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●山口正紀さん《冤罪…だれより責任の重いのが、無実の訴えに耳を貸さず、でっち上げを追認した裁判官だろう》

2019年10月30日 00時00分40秒 | Weblog


東京新聞の2019年6月28日の社説【最高裁の判断 なぜ再審の扉を閉ざす】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019070102000126.html)。
亀井洋志氏による、週刊朝日の記事【袴田事件で「捜査機関が証拠を”捏造”」 弁護団が新証拠の補充書を最高裁に提出 】(https://dot.asahi.com/wa/2019062800063.html)。

 《四十年間も潔白を訴えていた大崎事件(鹿児島)の原口アヤ子さんに再審の扉は開かなかった。最高裁が無実を示す新証拠の価値を一蹴したからだ。救済の道を閉ざした前代未聞の決定に驚く。「やっちょらん」-。原口さんは、そう一貫して訴えていた。殺人罪での服役。模範囚で、仮釈放の話はあったが、「罪を認めたことになる」と断った。十年間、服役しての再審請求だった…疑わしきは被告人の利益には再審請求にも当てはまる。その原則があるのも、裁判所は「無辜(むこ)の救済」の役目をも負っているからだ。再審のハードルを決して高めてはならない》。
 《静岡地裁の再審開始決定を取り消した東京高裁決定から、1年余りが経過した。死刑が確定した元プロボクサーの袴田巌さん(83)は最高裁に特別抗告中だが、弁護団はこのほど“新証拠”を提出した》。

   『●「「3.11」から2年③ 東北復興と壁」
         /『週刊金曜日』(2013年3月15日、935号)について
    「山口正紀さん【裁判長の訴訟指揮も報じるべきだ 大崎事件再審請求】、
     「冤罪は警察・検察だけで作られるものではない。…
     マスメディアにも責任…。だが、だれより責任の重いのが、
     無実の訴えに耳を貸さず、でっち上げを追認した裁判官だろう」」

   『●知らなかった冤罪事件: 鹿児島大崎事件
   『●「飯塚事件」「福岡事件」「大崎事件」
       ・・・・・・に係わる弁護士たちで『九州再審弁護連絡会』発足

   『●「あたいはやっちょらん」の叫び!…
      「だれより責任の重いのが…でっち上げを追認した裁判官」
   『●39年間「あたいはやっちょらん」、
     一貫して無実を訴えてきた90歳の原口アヤ子さんに早く無罪判決を

   『●冷酷な司法…【NNNドキュメント’18/
      あたいはやっちょらん 大崎事件 再審制度は誰のもの?】
   『●大崎事件…再審するかどうかを延々と議論し、
      三度にわたる再審開始決定を最「低」裁がちゃぶ台返し
    「まず、小池裕裁判長について。《小池裕氏は、NPO法人による
     森友学園問題で国側が持つ交渉記録等の証拠保全の申し立てについて、
     最高裁の裁判長として保全を認めなかった高裁判断を支持し、
     抗告を棄却した》方です。アベ様には寛大なるご判断、一般市民には
     《あまりにも横暴》、冷酷。「司法判断」としてもデタラメ」

 再審するかどうかを延々と議論し、《三度にわたり再審開始決定が出ながら》、最後に、ちゃぶ台返し。最「低」裁は何を怖れているのか? 誤りを潔く認めるべきだ。
 山口正紀さん、《冤罪は警察・検察だけで作られるものではない。…マスメディアにも責任…。だが、だれより責任の重いのが、無実の訴えに耳を貸さず、でっち上げを追認した裁判官だろう》。
 「無辜の救済」を拒む最「低」裁の意図は何か?
 白鳥決定を持ち出すと、原口アヤ子さんを何か犯人であるかのような印象を与えてしまうかもしれない。でも、冤罪なのですから、「無辜の救済」が正しい表現。

   『●袴田事件…検察=《狼は本音を明かす。
      「おまえがどんな言い訳をしても食べないわけにはいかないのだ」》
    《狼は本音を明かす。「おまえがどんな言い訳をしても食べないわけには
     いかないのだ」▼袴田さんの無実を信じる人にとってはどうあっても狼に
     許されぬイソップ寓話(ぐうわ)の羊を思い出すかもしれない…
     検察と裁判所を納得させる羊の反論の旅はなおも続くのか
     ▼事件から五十二年長すぎる旅である

   『●《袴田巌さんは、いまも、死刑囚のまま》だ…
       政権や検察に忖度した東京高裁、そして、絶望的な最「低」裁
    「NTVの【NNNドキュメント’18我、生還す -神となった死刑囚・
     袴田巖の52年-】…《今年6月、東京高裁が再審開始を取り消した
     「袴田事件」。前代未聞の釈放から4年半、袴田巖さんは死刑囚のまま
     姉と二人故郷浜松で暮らす》」
    「三権分立からほど遠く、法治国家として公正に法に照らした
     「司法判断」ができず、アベ様ら政権に忖度した「政治判断」乱発な、
     ニッポン国の最「低」裁に何を期待できようか…。
     《巌さんは、いまも、死刑囚のまま》だ」

   『●冤罪は晴れず…「自白を偏重する捜査の危うさ…
       証拠開示の在り方…検察が常に抗告する姿勢の問題」
   『●袴田秀子さん《ボクシングに対する偏見…
      チンピラだっていうイメージ…その印象以外に何の証拠もなかった》

 《袴田巌さんは、いまも、死刑囚のまま》。《特別抗告が棄却され、袴田さんが再収監されるような事態になれば、国民の信頼はおろか、海外からも日本の司法は総スカンを食うことになる》。

   『●木谷明さん《冤罪を回避するために法曹三者…
      無実の者を処罰しないという強い意志、意欲をもって仕事にあたること》

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019070102000126.html

【社説】
最高裁の判断 なぜ再審の扉を閉ざす
2019年6月28日

 四十年間も潔白を訴えていた大崎事件(鹿児島)の原口アヤ子さんに再審の扉は開かなかった。最高裁が無実を示す新証拠の価値を一蹴したからだ。救済の道を閉ざした前代未聞の決定に驚く。

 「やっちょらん」-。原口さんは、そう一貫して訴えていた。殺人罪での服役。模範囚で、仮釈放の話はあったが、「罪を認めたことになる」と断った。十年間、服役しての再審請求だった。

 鹿児島県大崎町で一九七九年に起きた事件だった。被害者が酒に酔い、側溝に落ちているのを住民が発見した。三日後に遺体が自宅横にある牛小屋で見つかった。原口さんは隣に住み、被害者の義姉にあたる。親族の計四人が殺人容疑などで逮捕され、八一年に最高裁で確定した。

 そもそも本当に殺人なのかも疑われる事件だ。側溝に転落した際の「出血性ショック死の可能性が極めて高い」からだ。新証拠の鑑定はそう記している。この見方は地裁・高裁も支持している。何しろ確定判決時の鑑定は「他殺を想像させる。窒息死と推定」という程度のあいまいさだった。

 では、絞殺という根拠は何か。実は共犯者とされた親族の自白に寄り掛かっている。供述は捜査段階でくるくる変わる。虚偽自白の疑いとみても不思議でない。

 なぜ自白したか。「警察の調べが厳しかったから」だそうだ。しかも知的障害のある人だった。今なら取り調べが適切だったか、捜査側がチェックされたはずだ。

 最高裁は新鑑定を「遺体を直接検分していない」「十二枚の写真からしか遺体の情報を得られていない」と証明力を否定した。親族の自白は「相互に支え合い信用性は強固」とした。だが、本当に「強固」なのか。過去の冤罪(えんざい)事件では、捜査側が描くストーリーに沿った供述を得るため、強要や誘導があるのはもはや常識である。

 最高裁の判断には大いに違和感を持つ。審理を高裁に差し戻すこともできたはずである。事件の真相に接近するには、そうすべきだった。事故死か他殺かの決着も、再審公判でできたはずだ。再審取り消しは論理自体が強引である。もっと丁寧に真実を追求する姿勢が見えないと、国民の司法に対する信頼さえ損なう

 疑わしきは被告人の利益には再審請求にも当てはまる。その原則があるのも、裁判所は無辜(むこ)の救済の役目をも負っているからだ。再審のハードルを決して高めてはならない。
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https://dot.asahi.com/wa/2019062800063.html

袴田事件で「捜査機関が証拠を”捏造”」 弁護団が新証拠の補充書を最高裁に提出 
亀井洋志 2019.7.1 10:30 週刊朝日

     (白半袖シャツに開いた2つの穴と、袴田さんの体の傷(赤ライン)の位置)
     (味噌タンクから発見された白半袖シャツ。右肩の2つの穴の周りだけ
      血が付いている=いずれも藤原よし江さん提供)

 静岡地裁の再審開始決定を取り消した東京高裁決定から、1年余りが経過した。死刑が確定した元プロボクサーの袴田巌さん(83)は最高裁に特別抗告中だが、弁護団はこのほど“新証拠”を提出した。焦点となるのは、袴田さんの犯行時の着衣とされた「5点の衣類(スポーツシャツ、白半袖シャツ、ズボン、ステテコ、ブリーフ)」だ。弁護団は衣類は袴田さんのものではなく、捜査機関によって捏造(ねつぞう)された可能性が高いと重ねて主張した。

    (【写真】味噌工場のタンクから発見された白半袖シャツはこちら)

 改めて事件を振り返る。1966年6月30日、静岡県清水市(現・静岡市清水区)の味噌会社の専務宅から出火。焼け跡から一家4人の他殺死体が見つかった。味噌会社の従業員で当時30歳だった袴田さんが強盗殺人などの疑いで逮捕された。袴田さんは連日10時間以上に及ぶ苛酷な取り調べを受け、逮捕から20日目に「自白」してしまう。裁判では無罪を主張したが、事件から1年2カ月も経って味噌工場のタンクの中から血染めの衣類が発見される。いま焦点となっている「5点の衣類」だ。事件直後、警察が徹底的に捜索しながら見つからなかった衣類が突然発見されるのだから、きわめて不可解な展開だ。

 その後、警察は袴田さんの実家を捜索すると、都合のいいことに発見されたズボンの共切れを見つけ出す。その結果、「5点の衣類」が決定的な証拠とされ、68年9月、静岡地裁は袴田さんに死刑判決を言い渡したのである。

 2度目の再審請求で弁護団は、新証拠についての書面を提出した。そこで指摘したのは、「5点の衣類」のうち、スポーツシャツと、下着の白半袖シャツの右肩に付いた穴状の損傷に関するものだ。事件当時、袴田さんは白半袖シャツの上にスポーツシャツを着て、右肩(右上腕部)にケガをしたとされている。だが、不自然なことにスポーツシャツの右肩には釘で刺したような穴が1カ所あるだけだが、白半袖シャツには穴が二つ空いている。しかも、穴の位置がいずれも一致せずに、ずれているのだ。

 実は、死刑が確定する前の東京高裁で、犯行着衣とされた「5点の衣類」が本当に袴田さんのものなのかを検証するための試着実験が行われている。この時、衣類の穴の矛盾点が明らかになったが、裁判ではほとんど問題にされなかったという。その理由について、袴田さんの弁護団が6月7日に開いた記者会見で、角替(つのがえ)清美弁護士が次のように説明した。

「高裁は、確かに穴の位置はずれているが、おおむね一致している、という見方でした。スポーツシャツに穴が一つで、白半袖シャツに二つあることについては、スポーツシャツはゆったりしているが、白半袖シャツは肌にぴったりと密着している。だから一度スポーツシャツに刺さった鋭い刃物状のものが、白シャツの2カ所に穴を開けることもあり得るということでした」

 白半袖シャツの二つの穴の周囲には、内側から染みついた袴田さんのものとされるB型の血がついていた。ここで気になるのは、出血した袴田さんの傷の位置はどこなのか、ということだ。

 袴田さんは2014年、逮捕されてから47年7カ月ぶりに釈放されたが、驚くべきことに右肩の傷あとが残っていたのだ。生きた証拠であり、衣類の穴との位置関係を比較すれば、矛盾点はいっそう明確になる。

 この測定実験を思い立った支援者の藤原よし江さんは、「5点の衣類」の写真など、裁判資料をもとにスポーツシャツと白半袖シャツの穴を再現し、測定した。その結果、スポーツシャツの穴も、白半袖シャツにできた二つの穴も、袴田さんの傷あとの位置とは、まったく一致しなかったのである。

 藤原さんに話を聞いた。

「シャツの穴の問題は、ずっとおかしいと思っていました。控訴審の段階でも弁護団(再審弁護団とは別)が鑑定を求めていますが、裁判所は却下しました。白半袖シャツの穴のまわりには血が付いているのに、袴田さんの肩の傷の位置に血が付いていない=写真参照=のは、誰が見てもおかしいと思うはずです」

 袴田さんがこれまで一貫して主張し続けてきたのは、事件当時、パジャマ姿で専務宅の消火活動を手伝い、その際、右肩にケガをしたということだ。

 実際にパジャマの右肩部分に、何かに引っ掛けてできた「カギ裂き」の破れがあり、その部分に血が付いていたことがわかった。袴田さんの体の傷あとを測定した藤原さんは、判決文などをもとにパジャマのカギ裂き部分も特定した。すると、傷あとの位置とぴったりと一致したのである。藤原さんが語る。

「裁判所は、パジャマにカギ裂きがあることや、カギ裂きの位置も確認しながら、袴田さんが右肩に傷を負ったことを示す衣類が、二つあることのおかしさについては黙殺したのです。ものすごく非常識な認定をしながら、死刑判決を出していることが本当に許せません」

 再審請求審で弁護団は、本田克也・筑波大学教授(法医学)に鑑定を依頼した。本田教授は「5点の衣類」に付着した血液のDNA型は、被害者のものと一致しないと結論付け、白シャツの右肩の穴のまわりに付いた血も、「袴田さんのものではない」との結果を出した。今回の藤原さんの測定実験も、この「本田鑑定」の正しさを裏付けている。

 14年5月、静岡地裁はこのDNA鑑定結果を「無罪を言い渡すべき明らかな証拠に該当する」と評価し、再審開始を認める決定をした。当時の村山浩昭裁判長は「(5点の衣類は)捜査機関によって捏造された疑いがある」とまで言及し、「これ以上拘束を続けることは、耐え難いほど正義に反する」として拘置の執行停止も決めたのだ。

 だが、昨年6月、東京高裁(大島隆明裁判長)は、本田教授のDNA型鑑定について「手法に疑問がある」などとして、「新証拠としては認められない」とした。

 昨年6月に弁護団が最高裁に特別抗告してから、1年が経過した。弁護団は最高裁側の感触を得るため、調査官に面談を求めているが、回答すらしてこないという。

 最高裁の調査官は、裁判官の指示に従って裁判に必要な調査を行い、資料の作成や、判決の素案作りなどを行う黒子役だ。主席調査官のもとに上席調査官3人が、刑事・民事・行政事件を担当している。最高裁の調査官には、エリートと目される裁判官が起用される。

 弁護団の西嶋勝彦弁護士がこう嘆く。

「20年くらい前までは、調査官も気さくに面談に応じたものです。袴田事件ばかりではなく、名張毒ぶどう酒事件でも対応してくれていました。特別抗告状や補充書の論点を口頭で説明したり、時にはスライドなどを使ったりすることもありました。それが、裁判官会議の申し合わせで決めたのか、ある時から一斉に対応しなくなったのです。調査官がどこまで記録を読み込んでいるのか、裁判官がどこまで合議しているのか。ブラックボックスでまったくわからなくなってしまいました」

 最高裁の決定はある日突然、何の前触れもなく通知される。こんなシステムはおかしいのではないか。調査官が弁護側の面談に応じれば、証拠との向き合い方はまったく異なってくるだろう。現在の調査官に、証拠を丁寧に吟味する姿勢は見られない

 『裁判官幹部人事の研究』などの著書がある明治大学政治経済学部の西川伸一教授がこう指摘する。

「最高裁は孤高の存在で、国民から恐れられているくらいのほうが判決に威厳があっていいんだという発想があるのでしょう。一方で、裁判官は選挙で選ばれるわけではないから、国民の信頼を失うことを非常に恐れています。最高裁長官は年頭のあいさつに、必ず『国民の信頼』という言葉を入れています。けれども、国民に向けて閉鎖的なイメージは拭いようもありません。調査官は各小法廷の裁判官に資料を上げるだけなのですから、合議の秘密には当たらないはずです。弁護人と会談するのも裁判に必要な調査の一環だと思いますが、どうにもユーザーフレンドリーではありませんね」

 特別抗告が棄却され、袴田さんが再収監されるような事態になれば、国民の信頼はおろか、海外からも日本の司法は総スカンを食うことになるだろう。袴田事件のこれまでの経過に対し、再審開始を決定した静岡地裁が発した「耐え難いほど正義に反するという戒めが、軽んじられるようなことがあってはならない。(本誌・亀井洋志
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コメント
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●死刑制度存置: 袴田事件にどう責任?、そして、飯塚事件の絶望感

2014年05月06日 00時00分31秒 | Weblog


マガジン9』(http://www.magazine9.jp/)に出ていた小石勝朗氏による記事【法浪記第26回 改めて、袴田事件の再審開始決定を受けてなすべきこと】(http://www.magazine9.jp/article/hourouki/12282/)。

   『●袴田事件、そして死刑執行後の『飯塚事件』再審:
                         司法の良心を示せるか?
   『●袴田事件・釈放!: 「捜査機関が重要な証拠を捏造した疑い」
                 「拘置の続行は耐え難いほど正義に反する」
   『●袴田事件、48年間のそれぞれの苦難・・・・・・
               袴田巌さんと秀子さん、そして、熊本典道さん
   『●袴田冤罪事件を機に死刑制度の再考ができない我国
   『●「疑わしきは罰せず」「疑わしきは被告人の利益に」:
              今ごろそれを裁判所に訴えねばならないとは・・・
   『●鎌田慧さんインタビュー: 「一人の人間として勇気をふるった名判決」
   『●映画「ザ・ハリケーン」と袴田事件: 
                        「冤罪事件を「絶対に忘れるな」」

 「袴田さんが即日釈放になるとは、弁護団も予想していなかった。袴田さんが無実であり、再審開始が必ずや認められると信じていた人たちでさえ、そうだった。これまで捜査機関や裁判所に、ことごとく主張を跳ね返されてきただけに、なおさらだった。だから、これが現実の出来事なのかどうか、いまだに実感が湧かないのだと思う。解放を心から喜びたい」。

 裁判で「捜査機関による証拠捏造の疑い」が指摘された袴田事件。警察・検察はまだ悪あがきを続けるようだ。
 「東京高裁の大島隆明判長は弁護団に「検察、弁護団双方の意見を聞きながら、速やかに審理を進める」と答えたという」 大島隆明裁判官は、

   『
●『冤罪File(2009年12月号)』読了(2/2)
    「池添徳明氏「横浜事件再審で免訴 葛飾ビラ配布に無罪 
     大島隆明裁判長ってどんな人?」(pp.112-119)。良識派の珍しい、
     貴重な裁判官という評価。「「疑わしきは被告人の利益に」という
     刑事裁判の基本原則を、忠実に実践しているように見える」
     数少ない裁判官」 

という方。 

 当ブログでも指摘したし、この記事でも指摘されている様に・・・・・・「政府の世論調査(2009年)では85.6%が「場合によっては死刑もやむを得ない」と答えていることは承知のうえで、では袴田さんのような事態が現実に起きていることに対する死刑存置論者の意見を聞きたい」。全く同感だ。

 「それにしても国は、釈放すればあとは姉や弁護団、支援者に任せて知らんふりで良いのか。袴田さんの体調をここまで悪化させた原因は、すべて国家機関や警察にあるのだから、無罪確定前とはいえ可能な限りの支援策を講じるべきだろう。1人の人間の人生をめちゃめちゃにした側の、最低限の対応だと思う」・・・・・・袴田巌さんの「人生をめちゃめちゃにした」警察や検察、裁判官、国家は「最低限の対応」さえ出来ていない。「場合によっては死刑もやむを得ない」とする「85.6%」の人々は、冤罪で死刑にされた久間三千年さん、「飯塚事件」をどう考えているのだろうか? 警察や検察、裁判官、国家の威信にかけて「飯塚事件」をもみ消し冤罪は決して晴れることはないのだろうか・・・・・・、大変に悔しいけれども絶望的じゃないかな・・・・・・。何とかならないものか! 「85.6%」の死刑制度存置派がいるわが国ではますます絶望的か・・・・・・。

 最後に、袴田巌さんについての『BOX袴田事件 命とは』(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/992be37bb74661549a9c7343d2143341http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/9f1d0b1a666a16759c240cbeccd37e90) を漸く見た。フィクションとノンフィクションが混ざってはいるが、本当に恐ろしい中身。映画が出来て約4年。高橋伴明監督の大力作。

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http://www.magazine9.jp/article/hourouki/12282/

小石勝朗 「法浪記」第26回 
改めて、袴田事件の再審開始決定を受けてなすべきこと
2014年4月16日up

 目の前にいるのが本当にご本人なのか、にわかには信じられない気持ちだった。死刑判決が確定しながら身柄拘束48年目にして自由の身になった元プロボクサー・袴田巖さん(78歳)が、再審開始決定~即日釈放から18日ぶりに公の場に姿を見せた。4月14日に東京で開かれた日本弁護士連合会(日弁連)主催の報告集会である。

 袴田さんが即日釈放になるとは、弁護団も予想していなかった。袴田さんが無実であり、再審開始が必ずや認められると信じていた人たちでさえ、そうだった。これまで捜査機関や裁判所に、ことごとく主張を跳ね返されてきただけに、なおさらだった。だから、これが現実の出来事なのかどうか、いまだに実感が湧かないのだと思う。解放を心から喜びたい

 袴田さんの様子は後述するとして、この集会には受けとめるべき材料が多かった。

 率直に記すと集会の会場では、マスコミへのPRに過剰なまでに注力する主催者の姿勢と、マスコミの厚顔無恥な取材態度がどうにも胡散臭く感じられて、「誰に向けた集会なの?」とやや白ける部分もあった。ただ、日弁連は、袴田さんが最初の再審請求をした直後の1981年から継続して支援してきただけに、これから取り組むべきことについてもポイントをきちんと押さえていた。

 静岡地方裁判所(村山浩昭裁判長)の再審開始決定の内容については、前回の拙稿を読んでいただくとして、袴田さんの様子に大騒ぎしているだけのマスコミが報じない部分を報告しておきたい。

 最初の関心事は、再審請求の今後の動向だろう。ご存じの通り、検察は静岡地裁の再審開始決定を不服として、東京高等裁判所に即時抗告したからだ。

 袴田さん弁護団の小川秀世事務局長は強気だった。根拠に挙げたのは、再審開始決定が指摘した「捜査機関による証拠捏造の疑い」である。警察が捏造なんてするはずはないという「偏見」を打ち破り、事実と証拠を素直な目で見ることに加えて、捜査機関の行動を全体的に判断することによって導き出された「必然の結果」だからこそ、「決して動かないものになった」と評価した。

 小川弁護士によると、袴田さんの犯行着衣とされてきた「5点の衣類」には、そもそも犯行着衣である証拠は何もなかったそうだ。犯行現場の近くで発見されたことや血が付いていること、損傷があることなどだけで、犯行着衣と断定されてしまった。それが、再審請求審で実施された血痕のDNA鑑定で完全に否定されたわけで、高裁の即時抗告審に向けても「盤石だ」と、やや興奮気味に語っていた。

 一橋大大学院の葛野尋之教授(刑事法)は、やはり検察の即時抗告に批判的な立場から、もう少し冷静に見通しを分析していた。

 葛野教授によると、高裁の審理では少なくとも、5点の衣類に付着した血痕のDNA型が「袴田さんと一致する」という結果が示されない限り、5点の衣類が袴田さんの犯行着衣とした死刑判決の認定には合理的な疑いが残る。しかし現実的には、高裁でDNAの再鑑定をしたとしても、一致するという結果が得られる可能性は限りなく低い。だから、高裁は「再鑑定を実施しても意味がない」と判断するのではないか、と見立てていた。

 袴田さんの弁護団は3月31日、検察の即時抗告に対して「きわめて不当」との声明を出している。地裁の重い判断を無視して、いたずらに再審開始決定の確定を先延ばしさせるうえ、袴田さんに無用の負担を負わせることを理由に挙げ、「国家機関の不正義により作り出してしまった現状を全く顧みようとしていない」と強く批判した。4月10日には東京高裁に、検察の即時抗告を棄却するよう求める意見書を出している。

 袴田さんの年齢や体調を考えた時、一刻も早く再審を開始し、無罪判決を確定させるべきだろう。東京高裁の大島隆明判長は弁護団に「検察、弁護団双方の意見を聞きながら、速やかに審理を進める」と答えたという。訴訟指揮に期待したい。

 もう一つの大きなテーマは、冤罪を生んだ原因を究明し、同じ被害者を絶対に出さないための対策をしっかり取ることだ。前回の拙稿でも触れたが、「袴田さんが釈放されて良かった」で終わりにしてはいけない制度の改革が不可避である。

 集会で葛野教授は、取り調べの全過程の可視化、検察が持つ証拠の全面開示、DNA再鑑定の機会保障を求めていた。西嶋勝彦・弁護団長も、取り調べの全面可視化、証拠の全面開示、冤罪の原因を究明する公的な第三者機関の設置などを冤罪防止策として挙げた。

 袴田さんは逮捕直後、犯行を否認していたがゆえに、猛暑の中、1日平均12時間、日によっては午前2時まで16時間を超える長時間の取り調べを受けた。取調室に持ち込まれた便器で用を足すように指示されたり、暴行されたりもしたらしい。その結果、逮捕から20日目で「嘘の自白」に追い込まれる。こうした経緯を振り返れば、取り調べの可視化は冤罪の防止に欠かせまい

 今回の再審請求審では、静岡地裁の訴訟指揮で検察が持つ約600点の証拠が新たに開示され、再審開始決定の支えになった。例えば、5点の衣類のズボンはタグに記された「B」をもとに、もともと袴田さんがはけた大きなサイズが味噌に漬かって縮んだとされてきたが、実は「B」は色を示しており、ズボンはY体だったことが明らかになった。検察が自分たちに都合の悪い証拠を出さなくても良い仕組みになっているからこそ、袴田さんの冤罪を証明するのにこれほどの時間がかかったと言える。

 また、袴田さんを有罪にした証拠が否定された最大の要因が48年前の血痕のDNA鑑定だったことを振り返れば、どんなに昔の事件であっても後に再鑑定ができるように、試料の保存・適正管理をする仕組みも必要だろう。袴田事件の再審開始決定が出た4日後に、死刑執行後の再審請求が棄却された「飯塚事件」では、試料が使い切られていてDNA再鑑定ができなくなっている

 葛野、西嶋両氏は「死刑制度の再考」にも触れていた。「死刑事件でも捜査や裁判の誤りが現実にある」ことが明らかになってしまったわけだから、誤判が取り返しのつかないことになる死刑のあり方について、改めて議論する機会にするべきだろう。政府の世論調査(2009年)では85.6%が「場合によっては死刑もやむを得ない」と答えていることは承知のうえで、では袴田さんのような事態が現実に起きていることに対する死刑存置論者の意見を聞きたい。

 最後に、袴田さん本人の様子に触れておこう。

 姉の秀子さん(81歳)とともに会場に入って来る時に、客席に向かってVサイン。やや猫背で、飄々と歩いて演壇へ。イスに座ってからも右手でVサインを繰り返し、やがて両手でVを掲げた。穏やかだが、フラッシュの放射を浴びても表情は変わらない。

 秀子さんの挨拶の途中でマイクを握ると、「西郷隆盛」「改革」「完全平和」「権力一本化」といった単語を織り交ぜて語るが、脈絡はない。秀子さんによると、「ピントが狂ったことを言うが、まともな時もある」そうだ。逮捕から48年近くに及ぶ身柄拘束による拘禁反応と認知症の影響である。秀子さんは「何年かかっても、せめて半分くらいは(もとの)自分に戻ってほしい」と願っていた。ぜひそうなってほしい。

 解放されてから袴田さんと面会した支援者が、集会の前に記者会見した。

 一緒に散歩をした日本プロボクシング協会事務局長の新田渉世さんは「ボクシングの会話がかみ合わずに、ちょっと残念でした」と話した。袴田さんは常に持ち歩いている紙袋にちり紙の束を入れていて、いろいろな物をきれいに拭くほか、念入りに手を洗ったり歯磨きをしたりしていたそうだ。病棟の外出届にはしっかりと自分の名前を書いていた。

 長年の支援者で3回面会した寺澤暢紘さんは「今も自分の世界に閉じこもったまま、まだ自由を実感していない」と印象を語り、その原因となった冤罪の問題性を強調した。「のんびりと自分のしたいことができる時間を確保でき、必要な時に支えてくれる人のいる場所で過ごしてほしい」と望む。現在は東京都内の病院にいるが、郷里の静岡県への転院を検討しているようだ。

 袴田さんの弁護団は、当面の生活費や医療費に充てるため「袴田救済ファンド」と名づけた基金を設け、募金を呼びかけている。無罪が確定すれば刑事補償を受けられるが、それまでには時間がかかりそうだからだ。

 それにしても国は、釈放すればあとは姉や弁護団、支援者に任せて知らんふりで良いのか。袴田さんの体調をここまで悪化させた原因は、すべて国家機関や警察にあるのだから、無罪確定前とはいえ可能な限りの支援策を講じるべきだろう。1人の人間の人生をめちゃめちゃにした側の、最低限の対応だと思う。

   (客席に向かってVサインをする袴田巖さん。右隣は姉の秀子さん。)
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●『冤罪File(2009年12月号)』読了(2/2)

2010年03月14日 10時15分39秒 | Weblog

冤罪File(2009年12月号、No.8)』
 里見繁氏「現役テレビプロデューサーの「取材現場発!」 ―足利事件飯塚事件― 「DNA鑑定の呪縛」」(pp。104-111)。地獄から何とか復活できた足利事件と、さっさと死刑を執行されてしまった飯塚事件。「「疑わしきは被告人の利益に」という言葉は捨て去られ、ここでも「難しい科学鑑定は検察の利益に」という悪魔のルールが適用された」。91年と92年頃のデタラメなDNA鑑定は、裁判所の怠慢。「足利事件を暴くことは同時に飯塚事件の真相を暴くことになる。国家が無実の人を殺してしまった可能性がある。これは法務省だけの責任では終わらない。デタラメな鑑定を証拠として主張し続けた検察、それを擁護し冤罪を正すことから逃げ続けた裁判所、もはや法治国家の名に値しない。/異常なスピードで行われた釈放、そして再審開始決定。日本の司法全体が飯塚事件の真相を必死で隠そうとしている」。

 池添徳明氏「横浜事件再審で免訴 葛飾ビラ配布に無罪 大島隆明裁判長ってどんな人?」(pp.112-119)。良識派の珍しい、貴重な裁判官という評価。「「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の基本原則を、忠実に実践しているように見える」数少ない裁判官。
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