたち、あるいはその論調に相乗りしたメディアはどうか。彼らは、結果として、・・・・・・・・・
『少年死刑確定:誰が反省不十分なのか(2012/02/23)』(河合幹雄) 【http://astand.asahi.com/magazine/wrnational/2012022200004.html?iref=webronza】
光市事件少年の死刑が確定した。残念なことに最高裁は是正する勇気がなく、マスコミの反省は不十分である。少年事件や刑事裁判のイロハを勉強していれば、この事件が死刑でないことは常識の部類と考える。この私の意見を聞いて驚いた方が多いのではないかと推察する。それもそのはず、報道された事件と、実際に記録などにあたってみた事件とは、まるで別事件。BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会は、2008年4月15日決定第04号「光市母子殺害事件の差戻控訴審に関する放送についての意見」において報道内容と経緯を詳細に検討したうえで言葉を極めて報道機関を批判した(HPからダウンロードできる)。遺族と加害者の背景を丁寧に記述した門田隆将の『なぜ君は絶望と闘えたのか』も参照して欲しい。いずれにせよ報道ベースで事件を知っているつもりであれこれ考えるのはやめたほうがよい。長々と事件をなぞるわけにもいかないので二点だけポイントを挙げておく。
少年にとって最も重要な体験は、自殺した母親の死体の脇に自分がひとりぼっちで取り残されたことであったろう。殺してしまった母親の脇にとりのこされた赤ん坊によって、同じような状況を、再現してしまった。少年にとって、その赤ん坊は「自分」だったはずである。裁判の事実認定で、発覚を防ぐために赤ん坊を殺したというのは、死刑という結論に無理にもっていくための後付けの理屈のように思える。少年は、何をしているのか自分でわからない状態だったであろう。
第二点。少年の手紙などが公開されているが、非行少年を扱った経験者の共通認識は、次のようなものである。強がる少年は、・・・・・・・・・
『死刑制度を残しつつ執行しないのが理想だ(2011/12/29)』(河合幹雄)【http://astand.asahi.com/magazine/wrnational/2011122800005.html?iref=webronza】
●死刑制度について論じる前に情報の共有を
2011年は死刑執行がゼロとなるようである。国民の合意形成が不十分ななかでの執行停止は正しい判断であろう。なにしろ、日本人が治安の良さを誇っていた1970年代に比較して、現在の殺人事件の死者数は約半分に減少している。それなのに死刑判決が何倍にも増えているのは、国民が治安が悪化したと勘違いさせられているからであろう。議論を開始するに当たって、犯罪状況と死刑執行自体についての正確な情報提供が必要であると考える。
以下、年内執行ゼロの意味から、死刑について一言したい。年内に死刑執行がなく、年末押し迫って執行されることがこれまであった。本年もそう予測していたが、そもそも、これはなぜだろう。年ごとの統計にゼロと出さないというより、昨年は死刑がゼロだったというニュースを出させないためであろう。
だとすれば、これはいわゆる見せしめのための刑罰であろうか。殺人事件を網羅的に検討すれば、殺人犯たちが死刑を恐れて犯罪を思いとどまるなどということは、およそ期待できないことは間違いない。凶悪犯罪の防止という最も大切なはずの目的に役立たないのに、なぜ死刑執行があるのであろうか。
意識調査を検討してみると、犯罪抑止効果がないことは日本国民も理解しているようである。それにもかかわらず、死刑制度は存置しておきたいという結果が出ている。そもそも、日本においては、凶悪事件に遭う心配はしなくてよい。テレビ新聞の報道に惑わされないで考えて見ればわかる。
私は、犯罪状況について講演で話すとき、聴衆にこう聞いてみることがある。
「皆さんの知り合いのなかで、最近何人殺されましたか? 増えていますか?」
会場には笑いがもれる。日本人の多くは、一生のうちに知人が殺人事件で亡くなる話を聞くことはない。凶悪事件も死刑も現実的な事柄ではないのだ。命が大切なら事故や病気に気をつければよいのだ。
では現実の話でなければ何なのか。儀式のような象徴的なものと考えざるを得ない。人々が、死刑に参加したり、執行のされ方を詳しく知ろうとしてこなかったことからみると、刑罰を加えることよりも、それで安心したい欲求が勝っているように思われる。客観的な安全のためには様々な殺人事件について知りたいところだが、実際には、極めて少数で特異な事件について大量の報道がなされる。これは、人々がわかったつもりになりたい欲望に、報道機関が正直に答えているのであろう。
社会学は、刑罰は秩序感を守るためにあると考えてきた。つまり、人々にとって、死刑は、悪事を働けば厳しい刑罰が待っているという象徴なのだ。日本では、これに安心感の回復と付け加えてよいと思う。換言すれば、死刑が廃止されると、なにか怖いのだ。
以上のような状況を前提に、それにマッチングした制度を考えれば、・・・・・・・・・
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ポット出版(http://www.pot.co.jp/)のWPに出ていた及川健二さんの記事【えん罪事件を告発してきた反骨のルポライター・鎌田慧さんが袴田えん罪事件を斬る ~無罪と思いながら死刑判決を下した元裁判官の懺悔~】(http://www.pot.co.jp/oikenparis/kamata.html)。
財田川事件や狭山事件など冤罪事件についてのルポも多い「鎌田さんは静岡地裁で死刑判決を下した熊本典道・元裁判官さんにインタビューしている(『絶望社会 痛憤の現場を歩くⅡ』【金曜日】)。無罪と思いながらなぜ死刑判決を下してしまったのか」?・・・・・・。熊本典道さんの苦しみと、袴田事件についての「一人の人間として勇気をふるった名判決」。そういった判決を出せる裁判官が少なすぎる。
『●袴田事件、そして死刑執行後の『飯塚事件』再審:
司法の良心を示せるか?』
『●袴田事件・釈放!: 「捜査機関が重要な証拠を捏造した疑い」
「拘置の続行は耐え難いほど正義に反する」』
『●袴田事件、48年間のそれぞれの苦難・・・・・・
袴田巌さんと秀子さん、そして、熊本典道さん』
『●袴田冤罪事件を機に死刑制度の再考ができない我国』
『●「疑わしきは罰せず」「疑わしきは被告人の利益に」:
今ごろそれを裁判所に訴えねばならないとは・・・』
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【http://www.pot.co.jp/oikenparis/kamata.html】
及川健二のパリ修行日記
えん罪事件を告発してきた反骨のルポライター・鎌田慧さんが
袴田えん罪事件を斬る
~無罪と思いながら死刑判決を下した元裁判官の懺悔~
『死刑台からの生還―無実!財田川事件の三十三年』、『弘前大学教授夫人殺人事件』、『狭山事件 ― 石川一雄、四十一年目の真実』などの御著書で長年えん罪事件を告発してきたルポライター・鎌田慧さんに2014年4月10日、連合会館(千代田区)にて、France10は袴田えん罪事件について話を伺った。
鎌田さんは静岡地裁で死刑判決を下した熊本典道・元裁判官さんにインタビューしている(『絶望社会 痛憤の現場を歩くⅡ』【金曜日】)。無罪と思いながらなぜ死刑判決を下してしまったのか。
背景にはマスコミ犯罪報道による過剰な圧力があったという。
2007年に熊本さんが真実を明きらかにしたとき、一部メディアは「評議の秘密を暴露するのは裁判所法に違反する」と熊本さんを非難した。
えん罪事件を生み出す警察&検察&マスメディアの負のトライアングルに鎌田慧さんが鋭く切り込む。
●インデックス
「弘前大学教授夫人殺人事件・財田川事件・狭山事件」というえん罪事件を取材してきた(0:30-)
鎌田さんが袴田えん罪事件を取材したキッカケ(1:33-)
袴田巌さんは死刑確定から神・宇宙を口に現実逃避を始めた(2:42-)
静岡地裁で死刑判決を下した熊本典道さんの懺悔(4:29-)
袴田さんの取り調べは「デュープロセス」に反している(5:18-)
無罪判決文を書き始めていた熊本さんへの圧力(6:05-)
冤罪被害者・遺族・裁いた人がみな悲劇(7:30-)
死刑判決を下した熊本さんは裁判官を辞し自殺を模索(8:05-)
2007年に懺悔の告白をした元裁判官をメディアは批判(9:12-)
「財田川事件」矢野伊吉・裁判官や熊本・裁判官は稀(9:42-)
袴田さん釈放の東京地裁・決定は「人間性の声が響いている」(11:15-)
一人の人間として勇気をふるった名判決(12:55-)
砂川事件の名判決に匹敵する(13:45-)
えん罪事件を生む構造は変わっていない(15:00-)
https://www.youtube.com/watch?v=jrx3vepcb7M
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asahi.comの二つの記事【袴田死刑囚の姉ら拘置所到着 「どうしても会いたい」】(http://www.asahi.com/articles/ASG3W552KG3WUTIL01V.html)と、
【袴田巌さん、東京拘置所から釈放 再審開始決定受け】(http://www.asahi.com/articles/ASG3W56BSG3WUTPB019.html?iref=comtop_6_01)。
東京新聞の記事【袴田事件再審決定 「証拠捏造の疑い」】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014032702000264.html)。
asahi.comの社説【死刑囚の再審―過ちはすみやかに正せ】(http://www.asahi.com/paper/editorial.html?iref=comtop_pickup_p)。
東京新聞の社説【袴田事件再審決定 冤罪は国家の犯罪】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014032802000164.html)。
最後に、袴田事件をずっと支援されてきた保坂展人さんのasahi.comのコラム【袴田さん釈放に万感 問われる国の責任】(http://www.asahi.com/and_w/life/SDI2014032835581.html?iref=comtop_fbox_d2_03)。
『●『DAYS JAPAN 2007年12月号』読了 (1/2)』
「森達也氏の本にも出てきた保坂展人氏や亀井静香氏の
「~まだ間に合うのなら⑨~ 死刑大国・日本」。
元ボクサー袴田さんの冤罪の件も。保坂議員のメモから起こした
図が生々しい(森さんの「死刑」にも同様の図有り)。」
『●『創 (12月号)』読了 (2/2)』
『●『冤罪File No.2 (6月号)』読了』
『●『月刊誌3冊』読了(2/4)』
『●『冤罪File(No.06、2009年6月号)』』
『●冤罪事件映画化: 袴田事件』
『●冤罪が増幅されはしまいか?』
『●冤罪によるアリ地獄』
『●名張毒ぶどう酒事件という冤罪』
『●『美談の男』読了』
「『美談の男/冤罪 袴田事件を裁いた元主任裁判官・熊本典道の秘密』、
7月に読了。尾形誠規著。鉄人社。2010年6月刊、第1刷。
本の帯、「私は無罪を確信しながら死刑判決を言い渡した―――。
39年前の過ちを自ら告白した元エリート判事の転落と再生/
酒……家族崩壊……自殺未遂……放浪……そして―――。
逃れたくとも逃れられない袴田事件の呪縛」。
「裁判員制度が始まろうとしているいま、いつ誰が熊本と
同じ立場になってもおかしくない」・・・」
『●『創(2010年7月号)』
『●袴田事件: いい加減に誤まりを認めるべき』
『●『冤罪File(No.10)』読了』
『●冤罪デモ』
『●それは、職業裁判官の怠慢にすぎない』
『●『検察に、殺される』読了』
『●強大な氷山の一角としての冤罪発覚』
『●「前川さんの身になってほしい!」: 「福井事件」という明々白な冤罪』
『●作られた袴田冤罪事件、理不尽極まる漸くの初の証拠開示』
『●死刑という制度: 「吊るせ、吊るせ」の合唱で何か状況は変わるのか?』
『●手遅れ!! ~死刑のスイッチを押すことと死刑執行~』
『●PC遠隔操作冤罪事件: やはり捏造しようとしていないか?』
『●「どうなるのニッポン」『週刊金曜日』
(2013年7月26日、953号)についてのつぶやき』
『●飯塚事件の久間三千年さんと福岡事件の西武雄さん』
『●袴田事件: 静岡地裁は「疑わしきは被告人の利益に」を』
『●「曽野綾子とは何か」 『週刊金曜日』
(2014年1月24日号、976号)についてのつぶやき』
『●袴田事件、そして死刑執行後の『飯塚事件』再審:
司法の良心を示せるか?』
『●袴田事件・釈放!: 「捜査機関が重要な証拠を捏造した疑い」
「拘置の続行は耐え難いほど正義に反する」』
以下は、昨日の「つぶやき」。
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■報道ステーションで袴田さんのインタビュー。思っていたより、遥かにしっっかりとしておられる。実感がわかない印象だ。お姉さんの秀子さんが本当に嬉しそうだ。本当に良かった。いま晩酌をしておられる頃か?(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/049357a4c458aa9a0094191c2b363e56 …)
■報道ステーションでトップニュース。裁判長の言葉「正義に反する」(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/049357a4c458aa9a0094191c2b363e56 …)。証拠の捏造まで厳しく断罪。裁判時に、衣類という証拠の変更を申し立ててまで捏造。熊本典道元裁判長のコメントを聞いてみたい(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/1ce91952c0e77c5dc55b877bf1632238 …)
■意に反して袴田事件の死刑判決を書いた元裁判官・熊本典道さん(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/1ce91952c0e77c5dc55b877bf1632238 …)のインタビュー。贖罪の言葉。熊本さん自身も大変に苦しかった事と思う。また、元刑事のコメントに怒りがわく。何の反省の言葉もないとは
■どう責任をとるつもりか?(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/049357a4c458aa9a0094191c2b363e56) 『袴田さんを祝福、捜査批判』(http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp0-20140327-1276329.html)/「ゴビンダ・プラサド・マイナリさん・・足利事件で再審無罪が確定した菅家利和さん・・名張毒ぶどう酒事件で1972年に死刑が確定し、昨年11月に第8次再審請求を申し立てた奥西勝死刑囚(88)の鈴木泉弁護団長は「私たち弁護団にとって、再審開始決定が出たことは何よりの励ましになる」とコメント」
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東京新聞社説「真犯人を取り逃がした上、ぬれぎぬを着せられた人物の一生を破滅に追い込む」・・・・・・ましてや飯塚事件。既に久間三千年さんは、麻生内閣の森英介法務大臣のゴーサインの下、死刑執行。どう責任をとるのだろうか? 責任など、とれる訳もないのだが・・・・・・。「真犯人を取り逃がした上」、死刑執行・・・・・・暗澹たる思いだ。「冤罪であれば、警察、検察庁、裁判所、すべてが誤りを犯したことになる」、取り返しようのない「不可逆な誤り」である。
最後に、保坂展人さんのコラム。全く同感。「永遠の沈黙」を待つ残酷な司法・・・・・・「捜査をした警察・検察、死刑判決を続けた司法の責任をうやむやにするには、袴田さんの生命が尽きることが、国にとって一番都合がよかったのではないでしょうか。再審の扉を閉じたまま袴田さんが亡くなれば、真相を闇の中へ葬ることができるからです。この間、袴田さんを担当した検察官も裁判官も次々と交代していきました。ただ、時がすぎるのを待っているかのように。しかし、「永遠の沈黙」に陥ることはありませんでした」
『●冤罪死刑囚の死を待ち、責任を逃れようとする冷酷な人々』
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【http://www.asahi.com/articles/ASG3W552KG3WUTIL01V.html】
袴田死刑囚の姉ら拘置所到着 「どうしても会いたい」
2014年3月27日16時26分
静岡地裁の再審開始決定を受け、袴田巌死刑囚(78)の姉ひで子さん(81)が27日午後3時ごろ、支援者らとともに、袴田死刑囚がいる東京・小菅の東京拘置所に到着した。ひで子さんは「ただ、ただ、うれしいだけです。巌の拘置を一日も早く解いてあげたい」と改めて喜びを語った。
袴田元被告は精神を病んでおり、ひで子さんが毎月面会に出向いても、会えない状態が3年半続いている。ひで子さんは「いつもなら、会いたくないと言われたらすぐに帰るんですが、今日はどうしても会いたい。いい知らせがあるからどうしても出てこいと言って、頑張るつもりです」と話した。
最初にかけてあげたい言葉は何かと聞かれると、「本人が分からなくても、『元気か?再審開始になった』と言ってみようと思います」と答えた。
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【http://www.asahi.com/articles/ASG3W56BSG3WUTPB019.html?iref=comtop_6_01】
袴田巌さん、東京拘置所から釈放 再審開始決定受け
2014年3月27日17時26分
静岡地裁の再審開始決定を受け、袴田巌死刑囚(78)が27日午後5時20分すぎ、東京・小菅の東京拘置所から釈放された。逮捕から48年ぶり。姉ひで子さん(81)らと一緒に車に乗り、拘置所を出た。
支援者によると、袴田元被告には決定文を見せて再審開始について伝えたが、「ウソだ」と信じられない様子だったという。
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【http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014032702000264.html】
袴田事件再審決定 「証拠捏造の疑い」
2014年3月27日 夕刊
静岡県清水市(現静岡市清水区)で一九六六年にみそ製造会社の専務一家四人が殺害された袴田事件の第二次再審請求で、静岡地裁は二十七日、強盗殺人罪などで死刑判決が確定した袴田巌(はかまだいわお)元被告(78)の再審開始と刑の執行、拘置の停止を決定した。村山浩昭裁判長は、確定判決で犯行時の着衣と認定された「五点の衣類」について「後日捏造(ねつぞう)された疑いがある」と結論付けた。事件発生から約四十八年、死刑確定から約三十四年で裁判がやり直され、死刑判決が取り消される可能性がある。
法務省によると、死刑囚の再審が決定したケースで、拘置の執行停止が認められたのは初めて。死刑囚の再審開始決定は財田川、免田、松山、島田と、後に決定が取り消された名張毒ぶどう酒事件に続き戦後六例目で九年ぶり。名張以外の四人は再審無罪となった。静岡地検が即時抗告すれば、再審を認めるか否かの判断は東京高裁に委ねられる。弁護団は即時抗告しないよう地検に申し入れた。
第二次請求審の最大の争点は、五点の衣類が袴田元被告のものかどうかだった。検察、弁護側双方の推薦した専門家二人がDNA型鑑定を実施。ともに、白半袖シャツの右肩の血痕が袴田元被告のDNA型と完全には一致しないとの見解を示した。弁護団が「五点の衣類は何者かが捏造した証拠」とした一方、検察側は「試料が古く、信用性が低い」と主張してきた。
決定は、鑑定から「五点の衣類の血痕は、袴田元被告のものでも犯行着衣でもない可能性が相当程度認められる」と指摘。鑑定結果は「無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たる」と判断した。
五点の衣類は事件から一年二カ月後、同社のみそタンク内から見つかった。決定は「実験結果からみても、衣類の染まり具合はみその色に比べて薄く、血痕の赤みも強すぎる。長時間みその中に隠されていたにしては不自然」と指摘。
弁護側は、衣類のうちズボンはサイズが合わず袴田元被告のものでもないと主張。決定は確定判決の認定を否定し「ズボンが袴田元被告のものではなかったとの疑いに整合する」と認定した。
再審開始決定を受け、袴田元被告の姉の秀子さん(81)は二十七日午後、東京拘置所へ面会に向かう。
<静岡地検・西谷隆次席検事> 予想外の決定であり、本庁の主張が認められなかったのは、誠に遺憾。上級庁と協議し、速やかに対応したい。
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【http://www.asahi.com/paper/editorial.html?iref=comtop_pickup_p】
死刑囚の再審―過ちはすみやかに正せ
2014年3月28日(金)付
無実の人を罪におとし、長年にわたり、死刑台の縁に立たせる。許されないことが起きたおそれが強い。
静岡県で48年前、一家4人が殺害された。犯人として死刑を宣告された袴田巌さんの再審の開始を静岡地裁が決定した。
検察側は抗告によって手続きを長引かせるべきではない。すみやかに再審すべきである。
80年代、免田栄さんら死刑が確定した4人が相次いで再審で無罪になった。自白の強要、とりわけ死刑の取り返しのつかなさを考えさせたはずだった。
袴田さんの死刑確定や第1次再審請求審はそうした動きと並行していたのだが、判決は今日まで維持されている。あの教訓ははたして生かされたのか。司法界は猛省せねばなるまい。
今回の決定が特に重いのは、袴田さん有罪の重要証拠で、犯行時に着ていたとされた衣服5点について、捜査機関が捏造(ねつぞう)した疑いがあるとさえ言及していることだ。
死刑を決定づけた証拠がでっち上げだったとしたら、かつてない深刻な事態である。
捜査・検察当局に求められるのは、この指摘を真摯(しんし)に受けとめ、何が起きたのか徹底調査することではないか。
袴田さんは78歳。いつ執行されるか分からない死刑の恐怖と向き合う拘置所暮らしで精神の病が進み、姉や弁護人による面会でさえ難しくなった。
死刑の確定から34年である。むだにしていい時間はない。
再審を開くかどうかの判断にここまで時間を要している裁判のあり方も検討すべきだ。
衣服の血痕に用いたDNA鑑定の新しい技術が今回の決定を後押ししたのは確かだろう。ただし、衣服は一審が始まった後に現場近くで突然見つかったとされ、その不自然さのほか、袴田さんには小さすぎる問題などがかねて指摘されていた。
「疑わしきは被告人の利益に」の理念は尊重されていたのか、問い直すべきだ。
27年かかって棄却に終わった第1次再審請求審と比べ、第2次審では証拠の開示が大きく進んだ。裁判所が検察に強く促した結果、当初は調べられていなかった証拠が多く出された。
袴田さんに有利なのに、弁護側が存在さえ知らなかった証言もあった。それもなぜ、もっと早くできなかったのか、と思わざるをえない。
今回の再審開始決定は、釈放にもあえて踏み込んだ。裁判長が、これ以上の拘束は「耐え難いほど正義に反する」とまで断じた意味はあまりに重い。
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【http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014032802000164.html】
【社説】
袴田事件再審決定 冤罪は国家の犯罪
2014年3月28日
裁判所が自ら言及した通り、「耐え難いほど正義に反する状況」である。捏造(ねつぞう)された証拠で死刑判決が確定したのか。速やかに裁判をやり直すべきだ。
事件発生から一年二カ月後に工場のみそタンクから見つかった血痕の付いた衣類五点は、確定判決が、袴田巌さんを犯人と認定する上で最も重視した証拠だった。
その衣類について、今回の静岡地裁決定は「後日捏造された疑いがある」と述べた。
検察庁も裁判所も証拠の捏造を見抜けないまま死刑を宣告していたのであろうか。
◆「こちらが犯行着衣」
絶対にあってはならないことであるが、死刑を言い渡した当の裁判所が、その疑いが極めて高くなったと認めたのである。ただならぬ事態と言わざるを得ない。
そもそも、起訴の段階で犯行着衣とされたのは、血痕と油の付着したパジャマだった。
ところが、一審公判の中でパジャマに関する鑑定の信用性に疑いがもたれるや、問題の衣類五点がみそタンクの中から突然見つかり、検察官は「こちらが真の犯行着衣である」と主張を変更した。
袴田さんは、公判では起訴内容を否認したが、捜査段階で四十五通の自白調書が作られていた。毎日十二時間以上に及んだという厳しい取り調べの末に追い込まれた自白で、その内容は、日替わりで変遷していた。
一審判決は、そのうち四十四通を、信用性も任意性もないとして証拠から排斥したが、残り一通の検察官作成の自白調書だけを証拠として採用し、問題の衣類五点を犯行着衣と認定して死刑を言い渡した。判決はそのまま高裁、最高裁を経て一九八〇年に確定した。この間、どれほどの吟味がなされたのか。
この確定判決をおかしいと考えていたのは、再審を請求した弁護側だけではなかった。
◆新証拠の開示が鍵に
一審で死刑判決を書いた元裁判官の熊本典道さん(76)は二〇〇七年、「自白に疑問を抱き無罪を主張したが、裁判官三人の合議で死刑が決まった」と告白している。
「評議の秘密」を破ることは裁判官の職業倫理に反する暴挙だと批判されたが、この一件で、袴田事件に対する市民の疑念も決定的に深まったのではないか。
第二次再審請求審では、弁護団の開示請求を受けて、裁判所が検察側に幾度も証拠開示を勧告。静岡地検は、これまで法廷に提出していなかった五点の衣類の発見時のカラー写真、その衣類のズボンを販売した会社の役員の供述調書、取り調べの録音テープなど六百点の新証拠を開示した。その一部が再審の扉を開く鍵になった。
これまでの再審請求事件では、捜査当局が集めた証拠の開示、非開示は検察の判断に委ねられたままで、言い換えれば、検察側は自分たちに都合のよい証拠しか出してこなかったともいえる。弁護側から見れば、隠されたことと同じだ。今回の請求審では、証拠開示の重要性があらためて証明されたといっていい。
そもそもが、公権力が公費を使って集めた証拠である。真相解明には、検察側の手持ち証拠が全面開示されてしかるべきだろう。
柔道二段で体格もよい被害者を襲う腕力があるのは、元プロボクサーの彼以外にない…。従業員だから給料支給日で現金があることを知っている…。袴田さんは、いわゆる見込み捜査で犯人に仕立てられた。一カ月余り尾行され、逮捕後は、時に水も与えられない取り調べで「自白」に追い込まれる。典型的な冤罪(えんざい)の構図である。無理な捜査は証拠捏造につながりやすい。
冤罪であれば、警察、検察庁、裁判所、すべてが誤りを犯したことになる。真犯人を取り逃がした上、ぬれぎぬを着せられた人物の一生を破滅に追い込む。被害者側は真相を知り得ない。冤罪とは国家の犯罪である。
市民の常識、良識を事実認定や量刑に反映させる裁判員裁判の時代にある。誤判につながるような制度の欠陥、弱点は皆無にする必要がある。
◆検察は即時抗告やめよ
司法の判断が二転三転した名張毒ぶどう酒事件を含め、日弁連が再審請求を支援している重要事件だけでも袴田事件以外に八件。証拠開示を徹底するなら、有罪認定が揺らぐケースはほかにもあるのではないか。
冤罪は、古い事件に限らない。今も起きうることは、やはり証拠捏造が明らかになった村木厚子さんの事件などが示している。
袴田さんの拘置停止にまで踏み込んだ今決定は、地裁が無罪を確信したことを意味している。
検察は即時抗告することなく、速やかに再審は開始されるべきである。
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袴田さん釈放に万感 問われる国の責任
<太陽のまちから> 特別寄稿
保坂展人
2014年3月28日
無実の死刑囚として拘置されていた元プロボクサーの袴田巌さん(78)が、48年ぶりに釈放されました。3月27日午後5時、東京拘置所から出てくる映像を見て、万感こみあげるものがありました。
私が袴田さんの置かれている立場を知ったのは、衆議院法務委員会に属して活動していた1998年のことでした。人権問題をたびたび法務委員会で取り上げていることを知って、姉のひで子さんが支援者の方々と議員会館に訪ねてこられたのです。
当時、すでに30年を超える長期の拘置が続き、しかも確定死刑囚として20年あまりも「死刑執行の恐怖」にさらされていた袴田さんは次第に心の変調をきたすようになっていました。90年代半ばには、弟の無実を信じて励ましてきた唯一の理解者であるひで子さんの面会も拒絶するようになった、と聞きました。
私の仕事は、拘置所での袴田さんの身体や精神の状況をできるだけ詳細に聞き取り、ひで子さんや弁護団、支援者に伝えることでした。袴田さんは裁判の中で、「神さま―。僕は犯人ではありません。僕は毎日叫んでいます」(母親にあてた手紙)などと大量の手紙を記して、無実を訴えていました。司法の場で自らの潔白が証明されることを信じていたのです。
ところが、68年、静岡地裁で死刑判決。76年、東京高裁で控訴棄却、80年に最高裁で上告が棄却され、死刑が確定します。
しかし、一審で死刑判決を出した静岡地裁は、警察・検察による連日12時間に及ぶ取り調べによって作成された45通の供述調書のうち、じつに44通を「違法な取り調べ」によるものとして棄却しました。長時間にわたり自白を迫る強引な調書作成過程の信用性を認めませんでした。それでも、残る1通を採用して死刑判決を出したのです。
94年、一縷の望みをかけた再審請求が静岡地裁で棄却されると、袴田さんは裁判関係書類の差し入れを拒否し、弁護士とも面会しなくなりました。
誰とも会わなくなって3年半以上続いた袴田さんの様子をみるために、私は半年ががりで法務省矯正局と交渉して、東京拘置所での面会にこぎつけました。2003年3月10日、私は姉のひで子さんと弁護士と一緒に袴田さんと会い、言葉をかわしました。
しかし、袴田さんは、空想の世界の住人になっていました。このときの様子は、「塀の中に閉じ込められた『秘密』の闇」として、このコラム(2013年11月19日)で触れましたが、あらためて記します。
保坂 「元気ですか」
袴田 「元気ですよ」
保坂 「今日はあなたの誕生日ですが、分かります? 67歳ですね」
袴田 「そんなことを言われても困るんだよ。もういないんだから、ムゲンサイサイネンゲツ(無限歳歳年月?)歳はない。地球がないときに生まれてきた。地球を作った人……」
保坂 「ご両親についてお話したい」
袴田 「困るんだなー。全てに勝利したんだから」
「無罪で勝利した。袴田巌の名において……」
「神の国の儀式があって、袴田巌は勝った。日本国家に対して5億円の損害賠償を取って……」
保坂 「5億円はどうしたんですか」
袴田 「神の国で使っている」
保坂 「袴田巌さんはどこに行ったのですか?」
袴田 「袴田巌は、智恵の一つ。私が中心になった。昨年儀式があった」
長年の拘置によって精神に変調をきたす拘禁反応が強く出ていて、すぐにでも治療が必要な状態でしたが、何の治療もなされませんでした。
07年、私は、国会内に、ひとりの法律家を招いた勉強会をセットしました。一審の死刑判決に関与したことを悔いて、号泣しながら袴田さんに謝罪した元裁判官の熊本典道さん。多数のメディアの前で、「自分は無罪を確信していたが、他のふたりの裁判官に押し切られて死刑判決を書いてしまった。悔やんでも悔やみきれない」と告白したのです。
再審への期待が高まったのは、いまから10年も前のことでした。
04年8月。四谷の中華料理店で私はひで子さんや弁護士の皆さんと、東京拘置所にいる袴田さんに、どのように「再審開始」という朗報を伝えるかの案を練っていました。東京高裁に対する期待は大きく、「きっと始まる、大丈夫だ」という声がありました。しかし、東京高裁は再審を求める訴え(即時抗告)を棄却しました。
それでも、ひで子さんをはじめ、支援者も弁護団もあきらめませんでした。ボクシング界からも支援の輪は広がりました。私が09年に国会を去った後も、袴田さんを支援する国会議員連盟がつくられました。ただ、弁護士をはじめ熱心な支援者のなかにはすでに他界された方もいます。
思い出すのは、無実を訴えながら03年に獄中で亡くなった波崎事件の冨山常喜さん(享年86)のことです。
亡くなる半年前、私は東京拘置所と交渉して、所内にある集中治療室で民間の医師の立ち会いのもとに冨山さんの健康状態をチェックする機会を設けました。
「このままじゃ死ねないよ。無実を認めてもらわないと」
病床の冨山さんはそうつぶやきました。人工透析と中心静脈栄養のチューブがつながっている状態を見て、医師は言いました。
「このままでは、必ず感染症で亡くなります。うちの病院でリハビリをしましょう」
しかし、その提案は認められませんでした。そして、医師の言葉通り、冨山さんは半年後、感染症のため息を引き取りました。
それだけに、48年という歳月をへて、袴田さんが生きて東京拘置所を出ることができたことは幸いです。
この間に、ずさんな捜査による冤罪(えんざい)である、との認識は広がっていました。再審開始決定を下した静岡地裁が今回、「証拠の捏造」と断罪するよりはるか前に、冤罪を訴える元プロボクサー「Hakamada」の名は世界に知れ渡り、EU各国の大使館をはじめ注目を集めていました。そのため、袴田さんに死刑が執行される可能性はありませんでした。
そうしたなか、捜査をした警察・検察、死刑判決を続けた司法の責任をうやむやにするには、袴田さんの生命が尽きることが、国にとって一番都合がよかったのではないでしょうか。再審の扉を閉じたまま袴田さんが亡くなれば、真相を闇の中へ葬ることができるからです。この間、袴田さんを担当した検察官も裁判官も次々と交代していきました。ただ、時がすぎるのを待っているかのように。
しかし、「永遠の沈黙」に陥ることはありませんでした。私は袴田さんが生還した喜びをかみしめながら、この不条理を半世紀続けた国家の責任を強く問うべきだと考えています。
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東京新聞の記事【袴田事件の再審開始決定 静岡地裁「無罪の可能性」】(http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014032701000806.html)。
asahi.comの二つの記事【袴田事件の再審開始決定、釈放へ 証拠「捏造の疑い」】(http://www.asahi.com/articles/ASG3K6R2XG3KUTPB01C.html?iref=comtop_6_01)と、
【無実の叫び48年、支え続けた姉「うれしい」 袴田事件』(http://www.asahi.com/articles/ASG3T5QVHG3TUTPB015.html?iref=comtop_6_02)。
出張先で知った衝撃的なニュース。素晴らしい判断、画期的な判決である(当然の判断で、あまりに遅い)。しかも、釈放である。「村山浩昭裁判長は、犯人が事件時に着ていたとされる「5点の衣類」に付いた血液のDNA型が袴田元被告とは一致しないとする鑑定結果を認定。衣類は「無罪を言い渡すべき明らかな証拠に該当する」と判断」「村山浩昭裁判長・・は「捜査機関が重要な証拠を捏造(ねつぞう)した疑いがあり、犯人と認めるには合理的疑いが残る」と判断。「拘置の続行は耐え難いほど正義に反する」と刑の執行停止(釈放)も決めた」。「犬」や「ヒラメ」でないことが証明。
「無実の叫びが半世紀を経て、ようやく司法に届いた。事件から48年、確定死刑囚となってから33年。27日、静岡地裁が袴田巌(いわお)死刑囚(78)の再審開始を決定した。支援を続けてきた姉は支援者と抱き合い、喜びを分かち合った。だが、死刑囚本人は、その意味を理解できるのかすらわからない」・・・・・・取り返しのつかない48年。死刑囚として精神的に大変な苦痛だったはずであり、これまで袴田事件に関わった警察、検察、裁判所はどう対処する心算だろうか? 「だが死刑囚は長い拘置所生活で精神を病んでおり、その意味を理解できるのかすらわからない」・・・・・・なんて残酷なんだろう・・・・・・激しい怒りがわいてくる。足利事件の菅家さんの怒りのコメントと『噂の真相』で有名な宗像紀夫元検事の司法擁護コメントが対照的で、後者のコメントに心底呆れた。
次は飯塚事件、こちらは既に死刑執行・・・・・・。
『●袴田事件、そして死刑執行後の『飯塚事件』再審
司法の良心を示せるか?』
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【http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014032701000806.html】
袴田事件の再審開始決定 静岡地裁「無罪の可能性」
2014年3月27日 13時13分
(袴田事件で再審を認める決定が出され、喜びを語る袴田巌元被告の
姉秀子さん=27日午前、静岡地裁前
1966年6月に静岡県清水市(現静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして、80年に死刑が確定した元プロボクサー袴田巌元被告(78)=東京拘置所収監中=の第2次再審請求審で、静岡地裁は27日、裁判のやり直しを決定するとともに、死刑の執行を停止、元被告の釈放を認めた。
法務省によると、死刑囚の再審開始決定で、拘置の執行停止が認められたのは初めて。 村山浩昭裁判長は、犯人が事件時に着ていたとされる「5点の衣類」に付いた血液のDNA型が袴田元被告とは一致しないとする鑑定結果を認定。衣類は「無罪を言い渡すべき明らかな証拠に該当する」と判断した。
(共同)
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【http://www.asahi.com/articles/ASG3K6R2XG3KUTPB01C.html?iref=comtop_6_01】
袴田事件の再審開始決定、釈放へ 証拠「捏造の疑い」
2014年3月27日10時55分
(再審開始が決まり、感想を述べる姉の袴田ひで子さん。
左は西嶋勝彦弁護団長=27日午前10時3分、静岡市葵区、
山本壮一郎撮影)
1966年に静岡県の一家4人が殺害、放火された「袴田事件」で死刑が確定した元プロボクサー袴田巌(いわお)死刑囚(78)=東京拘置所在監=の第2次再審請求審で、静岡地裁(村山浩昭裁判長)は27日、再審開始を認める決定をした。村山裁判長は「捜査機関が重要な証拠を捏造(ねつぞう)した疑いがあり、犯人と認めるには合理的疑いが残る」と判断。「拘置の続行は耐え難いほど正義に反する」と刑の執行停止(釈放)も決めた。
死刑囚の再審開始決定は免田、財田川、松山、島田の無罪確定4事件と、後に覆された2005年の名張毒ブドウ酒事件の名古屋高裁決定に次いで6件目。
静岡地検の西谷隆次席検事は「予想外の決定。上級庁と協議して速やかに対応する」と語った。刑の執行停止に対しては即日、不服申し立てをする方針。再審開始の判断については、不服申し立てを28日以降に行う方向とみられる。
事件は66年6月30日に発生。同年8月、みそ工場従業員だった袴田元被告が強盗殺人や放火などの容疑で逮捕され、捜査段階で犯行を認める自白調書が作られたが、公判では一貫して否認。静岡地裁は68年9月、自白調書1通と間接証拠から元被告の犯行と断定して死刑を宣告し、80年11月に最高裁で確定した。
08年4月に始まった第2次再審請求の最大の争点は、犯行時の着衣の一つとされる白半袖シャツに付いていた血痕のDNA型鑑定だった。確定判決は、シャツの右肩についた血痕の血液型が同じB型だとして、元被告のものと認定。第1次再審請求でもDNA型鑑定が行われたが、「鑑定不能」だった。
第2次請求で再鑑定された結果、検察、弁護側双方の鑑定ともシャツの血と元被告のDNA型が「一致しない」とする結果が出た。検察側は「鑑定したDNAが劣化しており、汚染された可能性がある」と主張。弁護側と鑑定結果の信用性を巡って争っていた。
この日の静岡地裁決定は弁護側鑑定について、「検査方法に再現性もあり、より信頼性の高い方法を用いている」と指摘。「検察側主張によっても信用性は失われない」と判断した。そのうえで、犯行時に元被告が着ていたとされる着衣は「後日捏造された疑いがぬぐえない」と指摘。DNA型鑑定の証拠が過去の裁判で提出されていれば、「死刑囚が有罪との判断に到達しなかった」と述べ、刑事訴訟法上の「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」にあたると結論づけた。
さらに「捏造された疑いがある重要な証拠で有罪とされ、極めて長期間死刑の恐怖の下で身柄拘束されてきた」として、「再審を開始する以上、死刑の執行停止は当然」とも指摘した。
事件では起訴から1年後の一審公判中、現場近くのみそ工場のタンクから血染めの白半袖シャツやズボンなどが見つかり、検察側は犯行時の着衣を、パジャマから変更。静岡地裁判決は自白偏重の捜査を批判し、45通のうち44通の自白調書を違法な取り調べによるものとして証拠排除したが、5点の衣類を始めとする間接証拠類と自白調書1通で、死刑を選択した。
◇
〈袴田事件〉 1966年6月30日未明、静岡県清水市(現・静岡市清水区)のみそ製造会社専務(当時41)宅から出火。焼け跡から専務、妻(同39)、次女(同17)、長男(同14)の遺体が見つかった。全員、胸や背中に多数の刺し傷があった。県警は同年8月、従業員の袴田巌元被告(同30)を強盗殺人などの疑いで逮捕。一審で死刑判決を書いた熊本典道・元裁判官は2007年、「捜査段階での自白に疑問を抱き、無罪を主張したが、裁判官3人の合議で死刑が決まった」と評議の経緯を明かし、再審開始を求めていた。
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【http://www.asahi.com/articles/ASG3T5QVHG3TUTPB015.html?iref=comtop_6_02】
無実の叫び48年、支え続けた姉「うれしい」 袴田事件
2014年3月27日12時43分
(再審開始が決まり、会見で喜ぶ姉の袴田ひで子さん=
27日午前11時33分、静岡市葵区、福留庸友撮影)
無実の叫びが半世紀を経て、ようやく司法に届いた。事件から48年、確定死刑囚となってから33年。27日、静岡地裁が袴田巌(いわお)死刑囚(78)の再審開始を決定した。支援を続けてきた姉は支援者と抱き合い、喜びを分かち合った。だが死刑囚は長い拘置所生活で精神を病んでおり、その意味を理解できるのかすらわからない。
再審開始の知らせを手に静岡地裁を出た袴田巌元被告の姉、ひで子さん(81)は、笑顔でくしゃくしゃになっていた。「うれしい。それだけです」。目には涙が浮かんでいた。
弟を支えるため、一身を捧げてきた48年だった。
・・・・・・・・・。
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西日本新聞の記事【「えん罪の実例知って」 玉名市で再審無罪の米国人講演 [熊本県]】(http://www.nishinippon.co.jp/nnp/kumamoto/article/47235)。
『●冤罪死刑囚の死を待ち、責任を逃れようとする冷酷な人々』
『●血の通わぬ冷たい国の冷たい司法: 「奥西勝死刑囚(87)・・・・・・死刑囚の心の叫び」は届かず』
名張毒ぶどう酒事件の奥西勝さん・・・・・・冷たい国の冷たい司法は・・・・・・。
飯塚事件の久間三千年さんと同様、冤罪で死刑にされてしまった福岡事件の西武雄さん。取り返し様のないことを司法はしてしまったのではないか?
『●『冤罪File(2010年3月号)』読了』
「2008年10月28日、無実を訴えながら死刑執行された
久間三千年(くまみちとし)さんに対する「殺人問題」、
取り返しのつかない、その手遅れな再審にも重大な影響」
「池添徳明氏「コラム/「福岡事件」題材に裁判員裁判劇/
関東学院大生ら無罪評決」(pp。68-69)。博多駅近く。
一審段階で戦後初めて死刑判決が言い渡された事件。
射殺を認めた石井氏は1975年に恩赦で無期懲役に減刑、その後、
仮釈放。西武雄さんは「一貫して容疑を否認し無罪を主張したが、
石井さんに恩赦減刑の決定が伝えられた同じ日に、
死刑が執行された」。熊本県玉名市の生命山シュバイツァー寺、
古川龍樹代表」
『●それは、職業裁判官の怠慢にすぎない』
「免田事件や財田川事件、狭山事件、片岡晴彦さんの高知白バイ事件、
布川事件、氷見事件、袴田事件、名張毒ぶどう酒事件、足利事件、
三井環さんの事件、毒カレー事件など職業裁判官の怠慢の例は
数え上げたらきりがありません。ましてや、福岡事件の西武雄さんや
飯塚事件の久間三千年さんといった無罪な人を死刑・私刑にして
しまった可能性(控え目に表現しています)さえあります。村木厚子さんや
志布志事件の裁判結果などは極々稀な例です」
『●東電OL殺人事件元被告マイナリさん、冤罪15年間への償いはできるのか?』
「▼〈叫びたし寒満月(かんまんげつ)の割れるほど〉の一句を思い出す。
無実を訴えながら死刑を執行された西武雄さんが獄中で詠んだ」
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【http://www.nishinippon.co.jp/nnp/kumamoto/article/47235】
「えん罪の実例知って」 玉名市で再審無罪の米国人講演 [熊本県]
2013年10月20日(最終更新 2013年10月20日 00時07分)
福岡市で1947年に2人が殺害された「福岡事件」の再審を目指す活動を進めている玉名市立願寺の生命山シュバイツァー寺(古川龍樹住職)で19日、誤った刑事裁判や再審制度の問題点について考える講演会があった。米国で殺人罪に問われ再審で無罪になったフェルナンド・バミューデズさんとカーティス・マッカーティさんが、それぞれ体験を語った。
バミューデズさんは、虚偽の目撃証言を基に銃殺事件の被告として有罪判決を受け、2009年に無罪になるまで18年間服役した。講演では「警察や検察は誤りを防げたはずなのに、正しい捜査をしなかった。人間は誤る。無実の人が苦しまないよう、実例を伝えていきたい」と話した。
マッカーティさんは検察官の証拠隠しや虚偽鑑定が証明されて死刑判決が覆り、07年に釈放された。「(誤った判決のため)真犯人が処罰されなければ、被害者がさらに被害を受けたことになる」と訴えた。
=2013/10/20付 西日本新聞朝刊=
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東京新聞の記事(http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012052502000260.html)と社説(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012052602000131.html)。裁判員制度への過剰な期待らしきものがうかがえる点は残念ですが、優れた社説だと思いました。
名張毒ぶどう酒冤罪事件の第7次再審請求差戻審で、またしても、名古屋高裁は開きかけた扉をあっさりと閉じてしまった。本当にまじめに新証拠の審査を行っているのか? 奥西勝死刑囚は無実の罪で囚われ、すでに86歳だそうだ。警察や裁判所の罪を糊塗したままで、冤罪は続いていく。
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【http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012052502000260.html】
名張毒ぶどう酒事件 奥西死刑囚の再審認めず
2012年5月25日 夕刊
三重県名張市で一九六一年、農薬入り白ぶどう酒を飲んだ五人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」の第七次再審請求差し戻し審で、名古屋高裁刑事二部(下山保男裁判長)は二十五日午前、弁護側が提出した新証拠は「毒物がニッカリンTではないことを示すほどの証明力はなく、確定判決に合理的な疑いは生じない」として、検察側の異議を認め、奥西勝死刑囚(86)の再審を開始しないと決定した。いったんは再審を開始すると判断した名古屋高裁刑事一部の決定(二〇〇五年)を取り消した。
今回の決定により、死刑執行の停止は取り消された。弁護団は決定を不服として五日以内に最高裁に特別抗告する。棄却されれば第八次再審請求も検討するが、奥西死刑囚の年齢から今回が事実上「最後の再審請求」と位置付けている。事件発生から五十一年、再審の扉が開かれるのは相当難しくなった。
差し戻し審の争点は、毒物が当初の自白通りニッカリンTか否かだった。高裁はニッカリンTを再製造し、最新機器で鑑定した。
決定は、ニッカリンTなら含まれるはずの副生成物が「エーテル抽出」という工程の後には検出されなかった点を重視した。
弁護側は、エーテル抽出の前段階では、副生成物が検出されたことから「毒物はニッカリンTではなく別の農薬だ。自白が根底から崩れた」と主張していた。しかし、下山裁判長は、飲み残しのぶどう酒から副生成物が出なかったのは、「(水と化学反応する)加水分解の結果、検出されなかった余地がある」とし、検察側の主張通り「毒物がニッカリンTでなかったとまでは言えない」と認めた。
ただ「加水分解した」との理由は、検察側も主張していない。それでも下山裁判長は、当時の鑑定は事件から二日が過ぎ、出るはずの副生成物が加水分解してほとんど残らなかった、と推論した。
奥西死刑囚は逮捕後、全面的に自白を翻したが、下山裁判長は「請求人以外に毒物を混入した者はいないとの判断はいささかも動かず、自白は十分信用できる」と判断した。
刑事裁判の原則「疑わしきは被告人の利益に」が再審にも適用されるべきだとした最高裁「白鳥決定」(一九七五年)以降、死刑囚の再審が開始されたのは財田川、免田、松山、島田事件の四件。開始決定がいったん取り消された免田事件も含め、いずれも再審で無罪となっている。
第七次再審請求は、〇五年に名古屋高裁刑事一部が「ニッカリンTを入れたとの自白の信用性に疑問が残る」として再審開始を決定したが、〇六年に高裁二部が取り消し。最高裁は一〇年に「毒物の審理が尽くされていない」として、高裁に審理を差し戻した。
<名張毒ぶどう酒事件> 三重県名張市葛尾の公民館で1961年3月28日夜、地元の生活改善グループの懇親会で、白ぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡、12人が中毒症状を訴えた。死亡の5人は奥西チエ子(34)、北浦ヤス子(36)、奥西フミ子(30)、新矢好(25)、中島登代子(36)=敬称略、年齢は当時。奥西勝死刑囚は「妻(チエ子)、愛人(北浦)との三角関係を清算しようと、農薬を入れた」と自白し、翌月3日、殺人容疑で逮捕された。その後、否認、自白を繰り返し、公判では完全否認した。
64年の津地裁は無罪、69年の名古屋高裁は死刑。一審無罪から二審の逆転死刑は前例がなかった。72年、最高裁が上告を棄却し、死刑が確定した
確定判決では、奥西死刑囚は公民館で1人になった10分間にぶどう酒のふた(王冠)を歯で開け、茶畑で使うために買ってあった農薬「ニッカリンT」を混入したとされた。
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【http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012052602000131.html】
【社説】
名張毒ぶどう酒事件 再審認めず “疑わしきは罰する”なのか
2012年5月26日
名張毒ぶどう酒事件の再審を認めなかった決定には、深い疑問が残る。証拠を並べてなお分からないのなら、推定無罪の原則に従うべきではないか。
奥西勝死刑囚を最初に裁いたのは津地裁だった。
裁判員になって法廷にのぞんだつもりで証拠を見てみると、こんなふうになる。
◆裁判員の目で見れば
▽ぶどう酒の王冠に付いた歯形は、鑑定では誰のものかはっきり分からない。
▽その王冠自体、事件当時のものとは違うらしい。
▽農薬を混入する機会は、奥西死刑囚以外の人にもあった。
▽「自白」はある。動機は妻と愛人の三角関係を清算するためという(その後、全面否認)。
▽自白にあった、農薬を入れてきた竹筒は見つかっていない。
証拠をこうしてずらりと並べてみると、裁判員はその中身の乏しさ、あいまいさに、もちろん気づくだろう。
いくら、捜査段階の詳細な「自白」があろうとも、有罪にはできまい。
合理性をもって、彼以外に真犯人はありえないとは言えない。ましてや、死刑事件でもある。一審の津地裁は、当然ながら無罪判決を下した。
捜査が甘かったのである。当時は、まだ自白が「証拠の女王」などと呼ばれていた。自白は極めて重視されていた。
だが、二審の名古屋高裁は一転、有罪とした。王冠について新たな鑑定をしたが決定的な知見はなく、一審とほぼ同じ証拠を見て、有罪とした。
迷走の始まりである。
死刑囚は判決の前の日、前祝いの赤飯を食べた。家庭で最後に口にした母親の手料理となった。
死刑囚はひとりぼっちで再審の請求を繰り返した。途中からは弁護団もでき、七度目に名古屋高裁は再審の開始を認めた。
毒物について、自供したニッカリンTではなかった疑いがあるとした。何と、凶器が違っていたかもしれない、ということだ。
裁判を見直す大きなチャンスだった。しかし、扉はまた閉じられた。同じ高裁の別の部が、同じ証拠を見て検察の異議を認めた。
◆冤罪生む自白の偏重
事件から四十六年もたって、裁判は最高裁にもちこまれた。だが自ら判断せず、農薬について「科学的な検討をしたとはいえない」と言って、高裁にさし戻した。
そして、再審を開始しないという昨日の決定となる。「毒物はニッカリンTでなかったとまでは言えない」とし、検察の主張を支持した。
死刑判決以降の裁判を振り返ると、検察側の物証を弁護側が何度崩そうとしても、裁判所は結局、有罪としてきた。頼りにしたのは、いつも「自白」である。
だが、自白の偏重が数々の冤罪(えんざい)を生んできたのは、苦い歴史の教えるところだ。
刑事裁判では、検察が有罪を証明できないかぎり、無罪となる。裁く立場からみれば、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則である。
昨日の高裁の決定は、弁護側が出した証拠では検察の主張を崩せないという論法である。検察が主張していないことまで裁判官が推論し、有罪とする根拠を補強している。
これでは、まるで「疑わしきは罰する」になってはいないか。
最高裁は再審でも「疑わしきは被告人の利益に」の原則があてはまると言っている(白鳥決定)。それなのに、反対の考え方で再審の扉を閉ざしたように映る。
裁判員裁判の時代である。取り調べの可視化や、全面的な証拠の開示の必要性が叫ばれている。それは、これまでの誤った裁判の反省から出ているものである。
今回の決定は、そうした時代の要請に逆行している。毒ぶどう酒事件から半世紀余。「自白」の偏重は一体いつまで続くのか。今の基準で考え直せないか。
弁護団は特別抗告する。最高裁は今度こそ自判すべきである。
死刑囚は八十六歳。冤罪が強く疑われた帝銀事件の平沢貞通画伯のように、獄中死させることがあってはならない。
◆司法も裁かれている
私たちメディアも反省すべきことがある。自白偏重の捜査取材に寄りかかった当時の犯罪報道だ。犯人視しない報道への努力は、不断に続けているが、奥西死刑囚を犯人視して報じたという事実は消せない。
奥西死刑囚の獄中生活は、確定囚で二番目に長い。もしも死刑判決が冤罪であったのなら、それは国家の犯罪というほかはない。奥西死刑囚だけでなく、司法もまた裁かれていると考える。
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『創』(2010年12月号)、12月に読了。
カラーグラビア「和歌山県太地町/イルカ漁をめぐる攻防/「ザ・コーヴ」上映後の地元には・・・」(p.18-19)。
特集「検察の犯罪とメディアの責任」。
弘中惇一郎弁護士、「驚くべき取り調べの実態/今こそ全面可視化を」(pp.34-41)。「・・・取り調べ中に作ったメモはすべて廃棄した・・・」。「・・・特捜の捜査がとにかく杜撰・・・。・・・公判前整理手続きの段階で、石井一議員の調書がこの段階ではまだ存在していなかったのです」。
江川紹子氏、「これは権力犯罪だという本質を見逃してはいけない」(pp.42-45)。
三井環さん、「今こそ検察全体の責任を追及せねばならない」(pp.46-51)。「・・・この問題を検証する機関の座長に、千葉景子前法務大臣が決まったようですね。でも千葉さんは現職の大臣のときに何をしましたか。・・・裏金問題について・・・従前の政権と同じ答弁ですからね。そういう人をよくも任命したなと思います。人選があまりにもおかしいですよ」。
浅野健一さん、「朝日「検察の証拠改ざん」スクープを犯罪報道の転換へ」(pp.52-60)。「検察ファッショ状況にある中で、この記事は「すごいことで、本当に大特ダネ」・・・であり、見事な調査報道だ」。「―――FD改ざんをスクープした朝日新聞の板橋記者らについてどう思うか。/弘中 記者としてきちんと問題意識を持ち、自分の足で動いて徹底的に取材し報道する、あれが正しいジャーナリズムだ」。板橋洋佳記者。
板橋洋佳記者インタビュー(聞き手/浅野健一さんら)、「FD改ざんを私たちはこうしてつきとめた」(pp.62-66)。
矢崎泰久[元『話の特集』編集長]・上杉隆氏対談、「検察権力の威信失墜と共にメディアのあり方も問われている」(pp.68-77)。「起訴後有罪率99%という日本のシステムの異常」。「崩壊しつつある記者クラブを誰が壊すのか」、「矢崎 ・・・亡くなった元読売記者の本田靖春とか、・・・本多勝一らが中心になって、こちら側から廃止しない限りは、このシステムは無くならないと」。
佐高信さん、「ニッポン文化低国を撃つ!/筆刀両断!/憲法改正を叫ぶ単純タカ派 塩野七生」(pp.78-79)。
鈴木邦男さん、「言論の覚悟/怨み・憎しみ。そして赦し」(pp.80-83)。原田正治氏、『弟を殺した彼と、僕』(ポプラ社)。「・・・彼を赦(ゆる)したわけではない。しかし死刑にして問題が解決するわけではない。・・・そして何と死刑執行停止を求める上申書を裁判所に提出する。・・・しかし原田さんの「願い」は叶えられず死刑は執行される。虚脱感の中、死刑制度に関心を深め、死刑廃止運動にも関わるようになる」。死刑存置派に聞かせたい原田さんの言葉、〈単に「被害者遺族の気持ちを考えて死刑に賛成する」という声に、僕はさびしさや怖さを感じます。このような人は、僕のようなものを、/「家族を殺された彼らは、平穏に暮らす自分より気の毒でかわいそうな人」/と、一段下に見ていると感じます。その上、自分のことを偽善者よろしく、/「いわれなくても被害者遺族の気持ちを推し量ることができる自分は、人間らしい上のある者だ」/と、心のどこかで考えている気がします。被害者のことなど真剣に考えてはいないのです〉。鎌田慧さん財田川事件。大道寺幸子基金。安田好弘弁護士。宇賀神寿一氏(東アジア反日武装戦線「さそり」)。
森達也さん「極私的メディア論/第56回 巨大メディアと記者の姿勢」(pp.88-91)。戦場写真家ジェームス・ナクトウェイ。「・・・アメリカがイラクに侵攻した大義は存在せず、イラク戦争は起こす理由のない戦争だったのだ」。「・・・かつて「自分は戦争を終わらせるために写真を撮る」とまで発言したナクトウェイは、「写真では戦争を終わらせることができない」と最近は語っているという。その真意と苦悩の言葉を聞きたい」。
金平茂紀氏(TBS「報道特集」キャスター)、「衰退しつつあるメディア界に「蟻の一穴」を」(pp.108-113)。「今のテレビは劣化していないか」、「少数派になることを恐れず強大なものをチェックする」。
本紙編集部、「民族排外主義とネット活用が特徴/右派陣営の新潮流/「在特会」拡大の背景」(pp.120-127)。
「永六輔[放送タレント]×矢崎泰久[元『話の特集』編集長]のぢぢ放談/第17回 ノーベル賞なんて知らない!」(pp.130-137)。


asahi.comからの記事をコピペ。
『死刑のスイッチ』を押さなかったという安堵の半面、「遺族の方には申し訳ない」といった贖罪的な意識を持ってしまう、その裏返しとして、「証拠が不十分だった」といった被告人への猜疑的な心理の醸成・・・やはり裁判員制度には問題が多すぎるでしょう。〝素人〟裁判員にはあまりに過酷過ぎます。何度もいいますが、訓練を積んだ〝プロ〟としての職業裁判官がやるべきことです。たとえ〝プロ〟であっても、『死刑のスイッチ』を押すことに戸惑いのない〝プロ〟の職業裁判官はいないはずで、私は死刑存置には反対です。〝素人〟裁判員などまっぴら御免で、裁判員制度など即刻廃止すべきだと主張します。〝プロ〟としての職業裁判官だった熊本典道さんの苦しみを我々も理解すべきだと思います。熊本さんには、「死刑判決に4回関わり、そのすべての死刑囚と東京拘置所で面会したエピソード」があるそうですが、冤罪死刑囚の袴田巌さんと比較することは不適切でしょうが、袴田事件の死刑判決であれほど苦しんだのです。
公判前整理手続きや取調べの不透明さ、証拠開示上の不利など、公平で正確な裁判を受ける被告の権利を考えても問題が多すぎる制度です。
今回無罪判決が出たことは、裁判員制度の導入に何らかの「意義」があったと誤解されかねません。上記の通りで、何の意義もないです。さらに、本来、これまでの〝プロ〟としての職業裁判官がこういった裁判において公正な裁判をせずに、「無罪判決」を出してこなかったことに問題点があったわけで、ようは怠慢だったわけです。刑事裁判の原則を無視し、今回もその疑いがあるのですが証拠の捏造を見抜けず、あるいは、意識的に見逃すなどの怠慢があったわけです。熊本典道さんは「検察から届く拘留請求の、なんと3割を却下した」そうですが、そのような裁判官は極々稀な例です(「裁判長ってどんな人?」)。免田事件や財田川事件、狭山事件、片岡晴彦さんの高知白バイ事件、布川事件、氷見事件、袴田事件、名張毒ぶどう酒事件、足利事件、三井環さんの事件、毒カレー事件など職業裁判官の怠慢の例は数え上げたらきりがありません。ましてや、福岡事件の西武雄さんや飯塚事件の久間三千年さんといった無罪な人を死刑・私刑にしてしまった可能性(控え目に表現しています)さえあります。村木厚子さんや志布志事件の裁判結果などは極々稀な例です。今回の無罪判決、「裁判員制度の導入に意義」があったわけではないです。誤解されては困ります。
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【http://www.asahi.com/national/update/1210/TKY201012100271.html】
裁判員「中立の立場からこうなった」 鹿児島・無罪判決
2010年12月10日13時35分
「遺族の方には申し訳ないと思うが、証拠が不十分だったことが一番の原因」「中立の立場から、こうなった」
鹿児島市の老夫婦殺害事件の評決に参加した6人の裁判員全員と補充裁判員2人の計8人は判決言い渡し後、記者会見に臨んだ。40日間の長期の裁判を振り返り、無罪判決に至るまでの思いを語った。
一礼して着席した8人の表情はみな硬く、マイクを通しても、声が聞き取りにくい。
冒頭、死刑の求刑で無罪が言い渡されたことをどう受け止めるかを尋ねられると、「判決通り。それだけだ」「同じく」「判決文の中に全部出ていると思います」。8人は言葉少なだった。
法廷で行われた10日間の審理では、裁判員が被告人や証人に直接質問する場面がなかった。このことを問われると、裁判員の一人は「素人ですので。言葉がすごく大切。質問の仕方によっては検察に有利になったり、弁護側に有利になったりする。難しいので裁判官に任せた」。別の裁判員は「質問はけっこうあったが、内容の言葉は難しくて言い方一つで、どうとでもとれる。やっぱり慣れている方にお任せしようと判断した」と答えた。
遺族の極刑への思いはどう受け止めたか――。その質問への裁判員の答えは様々だった。
「遺族の方には申し訳ないと思いますが、証拠が不十分だったことが一番の原因」、「証拠に基づいて考えなければいけない。中立な立場で話をした」、「公正な立場で判断した。疑わしきは被告人の利益に、ということがありますので」。
40日間の長期の裁判については、「家族にも迷惑をかけた。仕事上でも大変だった」との声があった一方で、「あっという間だった」「不安があったが、家族にも支えられた」などの感想も聞かれた。
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『美談の男/冤罪 袴田事件を裁いた元主任裁判官・熊本典道の秘密』、7月に読了。尾形誠規著。鉄人社。2010年6月刊、第1刷。
本の帯、「私は無罪を確信しながら死刑判決を言い渡した―――。39年前の過ちを自ら告白した元エリート判事の転落と再生/酒……家族崩壊……自殺未遂……放浪……そして―――。逃れたくとも逃れられない袴田事件の呪縛」。
「裁判員制度が始まろうとしているいま、いつ誰が熊本と同じ立場になってもおかしくない」(p.10)。「・・・最終的な合議の場で死刑に一票を投じる・・・。己が死刑判決を下した一員になること、その事実が生涯付きまとうだろうことに恐怖を覚えるに違いないのだ」(p.23)。
「熊本は・・・。/・・・九州大学の法学部に進んだこと。在学中に司法試験を受けトップで合格したこと。・・・死刑判決に4回関わり、そのすべての死刑囚と東京拘置所で面会したエピソードだ」(p.23、89、92、125、138「正門」・「多々良川」、p.236「和白」)。
罵声、棍棒での殴打、蹴ったり、殴ったりの取り調べ(p.60)。「冤罪王国、静岡」(p.61)の静岡県警の悪しき体質、4つの冤罪: 「幸浦[さちうら]事件」、「二股事件」、「小島[おじま]事件」、「島田事件」(pp.62-63)。免田、財田川、松山事件に続く、確定死刑囚が再審で無罪になった初の事例が、島田事件。4事件全ての主任取調官は〝拷問王〟と評されることになる稀代の悪徳刑事。
冤罪が判明(冤罪の疑いが濃厚)した三鷹事件、松川事件、八海[やかい]事件。下山事件、帝銀事件(p.90)。
免田栄さんと足利事件の菅家利和さん(p.219)。
名張毒ぶどう酒事件(p.254)。
「・・・熊本は・・・。検察から届く拘留請求の、なんと3割を却下したのだ。いま現在の却下率が1%にも満たないことを考えたら、驚異的な数字である。司法研修を終えたばかりのペーペーに、なぜそんな芸当ができたのか」(p.96)。
「泣きながら書いた偽りの死刑判決文」(p.115)。「・・・熊本は断腸の思いで、死刑判決文を書き上げる。しかも、全くの〝作文〟である。自分がとんでもない過ちを犯していることに、震えながら怒りながら泣きながら、矛盾に満ち満ちた350枚を創作した。職を辞する決意は、既に固まっていた」。
袴田巌さん。「産まれてまもない我が子と別れ、長年の拘留生活により精神にも異常をきたしている袴田死刑囚。なぜ、彼はこんな地獄を味わい続けなければならないのか。〝疑わしきは被告人の利益に〟の原則に従うなら、審理はやり直され、無罪確定の上、袴田は釈放されなければならない」(p.253)。


『冤罪File(2009年12月号、No.8)』、2月に読了。
徳島ラジオ商殺人事件(p.24、今井恭平さん)。免田事件・財田川事件・松山事件・島田事件、4大死刑冤罪事件(p.35)。
「憲法違反の裁判官たち」として、高橋祥子氏(p.39)は御殿場事件で一審担当、陶山博生氏(p.43)は飯塚事件で一審担当。久間三千年さんの「死刑執行命令を下したのは、麻生内閣の森英介法務大臣(当時)である。大臣任命後1か月後に、死刑判決からたった2年足らずの死刑囚に執行命令を下すのは極めて異例である。・・・再申請求の準備・・・なぜ久間氏の死刑が先に執行されたのか、全く理解に苦しむ」。
野間林太郎氏「北海道庁爆破事件 「思想を裁いた」判決 死刑確定15年を経て、新証拠に揺らぐ警察鑑定」(pp.44-55)。東アジア反日武装戦線。大道寺将司さん。
柳原三佳さん「「鈴村事件」 ずさんな警察捜査、でたらめな検察の対応・・・ このまま真実は闇に葬られてしまうのか」(pp.56-63)。
「〝えせ測定器〟に狙われたら助からない!?」。寺澤有さんも、結局、有罪に。「オービスのストロボを浴びたが最後、もう助からない」(p.69)。
今井恭平さん、「本当に「誤認」逮捕だったのか? 国賠訴訟が初めて暴く、富山強姦冤罪事件の真相」(pp.89-99)。富山(氷見)強姦冤罪事件。柳原浩さんの冤罪逮捕、服役後に真犯人が現れる。鎌田慧さん。足利事件の菅家利和さん、志布志事件の中山信一さん。


『冤罪File』(No.06、2009年6月号)、6月に読了。
巻頭インタビューは森達也さん、「死刑に本音で向き合うことを余儀なくさせた、冤罪死刑囚との「出逢い」」。(p.2-9)。4大死刑冤罪、免田栄さんの熊本での事件、財田川事件・松山事件・島田事件。「・・・存置派も廃止派も、「償い」という言葉をあまりにも安易に考えすぎている。/・・・社会全体がまるで被害者になり代わったような気分になって、加害者を死刑にしろ、と叫ぶ・・・/・・・他人がそんな簡単に共有できる訳がないんです。・・・被害者に対して不遜だし、失礼です」。裁判員制度について、「害悪をまきちらす以外にまったく意味がない制度になりかねないと思います。/・・・改革すべきことは他にいくらでもある。・・・/このまま見切り発車となれば、整備不良の車で高速に入るに等しいことです。/・・・冤罪を防止するための方策には全くなりえていません」。まったく同感。「・・・まず代用監獄から手をつけなければならないと思いますが、それは全く手付かずです」。「・・・公判前整理手続きが密室でおこなわれ、公判が始まれば弁護側の新たな証拠提出も認められない。一方で証拠を握っている検察は、その全面開示の義務はない」。裁判員制度下で死刑判決を出すということは、どういうことなのか? さらにそれにのしかかる守秘義務。冤罪事件であることが間違いのない袴田事件の一審裁判官だった熊本典道さんが、無罪心証を持ちながら死刑判決を出し、何十年も苦しんできたことに関連して、「彼は職業裁判官だったのに・・・苦しんできた。裁判員制度では、それを普通の市民が抱えることになるかもしれない。しかもそのつらさを妻にも夫にも言えないのです」。最後に、メディアも含めた組織的な構造の問題であることが強調。「・・・組織が病理をかかえていることを認識しないと冤罪がなくなる筈はないのです。/・・・悪い警察官や検察官がいるから冤罪がおきるのではない。組織がそういう構造になっているからです。・・・/さらに今のこの国は、メディアを媒介にしながら犯罪者への憎悪が深まることで、冤罪の構造が変わってきています。その典型が和歌山カレー事件の林眞須美さんです。自供もなければ物証も何もない。かつてならこれで死刑はありえなかったと思います」。
片岡健氏「最高裁は果たして公正な判断を下せたのか!? 不明な動機、作られた目撃証言、疑惑の証拠「ヒ素」/あなたが裁判員だったら死刑判決を下せますか!? 「和歌山毒カレー事件」全真相」(pp.18-31)。
江川昭子さん「名張ブドウ酒事件/死刑確定から37年・・・裁判所は誤りを正し、ただちに再審開始を決定せよ」(pp.18-31)。「こういう態度からは、裁判官たちの関心は、一人の無辜を救うより、過去に出された判決を維持する方にあると思わざるをえない。/最高裁も、・・・決定を支持。・・・断言した。/・・・裁判官の「常識」は、実にしばしば一般人のそれと異なる」。
「1954年に山口県で起きた一家6人殺しの仁保事件と呼ばれる冤罪事件があります。岡部さんという当時37歳の男性が別件逮捕され、4カ月にわたる勾留の後に「自白」してしまいます。一審死刑でしたが、最高裁で差し戻しとなり、後に無罪が確定しています。/この事件は、取り調べの録音テープが残っているという点で、人がなぜ嘘の自白をするのか研究する上で貴重な資料です」(p.58)。松下センセの係わった事件。
里見繁氏、「現役テレビプロデューサーの「取材現場発!」 冤罪・浜松幼児せっかん死事件/検察が隠し続けた自白テープ」(pp.62-81)。リード部、「冤罪に巻き込まれた一人の人間の人生を20年近くに亘って奪い続ける日本の司法制度は機能不全に陥っている。土台から腐っている」。交際中の男性を誤認逮捕。母親の折檻死事件と知りつつ、検察が隠蔽。母親の自白テープが法廷に提出されたにもかかわらず、裁判官は無視し、その後も詭弁を連発。その母親と、捜査に係る刑事との不可解な交際や、免停のもみ消し工作など無茶苦茶の連続。「「疑わしきは被告人の利益に」という刑事司法の建前は今や「風前の灯」だが、最近の科学鑑定について裁判所は「わからない理論は検察の利益に」という姿勢を貫いている。DNA鑑定などに対する裁判所の対応を見ていると、そう考えざるを得ない」。菅家利和さんの足利事件冤罪を見ても明らか。
柳原三佳さん、「「高知白バイ死亡事件」最新速報/「本件事故は、高知県警の暴挙による重大な謀略事件である」(訴状より抜粋)/獄中で冤罪を訴える元運転手・片岡氏が、ついに県警を提訴!」(pp.92-93)。片岡さんの支援者は、「片岡さんに罪をなすりつけたことはもちろんですが、大人として、子を持つ親として許せないのは、一連の行為が22名の中学生の前で行われたということです。生徒達に警察や司法への不信感を植えつけた責任は問わなくてはなりません。大人として、同じ親として恥ずかしくはないのか!? と彼らに問いかけたいのです」。


森達也さん「極私的メディア論 第41回/セキュリティ意識と刑事司法」(pp.92-93)。犯罪統計と我々の犯罪の認知件数。水増しされているであろうにもかかわらず、統計上は刑法犯は減少。小説『東京スタンピード』で、「・・・オオカミが来たと言い続ければ、そしてオオカミが来たと多くの人が思い続ければ、実際にオオカミは来るのです」。マスコミの過剰な喧伝、街中にあふれる防犯カメラと云う監視カメラ、道路にはNシステム。「安全を保障するはずのセキュリティが、逆に治安を悪化させる。皮肉といえばこれ以上の皮肉はない」。和歌山カレー事件について、「・・・被告人は、これまでずっと事件への関与を否定し続けている。物的証拠は何一つない。動機すら解明されていない。・・・死刑。「疑わしきは罰せず」ではなくて「疑わしきはとりあえず有罪で、国民感情が収まらないなら死刑」ということになる。この国の刑事司法は完全に窒息した」。「とにかく無茶苦茶な裁判だ。まるで最初から死刑ありき」。「・・・などの証言も、・・・相当に怪しい。冤罪の可能性はとても高い。でもほとんどの人はこれを知らない。かつて被告人を毒婦などと形容したメディアが、新しい展開を報じないからだ」。
浅野健一さん「中川昭一議員の酒乱を書かなかった政治記者の怠慢」(pp.114-121)。因縁の、「APの配信から約3日遅れたNHK」。「会食した社名を「実名報道」しない欺瞞」。「・・・中川氏は安倍晋三議員とともに、NHKの従軍慰安婦を取り上げた番組の放送前日に・・・NHK幹部を呼び、番組を「偏った内容だ」と指摘し」、番組を改悪するように政治的圧力をかけ、NHKはそれに屈した訳だ。「朝日のある記者は・・・「中川氏は、電話でNHK幹部と会ったことを認めたと聞いている。その時も・・・酔っており、〝べらんめー〟調で『お前、なんだ』などと、記者を罵った。あの時、中川氏の酒癖の悪さは一般には知られておらず、・・・。酒癖が悪く品格もないを当時きちんと報じておれば、こういう辞任劇はなかったかもしれない」」。「中川氏には前々から「アルコール依存症疑惑」があった。今回、海外で批判されてから、前から知っていたかのような報道が展開されたのだが、中川氏が自滅する前に調査報道があるべきだった」。
篠田博之編集長「重大局面! 和歌山カレー事件 最高裁で弁護団が訴えたこと」(pp.122-127)。三浦さんを介して、最高裁から安田好弘弁護士が参画。「1審で・・・判決には、動機が不明だと書かれているのだ。動機とは犯罪の骨格をなす事柄で、それが不明なまま死刑判決をくだしてよいものか。その指摘は1審当時からなされていた」。「くず湯」事件では〝被害者〟(夫の健治氏)自らが、「自分で保険金目的で飲んだのだ」とはっきり言明している。そうすると、「カレー事件の構造そのものが崩れてしまう。つまり殺意であるとかヒ素をもって人を殺そうとか、そういう構造そのものが崩れてしまう」はずだったのに・・・、最高裁は、結局、事実を見つめることをせず、森さん云うところの「国民感情が収まらないなら死刑」と誤判。
三井環さん「検察「裏金」告発の闘いはこれからだ! 第6回/有罪偏重」(pp.134-137)。「捜査した記録一式は・・・引き継がれ、担当検事はその記録の中から公判記録と残記録に選別してゆく。・・・一綴りにして公判提出記録は裁判所に証拠として提出し、他方残記録は検事の部屋のロッカーに保管するのである。/弁護人は・・・しかし残記録を閲覧することは不可能であるので、どういう証拠があるのかさっぱり分からないカラクリだ」。「・・・誤判決であるが、その最大の原因は・・・検事が弁護人の開示請求した残記録・・・目撃者の供述調書を開示せず、いわゆる証拠隠しをしたことにあるのだ。次の要因は裁判官が開示勧告も命令もしなかったことである。/被疑者および弁護人の言い分はあまり信用しないが、検事の言い分は全面的に信用するというのが日本の裁判官の姿勢を如実に示したものだ。検事が証拠隠しなどすることはハナから思ってもいないのである」。「証拠隠しで有名な事件として「財田川事件」・・・/・・・四大死刑冤罪事件の一つ・・・/・・・捜査側は被告人にとって極めて重要な捜査記録を隠したのだ。死刑が執行されていれば、誰が責任をとるのであろうか」。
