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●樋口英明さん《脱原発を妨げているのは「原発回帰にかじを切った岸田(文雄)政権でも、電力会社でもない。私たちの先入観だ」と話した》

2024年05月06日 00時00分52秒 | Weblog

[※ 『原発に挑んだ裁判官』(磯村健太郎・山口栄二 著) 朝日新聞出版↑]


(2024年04月25日[木])
樋口英明さん《「日本の原発はそれなりに安全だろうという先入観が脱原発を妨げる」…「原発回帰にかじを切った岸田(文雄)政権でも、電力会社でもない。私たちの先入観だ」》、この《私たちの先入観》を払しょくするために ➙ ニッポンの核発電所は「民間の耐震住宅並みの強度は達成できていますよね」という簡単な質問を電力会社や原子力「推進」委員会、キシダメ政権に尋ねてみましょう。

   『●裁判所も歪む…《国が開発の政策的な枠組みを決め、
     その下で電力会社に》核発電所を…《そして裁判所も一体となり…》
    《原発訴訟で原告勝訴を決めた、たった3人の裁判長――
     その苦悩を描いたのが『原発に挑んだ裁判官』(朝日文庫、
     著・磯村健太郎山口栄二、660円)だ。元京都大学原子炉
     実験所助教・小出裕章氏が評論する》
    《本書の解説を書いている千葉大学名誉教授の新藤宗幸氏によると、
     フクシマ事故以前に提訴された原発訴訟は、国を相手にした
     行政訴訟が12件、建設・運転差し止めの民事訴訟が6件だった
     そうだ。そのうち、住民側勝訴を言い渡したのは、
     高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の設置許可の無効を確認した
     名古屋高裁金沢支部判決(川崎和夫裁判長)と、北陸電力
     志賀原発2号機の運転差し止めを命じた金沢地裁判決
     (井戸謙一裁判長)の2件だけであった。フクシマ事故以降には、
     関西電力大飯原発3、4号機訴訟で運転差し止めを認め、住民を
     勝訴させた福井地裁判決(樋口英明裁判長)も出た。
     それら3人の裁判長の苦悩と闘いを描いたのが本書である》

 内藤陽記者による、毎日新聞の記事【「原発安全」は思い込み、耐震性も低い 元裁判長、樋口氏が講演】(https://mainichi.jp/articles/20240424/k00/00m/040/075000c)。《関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の運転差し止め訴訟で、2014年に再稼働を認めない判決を出した元福井地裁裁判長、樋口英明氏(71)が新潟県柏崎市で講演した。樋口氏は能登半島地震(M7・6)発生時の北陸電力志賀原発の例から、原発の耐震性の低さを指摘。「日本の原発はそれなりに安全だろうという先入観が脱原発を妨げる」と主張した。講演のテーマは「能登半島地震と原発」。》《脱原発を妨げているのは「原発回帰にかじを切った岸田(文雄)政権でも、電力会社でもない。私たちの先入観だ」と話した》。

 ニッポンの核発電所の耐震性は「民間の耐震住宅並みの強度よりもはるかに劣る

   『●古賀茂明さん《国民の前で、ちゃんと議論すれば、止めろと言わずに
     止めるのは簡単だ》…裁判で勝つために ――― 樋口英明理論の浸透を
    《日本では2000年以降、千ガル以上の地震が18回(ガルは揺れの
     強さを表す単位)、七百ガル以上は31回起きていることを示す。
     そのうえで、「民間の耐震住宅並みの強度は達成できていますよね
     と質問すると、社長たちは、答えに窮する。なぜなら、住友林業、
     三井ホームの耐震性は、3400ガル、5100ガルだが、伊方原発
     650ガル高浜原発700ガル日本の原発の耐震性は非常に低い
     からだ。
      国民の多くは、原発は民間住宅の何倍も頑丈に作られている
     と信じている。…三つ目に、避難計画の万全性を担保する
     ために原子力規制委員会の審査を受けろと要求する。実際には
     審査されていないからだ。国民は「えっ?避難計画は規制委の
     審査を受けたんじゃないの?」と驚き、審査してもらえとなる
     だが、専門家が審査したら、絶対に今の避難計画では通らない

   『●斎藤貴男さん《日本列島は地震の巣なのに、原子力の利用を「国の責務」と
     うたうGX(グリーントランスフォーメーション)法案にかまけて》いた…

 元裁判官の樋口英明さん《私が大飯原発を止めた理由は4つです。①原発事故のもたらす被害はきわめて甚大。だから、②原発には高度の安全性(事故発生確率が低いこと)が求められるべき。③地震大国日本において高度の安全性があるということは、高度の耐震性があるということにほかならない。④しかし、我が国の原発の耐震性はきわめて低い。ですから原発の運転は許されないのです。これは「樋口理論」と呼ばれています》、《あらゆる運転差し止め訴訟で裁判官に原発の脆弱な耐震性を知らしめ、電力会社の非科学性と非常識を理解させることによって、日本の全ての原発は必ず停止できます》。
 古賀茂明さん《11年の東日本大震災の最大の揺れは2933ガル(「ガル」は、地震の強さを測る単位)。21世紀最大の揺れは、08年岩手・宮城内陸地震の4022ガルだ。16年の熊本地震は1700台。今世紀の1000ガル以上の地震は18回とかなりの頻度だ。原発の耐震設計基準はと言えば、大飯原発が設計時に405ガル後に856ガルまで大丈夫だとされたが、他の原発も1000以下が多い。一方、三井ホームの耐震性は5115ガル、住友林業の住宅は3406ガルで、日本の原発がいかに地震に弱いかがわかる》。志賀核発電所では、《1号機で最大957ガルを観測し…2号機も…871ガル》。

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https://mainichi.jp/articles/20240424/k00/00m/040/075000c

「原発安全」は思い込み、耐震性も低い 元裁判長、樋口氏が講演
024/4/24 11:13(最終更新 4/24 11:13)

     (「国策である原発政策が安全性を軽視するわけがない
      というのは先入観だ」と話す樋口氏=新潟県柏崎市駅前の
      市文化会館アルフォーレで2024年4月7日、内藤陽撮影)

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の運転差し止め訴訟で、2014年に再稼働を認めない判決を出した元福井地裁裁判長樋口英明氏(71)が新潟県柏崎市で講演した。樋口氏は能登半島地震(M7・6)発生時の北陸電力志賀原発の例から、原発の耐震性の低さを指摘。「日本の原発はそれなりに安全だろうという先入観が脱原発を妨げる」と主張した。

 講演のテーマは「能登半島地震と原発」。地元住民団体「原発を再稼働させない柏崎刈羽の会」(本間保・共同代表)の主催で7日にあり、市民ら約160人が耳を傾けた。

 能登半島地震では、石川県志賀町で最大震度7、北陸電力志賀原発(同町)で震度5強を記録した。志賀原発では外部電源から電力を受ける変圧器が破損し、2万3400リットルの油が漏れた。樋口氏は原発の耐震性について「一般に考えられているよりはるかに低い」と指摘した。

 「原発に関心のない人は、日本の原発はそれなりには安全だろう思い込んでいる」とし、福島第1原発事故までは自身もその一人だったと告白。「日本の原発の最大の弱点は耐震性だが、私たちは耐震性が高い思い込んでしまっている」と話した。脱原発を妨げているのは「原発回帰にかじを切った岸田(文雄)政権でも、電力会社でもない。私たちの先入観だ」と話した。

 また樋口氏は原発の本質とは「原発は人が管理し続けなければ暴走する」「暴走時の被害は想像を絶するほど大きい」の二つだとし、「(これを理解していなければ)間違った判決や政策になると結論付けた。【内藤陽】
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●原子力「推進」委員会のメンバーは、「トイレなきマンション」「非常口なきマンション」、正気でそんなモノに「住みたい」ものかね…?

2024年04月30日 00時00分43秒 | Weblog

[↑ ※「地震列島の原発安全性に警告」(週刊金曜日 1457号、2024年01月26日号)]


(2024年04月14日[日])
3.11東京電力核発電人災の教訓は? 能登半島地震の「警告」を無視…《原発回帰》《原発復権》へと暴走する狂気なキシダメ政権。「首相が決断すれば原発は止められる」、でも、逆に首相が暴走すると目も当てられない。そんなに核発電をやりたけりゃぁ、まずは、福島を「原状回復」して見せて下さい。

   『●東電核発電人災から13年: 汚染水海洋投棄を強行し、柏崎刈羽核発電所
     を再稼働したい東電…3.11の教訓は? 能登半島地震の「警告」を無視…
   『●3.11東京電力核発電人災の教訓はどこに? 能登半島地震の警告は?
     正気だろうか? 東電に核発電所を運転する資格や能力は在るのかね?
   『●日刊ゲンダイ【注目の人 直撃インタビュー/ジャーナリスト青木美希氏が
     100人超の取材で辿り着いた結論「首相が決断すれば原発は止められる」】

 東京新聞の【<社説>3・11から13年 「福島のばっぱ」は生きる】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/314077?rct=editorial)。《◆ふるさとの「住民」として 菅野さんのふるさと浪江町の山間部は今も帰還困難区域ですが、下津島の一部が復興事業のために昨春、避難解除となりました。でも、菅野さんは喜べません。自宅に入り込んだ放射性物質を除去することは難しく、昨年末、テーブルの上や床にたまったほこりを検査すると、非常に高いレベルの放射性物質が検出されました。国にとっては、住民の健康よりも事業優先なのでしょうか。浪江町によると今年1月、住民票のある住民1万5109人に対し、実際の居住者は2162人。菅野さんも町に住民票を残した1人です。今後、三木市での住民サービスが制限されることになってもずっと「避難」を続けます。「福島のばっぱ(おばあさん)」として生きるはずだったのに、ある日突然、何の落ち度もなくコミュニティーごと追われ、未来に引き継ぐはずだった家も、一緒に老いていくはずだった近所の友達も失いました。一方、政府のやりたい放題が目に余ります。原発事故で住民不在の町では復興名目の再開発が進みます。巨額の復興予算は流用が指摘され、放射性物質を含む原発処理水は海に放出されています》。

   『●能登半島地震と珠洲核発電所建設計画凍結と断層の上に建つ志賀核発電所
      …「悪夢のような民主党政権」と比較して、今のキシダメ政権の無残さ
   『●能登半島地震と珠洲核発電所建設計画凍結と断層の上に建つ志賀核発電所
      …それでも再稼働・新規建設したいという核発電〝麻薬〟中毒患者ら
   『●【能登を襲った巨大地震/狙撃兵】《役立たずかと思うほど鈍くさい動き
     に、思わずこの連中に「人の心」は宿っているのだろうかと思うほどである》
   『●「想定外」!? 【震度5強の志賀原発で「想定外」続々…なのに規制委は
     動かない 「安全上影響ない」「一定の時間かかる」とは?】(東京新聞)
   『●斎藤貴男さん《日本列島は地震の巣なのに、原子力の利用を「国の責務」と
     うたうGX(グリーントランスフォーメーション)法案にかまけて》いた…
   『●これまでの教訓は何処に? 決して「想定外」と言う勿れ…能登半島地震
      と珠洲核発電所建設計画凍結と断層の上に建つ北陸電力志賀核発電所
   『●本当に賢明な判断だった…珠洲核発電所《建設を阻止したのは、住民らの長
     年にわたる根強い反対運動だった…無言電話や不買運動に耐えた阻止活動》
   『●石川県志賀町・稲岡健太郎町長「北陸電力は再稼働を目指すとのこと
     だが、首長として以前のように安全性をアピールすることは難しい」と…
   『●3.11東京電力核発電人災の教訓はどこに? 能登半島地震の警告は?
     正気だろうか? 東電に核発電所を運転する資格や能力は在るのかね?
   『●小出裕章さん《今回一番学ばなければいけないことは、志賀原発が止まって
      いてよかったということ。…原発が1年間稼働すれば、広島原爆が…》
   『●《志賀原発…すぐ近くで地盤が4m隆起…取水口が海面から離れることに
     より冷却水が取れなくなる恐れ…原発の建屋が損傷する恐れもあった》
   『●「閉じない環」破綻した核燃サイクル…《1993年から26回の延期…核
     燃料サイクル政策は要の再処理工場の稼働が見通せず、「破綻」》が露わ

 能登半島地震の「警告」を無視…《原発回帰》《原発復権》へと暴走する狂気なキシダメ政権と原子力「推進」委員会。なんの「規制」もせずに、「寄生」している委員会なんて要らない。《文字どおりの当事者である志賀町の稲岡健太郎町長が、同じ現実を見て、再稼働容認から慎重へと態度を変えたのとは対照的です。規制委の姿勢には当事者意識が希薄、いや、どこか他人事(ひとごと)の感じさえ漂います》(東京新聞)。特に避難計画には、全く興味なしな「推進」委員会。むしろ、そんな計画など「邪魔だ」とでも思っていそうだ。核発電所の運転にもマトモに向き合わず政府に尻尾を振るし、避難計画は管轄外〝的〟に地元に丸投げ。こんな組織はホントに要らない。トイレなきマンションで、しかも、「非常口なきマンション」(東京新聞)、正気でそんなものに「住みたい」のかね…。
 東京新聞の【<社説>3・11から13年 能登半島からの警告】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/314413?rct=editorial)。《「原子力災害対策指針については、特にこの地震を受けて見直さないといけないところがあるかというと、私はないと考えています」。原子力規制委員会の山中伸介委員長は、1月末の定例記者会見で、こう述べました。北陸電力志賀原発のある石川県・能登半島。地震による道路の寸断=写真、志賀町=や家屋の倒壊などにより、原発事故で放出される恐れのある放射線から逃れることの難しさがあらためて浮き彫りになりました。ところが規制委は、その現実を見た後でも、見直しは微調整にとどめ、「避難と屋内退避を適切に組み合わせることで、被ばく線量を抑える」という原子力災害対策の基本方針を維持していくというのです》。


   『●斎藤貴男さん《日本列島は地震の巣なのに、原子力の利用を「国の責務」と
     うたうGX(グリーントランスフォーメーション)法案にかまけて》いた…

 古賀茂明さん《三井ホームの耐震性は5115ガル、住友林業の住宅は3406ガルで、日本の原発がいかに地震に弱いかがわかる》。
 京都新聞の記事【元京都大助教授「関電の原発データ、解釈が科学的でない」 運転差し止め訴訟】(https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1222814)。《滋賀県の住民ら48人が福井県の大飯、高浜、美浜の関西電力3原発7基について運転差し止めを求めた訴訟の第40回口頭弁論が21日、大津地裁(池田聡介裁判長)であった。前回に引き続き元京都大防災研究所助教授の赤松純平氏(80)の証人尋問が行われた。この日の弁論で証拠調べを終了した。原告側によると、6月に主張のやりとりを終えて、早ければ12月にも結審する見通し。赤松氏が前回、原発の地盤モデルについて設定されている基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)過小評価になっていると証言した内容などに対して関電側からの反対尋問があった。原発への賛否を問われると、「原発はいいものだと思っていたが、言うほど安いものでもなく、将来にわたって影響が出る。関電のデータは解釈が科学的でなく、安全が担保できず反対の立場だ」と答えた。弁論後に会見した井戸謙一弁護団長は、元日の能登半島地震で設備に被害が発生した志賀原発にふれ、「地震の教訓は大きな追い風になると思う」と話した》。

 元裁判官の樋口英明さん《私が大飯原発を止めた理由は4つです。①原発事故のもたらす被害はきわめて甚大。だから、②原発には高度の安全性(事故発生確率が低いこと)が求められるべき。③地震大国日本において高度の安全性があるということは、高度の耐震性があるということにほかならない。④しかし、我が国の原発の耐震性はきわめて低い。ですから原発の運転は許されないのです。これは「樋口理論」と呼ばれています》、《あらゆる運転差し止め訴訟で裁判官に原発の脆弱な耐震性を知らしめ、電力会社の非科学性と非常識を理解させることによって、日本の全ての原発は必ず停止できます》。古賀茂明さん《11年の東日本大震災の最大の揺れは2933ガル(「ガル」は、地震の強さを測る単位)。21世紀最大の揺れは、08年岩手・宮城内陸地震の4022ガルだ。16年の熊本地震は1700台。今世紀の1000ガル以上の地震は18回とかなりの頻度だ。原発の耐震設計基準はと言えば、大飯原発が設計時に405ガル後に856ガルまで大丈夫だとされたが、他の原発も1000以下が多い。一方、三井ホームの耐震性は5115ガル、住友林業の住宅は3406ガルで、日本の原発がいかに地震に弱いかがわかる》。志賀核発電所では、《1号機で最大957ガルを観測し…2号機も…871ガル》。

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/314413?rct=editorial

<社説>3・11から13年 能登半島からの警告
2024年3月11日 07時37分

 「原子力災害対策指針については、特にこの地震を受けて見直さないといけないところがあるかというと、私はないと考えています」。原子力規制委員会の山中伸介委員長は、1月末の定例記者会見で、こう述べました。

 北陸電力志賀原発のある石川県・能登半島。地震による道路の寸断=写真、志賀町=や家屋の倒壊などにより、原発事故で放出される恐れのある放射線から逃れることの難しさがあらためて浮き彫りになりました。

 ところが規制委は、その現実を見た後でも、見直しは微調整にとどめ、「避難と屋内退避を適切に組み合わせることで、被ばく線量を抑える」という原子力災害対策の基本方針を維持していくというのです。

 文字どおりの当事者である志賀町の稲岡健太郎町長が、同じ現実を見て、再稼働容認から慎重へと態度を変えたのとは対照的です。規制委の姿勢には当事者意識が希薄、いや、どこか他人事(ひとごと)の感じさえ漂います。

 2011年の福島第1原発事故の際には、避難先や避難ルートなどがあらかじめ決められておらず、特定の施設に避難者が集中したり、道路が渋滞したりするなどの混乱が生じ、多くの周辺住民が長時間、被ばくの危険にさらされました。それを教訓に翌12年、発足したばかりの規制委が策定したのが、原子力災害対策指針。県や市町村はこの指針に基づいて、地域の実情に応じた防災計画や広域避難計画を定めています。

 現行の指針では、大量の放射性物質が外部に飛散するような原発事故が発生した場合には、渋滞などの混乱を避けるため、原発から5キロ圏内の住民の避難を優先し、5~30キロ圏内は、放射線量が一定量を超えるまでは屋内退避としています。

 しかし、能登半島を襲った地震の猛威を考えれば、それはとても現実的とは言い難い

 土砂崩れや路面の崩落、ひび割れなどが相次ぎ、志賀原発周辺では、県が原発災害からの避難ルートと定める国道や県道11路線のうち、7路線が通行不能。避難ルートにつながる町道なども各地で寸断され、30キロ圏内の同県輪島市と穴水町では8集落で435人が孤立状態に陥りました。


◆現行指針は通用するか

 今月はじめ、志賀原発の正門前から輪島市方面に車を走らせました。国道249号を北上する県の避難ルートです。発災から2カ月以上たち、通行止めこそ解消されていたものの、路面はパッチワークのように応急の補修が施され、ひび割れや段差も目立ちます。

 傾いた信号の下をくぐって峠道に入ると、ところどころに土砂崩れの跡があり、復旧工事のための片側交互通行区間が続きます。地震直後、その上、雪でも積もっていたら…。有事の際の大混乱は、想像に難くありませんでした

 さらに屋内退避の前提も崩れたというべきでしょう。

 石川県によると、住宅被害は志賀町だけで6400戸以上。原発事故に備え、被ばく対策を施した学校や病院などの「放射線防護施設」も、30キロ圏内にある21施設のうち6施設で損傷や異常が生じ、2施設は閉鎖にすべての施設で断水になりました。万が一の時、乳幼児や高齢者、傷病者らが一時避難する先に想定されている施設が、こんな状況なのです。

 この現実が語っているのは、リアルな災害時に現行の指針は通用しない-ということなのではないでしょうか。抜本的な見直しが必要と考えるのが自然でしょう。

 無論、能登半島だけの問題ではありません。日本の原発のほとんどが半島の付け根や先端など交通網の脆弱(ぜいじゃく)な海沿いの過疎地に立地しています。柏崎刈羽伊方浜岡島根避難の実効性を疑う声が各地から聞こえてきます


◆立ち止まって考えよう

 政府はもう福島の教訓を忘れたらしく、昨年、「原発復権に大きくかじを切りました

 能登半島地震の発生から13日後、ようやく被災地を訪れた岸田文雄首相は、志賀原発の再稼働について記者から問われ、「新規制基準に適合すると認めた場合のみ、地元の理解を得ながら再稼働を進める方針は変わらない」と答えています。やはり、現実を見ていないとしか思えません。

 あの大震災から、今日でちょうど、13年。危険な非常口なきマンションに国民を住まわせ続けてよいわけがない。一度、立ち止まって考えよ-。「能登半島からの警告」ではないのでしょうか。
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●老朽原発を含む関電美浜・高浜核発電所の運転差し止め訴訟、基準地震動は妥当で、《老朽化対策も合理的》と福井地裁・加藤靖裁判長は判断

2024年04月17日 00時00分04秒 | Weblog

[↑ ※「地震列島の原発安全性に警告」(週刊金曜日 1457号、2024年01月26日号)]


(2024年03月31日[日])
《東日本大震災2933ガル、08年岩手・宮城内陸地震4022ガル、16年熊本地震1700台…多くの核発電所1000ガル以下…》《大飯原発…856ガルまで大丈夫だとされたが、他の原発も1000以下が多い。一方、三井ホームの耐震性は5115ガル、住友林業の住宅は3406ガル》。
 老朽原発を含む関電美浜・高浜核発電所の運転差し止め訴訟、基準地震動は妥当で、《老朽化対策も合理的》と福井地裁・加藤靖裁判長は判断したそうだ。3.11東京電力福島第1核発電所人災から13年、何の教訓も得ない愚かな裁判官。能登半島地震からわずか3カ月、あの惨状を目の当たりにしても、「警告」を理解できない愚かな裁判官。

   『●東電核発電人災から13年: 汚染水海洋投棄を強行し、柏崎刈羽核発電所
     を再稼働したい東電…3.11の教訓は? 能登半島地震の「警告」を無視…

   『●能登半島地震と珠洲核発電所建設計画凍結と断層の上に建つ志賀核発電所
      …「悪夢のような民主党政権」と比較して、今のキシダメ政権の無残さ
   『●能登半島地震と珠洲核発電所建設計画凍結と断層の上に建つ志賀核発電所
      …それでも再稼働・新規建設したいという核発電〝麻薬〟中毒患者ら
   『●【能登を襲った巨大地震/狙撃兵】《役立たずかと思うほど鈍くさい動き
     に、思わずこの連中に「人の心」は宿っているのだろうかと思うほどである》
   『●「想定外」!? 【震度5強の志賀原発で「想定外」続々…なのに規制委は
     動かない 「安全上影響ない」「一定の時間かかる」とは?】(東京新聞)
   『●斎藤貴男さん《日本列島は地震の巣なのに、原子力の利用を「国の責務」と
     うたうGX(グリーントランスフォーメーション)法案にかまけて》いた…
   『●これまでの教訓は何処に? 決して「想定外」と言う勿れ…能登半島地震
      と珠洲核発電所建設計画凍結と断層の上に建つ北陸電力志賀核発電所
   『●本当に賢明な判断だった…珠洲核発電所《建設を阻止したのは、住民らの長
     年にわたる根強い反対運動だった…無言電話や不買運動に耐えた阻止活動》
   『●石川県志賀町・稲岡健太郎町長「北陸電力は再稼働を目指すとのこと
     だが、首長として以前のように安全性をアピールすることは難しい」と…
   『●3.11東京電力核発電人災の教訓はどこに? 能登半島地震の警告は?
     正気だろうか? 東電に核発電所を運転する資格や能力は在るのかね?
   『●小出裕章さん《今回一番学ばなければいけないことは、志賀原発が止まって
      いてよかったということ。…原発が1年間稼働すれば、広島原爆が…》
   『●《志賀原発…すぐ近くで地盤が4m隆起…取水口が海面から離れることに
     より冷却水が取れなくなる恐れ…原発の建屋が損傷する恐れもあった》
   『●「閉じない環」破綻した核燃サイクル…《1993年から26回の延期…核
     燃料サイクル政策は要の再処理工場の稼働が見通せず、「破綻」》が露わ
   『●日刊ゲンダイ【注目の人 直撃インタビュー/ジャーナリスト青木美希氏が
     100人超の取材で辿り着いた結論「首相が決断すれば原発は止められる」】

 東京新聞の記事【美浜、高浜原発の差し止め認めず 2件の仮処分で福井地裁が決定】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/318087)。《関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)と、関電高浜1~4号機(同県高浜町)の運転差し止めを福井県などの住民がそれぞれ求めた2件の仮処分で、福井地裁(加藤靖裁判長)は29日、いずれも差し止めを認めない決定を出した。美浜3号機は福井県の住民らが申し立て、地震に対する安全性が確保されていないと主張。基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)は低く設定されているとし、施設は老朽化し、避難計画も実効性が乏しいと訴えていた。高浜1~4号機の差し止めを求めた福井県とさいたま市の住民2人は、原発は耐震性が不足して危険と指摘。老朽化した設備では重大事故が起きる危険性があると主張していた》。
 柴山雄太記者による、毎日新聞の記事【美浜、高浜原発の運転認める 福井地裁、住民の仮処分申請却下】(https://mainichi.jp/articles/20240328/k00/00m/040/332000c)。《2件の仮処分申請で、住民側は老朽化に伴う設備の劣化で事故発生のリスクが高まっていると訴えた。耐震設計の際に考慮する最大規模の揺れ「基準地震動」も妥当ではないと指摘。美浜3号機では、地震の震源になり得る断層が原発そばにあるのに、地震動の策定で十分な余裕を考慮していないとも主張した。これに対し、関電側は「施設の経年劣化を加味して安全性を確保している」などと反論。》

 《40年超運転認可「合理的」》だそうだ、3.11の教訓や能登半島地震の「警告」を無視する無責任裁判官。能登半島地震から、たった3か月、「合理的」と判断できる神経を理解できない。
 アサヒコムの記事【老朽原発差し止め却下 美浜・高浜 40年超運転認可「合理的」 福井地裁】(https://www.asahi.com/articles/DA3S15899842.html?iref=pc_ss_date_article)。《運転開始から40年を超える老朽原発を含む関西電力美浜3号機(福井県美浜町)と高浜1~4号機(同県高浜町)について、地元住民らが運転の差し止めを求めた仮処分申請で、福井地裁(加藤靖裁判長)は29日、いずれも却下する決定をした。住民側は名古屋高裁金沢支部への即時抗告を検討している。差し止めを求め…》。

 正気? ← 《基準地震動…は東京電力福島第1原発事故を踏まえた新規制基準に基づき地域特性を踏まえ策定されている》。
 東京新聞の記事【美浜、高浜原発の差し止め認めず 危険性否定し活用追認、福井地裁】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/318087)。《地震に対する安全性について、加藤裁判長は決定理由で、基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)は東京電力福島第1原発事故を踏まえた新規制基準に基づき地域特性を踏まえ策定されていると指摘。「関電の調査と原子力規制委員会の判断の過程に過誤は見当たらないとし、老朽化対策も合理的だとした》。

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https://mainichi.jp/articles/20240328/k00/00m/040/332000c

美浜、高浜原発の運転認める 福井地裁、住民の仮処分申請却下
2024/3/29 13:06(最終更新 3/29 13:51)

     (「不当決定」と書かれた旗を掲げる住民ら=福井市内で
      2024年3月29日午後1時5分、高橋隆輔撮影)

 福井県内にある関西電力美浜原発3号機と高浜原発1~4号機について、地元住民らが関電に運転の差し止めを求めた2件の仮処分申請で、福井地裁(加藤靖裁判長)は29日、いずれも運転を認める決定を出した。美浜3号機と高浜1、2号機は1970年代から稼働する「40年超原発」で、関電の安全対策を追認する形なった。

 仮処分を申し立てたのは、美浜3号機が福井県の住民9人。高浜1~4号機は福井、埼玉両県の住民2人。

 2件の仮処分申請で、住民側は老朽化に伴う設備の劣化で事故発生のリスクが高まっていると訴えた。耐震設計の際に考慮する最大規模の揺れ「基準地震動も妥当ではないと指摘。美浜3号機では、地震の震源になり得る断層が原発そばにあるのに、地震動の策定で十分な余裕を考慮していないとも主張した。

 これに対し、関電側は「施設の経年劣化を加味して安全性を確保している」などと反論。訴えを退けるよう求めていた。

 原発の運転期限を巡っては東京電力福島第1原発事故を受け、「原則40年」とするルールが定められた。ただ、点検などを経て国の原子力規制委員会が認可すれば最長60年まで延長できるようになり、70年代に運転を始めた美浜3号機や高浜1、2号機に適用されている。関電は運転開始から来年で40年となる高浜3、4号機も運転期間延長認可を規制委に申請している。【柴山雄太】
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/318087

美浜、高浜原発の差し止め認めず 危険性否定し活用追認、福井地裁
2024年3月29日 20時27分 (共同通信)

     (関西電力美浜原発3号機と、高浜原発1~4号機の
      運転差し止めを認めない福井地裁の決定を受け、
      地裁前で「不当決定を許さない!」などと書かれた
      垂れ幕を掲げる住民ら=29日午後1時7分)

 関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)と、関電高浜1~4号機(同県高浜町)の運転差し止めを福井県などの住民がそれぞれ求めた2件の仮処分で、福井地裁は29日、いずれも差し止めを認めない決定を出した。加藤靖裁判長は「(原発事故の)具体的危険があると認めることができない」と判断した。

 美浜3号機と高浜1、2号機は営業運転開始から50年近くたち、住民側は老朽化への懸念を訴えた。昨年、60年超運転が可能になる法律が成立し、決定は原発の最大限活用を掲げる国の方針を追認する形となった。

 美浜3号機で申し立てた福井県の住民9人は「不当な判断」との声明を発表。関電側は「主張を理解いただいた」とのコメントを出した。

 地震に対する安全性について、加藤裁判長は決定理由で、基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)は東京電力福島第1原発事故を踏まえた新規制基準に基づき地域特性を踏まえ策定されていると指摘。「関電の調査と原子力規制委員会の判断の過程に過誤は見当たらないとし、老朽化対策も合理的だとした。
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●斎藤貴男さん《日本列島は地震の巣なのに、原子力の利用を「国の責務」とうたうGX(グリーントランスフォーメーション)法案にかまけて》いた…

2024年01月30日 00時00分51秒 | Weblog

[※ 「3.11から12年 脱原発の約束はどこに」(週刊金曜日 1415号、2023年03月10日) ↑]


(2024年01月17日[水])
一体何をやっているんだろうか、この国は…。キシダメ政権や「利権」「裏金」党ときたら、《原状回復》することも無く、堂々と《原発回帰》へと暴走し、この12年間、着々と《原発復権》…3.11東京電力核発電人災の教訓はどこに? そして、志賀核発電所の不誠実な情報開示。隠蔽体質と言われても仕方ない。「未知の断層」がまだまだ存在する地震大国で、(おそらく活断層であることは否定できない)断層の上に志賀核発電所を造ってしまったデタラメな「利権」「裏金」党政権。せめて、すぐさま廃炉作業に着手すべきだ。不幸中の幸いであり、今回も幸運が重なったに過ぎない。(dot.)《数多くの原発訴訟に関わる海渡雄一弁護士は、こう言う。「もし志賀原発の再稼働が認められていたら、どんな悲劇に発展したことかこの地震は、地震・火山大国日本への最後の警告だ」》.
 日刊ゲンダイのコラム【斎藤貴男 二極化・格差社会の真相/SDGsというカルトの呪縛からの解放を 各地各様の事情が軽んじられすぎている】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/334774)。《昨年5月に能登地方がマグニチュード(M)6.5の大地震に襲われ、珠洲市で震度6強が観測された際、私は本欄で大要こう書いた。珠洲原発計画が凍結されていてよかった日本列島は地震の巣なのに、原子力の利用を国の責務とうたうGXグリーントランスフォーメーション法案にかまけている…》。

 添田孝史記者による、dot.の記事【能登半島地震・志賀原発 避難ルート「のと里山海道」は一時全面通行止め 避難計画は“絵空事”だった/添田孝史】(https://dot.asahi.com/articles/-/210705)。《元日に発生した能登半島地震で、北陸電力志賀原子力発電所については当日中に「異常なし」と発表された(後に訂正)。だが、原発事故があった際の避難ルートのと里山海道は複数カ所で陥没、一時、全面通行止めになった。石川県の激震地・輪島市や穴水町、七尾市原発30キロ圏内だ。地震大国・日本で「原発震災」が再び起これば、近隣住民の避難はやはり困難を極める》。
 古賀茂明さん《普通の人は、国が再稼働を認めるからには、ちゃんとした避難計画があり、その計画は、政府が言うところの世界最高水準の基準に従って規制委が審査していると思うだろう。だが、実際には全く違う規制委は、避難計画にはノータッチなのである。したがって、ほぼ全ての計画が全くいい加減な「なんちゃって避難計画」になっている。信じられないかもしれないが、それが真実だ》…。今回、それをまざまざと見せつけられた。

 能登半島地震珠洲核発電所建設計画凍結と断層の上に建つ志賀核発電所…それでも再稼働・新規建設したいという、キシダメ首相や自公お維コミ議員、原子力「寄生」委員会、電力会社などの核発電〝麻薬〟中毒患者ら。《外部電源の一部を喪失し、変圧器からの油漏れ核燃料プールの水漏れなどはあったが、原子力規制委員会は「大きな異常はなし」》…火災も起きていた(勘違いって、ホント?)訳で、これでも《大きな異常はなし》って、どういうこと? 《外部電源の一部を喪失》なんて、とんでもない大問題。《変圧器の配管が壊れ、計約7100リットルの油が漏出》も、その後、大きく修正された。
 さらには、核発電〝麻薬〟中毒患者の皆さんは、何やらアノ東京電力のアノ柏崎刈羽核発電所を再稼働したいらしいが、ホントに正気なのかね?

 元裁判官の樋口英明さん《私が大飯原発を止めた理由は4つです。①原発事故のもたらす被害はきわめて甚大。だから、②原発には高度の安全性(事故発生確率が低いこと)が求められるべき。③地震大国日本において高度の安全性があるということは、高度の耐震性があるということにほかならない。④しかし、我が国の原発の耐震性はきわめて低い。ですから原発の運転は許されないのです。これは「樋口理論」と呼ばれています》、《あらゆる運転差し止め訴訟で裁判官に原発の脆弱な耐震性を知らしめ、電力会社の非科学性と非常識を理解させることによって、日本の全ての原発は必ず停止できます》。古賀茂明さん《11年の東日本大震災の最大の揺れは2933ガル(「ガル」は、地震の強さを測る単位)。21世紀最大の揺れは、08年岩手・宮城内陸地震の4022ガルだ。16年の熊本地震は1700台。今世紀の1000ガル以上の地震は18回とかなりの頻度だ。原発の耐震設計基準はと言えば、大飯原発が設計時に405ガル後に856ガルまで大丈夫だとされたが、他の原発も1000以下が多い。一方、三井ホームの耐震性は5115ガル、住友林業の住宅は3406ガルで、日本の原発がいかに地震に弱いかがわかる》。志賀核発電所では、《1号機で最大957ガルを観測し…2号機も…871ガル》。

   『●能登半島地震と珠洲核発電所建設計画凍結と断層の上に建つ志賀核発電所
      …「悪夢のような民主党政権」と比較して、今のキシダメ政権の無残さ
   『●能登半島地震と珠洲核発電所建設計画凍結と断層の上に建つ志賀核発電所
      …それでも再稼働・新規建設したいという核発電〝麻薬〟中毒患者ら
   『●【能登を襲った巨大地震/狙撃兵】《役立たずかと思うほど鈍くさい動き

     に、思わずこの連中に「人の心」は宿っているのだろうかと思うほどである》
   『●「想定外」!? 【震度5強の志賀原発で「想定外」続々…なのに規制委は
     動かない 「安全上影響ない」「一定の時間かかる」とは?】(東京新聞)

 古賀茂明さんに言わせると、核発電所の運転を停止することは簡単だそうだ ――― 《三つ目に、避難計画の万全性を担保するために原子力規制委員会の審査を受けろと要求する。実際には審査されていないからだ》。ニッポンの裁判官は、そういうデタラメを理解しようとしていない。

   『●古賀茂明さん《国民の前で、ちゃんと議論すれば、止めろと言わずに
     止めるのは簡単だ》…裁判で勝つために ――― 樋口英明理論の浸透を
    《実は、私はかねてより、「原発を動かせと言いながら廃炉にする方法
     を提唱している》
    《原発を動かすための議論なら社長たちは拒否できない
     そこで、最初に、安全性について質問する》
    《次に、万一事故が起きた時に損害をすべて賠償するために
     民間の保険に入ってくださいと要求する》
    《三つ目に、避難計画の万全性を担保するために原子力規制委員会の
     審査を受けろと要求する》
    《四つ目は核のゴミだ。原発のゴミも適切に処分できるんですよね、
     と社長に聞く》
    《これで、全ての原発は動かなくなり、廃炉するしかなくなる

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https://dot.asahi.com/articles/-/210705

能登半島地震・志賀原発 避難ルート「のと里山海道」は一時全面通行止め 避難計画は“絵空事”だった
2024/01/07/ 10:00

     (複数カ所で陥没が確認された基本的な避難ルート
      「のと里山海道」。=2024年1月2日午後2時31分、
      石川県穴水町)

 元日に発生した能登半島地震で、北陸電力志賀原子力発電所については当日中に「異常なし」と発表された(後に訂正)。だが、原発事故があった際の避難ルートのと里山海道は複数カ所で陥没、一時、全面通行止めになった。石川県の激震地・輪島市や穴水町、七尾市原発30キロ圏内だ。地震大国・日本で「原発震災」が再び起これば、近隣住民の避難はやはり困難を極める

     (【写真7枚】避難計画とは一体何か。空から見た「のと里山海道」


*  *  *


「志賀原子力発電所をはじめ、原子力発電所については現時点で異常がないことが確認をされております」

 1月1日の地震後、最初の会見。林芳正官房長官は現地の被害状況より前に、原発の様子に言及した。地震が起きるたびに、日本、いや世界中の関心が集まってしまうからだろう。


■激震地が30キロ圏内

 能登半島西岸の石川県志賀町に北陸電力志賀原発がある。原発から約9キロ離れた同町内の観測点では震度7、原発では震度5強を記録した。激震地の輪島市や、穴水町、七尾市などは30キロ圏内になる。

 志賀原発には、東京電力福島第一原発と同じ沸騰水型で、1号機(54万kW、1993年営業運転開始)、2号機(135.8万kW、2006年営業運転開始)の2基がある。2011年の東電の事故後、運転は止まったままだ。2号機は、2014年から再稼働に向けて新規制基準の審査が進んでいたが、まだ合格していなかった。

 使用済み燃料プールには1657体の核燃料を保管している。13年近く冷やされ続けているので、すぐに心配になる事態は起きなさそうだ。

 ただし、北陸電力によると、一部の変圧器で配管が壊れて油漏れが発生し、外部電源の一部が使えなくなっているという。多重の安全策の一部を欠き、安全のレベルは下がっている

 2007年に震度7相当の揺れに襲われた東電柏崎刈羽原発で、基礎の杭に損傷が見つかったと同社が公表したのは、地震から14年後のことだった。その後、建屋の建て替えへと追い込まれた。志賀原発も、今後の調査でまだ損傷が見つかるかもしれない。


■避難訓練は「絵空事」だった

 あらためてわかったのは、地震と原発事故が同時に起きる「原発震災」では、避難するのはとても困難だということだ。

 避難経路を決めたりするのに重要な、放射線量を測るモニタリングポストは、能登半島の北部を中心に10カ所でデータを測れなくなっている(5日21時時点)。原子力規制庁監視情報課によると、一部は通信障害によるものだが、それ以外の原因は確認できていないという。

 これでは、放射線レベルは今どんな状況なのか、どの方向が安全なのか、いつ逃げるのか、判断することができない。

 東電事故の当時、福島県はモニタリングポストを26カ所に設置していたが、1台を除いて使えなくなった。地震による停電でデータが送れなくなったり、津波で機械が流されたりしたためだ。その結果、放射線量が高い地域がわからず、住民がより被曝の多い方向に逃げる事態も引き起こした

 原子力規制庁は、東電事故以降、通信手段の多重化や、電源の強化はしていたというが、教訓は生かされていないようだ。

 携帯電話も、能登半島北部では使えない地域が多い。固定電話やテレビ電波さえも、停電でダウンしたところがある。これでは情報が入らない


■「基本的な避難ルート」が複数カ所で陥没

 原発事故があった際の「基本的な避難ルート」とされていた、金沢と能登半島を結ぶ自動車専用道「のと里山海道は複数カ所で陥没が確認され、一時、全面通行止めになった他の道路も寸断され、孤立した集落も数多く残されている。

 昨年11月に、石川県は志賀原発が震度6強で事故を起こしたと想定し、住民が避難する訓練をしていた。その時の想定では、道路損壊は1カ所だけとしていた

「実際には多くの家屋が倒壊し、下敷きになった住民もいるかもしれない。死傷者も複数発生し、火災発生もありうる。道路の損壊も広範囲に、複数個所に及ぶ。津波被害も発生しているかもしれない」

「周辺市町は地震の災害対策本部を設置しているはずである。消防や警察はこうした事態への対応で奔走している。こうした中での複合災害発生である。原子力災害への対応がどこまで可能か

「重大事故が起こっても、あたかも住民が皆安全に避難できるかのような、まやかしの訓練

 今回の地震の40日ほど前に、「志賀原発を廃炉に!訴訟原告団」などの市民団体は、そんな声明を出していたが、その危惧は的を射ていたようだ。


■東海第二は避難計画不備で運転差し止め

 原発のリスクを最小限にするために、さまざまな安全対策について国際的な基準に従って国内法でも定められている。

 その柱が深層防護だ。全5層の防護レベルで安全を確保する仕組みで、最後の層となる5層目では、住民が安全に逃げられるように、計画や手順を整備しておくことを求めている。

「実現可能な避難計画及びこれを実行し得る体制が整えられているというにはほど遠い状況

 こんな理由で、水戸地裁は2021年3月に、茨城県東海村にある日本原子力発電東海第二原発運転差し止めを命じている(東京高裁で係争中)。

 判決は、避難計画の現状についてこう批判している。

「住宅が損壊し、道路が寸断することをも想定すべきところ、住宅が損壊した場合の屋内退避については具体的にふれるところがない

「道路の寸断がある場合は、通行不能となった道路等の情報を迅速に提供するとしているが、具体的な提供手段は今後の課題とされている

モニタリング機能の維持は今後の課題としている」

 今後の課題として棚上げされていた点が、まったく実現されないままであることが、今回の地震で証明された形だ。


■“大揺れ”に襲われる原発

 最近、原発は不思議なぐらい大地震に揺さぶられ続け、そのたびに住民は肝を冷やしている

・2005年8月 宮城県沖地震(M7.2 最大震度6弱) 東北電力女川原発で、設計時に想定していた地震の揺れより大きな揺れ。

・2007年3月 能登半島地震(M6.9 最大震度6強) 志賀原発で想定を超える揺れ。

・2007年7月 新潟県中越沖地震(M6.8 最大震度6強) 柏崎刈羽原発では震度7相当の揺れを観測。想定より3.8倍も大きな揺れ

・2009年8月 駿河湾地震(M6.5 最大震度6弱) 中部電力浜岡原発で想定を超える揺れ。

・2011年3月 東北地方太平洋沖地震(M9 最大震度7) 女川原発福島第一原発東海第二原発で想定を超える揺れ。福島第一では津波による電源喪失で3つの原子炉が炉心溶融。国会の事故調査委員会は「地震による損傷の可能性は否定できない」としている。

 これを見ると、今後も原発は“大きな揺れ”に見舞われ続けるだろう、と想像できる。


■地震はこれで終わりではない

 地震のたびに、想定が不十分だったことが判明する。老朽化も進んでいる。そのうち揺れで大事故を起こす原発が出てきても不思議はない。

 現在、再稼働している原発は12基で、うち7基が集中する福井県の若狭湾は、活断層が密集しており、地震の起こりやすいひずみ集中帯にも入っている

 原発を今後も使い続けるのならば、今回の地震被害と照らし合わせて、避難計画は万全なのか、再検討が必要だろう。原発周辺の道路や通信網、電源、住宅や避難所を、抜本的に強化する必要がありそうだが、それには相当の費用がかかる。しかし、住民の命や健康を守る費用をケチってはいけない

それでは発電コストが上がりすぎて割に合わないというなら、すでに原発のコストを下回りつつある再生可能エネルギーに早く切り替えた方がいい

 数多くの原発訴訟に関わる海渡雄一弁護士は、こう言う。

もし志賀原発の再稼働が認められていたら、どんな悲劇に発展したことかこの地震は、地震・火山大国日本への最後の警告だ

 地震はこれで終わりではないのだ

     (北陸電力志賀原発2号機の原子炉格納容器内
      に入り、非常時の機器などについて説明を受ける
      経団連の十倉雅和会長(左から3人目)ら
      =2023年11月28日午前、石川県志賀町)

     (能登地方が大規模な地震に見舞われた翌日の
      志賀原発=2024年1月2日午前9時46分、石川県志賀町)

     (北陸電力志賀原発=石川県志賀町)


(科学ジャーナリスト・添田孝史
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●「想定外」!? 【震度5強の志賀原発で「想定外」続々…なのに規制委は動かない 「安全上影響ない」「一定の時間かかる」とは?】(東京新聞)

2024年01月29日 00時00分42秒 | Weblog

[※ 「3.11から12 脱原発の約束はどこに」(週刊金曜日 1415号、2023年03月10日) ↑]


(2024年01月16日[火])
能登半島地震珠洲核発電所建設計画凍結と断層の上に建つ志賀核発電所…それでも再稼働・新規建設したいという、キシダメ首相や自公お維コミ議員、原子力「寄生」委員会、電力会社などの核発電〝麻薬〟中毒患者ら。《外部電源の一部を喪失し、変圧器からの油漏れ核燃料プールの水漏れなどはあったが、原子力規制委員会は「大きな異常はなし》…火災も起きていた(勘違いって、ホント?)訳で、これでも《大きな異常はなし》って、どういうこと? 《外部電源の一部を喪失》なんて、とんでもない大問題。《変圧器の配管が壊れ、計約7100リットルの油が漏出》も、その後、大きく修正された。
 さらには、核発電〝麻薬〟中毒患者の皆さんは、何やらアノ東京電力のアノ柏崎刈羽核発電所を再稼働したいらしいが、ホントに正気なのかね?

   『●能登半島地震と珠洲核発電所建設計画凍結と断層の上に建つ志賀核発電所
      …「悪夢のような民主党政権」と比較して、今のキシダメ政権の無残さ
   『●能登半島地震と珠洲核発電所建設計画凍結と断層の上に建つ志賀核発電所
      …それでも再稼働・新規建設したいという核発電〝麻薬〟中毒患者ら
   『●【能登を襲った巨大地震/狙撃兵】《役立たずかと思うほど鈍くさい動き
     に、思わずこの連中に「人の心」は宿っているのだろうかと思うほどである》

 dot.の記事【能登半島地震で露呈した原発の「不都合な真実」 政府が志賀原発を“異常なし”と強弁した理由 古賀茂明】(https://dot.asahi.com/articles/-/210770)。《やはり原発はやめるべきだ。能登半島地震を見てそう思った方はどれくらいいるのだろうか。あの大地震でも志賀原発は事故を起こさなかった!」「やはり日本の原発は安全だ!」という原発推進論者の声も聞こえてきそうだが、そんな声に騙されてはいけない》。
 同所の記事【能登半島地震でマスコミが映さない原発の「不都合な真実」 ずさんな避難計画を隠そうとする政府と電力会社 古賀茂明】(https://dot.asahi.com/articles/-/211236)。《先週に続いて、あまり知られていない原発の不都合な真実」をもう一つ紹介しよう。それは、原発周辺住民などのために作られている原発災害避難計画は原子力規制委員会の「審査を受けていないということだ。普通の人は、国が再稼働を認めるからには、ちゃんとした避難計画があり、その計画は、政府が言うところの世界最高水準の基準に従って規制委が審査していると思うだろう。だが、実際には全く違う規制委は、避難計画にはノータッチなのである。したがって、ほぼ全ての計画が全くいい加減な「なんちゃって避難計画」になっている。信じられないかもしれないが、それが真実だ。今回の能登半島地震では、地震と津波、火災による家屋の被害とともに、広範囲に及ぶ道路が、土砂崩れ、亀裂、陥没、隆起などで寸断された。津波で港が被害を受け、海岸が隆起した地域もあった》。
 古賀茂明さんに言わせると、核発電所の運転を停止することは簡単だそうだ ――― 《三つ目に、避難計画の万全性を担保するために原子力規制委員会の審査を受けろと要求する。実際には審査されていないからだ》。ニッポンの裁判官は、そういうデタラメを理解しようとしていない。

   『●古賀茂明さん《国民の前で、ちゃんと議論すれば、止めろと言わずに
     止めるのは簡単だ》…裁判で勝つために ――― 樋口英明理論の浸透を
    《実は、私はかねてより、「原発を動かせと言いながら廃炉にする方法
     を提唱している》
    《原発を動かすための議論なら社長たちは拒否できない
     そこで、最初に、安全性について質問する》
    《次に、万一事故が起きた時に損害をすべて賠償するために
     民間の保険に入ってくださいと要求する》
    《三つ目に、避難計画の万全性を担保するために原子力規制委員会の
     審査を受けろと要求する》
    《四つ目は核のゴミだ。原発のゴミも適切に処分できるんですよね、
     と社長に聞く》
    《これで、全ての原発は動かなくなり、廃炉するしかなくなる

 元裁判官の樋口英明さん《私が大飯原発を止めた理由は4つです。①原発事故のもたらす被害はきわめて甚大。だから、②原発には高度の安全性(事故発生確率が低いこと)が求められるべき。③地震大国日本において高度の安全性があるということは、高度の耐震性があるということにほかならない。④しかし、我が国の原発の耐震性はきわめて低い。ですから原発の運転は許されないのです。これは「樋口理論」と呼ばれています》、《あらゆる運転差し止め訴訟で裁判官に原発の脆弱な耐震性を知らしめ、電力会社の非科学性と非常識を理解させることによって、日本の全ての原発は必ず停止できます》。

 古賀茂明さん《11年の東日本大震災の最大の揺れは2933ガル(「ガル」は、地震の強さを測る単位)。21世紀最大の揺れは、08年岩手・宮城内陸地震の4022ガルだ。16年の熊本地震は1700台。今世紀の1000ガル以上の地震は18回とかなりの頻度だ。原発の耐震設計基準はと言えば、大飯原発が設計時に405ガル後に856ガルまで大丈夫だとされたが、他の原発も1000以下が多い。一方、三井ホームの耐震性は5115ガル、住友林業の住宅は3406ガルで、日本の原発がいかに地震に弱いかがわかる》。志賀核発電所では、《1号機で最大957ガルを観測し…2号機も…871ガル》。
 今頃、「想定外」などと口にしていいのか? そんなに〝想定外〟のことがまだ起こり得るのならば、《新規制基準の適合性を審査》など、即座に、中止すべきだ。今回の志賀核発電所、様々な配管や、耐震設計されてない部品や施設が多数あるはずで、本当に地震で何の損傷もしていないのか? 日本全体・地球規模での壊滅的な核発電所の事故は、3.11に続き、今回も、大変な幸運にも、回避されたのではないか。再びの幸運だったに過ぎないのではないか。3度目はあるのか? ブログ主は、3.11東京電力福島核発電所人災でも、津波よりもむしろ、地震により激しく施設が損傷したと思っている。
 渡辺聖子記者による、東京新聞の記事【震度5強の志賀原発で「想定外」続々…なのに規制委は動かない 「安全上影響ない」「一定の時間かかる」とは?】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/302420)。《能登半島地震は、東京電力福島第1原発事故後に進められていた原子力災害への備えに、想定外の事態を突きつけた。停止中の北陸電力志賀原発(石川県)は設備の故障で外部電源の一部から電気を受けられなくなり完全復旧には半年かかる見通し。道路の寸断や家屋の倒壊も激しく、深刻な原発事故が起きていたら計画通りの避難は困難だった。だが、今回浮かび上がった課題に対し、原発の事故対策や避難指針の策定を担う原子力規制委員会の動きは鈍い。(渡辺聖子)》、《北陸電力志賀原発 1、2号機のうち2号機が再稼働の前提となる新規制基準の適合性を審査中。1日の能登半島地震では、1号機地下で震度5強を観測。地震の揺れの強さを示す加速度は、1号機で最大957ガルを観測し、旧原子力安全・保安院時代に設定した想定値を39ガル上回った。2号機も25ガル上回る871ガルだった。揺れで壊れた変圧器から約2万リットル以上の油が漏れ、一部は海に漏えいした》。
 驚くことに、「想定外」と言いつつ「大丈夫」だと言い、さらには、この東京新聞の記事によると、《山中伸介委員長…新たな地震想定の規模によっては稼働中の原発が停止する可能性も出てくるが、山中委員長は「他の原発にも影響あるかどうかは分析次第。一定の時間がかかる」と述べるにとどめた》そうだ。分析中は、核発電所の稼働を続ける気らしい…。

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https://dot.asahi.com/articles/-/210770

能登半島地震で露呈した原発の「不都合な真実」 政府が志賀原発を“異常なし”と強弁した理由 古賀茂明
政官財の罪と罰
2024/01/09/ 06:00

 やはり原発はやめるべきだ

     【写真】「原発に異常なし」と木で鼻を括ったように
         発言した政権幹部はこの人

 能登半島地震を見てそう思った方はどれくらいいるのだろうか。

 「あの大地震でも志賀原発は事故を起こさなかった!」「やはり日本の原発は安全だ!」という原発推進論者の声も聞こえてきそうだが、そんな声に騙されてはいけない

 2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きるまで、日本では、「原発は安くて安全でクリーン」だという原発神話が存在した。事故でその神話が一旦崩壊した後、急速に発展する再生可能エネルギーとの比較からも、今では「原発は高い」「原発は汚い」という事実はかなり広く理解されるようになった。

 しかし、「原発は危ない」という点については、少し状況が異なる。

 福島第一原発の事故で原発の危険性を思い知らされ、「原発はいらない!」と強く思った多くの国民は、事故から12年を経て、あの想像を絶する原発事故の痛みと恐怖を忘れてしまったかのようだ

 原発推進論者が、「原発が動かないから電気料金が上がる」とか、(夏や冬のほんの一時期だけなのだが)「需給が逼迫して停電のリスクがある」とか叫ぶと、いとも簡単に、「それなら原発を動かしてもいいか」という反応を示すようになったのだ。

 実は、今回の地震の結果を見るまでもなく、日本の原発は危ないから止めるべきだと考える十分な根拠がある。

 私は、これを「原発の不都合な真実」と呼んでいる。意外と知らない人が多いのだが、今回の地震と併せて考えていただけば、理解が深まると思うので、この機会に一つだけその話を紹介したい。

 「原発の不都合な真実」の中で、もっとも重要なのは、原発の耐震性に関する事実だ。

 当たり前の話だが、原発の事故が起きても良いと考える人はほとんどいない。多くの人は、政府が、「世界最高水準の規制基準を満たしています」と言うのを聞いて、「福島の事故を経験しているのだから、さすがに動かして良いという原発は安全なものに決まっている」と信じているようだ。

 日本の国土は世界のわずか0.25%しかないのに、2011年~2020年でみると全世界のマグニチュード6.0以上の地震の17.9%が日本周辺で発生するという、世界で最も危険な地震大国だと言って良いだろう。その日本で世界最高水準の規制に適合していると聞けば、「原発は、ちょっとやそっとの地震ではびくともしない」と誰もが思っているだろう。

 しかし、真実は全く違う日本の原発は地震に極めて弱い。それをわかりやすく説明したのが、関西電力大飯原発を止めたことで有名な樋口英明元福井地裁裁判長だ。

 私も樋口氏から直接話を聞いて知ったのだが、日本の原発は、民間のハウスメーカーが販売する耐震住宅よりもはるかに耐震性が低い。たとえば、三井ホーム、住友林業の耐震性は、各々最大約5100ガル(ガルは加速度の単位、大きいほど強い揺れを示す)、約3400ガルに耐える設計になっている。

 一方、たとえば、四国電力の伊方原発の耐震基準は650ガル、高浜原発は700ガルと、日本の原発の耐震性は民間住宅の数分の1し

かない。北陸電力志賀原発も建設当時は490ガル、その後600ガルに引き上げられ、現在は1000ガルということで安全審査を申請している。なぜ、耐震性が上がっているかというと、さすがに3桁では信用されないということで、いくつかのマイナーな耐震対策を施して耐震性がすごく上がったと説明しているのだ。

 日本では2000年から20年までの間に、1000ガル以上の地震が17回、700ガル以上は30回起きていた。つまり、原発の耐震基準を超える地震はごく普通に起きるのである。ちなみに、日本で記録された最大加速度は2008年の岩手・宮城内陸地震の4022ガルである。2番目が2011年の東日本大震災の時の2933ガル

 この事実を知れば、原発の耐震性はこれらよりも強くして欲しいと思う。しかし、日本の原発の耐震基準の大半は1000ガル以下である(詳しくは、樋口氏の著書『私が原発を止めた理由』『南海トラフ巨大地震でも原発は大丈夫と言う人々』〈いずれも旬報社〉を参照のこと)。

 このような事実を知る人が増えれば、そんなに危ない原発が動いていたのかと驚き、今すぐ止めてくれということになるだろう。

 今回の能登半島地震の最大加速度は、原発のある石川県志賀町の観測点で、東日本大震災に匹敵する2828ガルだったことがわかった。1000ガル以上も計7地点で確認されている。

 だが、たまたま運が良かったのかどうか、あるいは計測に異常があったのかもしれないが、北陸電力の発表を鵜呑みにすると、志賀原発1号機原子炉建屋地下2階で399.3ガルだったということだ(それ以外の観測点でどうだったのかはわからない)。近隣に比べて何故かずいぶん小さな揺れだったということになる。

 1000ガルの基準地震動から見れば余裕というところなのだろうが、その割には、かなり深刻な被害が出たのが驚きだ。使用済み燃料プールの水が大量に溢れる冷却ポンプが一時停止する複数の変圧器付近で配管の破損による大量の油漏れがあり、その影響で外部電源の一部系統が使用不能になるなどかなりの異常が発生した。これらの結果、放射能が外部に漏れたかどうかが気になるところだが、当初、モニタリングポストでは放射能漏れは観測されていないと発表されて胸を撫で下ろした。だが、なぜか4日になって、原発の北15キロ以上離れたところにあるモニタリングポスト14カ所でデータが確認できていないことが発表された。他のモニターの値が信用できるのか、また、より近くのモニタリングポストで計測不能になっていたらどうなったのかということも不安材料となった。

 これらの異常の他に何があったかはまだ明らかにされていない。特に、敷地内で建物や道路に亀裂が入ったり、隆起や陥没があったりしたかなどはすぐにわかりそうなものだが、発表があったのは5日になってから。それも、1号機の原子炉建屋付近や海側エリアなどで最大35センチの段差やコンクリートの沈下などがあったという程度の簡単な情報提供だけだった。道路に段差があれば、消防隊などの活動に支障が生じたりするので実は深刻は事態だが、そのようなことを連想させたくないのだろう。

 そして、何よりも気になるのが、北陸電力や政府の情報の出し方である。地震の発生後最初に伝えられた「志賀町で最大震度7」という情報を聞いた私は、真っ先に、これは大変だと思った。志賀町といえば原発だ。それがどうなっているのか、住民はすぐに避難しなくて良いのかということが気になった。しかし、テレビを見ていても、出てくる話は、津波のことばかり。もちろん、それが最も重要な情報であることはわかる。それを繰り返し流すことは必要だ。

 しかし、原発の状況についても、万一のことを考えれば、決して後回しで良いという話ではない。ところが、原発の状況について政府が具体的に触れたのは事故から2時間以上経過した後だった。林芳正官房長官が会見で、「現時点で異常なし」と木で鼻を括ったような発言をしたのだ。だが、記者の質問が飛ぶと、突然、変圧器で火災が発生と驚くような話をして、すでに消火と言い添えた。変圧器で火災なら重大事故なのではないかと心配になる。現に、外部電源が一部断たれたわけだから、「異常事態」であるのは疑いようがない(火災については、のちに北陸電力が否定したが、官房長官は訂正せずに放置した。この官房長官発言が原因で、原発で火災という情報が拡散して混乱を生じさせた。ちなみに、北陸電力は、爆発音と焦げ臭いにおいがしたことやスプリンクラーが作動して水浸しになったことは認めたが、それでも火災はなかったと主張している)。

 では、原発で火災があったという前提で、「異常なし」と涼しげに語った林氏の意図はどこにあったのか。何か特別の意図があったのではないかとどうしても勘ぐりたくなる。

 志賀原発については、元々その敷地内に活断層があるのではないかということがずっと疑われてきた。もし、今回の地震で「異常」があったということになれば、あらためて活断層への疑念が深まる。それがなくても、基準地震動の見直しとそれに基づく対策の実施が求められる可能性も出てくる。コストの問題もありまた再稼働までの時間が延びることも必至なので、それは北陸電力としてはどうしても避けたい。だから、「異常」はなかったと言いたくなる。

 むしろ、今回の地震を奇貨として、これほど大きな地震でも「何の問題もなかった」と言えれば、いかに志賀原発が安全かを示していると言えるとさえ計算していたのではないか。そんな疑いをかけたくなる林氏の対応だった。

 疑念はこれだけにとどまらない。政府にとって、実はもっと大事なことがある。それは東電柏崎刈羽原発の再稼働だ。

 東電は事故後倒産寸前に陥り、福島事故の後始末も自力ではできなかった。このため、政府は巨額の出資で資金を注入し、東電を政府の「子会社」とした。その資金を回収するためには、政府保有の東電株を高く売らなければならない。だが、東電は経営が苦しく株価が低迷している。柏崎刈羽原発が動けば、発電コストが下がり、利益が大幅に増える。その結果株価が上がり、政府も資金回収できるというシナリオを実現するために、何としても原発を動かしたい。

 しかし、志賀原発で、耐震性に問題があったとなれば、同じ日本海側の近県に立地する柏崎刈羽にも影響が及ぶ可能性がある。それだけは何としても避けたいというのが東電のみならず、政府の強い願いだ。特に、嶋田隆首相秘書官は、次期東電会長とまで言われた経済産業省の元事務次官でもある。柏崎刈羽再稼働は、官邸にとっても最優先課題となっていた。それに水を差すことなどありえないのだ。

 こうした裏の理由により、志賀原発は、何が起きても「異常なし」で通すしかないのである。

 能登半島地震で、深刻な原発事故が起きなかったことは不幸中の幸いだった。

 しかし、今回の原発での異常事態や周辺地域の壮絶な被害状況を見れば、日本のような地震大国で原発を動かす、いや、保有するだけでもいかに大きなリスクになるのかがはっきりわかる。

 3.11から12年経って、事故の記憶が風化し、脱原発どころか、原発新増設にまで踏み込む原発推進策に舵を切ろうとしていた日本にとって、これは天啓ではないのか。これだけのわかりやすい材料を与えられて、なお、金に目が眩んで原発推進の方針を撤回できないことなどありえないと信じたいところだ。

 しかし、それは楽観的すぎるのかもしれない。

 原発事故の被害を想像する能力を失い、驕りと強欲の塊となった日本が過ちに気づくには、原発事故を待つしかない――それこそが「不都合な真実」ということなのだろうか。

 国民は、与えられたこの機会に真剣に考え直して、政府に対して原発をやめろと迫るべきである。
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/302420

震度5強の志賀原発で「想定外」続々…なのに規制委は動かない 「安全上影響ない」「一定の時間かかる」とは?
2024年1月13日 06時00分

 能登半島地震は、東京電力福島第1原発事故後に進められていた原子力災害への備えに、想定外の事態を突きつけた。停止中の北陸電力志賀原発(石川県)は設備の故障で外部電源の一部から電気を受けられなくなり完全復旧には半年かかる見通し。道路の寸断や家屋の倒壊も激しく、深刻な原発事故が起きていたら計画通りの避難は困難だった。だが、今回浮かび上がった課題に対し、原発の事故対策や避難指針の策定を担う原子力規制委員会の動きは鈍い。(渡辺聖子

 北陸電力志賀原発 1、2号機のうち2号機が再稼働の前提となる新規制基準の適合性を審査中。1日の能登半島地震では、1号機地下で震度5強を観測。地震の揺れの強さを示す加速度は、1号機で最大957ガルを観測し、旧原子力安全・保安院時代に設定した想定値を39ガル上回った。2号機も25ガル上回る871ガルだった。揺れで壊れた変圧器から約2万リットル以上の油が漏れ、一部は海に漏えいした。


◆特別な耐震性を求めていなかった「変圧器」が故障した

 「原発内の施設の不具合で受電できないことは想定していないのではないか。考えを整理する必要がある」。10日の規制委の定例会合で、志賀原発で起きたトラブルについて伴信彦委員が議論を提起した。

     (能登半島地震の対応を議論した原子力規制委員会の
      定例会合=10日、東京都港区で)

 志賀原発では1、2号機の変圧器の配管が壊れて油漏れが発生し、外部電源とつながる最も規模の大きい送電線が使えなくなった。別の回線に切り替え、使用済み核燃料の冷却などの必要な機能を保っている。

 外部電源の喪失が要因となった福島第1原発事故後、原発構内の非常用電源を複数確保することなどが新規制基準に盛り込まれた。ただ、対策は原子炉建屋などの重要設備に集中している。放射性物質を扱わない変圧器に特別な耐震性は求めていない。敷地外の電線や鉄塔が地震で損壊すれば外部電源を失うため、建屋外の電気設備には期待しない、との考えが背景にある。

     (地震による揺れで油漏れを起こした北陸電力
      志賀原発1号機の変圧器=1日(北陸電力提供))

 今回の地震では、敷地外の送電網は断たれなかったが、原発の外部電源の一部を失った。規制委の山中伸介委員長は記者会見で、変圧器の故障原因の究明は必要としたが「安全上の影響が及ぶとは考えていない」と従来の考え方を見直そうとはしなかった。


◆「適合済み」原発にも「想定外」起きては困るが

 志賀原発は、新規制基準の適合性が審査されている。事故対策に向けて想定する地震の大きさについて、今後の分析結果を踏まえた審査が進められる見通しだ。これまでに把握されていなかった断層が地震を引き起こした可能性も指摘され、想定の大幅な見直しも視野に入る。

 一方で、既に新規制基準に適合済みの原発への対応は見えない。

 新規制基準に最新の知見を取り入れた場合、審査に適合済みの原発にも反映させる仕組みがある。この仕組みが適用されれば、新たな地震想定の規模によっては稼働中の原発が停止する可能性も出てくるが、山中委員長は「他の原発にも影響あるかどうかは分析次第。一定の時間がかかる」と述べるにとどめた。


◆国の指針に沿った避難ができない状況が実際起きたのに

 志賀原発の30キロ圏内で空間放射線量を測るモニタリングポストは、約120カ所のうち最大18カ所で一時測定ができなくなった。地震発生から11日たっても、1カ所で測定できていない。通信回線の不具合が原因とみられる。

 国の原子力災害対策指針は、原発事故が起きた場合、放射線量の実測値に基づき屋内退避や避難すると定める。今回、実測値が把握できず、石川県内では600戸以上の家屋が全壊し、道路は各地で寸断。原発事故が起きれば、指針通りに避難できない状況だった。

 山中委員長は、自動車やドローンなどで線量を測る手段もあると強調。「木造家屋が多く、屋内退避できない状況が発生したのは事実」と指針の前提が崩れたことは認めながらも、見直しについて具体的に言及することはなかった。


【関連記事】志賀原発「異常なし」から考えた 運転中だったら?「珠洲原発」だったら? 震度7の地震は想定内なのか
【関連記事】「柏崎刈羽」周辺道路にも無数の亀裂…「原発は本当に大丈夫か?」地元に広がる不安の声
【関連記事】志賀原発の周辺15カ所で放射線量を測定不能 モニタリングポストが「壊れているのか、埋まっているのか…」
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●能登半島地震と珠洲核発電所建設計画凍結と断層の上に建つ志賀核発電所…「悪夢のような民主党政権」と比較して、今のキシダメ政権の無残さ

2024年01月05日 00時00分19秒 | Weblog

[※ 「3.11から12年 脱原発の約束はどこに」(週刊金曜日 1415号、2023年03月10日) ↑]


(2024年01月04日[木])
能登半島地震の被災者の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。一日も早く安寧な生活に戻られることを祈念しています。
 それにしても、3.11以降でさえも、軍事費は倍増しても、防災や復興のための備えが全くなされてこなかったことが残念でなりません。アベ様をはじめ、カルトとヅボヅボな利権政党が云う「悪夢のような民主党政権」と比較して、今のキシダメ政権の実情は無残過ぎる。アノ馳浩石川県知事も…。さらに、《原状回復》することも無く、堂々と《原発回帰》へと暴走し、この12年間、着々と《原発復権》…3.11東京電力核発電人災の教訓はどこに?

   『●西日本大豪雨…「国民の生命と財産を守るって、
     口だけじゃないか」「博打の議論なんてやっている場合か」
   『●《どうして海外に何兆円とばらまいているのに、自国の困った国民の
     暮らしに回せないのかといつも思う。優先順位が狂っているのである》
    「赤坂自民亭なもの、害遊、軍事費倍増…やってる場合なのかね。
     豪雨で久留米・田主丸や秋田などなどが酷いことになっているのに、
     何やってんの、キシダメ首相は? 軍事費などよりも、災害対応に
     予算を回しなさいよ。赤坂自民亭以降、「レッドサラマンダー」は、
     一体、何台増えたの? まさか1台増えて、2台? 」

 dot.の記事【〈能登半島地震の衝撃〉「全活断層を警戒すべき」「どこで起きてもおかしくない」 専門家が防災を促す本当の理由/野村昌二】(https://dot.asahi.com/articles/-/210490)によると、《2024年1月1日に起こった石川県能登地方を震源とする強い地震の被害が、明らかになってきている。能登半島では20年12月から群発地震が報告されており、流体の関与が指摘されてきた。今回の地震もその発生領域で起きたことから、一連の活動とみられる。ただ、流体が関与したかやそのメカニズムはまだはっきりしない。未知の断層との関連も指摘されている》。

 珠洲核発電所の建設計画の凍結、その正しい判断が、このような形で立証されたことが哀しい。
 一方、志賀核発電所の対応の酷さ。「未知の断層」がまだまだ存在する地震大国で、断層の上に志賀核発電所を造ってしまったデタラメな「利権」「裏金」党政権。

   『●金沢地裁原発差し止め判決: 井戸謙一元裁判官
    《2006年3月、金沢地裁―志賀原発訴訟で国策に逆らう判決を
     下すまでの重圧と苦悩 唯一の原発差し止め判事
     (井戸謙一元裁判長)「私がNOを突きつけた理由」》
    《再稼働差し止め求め仮処分=関電原発の7基対象に住民-大津地裁
     2011年8月2日16時6分…代理人の一人の井戸謙一弁護士は
     記者会見で「第二のフクシマを起こしてはならないという強い決意を
     政府、電力会社、国民が持つべきだ」と述べた》

   『●海渡雄一氏インタビュー「原発と司法」
   『●原発裁判はどれも完敗:
         井戸謙一元裁判官と小出裕章さんの対話

   『●そりゃぁ、東京電力原発人災以降を見ただけでも、
                       「司法」にも絶望するよな

   『●井戸謙一元裁判官再び:
          最高裁は常に国側に、そして、努力は無駄に

   『●金沢地裁原発差し止め判決: 井戸謙一元裁判官
   『●志賀原発訴訟第二ラウンド: 裁判所は信頼を回復できるか?
   『●「自民党と政治権力」
        『週刊金曜日』(2013年7月19日、952号)について

   『●「鼻血問題」: 「原発関連死」と「死の街」発言
   『●東京電力原発人災鼻血問題: 
          風評被害に矮小化していて良いのか?
   『●井戸謙一さん「高浜3、4号機再稼働差止仮処分」
        …「仮処分決定は、直ちに効果が発生」、再稼働不能』 

   『●金沢地裁・井戸謙一元裁判長「「原子炉を運転してはならない」。
                自ら発した声に法廷はどよめいていた」
   『●「効率より安全、経済より命」: 井戸謙一元裁判長、
       樋口英明・山本善彦裁判長の声は班目春樹氏には…?
   『●北陸電力志賀核発電所の原子炉直下に活断層の存在を知りながら
               …再稼働のために一千億円以上もドブガネ
    《北陸電力 志賀原発(石川県)の直下を走る断層が、地震を起こす
     恐れのある活断層と認定された。活断層が連動して動く怖さは、
     熊本地震で骨身に染みた過去に学べば志賀原発は動かせない
    《原発事故から十年たった一九九六年の四月に現地入りした時、
     何度も聞いたのは、「悲劇は終わったのではなく、続いている
     という言葉だった…福島の事故後に新たに投じられることになった
     原発の追加安全対策費二兆円を軽く超えるという。北陸電力
     志賀原発など、複数の活断層があると指摘されたのに
     一千億円以上もかけ再稼働を図るという。活断層の恐ろしさは
     その目にどう映っているのか》

   『●裁判所も歪む…《国が開発の政策的な枠組みを決め、その下で
       電力会社に》核発電所を…《そして裁判所も一体となり…》
    《原発訴訟で原告勝訴を決めた、たった3人の裁判長――その苦悩
     描いたのが『原発に挑んだ裁判官』(朝日文庫、著・磯村健太郎
     山口栄二、660円)だ。元京都大学原子炉実験所助教・小出裕章氏が
     評論する。…そして裁判所も一体となり…。…北陸電力志賀原発
     2号機の運転差し止めを命じた金沢地裁判決(井戸謙一裁判長)…》

   『●《理性と良識》で判断…核発電は《「被害が大きくて」かつ「事故発生
     確率も高い」という2つが揃ったパーフェクトな危険》(樋口英明さん)

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https://dot.asahi.com/articles/-/210490

能登半島地震の衝撃「全活断層を警戒すべき」「どこで起きてもおかしくない」 専門家が防災を促す本当の理由
2024/01/04/ 07:00
野村昌二

 2024年1月1日に起こった石川県能登地方を震源とする強い地震の被害が、明らかになってきている。能登半島では20年12月から群発地震が報告されており、流体の関与が指摘されてきた。今回の地震もその発生領域で起きたことから、一連の活動とみられる。ただ、流体が関与したかやそのメカニズムはまだはっきりしない。未知の断層との関連も指摘されている。全国の主要活断層について報じたAERA 2023年3月6日号の記事を再掲する(この記事は「AERA dot.」で2023年3月3日に掲載した記事を再編集したものです年齢、肩書は当時のまま)。


*  *  *


 2023年1月、国の地震調査研究推進本部(地震本部)は「主要活断層帯」を公表した。M7級以上の地震発生の危険度を「S」「A」「Z」「X」の4段階の「ランク」で分類。最も危険度が高いのが「Sランク」で、今後30年以内に地震が発生する確率が3%以上。次いで、「Aランク」は同0.1~3%未満、「Zランク」は同0.1%未満、「Xランク」は確率不明。ランク分けされているが、未調査の地域などでも地震は発生しており、専門家は「すべての活断層に注意が必要」と警鐘を鳴らす。

 Sランク活断層がないから安心というわけではない。九州大学大学院地震火山観測研究センターの松本聡教授(地震学)は注意を促す。

「一般的にM7クラス未満の地震は、地下の断層が動いた痕跡(こんせき)が地表に現れにくく、『未知の活断層もたくさんあります。活断層が見えているところは当然ですが、見えない場所でも注意は必要。いつ、どこで起きてもおかしくありません

 実際、08年の「岩手・宮城内陸地震」(M7.2)や18年の「北海道胆振東部地震」(M6.7)などは、それまで知られていなかった未知の活断層が引き起こしたとされている。

 日本活断層学会会長で名古屋大学の鈴木康弘教授(地理学)によれば、活断層には「一定の間隔で一定の規模の地震を起こす」という「固有地震説」があり、地震本部はそれに基づいて次の活動が近いと思われるものを、SあるいはAランクとして示している。しかし、実際には固有地震説には限界があり、例えば14年の長野県北部(白馬付近)の地震は「想定外」だった。予測より小さなM6.7だったが、それでも局所的に激しい揺れが生じ、約80棟が全壊するなど大きな被害が出た。鈴木教授は言う。

「XやZランクでも、活断層である限り注意を怠ってはいけません。混乱を生じかねない予測情報の取り扱いについて、政府ははっきり見解を示してほしい」


■自分の命守る備え

 地震本部地震調査委員長で東京大学の平田直(なおし)名誉教授(地震学)も、Sランクだけを見てそれ以外の場所は安心だと思ってはいけないと強く警鐘を鳴らす。

「顕著な活断層があるところは明らかに繰り返し地震があった場所なので、それを念頭に入れて対策を取ることは大切です。しかし、未調査の地域や活断層のない所で発生する地震も多く、特定の活断層だけを見て判断するのは防災上、極めてよくありません

 平田名誉教授は、個別の活断層だけではなく、周囲の活断層も含め地域全体で見ていくことが大切だという。

 例えば、関東地域はSランクの三浦半島断層群の30年以内の発生確率は6~11%だが、区域で見ると17%、さらに関東全域で見れば50%になる。これは南海トラフ地震の発生確率(60%程度)と比べ決して低くない。地震本部は関東の他、中国、四国、九州の「地域評価」を行っていて同本部のホームページで確認できる。

「日本列島の成り立ちを考えれば、日本中どこで大地震が起きてもおかしくありません。活断層がないから安心と考えるのではなく、いつ地震が起きてもいいよう対策を取ることが大切。建物の耐震化を進め、家具の転倒防止をするなど、自分の命を守るための備えをしておくことが重要です」(平田名誉教授)

 備えても備えすぎるということはない。食料や水などの備蓄も大切だ。いつか必ず起きる大地震に備え、対策はできているか。あの日から間もなく12年。3月11日を前に、改めて見直したい。(編集部・野村昌二

※AERA 2023年3月6日号より抜粋
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●《「電力が足りないから原発だ!」というのがいかに愚かなことか。『原発をとめた裁判長』を見れば誰でもわかる。是非ご覧いただきたい》

2022年09月17日 00時00分02秒 | Weblog

[※ 『原発に挑んだ裁判官』(磯村健太郎・山口栄二) 朝日新聞出版↑]


―――――― (樋口英明さん)《私が大飯原発を止めた理由は4つです。①原発事故のもたらす被害はきわめて甚大。だから、②原発には高度の安全性(事故発生確率が低いこと)が求められるべき。③地震大国日本において高度の安全性があるということは、高度の耐震性があるということにほかならない。④しかし、我が国の原発の耐震性はきわめて低い。ですから原発の運転は許されないのです。これは「樋口理論」と呼ばれています》《あらゆる運転差し止め訴訟で裁判官に原発の脆弱な耐震性を知らしめ、電力会社の非科学性と非常識を理解させることによって、日本の全ての原発は必ず停止できます



(20220830[])
映画『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』。


【映画『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』】
 (https://saibancho-movie.com/
 (https://youtu.be/AlLlePkIcdE

   『●泊核発電所の運転差し止め…一方、札幌地裁は《廃炉請求については
     「必要な具体的事情が見いだせない」として棄却》ってどういうこと?

 タイトルから、『原発に挑んだ裁判官』(磯村健太郎・山口栄二、朝日新聞出版)を思い浮かべました。3人のお一人が、樋口英明・元福井地裁裁判長。

 週刊朝日のコラム【『原発をとめた裁判長』の教え 古賀茂明】(https://dot.asahi.com/wa/2022082500104.html)によると、《この秋にお勧めの映画がある。『原発をとめた裁判長』(監督・脚本:小原浩靖)というドキュメンタリーだ。関西電力大飯原発3・4号機の運転差し止め判決と同高浜原発3・4号機の再稼働差し止め仮処分決定を出した樋口英明元福井地方裁判所裁判長が主人公である》。

 古賀茂明さん《国民の前で、ちゃんと議論すれば、止めろと言わずに止めるのは簡単だ》…裁判で勝つために ――― 樋口英明理論の浸透を。反・核発電に、高度な工学的知識は不要である…(樋口英明さん)《原発の耐震性は信頼度も基準値も一般住宅より、はるかに劣る》のだから。

   『●裁判所も歪む…《国が開発の政策的な枠組みを決め、その下で
       電力会社に》核発電所を…《そして裁判所も一体となり…》
   『●2014年5月大飯原発運転差し止め判決…樋口英明さんは《基準地震動を
           超える地震が来ないと言えるかどうか…他の原発と共通の問題》
   『●元福井地裁裁判長・樋口英明さん《地震大国の日本には、
       北海道から沖縄まで原発を動かせる場所はどこにもない》
   『●反核発電に、高度な工学的知識は不要である…(樋口英明さん)《原発の
     《原発の耐震性は信頼度も基準値も一般住宅より、はるかに劣る》のだから
   『●《原発再稼働や増設を唱える連中の頭の中を掻っ捌いて、中身を見て
      みたい》(鈴木耕さん)――― なぜ今直ぐ「原状回復」しないの?
   『●《理性と良識》で判断…核発電は《「被害が大きくて」かつ「事故発生
     確率も高い」という2つが揃ったパーフェクトな危険》(樋口英明さん)
   『●古賀茂明さん《国民の前で、ちゃんと議論すれば、止めろと言わずに
     止めるのは簡単だ》…裁判で勝つために ――― 樋口英明理論の浸透を

 樋口英明さんは、以前から、《地震大国の日本には、北海道から沖縄まで原発を動かせる場所はどこにもない》と。まともな裁判官が、もっと増えないものか…。《老朽原発はもちろん、日本には強い地震に耐えられる原発はひとつたりともない》。高度な工学的知識や科学的な知識は不要だ、だって、《原発の耐震性は一般住宅よりもはるかに脆弱》《原発の耐震性は信頼度も基準値も一般住宅より、はるかに劣る》のだから。《住民や電力会社、弁護士や裁判官までもが「難しいに違いない」と“魔法にかかってしまう》必要などない。
 《毎年のように頻発する、やや強めの地震に襲われても危険ということです。原子炉は強い地震に耐えられても、原子炉に繋がっている配管や配電の耐震性は低い上に耐震補強も難しい。断水しても停電しても原発は大事故につながる。それが福島の教訓です》…何の教訓も得ていません。そのためには、最後に、樋口英明さんは《あらゆる運転差し止め訴訟で裁判官に原発の脆弱な耐震性を知らしめ、電力会社の非科学性と非常識を理解させることによって、日本の全ての原発は必ず停止できます》と仰っています。

   『●新高速炉「アベシンゾウ」…愚かな核発電「麻薬」中毒患者・
             核燃サイクル教信者の罪を後世に残すために
   『●(リテラ)「あの未曾有の福島第一原発事故を招いた
      “最大の戦犯”が、他ならぬ現内閣総理大臣・安倍晋三」
   『●東電核発電人災での国の責任も放棄…《あの未曾有の福島第一原発
       事故を招いた“最大の戦犯”》アベ様の責任は追及され続けるべき

   『●高松高裁原発避難者訴訟…《「長期評価」を真摯に受け止めていたら、
       遅くとも東日本大震災の前までに、さまざまな津波対策は取れた》
   『●《想定できないから免責されるという論法なら「地震大国」の日本で
     原発は稼働させてはならない…原発政策を推進してきた国の結果責任》
   『●《史上最大の公害事件》核発電人災について《東電の旧経営陣に対し、
     東電に賠償するよう株主が求めた》株主代表訴訟…13兆円の賠償命令
   『●キシダメ首相は《原発の運転期間の延長に加え》《新増設や建て替えの
      検討を明言したのは初めて》――― 命名・次世代革新炉「キシダメ」

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https://dot.asahi.com/wa/2022082500104.html

『原発をとめた裁判長』の教え 古賀茂明
政官財の罪と罰
2022/08/30 06:00

 この秋にお勧めの映画がある。『原発をとめた裁判長』(監督・脚本:小原浩靖)というドキュメンタリーだ。関西電力大飯原発3・4号機の運転差し止め判決と同高浜原発3・4号機の再稼働差し止め仮処分決定を出した樋口英明元福井地方裁判所裁判長が主人公である。

 今年の冬、夏と日本では電力危機が叫ばれた。老朽化した火力発電所の稼働などで幸い停電には至らなかったが、次の冬は、さらに深刻だと政府は危機感を煽っている。さらに、2050年にカーボンニュートラルという日本の目標達成には、火力発電を増やすのは好ましくない。再生可能エネルギーを数カ月で大幅に増やすのも困難だ。

 こうなると、原子力発電が切り札だという議論が勢いづく。ついに、岸田文雄首相も老朽原発の運転期間のさらなる延長や次世代原発の建設などの検討を宣言した。岸田政権のある関係者は、7月の参議院選挙前にこう語った。「今、原発について前のめりになることは厳禁だが、選挙に勝てば新増設も含めて原発推進に踏み込んで行く

 だからこそ、政府は再エネ拡大策をまじめにやらず、あえて電力不足を演出した。今や政府の思惑通り、世論調査でも原発再稼働に反対する意見は少数派になった。実は、そこには、「原発は『それなりに安全』なはずだという根拠なき思い込みがある。しかし、原子力規制委員会は、常に「審査基準を満たしても安全とは言えない」と言っている。本当はどうなのか。

 昨年3月の本コラムでも紹介した原発の安全に関する「樋口ドクトリン」がある。1)原発事故のもたらす被害は極めて甚大。2)それ故に原発には高度の安全性が求められる。3)地震大国日本において原発に高度の安全性があるということは、原発に高度の耐震性があるということに他ならない。4)わが国の原発の耐震性は極めて低い5)よって、原発の運転は許されない(樋口英明『私が原発を止めた理由』(旬報社))。

 11年の東日本大震災の最大の揺れは2933ガル(「ガル」は、地震の強さを測る単位)。21世紀最大の揺れは、08年岩手・宮城内陸地震の4022ガルだ。16年の熊本地震は1700台。今世紀の1000ガル以上の地震は18回とかなりの頻度だ。原発の耐震設計基準はと言えば、大飯原発が設計時に405ガル後に856ガルまで大丈夫だとされたが、他の原発も1000以下が多い。一方、三井ホームの耐震性は5115ガル、住友林業の住宅は3406ガルで、日本の原発がいかに地震に弱いかがわかる

 冬に電力が足りないと言っても、ピーク時に一部の地域で数%不足するというだけの話で、節電などで対応すれば、経済に影響が出ても大した話ではない。それに比べて、原発事故は日本の広範な地域に壊滅的打撃を与える。しかも、毎年日本のどこかで起きるある程度大きな地震が原発の敷地付近で起きれば、大事故になる可能性があるのだ。冬の数日間数%の電力が不足するというのとは全く次元が違う比較すること自体ナンセンスだ。さらに、原発は戦争で敵に狙われたらほとんど防御不能であることは規制委も認めている。

 「電力が足りないから原発だ!」というのがいかに愚かなことか。『原発をとめた裁判長』を見れば誰でもわかる。是非ご覧いただきたい。

※週刊朝日  2022年9月9日号
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●《理性と良識》で判断…核発電は《「被害が大きくて」かつ「事故発生確率も高い」という2つが揃ったパーフェクトな危険》(樋口英明さん)

2021年07月26日 00時00分14秒 | Weblog

[※ 『原発に挑んだ裁判官』(磯村健太郎・山口栄二) 朝日新聞出版↑]


(2021年07月04日[日])
マガジン9の記事【伊藤塾 明日の法律家講座レポート なぜ原発を止めたのか~原発の危険性について真剣に議論しよう! 講師:樋口英明氏】(https://maga9.jp/210630-6/)。

 《2014年5月21日、福井地裁の裁判長として大飯原発3、4号機の運転差し止め判決を出した樋口英明元裁判官。「原発事故によって放射性物質が拡散され生命を守り生活を維持することが困難となる危険があれば、人格権に基づいて原発の運転の差し止めを求めることができる」と話します。原発の危険性とは何か、大飯原発の運転差し止め判決に至った理由について詳しく説明してくださいました。[2021年5月29日@渋谷本校]》。
 《3・11を経験した私たちの責任 最後に責任について話したいと思います。…最後に、キング牧師の教訓に満ちた言葉を紹介します。〈究極の悲劇は、悪人の圧政や残酷さではなく、善人の沈黙である。結局、我々は敵の言葉ではなく、友人の沈黙を覚えているものなのだ。問題に対して沈黙を決め込むようになったとき我々の命は終わりに向かい始める〉》。

 反核発電に、高度な工学的知識は不要である…(樋口英明さん)《原発の耐震性は信頼度も基準値も一般住宅より、はるかに劣る》のだから…。《これは高度な専門技術訴訟ではなく、理性と良識を働かせれば判断できること》。《全ての原発が全く見当外れの低い耐震性で建てられたことが、我々の世代になって初めてわかったのです。こうした原発を後世の人々に押しつけるわけにはいきません。今の時代で解決しなければならない問題です》。
 (樋口英明さん)《私が大飯原発を止めた理由は4つです。…ですから原発の運転は許されないのです。これは「樋口理論」と呼ばれています》。

 樋口英明さんは、以前から、《地震大国の日本には、北海道から沖縄まで原発を動かせる場所はどこにもない》と。まともな裁判官が、もっと増えないものか…。《老朽原発はもちろん、日本には強い地震に耐えられる原発はひとつたりともない》。高度な工学的知識や科学的な知識は不要だ、だって、《原発の耐震性は一般住宅よりもはるかに脆弱》《原発の耐震性は信頼度も基準値も一般住宅より、はるかに劣る》のだから。《住民や電力会社、弁護士や裁判官までもが「難しいに違いない」と魔法にかかってしまう》必要などない。
 《毎年のように頻発する、やや強めの地震に襲われても危険ということです。原子炉は強い地震に耐えられても、原子炉に繋がっている配管や配電の耐震性は低い上に耐震補強も難しい。断水しても停電しても原発は大事故につながる。それが福島の教訓です》…何の教訓も得ていません。そのためには、最後に、樋口英明さんは《あらゆる運転差し止め訴訟で裁判官に原発の脆弱な耐震性を知らしめ、電力会社の非科学性と非常識を理解させることによって、日本の全ての原発は必ず停止できます》と仰っています。

   『●裁判所も歪む…《国が開発の政策的な枠組みを決め、その下で
       電力会社に》核発電所を…《そして裁判所も一体となり…》
   『●2014年5月大飯原発運転差し止め判決…樋口英明さんは《基準地震動を
           超える地震が来ないと言えるかどうか…他の原発と共通の問題》
   『●元福井地裁裁判長・樋口英明さん《地震大国の日本には、
       北海道から沖縄まで原発を動かせる場所はどこにもない》
    《二〇一四年五月に福井地裁の裁判長として、関西電力
     大飯原発3、4号機(福井県)の運転差し止め判決を出した。
     今も自分が正しいと確信を持っている。大飯原発の基準地震動
     (耐震設計上の想定の揺れ)は七〇〇ガル(揺れの勢いを示す加速度の
     単位)で、重大事故につながる限界点は一・八倍の一二六〇ガルだと
     関電は主張していた。私は裁判前は、三〇〇〇ガルのような強い揺れに
     原発が耐えられるかどうかが争点になると予想していた。ところがふたを
     開けてみれば、一二六〇ガルが来たらおしまいだというのは争いが
     なかった。主な争点は「敷地内に一二六〇ガルを超える地震は来ない」
     という関電の主張の信用性だった。それが争点なら難しい工学的判断は
     不要で、理性と良識があれば簡単に解ける問題となる。地震大国の
     日本では、原発で基準地震動を超える地震が頻発しており、大飯も
     ロシアンルーレット状態だった。日本の国策は「安全な原発
     動かす」であって、「何が何でも動かす」ではない。私の「極めて
     危険だから動かしてはいけない」という判断は、国策にも忠実だった
     と思っている。仮に私が日本原子力発電(原電)東海第二原発の
     差し止め訴訟を指揮するなら、ポイントは三つあると思う。一つは、
     基準地震動を超える地震が来ないと言えるかどうか
     これは他の原発と共通の問題だ》

   『●反核発電に、高度な工学的知識は不要である…(樋口英明さん)
     《原発の耐震性は信頼度も基準値も一般住宅より、はるかに劣る》のだから

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https://maga9.jp/210630-6/

伊藤塾 明日の法律家講座レポート
なぜ原発を止めたのか~原発の危険性について真剣に議論しよう! 講師:樋口英明
By マガジン9編集部 2021年6月30日

2014年5月21日、福井地裁の裁判長として大飯原発3、4号機の運転差し止め判決を出した樋口英明元裁判官。「原発事故によって放射性物質が拡散され生命を守り生活を維持することが困難となる危険があれば、人格権に基づいて原発の運転の差し止めを求めることができる」と話します。原発の危険性とは何か、大飯原発の運転差し止め判決に至った理由について詳しく説明してくださいました。[2021年5月29日@渋谷本校]
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大飯原発差し止め判決の理由

 2014年5月21日、私は福井県にある大飯原発3、4号機の運転差し止め判決を下しました。当日、判決内容を事前に知っていたのは、裁判官3人と書記官1人だけです。福井地方裁判所の所長も、最高裁判所の長官も、原告側も、どんな判決が出るか知りませんでした。しかし、被告側は弁護士も含めて誰一人として法廷に来ませんでした自分たちが負けると分かっていたから来なかったのです
 私は訴えが提起された当初から「大飯原発が危険だと思ったら止める。思わなかったら止めない」と言っていました。その言葉に従って裁判を進めてきました。関西電力の弁護士たちは、大飯原発が危険かどうかで判断されたら負けるとわかっていたんです
 みなさんは「原発が危険かどうかで再稼働の可否を判断するのは当たり前」と思うでしょう。しかし、多くの裁判では「原子力規制委員会が定める規制基準に施設や地盤が適合しているかどうか」で判断していて、原発が危険かどうかで判断しているわけではありません。私は「大飯原発が危険かどうか」を考えて運転差し止めを決めました。極めて当たり前の裁判をしただけだと思っています。
 「危険」には2つの意味があります。たとえばお母さんが子どもに「そこの交差点は見通しが悪くて危険だから気をつけてね」と言う場合の危険は、「事故発生確率が高い」ということです。他方、「自転車で行くんだったら、危険だからヘルメットをかぶってね」と言うときの危険は、先ほどとは違います。ヘルメットをかぶってもかぶらなくても事故発生確率は変わらない。お母さんが心配しているのは、事故で子どもが頭を打って大怪我をすることです。要するに「被害が大きい」ことを危険と言ってるんです。「危険」というときには、この2つのどちらの意味かを考えなくてはいけません。
 福島第一原発事故で明らかになったことは、被害の大きさでした。しかし、本当の意味での被害の大きさを知っている人は多くありません。いったい何が起きていたのか、これは原発の仕組みに関係しています。


原発は停電しても断水してもダメ

 原発には牛乳瓶みたいな形をした格納容器があり、そのなかに原子炉圧力容器があります。この圧力容器のなかにウラン燃料が入っていて、水に漬けてあります。ウラン燃料の熱で水が沸騰して蒸気が発生し、それでタービンを回して発電しています。
 火力発電所も仕組みは一緒です。石油を燃やして水を沸騰させて蒸気でタービンを回しています。しかし、原発と火力発電所では大きな違いが2つあります。ひとつは、原発の格納容器の中には広島型原爆1千発分の「死の灰」が含まれていることです。これが大きな違いです。もう一つはエネルギー量の違いですね。
 火力発電所であれば、地震に襲われたら火を止めます。火を止めたら、その瞬間に沸騰しなくなります。原発は、制御棒をウラン燃料の間に差し込んで核分裂反応を止めても、沸騰が続いてしまいます。沸騰が続くとどうなるか。ウラン燃料が頭を出して、溶け落ちてしまいます。溶け落ちないようにするには、ウラン燃料を水と電気で冷やし続けなければいけない
 要するに、火力発電所は地震が来ても火を止めた瞬間に安全になります。しかし、原発は停電してもダメ、断水してもダメ。水と電気でウラン燃料を冷やし続けない限りメルトダウンするのです。ですから、福島第一原発は津波で停電しただけで、あんな大事故になったのです。これが原発の一番厄介なところです。


運よく助かったのは、欠陥があったから

 福島第一原発では最悪の事故が起きた、とほとんどの人が思っていますが、実はそうではありませんでした。数々の信じられないような奇跡に救われていました
 まずは「2号機の奇跡」です。2号機はメルトダウンして格納容器が水蒸気と水素でいっぱいになりました。そうなると、「ベント」といって圧力を抜くしかありません。圧力を抜けば放射性物質が出てしまいますが、圧力を抜かなければ格納容器ごと破裂してしまうからです。しかし、当時は停電していたので自動ではベントができません。放射能を浴びてしまうので人間が行ってバルブを回すこともできない。要するに何もできませんでした。
 3月15日になると、2号機の格納容器には設計基準の倍ほどの圧力がかかっていました。当時の福島第一原発の吉田所長は、「2号機の格納容器が爆発すれば、放射性物質をまき散らしてしまう。そうなれば東日本壊滅だろう」と思ったそうです。しかし、格納容器は爆発しませんでした。その理由は「よく分からない」のです。
 どこか格納容器に弱い部分があって、そこから圧力が抜けたのでしょう。そんなことは絶対にあってはいけないことです。格納容器というのは放射性物質を閉じ込めるために本当に丈夫なものでなければいけません。だけど丈夫ではなかった。いわば2号機は欠陥機であったが故に助かった。これが「2号機の奇跡」です。


奇跡が重なって免れた「東日本壊滅」

 さらに4号機でも奇跡がありました。4号機は当時発電しておらず、核燃料が装着されていませんでした。長年の運転で核燃料のエネルギー量が落ちていて、シュラウドという核燃料を入れておく場所も傷んできたので、取り替え工事を行っていました。その工事のために、原子炉ウェルというところに、水がいっぱい張ってありました。
 3月11日に停電して、4号機の使用済み核燃料を冷やすための循環水がうまく回らなくなりましたが、エネルギー量が落ちていたために、その日のうちにはメルトダウンしませんでした。しかし、4日もすれば貯蔵プールの水が減って使用済み核燃料が頭を出します。そうなればメルトダウンする。そうなると、福島第一原発から250kmが避難区域になる可能性がありました。東京も含まれています。
 しかし今、我々は東京に住めます。なぜかというと、原子炉ウェルと貯蔵プールの仕切りがずれたからです。ずれたことで原子炉ウェルの水が貯蔵プールに入り、メルトダウンを防ぎました。仕切りがずれた原因は今も不明です。本来は震災4日前に原子炉ウェルの水を抜き取る予定だったのですが、工事が遅れていたので水があったのです。ほとんど神がかり的です。さらに、貯蔵プールの上で水素爆発が起きて屋根が吹き飛んだために、放水車を使って破れた天井から水を注入することができました。
 実際には、ほかにもさまざまな奇跡が重なりました。いくつも起きた奇跡のうち、ひとつでも欠けていれば東日本は壊滅していたのです。これが、本当の福島原発事故の被害の大きさです。


原発は地震に耐えられるのか

 こういう話をすると、多くの人は「それだけ被害が大きなものなら、それなりに事故発生確率も抑えてあるはずだ」と思ってしまいます。たとえば時速300キロで走る新幹線がトラックなどと衝突したら大惨事になりますよね。ですから、そうならないように踏切をなくしています。世の中のものは大抵そうなっているので、「原発での大きな事故は滅多に起きないだろう」と考えてしまうのです。でも、本当にそうでしょうか。
 先ほど話したように、原発は停電しても断水しても過酷事故につながります。停電や断水をもたらす一番大きな要因は地震です。配電や配管に関する耐震性が高ければ、原発の事故発生確率も低くなります。では、2000年以降の主な地震の強さと原発施設の耐震性で確認してみましょう。地震の大きさは「マグニチュード」、強さは「震度」で表すことが多いですが、震度は7までしかないので耐震設計では「ガル」という単位を使います。ガルは震度と同じく地震の揺れの強さを測る単位です。
 2000年以降の地震でいうと、2016年の熊本地震はマグニチュード7.3、1740ガルでした。一番高いものは2008年の岩手宮城内陸地震で、マグニチュード7.2、4022ガルです。わが国は地震大国ですが、2000年まで地震観測網がありませんでした。全国に地震計を置くようになったのは阪神・淡路大震災以降なので、それ以前はまともな資料がないのです。
 次に、原発施設の耐震性ですが、私が判決した大飯原発3・4号機の耐震性(基準地震動)は405ガルで設計されていました。3・11当時には、なぜか700ガルに上がっています。大飯原発だけではありません。福島第一原発は建設当時270ガル3・11当時は600ガルです。東海第二原発は、建設当時270ガル3・11のときは600ガルで、今は1009ガルです。いずれも老朽化するに従って耐震性が上がっていくという不思議な現象が起きてます。それでもこの程度の耐震性しかありません。巨大地震が原発を襲ったらもう絶望的です。
 巨大地震というのは大体マグニチュード8以上をいいますが、この耐震性ではマグニチュード7あるいは6や5でも直撃すれば危ない。つまり、原発は「被害が大きくて」かつ「事故発生確率も高い」という2つが揃ったパーフェクトな危険だということです。ですから運転を止めるのは当たり前なのです。しかし、3・11以降でも原発を止めなかった裁判は数えきれないくらいあります。


原発容認派の弁解

 原発容認派は、原発は硬い岩盤の上に建っているので、地震計が置いてある地表面より揺れが小さいと弁解します。たしかに岩盤の上に直接建っている原発もありますが、そうではないものもあります。たとえば東海第二原発の場合は、岩盤は地下深く300メートルのところにあり、その上に関東ローム層があり、その上に原発が建っています。
 また、岩盤の揺れが普通の地面の揺れより小さいとも言いきれません。石川県にある志賀原発は硬い岩盤の上に直接建っていますが、能登半島地震に襲われたときの揺れは490ガルでした。一方、志賀町の地震計は540ガルを記録しています。ほとんど変わりませんでした。柏崎刈羽原発はもっと極端で、地下の岩盤で1699ガルでしたが地上では1000ガルくらいでした。硬い岩盤では揺れが小さいとは言いきれず、例外はいくらでもあります。
 もうひとつの弁解に、強震動予測という方法に則って計算すると、原発敷地に限っては将来にわたって震度6や7の地震は来ないというものがあります。しかし、それは本当に信用できるのでしょうか。東大地震研究所の纐纈一起先生が、地震はものすごく複雑な現象で、「地震は観察できない、実験できない、資料がない」と「地震学の三重苦」について話しています。観察と実験と資料というのは科学の基礎ですが、その基礎がないのに地震予知ができると考えるのには無理があります
 日本は列島全体が4つのプレートの境目に位置している世界で唯一の国。非常に複雑な地盤構造があり、世界の地震の10分の1以上が日本で起きています。日本には地震の空白地帯はありません。2000年以降だけでも、日本で1000ガル、2000ガルの地震はいくらでも起きています。こうした科学的事実に基づいて裁判をしなくてはいけません。


なぜ裁判官は原発を止めないのか

 では、なぜ多くの裁判官は原発を止めないのでしょうか。理由は簡単です。多くの裁判官は、大飯原発を例にとると700ガル以上の地震が過去に何回起きたのか、700ガルは震度いくつなのか、700ガルでは住宅が倒れるかどうか、といったことを知らないのです。それは原告側の弁護士が教えないからです。
 弁護士も裁判官も前例に従って「原子力規制委員会の独立性が高いのか」「原発の施設や敷地が規制基準に合致しているのか」ばかりに関心を払っていて、実際に起きている地震に対して原発の耐震性が高いか低いのかということには関心がなく、そのことについてまったく審理されていません
 ここに、愛媛県の伊方原発について住民らの原子炉設置取消請求を棄却した1992年の最高裁判所判決の骨子があります。法律家というのは最高裁判決を尊重するものですが、この判決では
 ①原発訴訟は高度の専門技術訴訟であり、
 ②裁判所は原発の安全性を直接判断するのではなく、規制基準の合理性を判断すればよく、
 ③その判断は最新の科学技術知見による
 と言っています。
 たとえば①では、プルトニウムと普通のウラン燃料を混ぜたMOX燃料を原発で使うと危険かどうかの判断は素人にはわからないことです。あるいは、その原発が本当に3000ガルに耐えられるかどうかが訴訟の争点だとしたら、それはとてつもなく難しい専門技術訴訟といえます。しかし「この原発敷地に限っては700ガル以上の地震は来ない」という主張が信用できるかどうか――これは高度な専門技術訴訟ではなく、理性と良識を働かせれば判断できることです。
 ②も間違いではありません。私はこれを「裁判所は原発の安全性を直接判断する必要まではない。規制基準が国民の安全を図る内容になっているかどうかを審査するのだ」と理解します。規制基準というものは、福島第一原発事故を踏まえて原発の安全性を高めるために設けられました。ですから、「規制基準の合理性」というのは、国民の安全を守れる内容になっているかどうかを考えればいいのです。
 今の規制基準は、原発ごとの最大地震動が予測できるという前提で成り立っています。しかし、先ほども話したように地震予測は不可能ですから、地震予測が可能だという前提で作られている規制基準は不合理であり、それでは国民の安全は守れません
 次に③ですが、「最新の科学技術知見」とは何でしょうか。2000年以降、1000ガル2000ガルの地震はいくらでも日本に起きています。これこそが「最新の科学技術知見」です。
 多くの法律家がこのように考えることができないのは、極端な権威主義だといえます。権威主義とは、「何を言ってるかの内容ではなく誰が言っているかを尊重することです。最高裁判所が言うのなら原発訴訟は難しい専門技術訴訟に違いない、と争点の設定まで最高裁に委ねてしまうんです。ほかにも科学より科学者を信じる「科学者妄信主義」や「頑迷な先例主義」によって、正当な判断ができなくなっています。
 もっと普通に、審判の対象となる「訴訟物」から考えればいいのです。つまり、人格権が侵害されそうになったら、人格権に基づいてその予防措置を求めることができるということです。この場合、人格権が侵害されるというのは原発事故が起きることです。そして、原発事故は停電や断水でも起こり得る。つまり配電・配管の耐震性が低ければ人格権が侵害される危険が高いということなので、それについて調べましょうという発想です。
 しかし、多くの裁判ではそのように訴訟物から考えるのではなく、過去の裁判例をみて、学者が支持しているからとか、規制基準の辻褄が合っているから、などの先例主義で判断してしまうのが現状です。


私が大飯原発を止めた4つの理由

 私が大飯原発を止めた理由は4つです。①原発事故のもたらす被害はきわめて甚大。だから、②原発には高度の安全性(事故発生確率が低いこと)が求められるべき。③地震大国日本において高度の安全性があるということは、高度の耐震性があるということにほかならない。④しかし、我が国の原発の耐震性はきわめて低い。ですから原発の運転は許されないのです。これは「樋口理論」と呼ばれています。
 従前の裁判では、裁判官も弁護士も、電力会社が設定した「専門技術訴訟」という土俵に自ら乗り込んでいました。一部の弁護士が多くの専門書を読み、専門家に意見を聴いて、電力会社との間で専門技術論争をする。たとえば「地震動の計算方法は、武村式がいいか、入倉式がいいか」といったことです。しかし、それは学会で議論することです。原告はもちろん、裁判官やほとんどの弁護士にも分かるはずがありません。その結果、「原子力規制委員会がそう言うなら、尊重しましょう」という結果になるんです。
 武村式か入倉式か、ということは本当の争点ではありません。そういう論争はもう止めて、これからの原発差止め裁判は「理性と良識」という土俵で戦いましょう。そうすれば誰でも理解できるし、誰でも議論に加われるし、誰でも確信を持つことができます。
 昨年3月11日、樋口理論に基づき、広島地裁で伊方原発3号機の運転差し止め仮処分の申し立てがありました。この申し立て書は、住民が書いています。昔は地震観測記録がなかったのですが、今はインターネットで気象庁の地震観測記録、K-NET(防災科学技術研究所の強震観測網)などを見ることができますし、原発の設計基準がいかに低いのかも調べられます。原発の耐震性が低いということを簡単に立証できるので、住民本人でも訴状を書くことができるのです。
 その訴訟の中で、大変なことがわかりました。日本で一番恐れられている「南海トラフ地震が原発直下で起きたとしても、伊方原発の敷地には181ガルしか来ない」と四国電力が言っているのです。181ガルというのは震度5弱です。震度5弱は「棚から物が落ちることがあり、希に窓ガラスが割れて落ちることがある」という揺れです。マグニチュード9の地震というのは、3・11東北地方太平洋沖の地震と同じ。あのとき震源から380km離れた新宿でも、200ガルを超えました。普通に考えればとてつもなくおかしなことですが、専門技術訴訟にのめり込むとこういうことを見逃してしまいます。普通に考えて普通に裁判すれば、勝てると思います。


3・11を経験した私たちの責任

 最後に責任について話したいと思います。
 私が大学に入学した1972年(昭和47年)当時は、田中角栄内閣の時代でした。そのとき日本は、電源三法を作って原発を各地に誘致しました。その人たちの責任より3・11を経験した私たちの責任は、はるかに重いのです
 その理由は3つあって、一つ目は「死の灰」の問題です。30、40年前の人たちは死の灰の問題を、後世の人たちが科学的に処理してくれるのではないかと考えていました。しかし、それが不可能だということが40年の間にはっきりわかりました。二つ目は、昔の人は、原発事故は滅多に起きないし、起きたところで被害は30キロ圏内で済むだろうと思っていました。しかし、3・11を経験して、そうではないことがわかりました。
 そして、三つ目ですが、昔は地震観測網がなかったので、関東大震災の規模でも400ガルを超える程度だろうと考えられていました。大飯原発も405ガルの耐震性で建てられています。しかし、実際には日本には1000ガルどころか4000ガルの地震も起きています全ての原発が全く見当外れの低い耐震性で建てられたことが、我々の世代になって初めてわかったのです。
 こうした原発を後世の人々に押しつけるわけにはいきません。今の時代で解決しなければならない問題です。
 最後に、キング牧師の教訓に満ちた言葉を紹介します。
 〈究極の悲劇は、悪人の圧政や残酷さではなく、善人の沈黙である。結局、我々は敵の言葉ではなく、友人の沈黙を覚えているものなのだ。問題に対して沈黙を決め込むようになったとき我々の命は終わりに向かい始める





ひぐち・ひであき 1952年生まれ。三重県出身。京都大学法学部卒業後、83年4月に福岡地方裁判所判事補任官。85年4月より静岡、宮崎、大阪など各地の地方裁判所・家庭裁判所の判事補・判事を経て、2006年4月より大阪高裁判事、09年4月より名古屋地家裁半田支部長、12年4月より福井地裁判事部総括判事を歴任。14年5月21日、福井地裁の裁判長として大飯原発3、4号機の運転差し止め判決、15年4月14日には高浜原発3、4号機の差し止め仮処分決定を出した。17年8月、定年退官。主な著書に『私が原発を止めた理由』(旬報社)。
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●反核発電に、高度な工学的知識は不要である…(樋口英明さん)《原発の耐震性は信頼度も基準値も一般住宅より、はるかに劣る》のだから

2021年06月30日 00時00分08秒 | Weblog

[※ ↑「原発さえなければと思います」(週刊金曜日、2021年03月12日、1320号)]


 (2021年06月20日[日])
日刊ゲンダイのインタビュー記事【注目の人 直撃インタビュー/樋口英明氏「耐震性に着目すれば全ての原発を止められる」】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/290370)。

 《コロナ禍のドサクサ紛れに掟破りだ。福島第1原発事故の惨事を機に定めた「運転は40年までの原則が骨抜き。運転開始から40年を超える関西電力の老朽原発が23日にも再稼働する。この暴挙に、かつて原発運転を差し止めた元裁判長が「不都合な真実」を喝破する。「老朽原発はもちろん、日本には強い地震に耐えられる原発はひとつたりともない」と――。》

   『●60年間稼働させたい高浜原発:
     「電気代が高い低いの問題とを並べて論じること自体、許されない」
   『●「老いた馬」ではなく「狂ったゴジラ」:
      「麻薬」患者の関電がプルサーマルに続いて「寿命核発電所」…
   『●「仏様のおかげ」はもう期待しない方がいい: 
     高浜原発、「このゴジラが最後の一匹だとは思えない」
   『●なぜ命を軽々しく賭して、「たかが電気」のために 
     核発電する必要があるのか? 次も神様・仏様は居るか?
   『●「あとの祭り」: 核発電「麻薬」中毒患者、増殖中
                 …どんどん壊れ行くニッポン
   『●高浜「寿命核発電所」延命、「安全より
      経済優先の時代へと逆戻り」…「規制緩和」委員会(©東新)
   『●寿命核発電所再稼働:「世界は既に廃炉時代
        時代の先端を行く方が、地域の実りははるかに多い」
   『●東京電力核発電人災から10年経って、この有様…アンダーコントロール
         どころか人災は継続中、しかも、まだ核発電を続けたいという…
   『●「狂ったゴジラ」「老朽原発」「寿命核発電所」…40年超核発電所の
         稼働という「麻薬」に手を出す核発電「麻薬」中毒者らの暴走

 「狂ったゴジラ」「老朽原発」「寿命核発電所」さえ、再稼働したいそうだ。処理水という名の汚染水を海洋放出したいそうだ。新規原発さえ、作りたいそうだ。
 狂っています、核発電「麻薬」中毒者ら

   『●裁判所も歪む…《国が開発の政策的な枠組みを決め、その下で
       電力会社に》核発電所を…《そして裁判所も一体となり…》
   『●2014年5月大飯原発運転差し止め判決…樋口英明さんは《基準地震動を
           超える地震が来ないと言えるかどうか…他の原発と共通の問題》
   『●元福井地裁裁判長・樋口英明さん《地震大国の日本には、
       北海道から沖縄まで原発を動かせる場所はどこにもない》
    《二〇一四年五月に福井地裁の裁判長として、関西電力
     大飯原発3、4号機(福井県)の運転差し止め判決を出した。
     今も自分が正しいと確信を持っている。大飯原発の基準地震動
     (耐震設計上の想定の揺れ)は七〇〇ガル(揺れの勢いを示す加速度の
     単位)で、重大事故につながる限界点は一・八倍の一二六〇ガルだと
     関電は主張していた。私は裁判前は、三〇〇〇ガルのような強い揺れに
     原発が耐えられるかどうかが争点になると予想していた。ところがふたを
     開けてみれば、一二六〇ガルが来たらおしまいだというのは争いが
     なかった。主な争点は「敷地内に一二六〇ガルを超える地震は来ない」
     という関電の主張の信用性だった。それが争点なら難しい工学的判断は
     不要で、理性と良識があれば簡単に解ける問題となる。地震大国の
     日本では、原発で基準地震動を超える地震が頻発しており、大飯も
     「ロシアンルーレット状態だった。日本の国策は「安全な原発
     動かす」であって、「何が何でも動かす」ではない。私の「極めて
     危険だから動かしてはいけない」という判断は、国策にも忠実だった
     と思っている。仮に私が日本原子力発電(原電)東海第二原発の
     差し止め訴訟を指揮するなら、ポイントは三つあると思う。一つは、
     基準地震動を超える地震が来ないと言えるかどうか
     これは他の原発と共通の問題だ》



[※『原発に挑んだ裁判官』(磯村健太郎・山口栄二) 朝日新聞出版(https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=21028)↑]

 樋口英明さんは、以前から、《地震大国の日本には、北海道から沖縄まで原発を動かせる場所はどこにもない》と。まともな裁判官が、もっと増えないものか…。《老朽原発はもちろん、日本には強い地震に耐えられる原発はひとつたりともない》。高度な工学的知識や科学的な知識は不要だ、だって、《原発の耐震性は一般住宅よりもはるかに脆弱》《原発の耐震性は信頼度も基準値も一般住宅より、はるかに劣る》のだから。《住民や電力会社、弁護士や裁判官までもが「難しいに違いない」と“魔法にかかってしまう》必要などない。
 《毎年のように頻発する、やや強めの地震に襲われても危険ということです。原子炉は強い地震に耐えられても、原子炉に繋がっている配管や配電の耐震性は低い上に耐震補強も難しい。断水しても停電しても原発は大事故につながる。それが福島の教訓です》…何の教訓も得ていません。そのためには、最後に、樋口英明さんは《あらゆる運転差し止め訴訟で裁判官に原発の脆弱な耐震性を知らしめ、電力会社の非科学性と非常識を理解させることによって、日本の全ての原発は必ず停止できます》と仰っています。

   『●東電旧経営陣に無罪判決…《誰も事故の責任を
     取らなければ企業に無責任体質がはびこり、また同じことが起きる》
   『●JOC臨界事故で何が起きたでしょうか?…《人が制御
     できないなんて恐ろしい。政府は…本当のことを言っていない》

   『●永渕健一裁判長、東電旧経営陣の刑事裁判で「無罪」《判決の
      中身もさることながら、その理由があまりにもひどすぎる》

   『●東京新聞の小野沢健太記者によるシリーズ記事【<原発事故
      「無罪」>】…《判決に表情変えず 遺族ら「うそー」悲鳴》
   『●裁判所も歪む…《国が開発の政策的な枠組みを決め、その下で
       電力会社に》核発電所を…《そして裁判所も一体となり…》
   『●《今なお続く福島の「不条理」》:東電の初期の主張は「無主物」
             …裁判所は《放射性物質…農家が所有》と言い放った
   『●伊方原発3号機、広島高裁(森一岳裁判長)が運転差し止めの
     仮処分決定…種々の問題に加えて《約10秒》《2~3秒》全電源喪失
   『●森一岳裁判長《原発の危険性検証には『福島原発事故のような
     事故を絶対に起こさないという理念にのっとった解釈が必要…』》
   『●《良心に従い職権を行使する独立した存在》ではない
     大久保正道裁判長である限り、アベ様忖度な「行政判断」が続く
   『●東京電力核発電人災の刑事裁判: 東京地裁永渕健一裁判長の
     判決は、あまりに酷い理由も含めて《司法犯罪とも言える不当判決》
   『●「イチケイのカラス」第2話 ――― 裁判官らの謝罪と憲法第76条
     「すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この…」
   『●裁判所も歪む…《国が開発の政策的な枠組みを決め、その下で
       電力会社に》核発電所を…《そして裁判所も一体となり…》

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https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/290370

注目の人 直撃インタビュー
樋口英明氏「耐震性に着目すれば全ての原発を止められる」
公開日:2021/06/14 06:00 更新日:2021/06/14 06:00

     (樋口英明氏(撮影)タカオカ邦彦)

樋口英明(元福井地裁裁判長)

 コロナ禍のドサクサ紛れに掟破りだ。福島第1原発事故の惨事を機に定めた「運転は40年までの原則が骨抜き。運転開始から40年を超える関西電力の老朽原発が23日にも再稼働する。この暴挙に、かつて原発運転を差し止めた元裁判長が「不都合な真実」を喝破する。「老朽原発はもちろん、日本には強い地震に耐えられる原発はひとつたりともない」と――。

 ◇  ◇  ◇

 ――再稼働する美浜3号機の運転開始は1976年。45年も昔です。

 45年前の家電を今も使いますか? 大量生産の家電は壊れても最新技術の製品に買い替えればいいけど、原発は大量生産できない。技術は旧態依然で、1つの計器が故障しただけで原発の「止める・冷やす・閉じ込める」の安全3原則は綻び、重大事故が起きかねません


 ――再稼働にあたり国は、1発電所につき25億円の新たな交付金を立地地域にぶら下げました。

 何を考えているのか、理解不能です。


 ――福井県知事の合意表明が4月28日。たった2カ月足らずのスピード再稼働にも驚きます。

 住民が差し止め訴訟を起こすにも、手続きには月単位の時間がかかる。それを見越した上での素早い動きでしょう。


 ――老朽原発が「高い安全性」を確保できるか否かが最大の危惧です。

 地震大国の日本で原発の高い安全性を担保するのは、信頼できる強度な耐震性に尽きます。原発の耐震設計基準を「基準地震動」と呼び、施設に大きな影響を及ぼす恐れがある揺れを意味します。美浜3号機の基準地震動は993ガル(揺れの強さを示す加速度の単位)。しかし、この国では1000ガル以上の地震が過去20年間で17回も起きているのです。


 ――具体的には?

 2008年の岩手・宮城内陸地震(M7.2)は最大4022ガル、11年の東日本大震災(M9)は最大2933ガルなどです。誤解して欲しくないのは「17カ所」で観測されたわけではないこと。東日本大震災では、震源地から離れた数多くの観測点で1000ガルを超えました。


■「原発の耐震性は一般住宅よりもはるかに脆弱」

 ――基準地震動を超える地震がいつ襲ってきてもおかしくはない、と。

 しかも、美浜3号機の基準地震動は建設当時の405ガルからカサ上げされています。建物の耐震性は老朽化すれば衰えるのに、原発だけは時を経るにつれて耐震性が上がるとは不可思議です。電力会社は「コンピューターシミュレーションで確認できた」と言い張りますが、計算式や入力する数値でどうにでも変わる。住宅メーカーの耐震実験は建物を実際に大きな鉄板の上で揺さぶります。その結果、三井ホームの住宅の耐震設計は5115ガル、住友林業は3406ガル。2社が飛び切り高いのではなく、改正後の建築基準法は一般住宅も震度6強から震度7にかけての地震に耐えられるよう義務づけています。ガルで言うと1500ガル程度の地震には耐えられます。一方、日本の原発の基準地震動は、ほぼ600ガルから1000ガル程度です。つまり、原発の耐震性は信頼度も基準値も一般住宅より、はるかに劣るのです。


 ――衝撃です。

 政府は福島の原発事故後の新規制基準を「世界一厳しい」と自負していますが、耐震性に関しては当てはまりません。


 ――いつ、その事実に気づかれたのですか。

 2012年11月に福井県の住民が中心となって関西電力を相手に提訴した「大飯原発3、4号機の運転差し止め請求訴訟」を担当した際です。原発の耐震性に着目し、調べてみると、すぐ分かりました。当時は大飯原発を含め、大半の原発の基準地震動は700ガル程度。700ガル以上の地震は過去20年間で17回どころではなく30回に跳ね上がります。毎年のように頻発する、やや強めの地震に襲われても危険ということです。原子炉は強い地震に耐えられても、原子炉に繋がっている配管や配電の耐震性は低い上に耐震補強も難しい。断水しても停電しても原発は大事故につながる。それが福島の教訓です

     (2014年に福井地裁で大飯原発の運転差し止め判決
                     (C)共同通信社)


■電力会社の「地震は来ない」は虚妄

 ――それにしても、基準地震動の設定が低すぎませんか。

 地震学者の間では長年、関東大震災(震度7)でも400ガル程度との認識が主流で、地球の重力加速度(980ガル)以上の地震は来ないとも推測されていました。この考えに従い、昭和時代の原発は建設されたと思います。しかし、1995年の阪神・淡路大震災を契機に、2000年頃には全国の約5000カ所に地震計が設置され、観測網が整備されました。すると、震度7が1500ガル以上に相当することが科学的に判明したのです。


 ――震度の過小評価に気づけば、原発の運転は諦めるべきでは?

 そこで電力会社が「不都合な真実」を隠すのに持ち出すのが「地震予知」です。差し止め訴訟で「原発の敷地に700ガル以上の地震は来るんですか」と聞くと、関西電力は「まず来ません」と答えた。科学で一番難しいのは将来予測。中でも地震の予知は困難を極めます。考察に資するリソースも20年分しかない。「来ない」と断言できっこないのです。地震予知は「予言」に等しく、信じるか否かは「理性と良識」の問題です。だから速やかに差し止め判決を出せたのです。


 ――その2014年の福井地裁判決を、2018年には名古屋高裁金沢支部の控訴審判決が取り消しました。

 退官翌年です。あの確定した判決は、原審で指摘した危険性を認めながら突然、論旨を変えて「原発の是非は司法の役割を超えているので政治的判断に委ねる」と結論づけた。運転停止を求める住民に対して、さも「政治活動」をしているかのレッテルを貼り、論点をスリ替え、司法の役割を放棄したのです。こんな粗雑な判決を放置するわけにはいかないと思い、原発の危険性を広く訴えようと決意しました。


 ――元同僚の方々の反応は?

 特に悪い評判は聞きません。「裁判官は弁明せず」との格言を持ち出すような頭の固い人とは、あまり付き合ってこなかったからかなあ? 裁判官への政治圧力もないですよ。昔は政府方針に従わなかった裁判官が、ひどいドサ回りをさせられたのは事実。けれど、最近は露骨な左遷などありません。


■学術論争の“魔法”から目を覚ませ

 ――福島の事故後も、原発の運転差し止めを認めた司法判断は必ず上級審で覆ります。その理由をどう考えますか。

 先例主義の悪弊です。裁判官が原発訴訟を扱うのは、まれです。滅多に当たらない訴訟を担当すると、裁判官はつい過去の判決を調べてしまう。いくら司法修習生の頃に「自分の頭で考えろ」と叩き込まれても、自分の頭で考えなくなる。判例に頼れば通常は大きな間違いをせずに済むし、何より楽ですから。その傾向は上級審の裁判官ほど強い。そして、ある“魔法”も効いています。


 ――魔法とは?

 1992年に確定した伊方原発訴訟の最高裁判例です。原発訴訟を「高度の専門技術訴訟」とし、今でも最高裁は原発差し止め訴訟を「複雑困難訴訟」と呼ぶ。あくまで一般論に過ぎないのに、最高裁に言われると、住民や電力会社、弁護士や裁判官までもが「難しいに違いない」と“魔法にかかってしまう。法廷は理解不能な専門用語が飛び交う学術論争の場となり、もともと文系の裁判官はロッカーいっぱいの専門資料にチンプンカンプン。だから、過去の判例を踏襲する判決を出しがちになるのです。

 ――困ったものです。

 裁判官を“魔法”から解き放つには、まず住民側の弁護士が目を覚まさなくてはいけない。熱意ある弁護士でも先例に縛られ、複雑な学術論争を繰り出すのが実情です。住民側弁護士が原発の危険性をシンプルかつ論理的に伝えれば、裁判官も認めざるを得ません。伊方最高裁判例には「原発の安全性の適否判断は規制基準に不合理な点があるかという観点から行うべき」と記してある。はたして地震予知を許す規制基準は合理的なのか。20年間の詳細な地震観測による新たな知見、すなわち「1000ガルを超える地震はいくらでも来ますという動かしがたい事実に基づく判断こそが合理的であり、「真の科学」と言えます


 ――なるほど。

 現在、広島地裁で係争中の伊方原発3号機の運転差し止め仮処分申し立て事件では、住民側の弁護団が耐震性に着目。四国電力の「南海トラフ地震が原発直下で起きても、伊方原発敷地には181ガル震度5弱相当しか来ない」との試算を追及し、原発訴訟にパラダイムシフトを起こすと宣言しました。あらゆる運転差し止め訴訟で裁判官に原発の脆弱な耐震性を知らしめ、電力会社の非科学性と非常識を理解させることによって、日本の全ての原発は必ず停止できます

(聞き手=今泉恵孝/日刊ゲンダイ)


樋口英明(ひぐち・ひであき) 1952年生まれ、三重県出身。京大法学部卒。司法修習第35期。各地裁・家裁の判事補・判事を歴任。2006年に大阪高裁判事、09年に名古屋地家裁半田支部長を経て、12年から福井地裁判事部総括判事。14年5月に大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じる判決を下した。17年8月、名古屋家裁部総括判事で定年退官。現在は原発の危険性を訴える講演活動にいそしむ。今年3月出版の「私が原発を止めた理由」(旬報社)がベストセラーに。
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●高浜原発「差し止め」、国民を守る司法判断: 寄生委の新規制基準は「緩やかにすぎ、合理性がない」

2015年04月16日 00時00分43秒 | Weblog


東京新聞の記事【高浜再稼働 認めず 「緩い規制基準 合理性欠く」】(http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015041590070351.html)と、
社説【国民を守る司法判断だ 高浜原発「差し止め」】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015041502000122.html)。

   ●関西電力大飯原発再稼働差し止め、画期的勝訴:
                 もし敗訴していたら大変なことに・・・・・・

   『●画期的! 福井地裁樋口英明裁判長、  
      高浜3、4号機再稼働差止仮処分決定・・・「直ちに効果が発生」!!

 「原子力規制委員会新規制基準は「緩やかにすぎ、合理性がない」と指摘、基準に適合していても再稼働を認めないとの決定」。
 原子力「ムラ寄生」委員会の「世界一厳しい」らしい基準に合格したからと言って、「安全」・・・・・・なわけがない。それはアベ様らが自称しているにすぎず、世界が「世界一」を認めている訳ではない。

   ●原発再稼働という恥ずべき選択
      ~「新基準は世界一」「世界最高レベル」ではなく、「世界一の無責任」~


 「福井地裁は、原子力規制委員会の新規制基準を否定した。それでは国民が守られないと」。
 3.11東京電力原発人災の惨状を見よ!・・・・・・「原発さえなければ」。

   ●ドキュメンタリー映画『わすれない ふくしま』:
          「震災さえ」ではなく 「原発さえなければ・・・」


 東京新聞の記事【最高の決定」万感 高浜再稼働認めず リスク恐れず申し立て】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015041502000120.html)によると、「申立人は今後の本訴訟で関電側が勝った場合、多額の損害賠償を請求される可能性がある。だがリスクを背負いつつも「福島事故の悲劇を繰り返さない」との決意を胸に、闘ってきた・・・・・・「原発を止めるチャンスがあるのなら、家や土地など惜しくない」」。この仮処分決定を、悲劇を繰り返さない第一歩にしたいところ。

 一方、予想通りの反応。「国は当事者ではない」!! 原発の「地元」の皆さんは何を思う?? ブログ主も、十分に「地元」民だと思いますが、呆れます。ニッポン国の無責任。
 東京新聞の記事【再稼働 政府「粛々と」 高浜仮処分 規制委「審査に影響ない」】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015041502000114.html)によると、「政府や電力業界の姿勢に“冷や水”を浴びせた格好だ。両者は「再稼働の方針に変更はな」とするものの、今回の司法判断で住民理解や地元同意などの手続きが難しくなったとの声も出ている・・・・・・菅義偉(すがよしひで)官房長官は十四日の記者会見で「国は当事者ではない」とした上で、異議を申し立てる予定の関西電力の対応を注視する考えを示した。「世界で最も厳しいと言われる規制の結果、大丈夫だと判断された。(再稼働は)粛々と進めていきたい」。話しぶりはいつもと変わりなかったが、「上から目線」と不評を買い封印したはずの「粛々と」のフレーズを口にした」。
 仮処分を無視して、スガ官房長は「ズカズカ」進めるそうだ。凄いねっ。

   ●屁理屈にもなっていない
       ・・・菅義偉官房長官「汚染水の『影響』は完全にブロック」

   『●深刻な原発事故の教訓として
       「汚染水の『影響』は完全にブロック」・・・なんて言えるわけがない

   『●この現実を見ても、アベ様と菅官房長官は
        「汚染水の『影響』は完全にブロック」と言うのか?


   ●菅義偉官房長官曰く「この問題は過去のものだ。
        争点にはならない」・・・・・・なんという言い草!!

   『●沖縄で連敗続きのアベ様、「この問題は過去のものだ。
                争点にはならない」で済まされるのか?

   『●さあ、ここから: 高江・辺野古破壊問題等々・・・
             「過去のもの」や「終わり」にしてはいけない

   『●沖縄県民の民意は明白: 辺野古破壊者、沖縄で4度目の完敗
   『●沖縄県民の民意にお構いなし、
        辺野古破壊者は沖縄で4度目の完敗だというのに


 もう一度、ここで立ち止まって、「地元」も、3.11東京電力原発人災の惨状を省みるべきではないか。「原発さえなければ」、を見つめ直すべき。asahi.comの記事【高浜再稼働差し止め、原告「最高の内容」 自治体反発も】(http://www.asahi.com/articles/ASH4F62M0H4FPTIL024.html?iref=comtop_list_nat_n04)には、「一方、再稼働に期待する地元自治体からは反発の声が上がり、戸惑いが広がった」とある。

 さらに、経済界も同様。東京新聞の記事【裁判所 判断にふさわしいか 同友会代表幹事 決定に疑問示す】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2015041502000115.html)によると、「経済同友会の長谷川閑史代表幹事は・・・・・・福井地裁が関西電力高浜原子力発電所3、4号機(福井県)の再稼働を認めない決定をしたことについて、「裁判所の判断にこうしたテーマがふさわしいかどうか疑問国民と向かい合って話し合うことが必要だ」との考え」だそうです。誰と誰が国民と「話し合う」の? 「当事者ではない」らしいアベ様やスガ殿は聞く耳持たず、命令のみ。
 「極めて多数の人々の生存そのものにかかわる権利と、電気代が高い低いの問題とを並べて論じること自体、許されない」・・・・・・関西電力大飯原発についての福井地裁の名判決・・・・・・:

   『●関西電力の「原発再稼働」への言い訳にさせてはいけない

    「原発から半径250キロ圏内の住民の人格権を認めた画期的判決」
    「「原発停止は貿易赤字を増やし、国富流出につながる」という考え方に
     ついても、「豊かな国土に、国民が根を下ろして生活していることが国富だ
     と一蹴
    「原発の稼働が発電コストの低減になるという関電側の主張も退ける
     極めて多数の人々の生存そのものにかかわる権利と、電気代が
     高い低いの問題とを並べて論じること自体、許されないと、怒りさえ
     にじませているようだ。経済神話の否定である」
    「そして、原発の稼働が地球温暖化の原因になる温室効果ガスの削減に
     寄与するという被告側の主張に対しては、福島原発事故はわが国
     始まって以来の環境汚染、甚だしい筋違いとまで言い切って、
     環境神話も否定した」
    「大飯再稼働、差し止め命じる 生存と電気代、同列許さず」 
    「また、生存権と電気代のコストを並べて論じること自体が法的には
     許されない」ことで、原発事故で豊かな国土と国民生活が取り戻せなく
     なることが「国富の喪失」だと指摘。福島事故は「わが国が始まって
     以来、最大の環境汚染」であり、環境問題を原発推進の根拠とする
     主張を「甚だしい筋違い」と断じた」
    「大飯原発運転差し止め判決 人格権より優先される原発はない!」
    「福井地裁の大飯原発運転差し止め判決 原発は人格権より劣位にある」
    「「極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの
     問題とを並べた議論の当否を判断すること自体、法的には許されない
     として、経済活動よりも生存に関わる人格権を優先した」


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http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015041590070351.html

高浜再稼働 認めず 「緩い規制基準 合理性欠く」
2015年4月15日 07時03分

 関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の安全対策は不十分として、周辺の住民らが再稼働差し止めを申し立てた仮処分で、福井地裁は十四日、原子力規制委員会の新規制基準は「緩やかにすぎ、合理性がない」と指摘、基準に適合していても再稼働を認めないとの決定をした。原発運転禁止の仮処分は全国初。訴訟の判決と異なり、決定は直ちに効力を持つ。

 二基は今年二月、九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)に次ぎ、規制委が審査に適合すると判断、関電は十一月の再稼働を想定し、地元同意の手続きに入っている。樋口英明裁判長は決定で、新規制基準に適合しても安全性は確保されていないと批判し、基準に厳格さを求め、東京電力福島第一原発事故後に施行された基準を事実上否定した。

 二十二日には川内原発の再稼働差し止めの仮処分決定が鹿児島地裁で予定されており、結果が注目される。

 関電は決定を不服として、福井地裁に異議と執行停止を申し立てる方針。関電は主張が認められるまで再稼働はできないが、地元同意の手続きは進められる見通し。菅義偉(すがよしひで)官房長官は十四日、安全が確認された原発の再稼働を進める方針に変更はないとの考えを示した。

 今回の決定は樋口裁判長と原島麻由裁判官、三宅由子裁判官の三人の合議。樋口裁判長は、規制基準に「万が一にも深刻な災害が起きないといえる厳格さ」を求めた。再稼働すると、二百五十キロ圏内の住民の生命や利益に関わる人格権が侵害される具体的な危険があるとも述べた。

 二〇〇五年以降、全国の四原発で五回にわたり、基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)を超す地震が起きたことに触れ「想定を超える地震が来ないとの根拠は乏しい」と指摘。さらに地震動を下回る場合でも、主給水ポンプなどの破損で冷却機能が喪失、重大事故が生じると認定した。

 使用済み核燃料では「国の存続に関わる被害が出る可能性があるが、堅固な施設で閉じ込めていない」と関電の対策を批判した。関電は答弁書で「安全対策は十分だ」と主張していた。


決定覆るまで動かせず

 関西電力高浜原発3、4号機の再稼働を禁じた福井地裁の仮処分決定は、判決確定まで効力がない本訴訟と異なり、即時有効となる。同地裁か、次に審理する高裁で関電側の異議が認められない限り、二基は再稼働できない状態が続く。

 仮処分は通常の訴訟で争うと時間がかかるため、当事者の権利を守る目的で暫定的に行う法的手続き。関電は地元同意など高浜3、4号機の再稼働に向けた手続きは進められるが、運転はできない。決定を無視して再稼働した場合、巨額の制裁金を科される可能性がある。早期の再稼働を目指す関電は、福井地裁に異議を申し立てる方針。


規制委審査 根底から問う

 福井地裁の仮処分決定の内容は、新規制基準を満たしたと判断した原子力規制委員会の対応を根底から問い直すものとなった。規制委は「本件の当事者ではない」と平静を装い、高浜3、4号機の安全性のチェック作業も進める考えだが、大きな危険性を内包する原発の安全が、規制委が「世界で最も厳しい」と自負する新基準をもってしても十分なのか、あらためて見直しが求められる。

 新基準は想定すべき地震動や津波を見直し、多重化した外部電源が断たれても、原発内の非常用電源やバックアップ用の海水ポンプなどで、原子炉の冷却を継続できることなどを要求。従来の基準より強化されたのは確かだ。

 ただし、原子炉が破裂しないよう圧力を抜くフィルター付きベント(排気)設備や、独立して冷却ができる第二制御室などは二〇一八年七月までに整備すればよいとされた。作業員を地震や放射能から守る事故時の対策拠点も、完成するまでの間は代替施設で済ますことを認めた。

 今回の地裁決定は、重大事故が起きれば取り返しのつかない被害を広域に及ぼす原発の本質を指摘した。地震動の想定は信頼性に乏しく、原子炉の冷却がきちんと続けられるのか、大量の使用済み核燃料が堅固な施設で守られていなくていいのかなど多くの疑問を投げかけた。

 規制委による実際の審査でも、問題点が浮かんでいる。その一つが、新基準を満たせば東京電力福島第一原発のような大きな事故にならず、外部からの支援なしで数十人の作業員だけで事故収束できることになっている点だ。周辺住民を安全に避難させる計画も不十分で、規制委はその実効性を検証しない。 (山川剛史


◆福井地裁決定骨子

▼高浜原発3、4号機を運転してはならない

▼想定を超える地震が来ないとの根拠は乏しく、想定に満たない場合でも冷却機能喪失による重大事故が生じうる

▼使用済み核燃料を堅固な施設で囲い込むなどの対策がとられていない

原子力規制委員会の新規制基準は合理性を欠き、適合しても安全性は確保されていない

▼原発運転により、住民の人格権が侵害される具体的な危険がある


人格権> 人間として平穏な生活を送る権利。憲法に明確な規定はないが13条(生命、自由および幸福追求の権利)、25条(健康で文化的な最低限度の生活を営む権利)で保障され、さまざまな権利の中で最も優位とされる。

(東京新聞)
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015041502000122.html

【社説】
国民を守る司法判断だ 高浜原発「差し止め」
2015年4月15日

 関西電力高浜原発(福井県高浜町)の再稼働は認めない-。福井地裁は、原子力規制委員会の新規制基準を否定した。それでは国民が守られないと。

 仮処分は、差し迫った危険を回避するための措置である。通常の訴訟とは違い、即座に効力を発揮する。

 高浜原発3、4号機は、動かしてはならない危ないもの、再稼働を直ちにやめさせなければならないもの-。司法はそう判断したのである。

 なぜ差し迫った危険があるか。第一の理由は地震である。

 電力会社は、過去の統計から起こり得る最大の揺れの強さ、つまり基準地震動を想定し、それに耐え得る備えをすればいいと考えてきた。


◆当てにならない地震動

 原子力規制委員会は、新規制基準による審査に際し、基準値を引き上げるよう求めてはいる。

 関電は、3・11後、高浜原発の基準地震動を三七〇ガルから七〇〇ガルに引き上げた。

 しかし、それでも想定を超える地震は起きる。七年前の岩手・宮城内陸地震では、ひとけた違う四〇二二ガルを観測した。

 「平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある」と地震学者の意見も引いている。

 日本は世界で発生する地震の一割が集中する世界有数の地震国である。国内に地震の空白地帯は存在せず、いつ、どこで、どんな大地震が発生するか分からない。

 だから基準地震動の考え方には疑問が混じると判じている。

 司法は次に、多重防護の考え方を覆す。

 原発は放射線が漏れないように五重の壁で守られているという。

 ところが、原子炉そのものの耐震性に疑念があれば、守りは「いきなり背水の陣」になってしまうというのである。

 また、使用済み核燃料プールが格納容器のような堅固な施設に閉じ込められていないという点に、「国の存続に関わるほどの被害を及ぼす可能性がある」と、最大級の不安を感じている。

 福島第一原発事故で、最も危険だったのは、爆発で屋根が破壊され、むき出しになった4号機の燃料プールだったと、内外の専門家が指摘する。

 つまり、安全への重大な疑問はいくつも残されたままである。ところが、「世界一厳しい」という新規制基準は、これらを視野に入れていない


疑問だらけの再稼働

 それでも規制委は新基準に適合したと判断し、高浜原発は秋にも再稼働の運びになった。

 関電も規制委も、普通の人が原発に対して普通に抱く不安や疑問に、しっかりとこたえていないのだ。従って、「万が一の危険という領域をはるかに超える現実的で切迫した危険」があると、福井地裁は判断した。新規制基準の効力や規制委の在り方そのものを否定したと言ってもいいだろう。

 新規制基準では、国民の命を守ることができないと、司法は判断したのである。

 昨年五月、大飯原発(福井県おおい町)3、4号機の差し止めを認めた裁判で、福井地裁は、憲法上の人格権、幸福を追求する権利を根拠として示し、多くの国民の理解を得た。生命を守り、生活を維持する権利である。国民の命を守る判決だった。

 今回の決定でも、“命の物差し”は踏襲された。

 命を何より大事にしたい。平穏に日々を送りたい。考えるまでもなく、普通の人が普通に抱く、最も平凡な願いではないか。

 福島原発事故の現実を見て、多くの国民が、原発に不安を感じている。

 なのに政府は、それにこたえずに、経済という物差しを振りかざし、温暖化対策なども口実に、原発再稼働の環境づくりに腐心する。一体誰のためなのか。

 原発立地地域の人々も、何も進んで原発がほしいわけではないだろう。仕事や補助金を失って地域が疲弊するのが怖いのだ。

 福井地裁の決定は、普通の人が普通に感じる不安と願望をくみ取った、ごく普通の判断だ。だからこそ、意味がある。


◆不安のない未来図

 関電は異議申し立てをするという。しかし司法はあくまで、国民の安全の側に立ってほしい。

 三権分立の国である。政府は司法の声によく耳を傾けて、国民の幸福をより深く掘り下げるべきである。

 省エネと再生可能エネルギーの普及を加速させ、新たな暮らしと市場を拓(ひら)いてほしい。

 原発のある不安となくなる不安が一度に解消された未来図を、私たちに示すべきである。
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コメント (2)
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