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●樋口英明さん《脱原発を妨げているのは「原発回帰にかじを切った岸田(文雄)政権でも、電力会社でもない。私たちの先入観だ」と話した》

2024年05月06日 00時00分52秒 | Weblog

[※ 『原発に挑んだ裁判官』(磯村健太郎・山口栄二 著) 朝日新聞出版↑]


(2024年04月25日[木])
樋口英明さん《「日本の原発はそれなりに安全だろうという先入観が脱原発を妨げる」…「原発回帰にかじを切った岸田(文雄)政権でも、電力会社でもない。私たちの先入観だ」》、この《私たちの先入観》を払しょくするために ➙ ニッポンの核発電所は「民間の耐震住宅並みの強度は達成できていますよね」という簡単な質問を電力会社や原子力「推進」委員会、キシダメ政権に尋ねてみましょう。

   『●裁判所も歪む…《国が開発の政策的な枠組みを決め、
     その下で電力会社に》核発電所を…《そして裁判所も一体となり…》
    《原発訴訟で原告勝訴を決めた、たった3人の裁判長――
     その苦悩を描いたのが『原発に挑んだ裁判官』(朝日文庫、
     著・磯村健太郎山口栄二、660円)だ。元京都大学原子炉
     実験所助教・小出裕章氏が評論する》
    《本書の解説を書いている千葉大学名誉教授の新藤宗幸氏によると、
     フクシマ事故以前に提訴された原発訴訟は、国を相手にした
     行政訴訟が12件、建設・運転差し止めの民事訴訟が6件だった
     そうだ。そのうち、住民側勝訴を言い渡したのは、
     高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の設置許可の無効を確認した
     名古屋高裁金沢支部判決(川崎和夫裁判長)と、北陸電力
     志賀原発2号機の運転差し止めを命じた金沢地裁判決
     (井戸謙一裁判長)の2件だけであった。フクシマ事故以降には、
     関西電力大飯原発3、4号機訴訟で運転差し止めを認め、住民を
     勝訴させた福井地裁判決(樋口英明裁判長)も出た。
     それら3人の裁判長の苦悩と闘いを描いたのが本書である》

 内藤陽記者による、毎日新聞の記事【「原発安全」は思い込み、耐震性も低い 元裁判長、樋口氏が講演】(https://mainichi.jp/articles/20240424/k00/00m/040/075000c)。《関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の運転差し止め訴訟で、2014年に再稼働を認めない判決を出した元福井地裁裁判長、樋口英明氏(71)が新潟県柏崎市で講演した。樋口氏は能登半島地震(M7・6)発生時の北陸電力志賀原発の例から、原発の耐震性の低さを指摘。「日本の原発はそれなりに安全だろうという先入観が脱原発を妨げる」と主張した。講演のテーマは「能登半島地震と原発」。》《脱原発を妨げているのは「原発回帰にかじを切った岸田(文雄)政権でも、電力会社でもない。私たちの先入観だ」と話した》。

 ニッポンの核発電所の耐震性は「民間の耐震住宅並みの強度よりもはるかに劣る

   『●古賀茂明さん《国民の前で、ちゃんと議論すれば、止めろと言わずに
     止めるのは簡単だ》…裁判で勝つために ――― 樋口英明理論の浸透を
    《日本では2000年以降、千ガル以上の地震が18回(ガルは揺れの
     強さを表す単位)、七百ガル以上は31回起きていることを示す。
     そのうえで、「民間の耐震住宅並みの強度は達成できていますよね
     と質問すると、社長たちは、答えに窮する。なぜなら、住友林業、
     三井ホームの耐震性は、3400ガル、5100ガルだが、伊方原発
     650ガル高浜原発700ガル日本の原発の耐震性は非常に低い
     からだ。
      国民の多くは、原発は民間住宅の何倍も頑丈に作られている
     と信じている。…三つ目に、避難計画の万全性を担保する
     ために原子力規制委員会の審査を受けろと要求する。実際には
     審査されていないからだ。国民は「えっ?避難計画は規制委の
     審査を受けたんじゃないの?」と驚き、審査してもらえとなる
     だが、専門家が審査したら、絶対に今の避難計画では通らない

   『●斎藤貴男さん《日本列島は地震の巣なのに、原子力の利用を「国の責務」と
     うたうGX(グリーントランスフォーメーション)法案にかまけて》いた…

 元裁判官の樋口英明さん《私が大飯原発を止めた理由は4つです。①原発事故のもたらす被害はきわめて甚大。だから、②原発には高度の安全性(事故発生確率が低いこと)が求められるべき。③地震大国日本において高度の安全性があるということは、高度の耐震性があるということにほかならない。④しかし、我が国の原発の耐震性はきわめて低い。ですから原発の運転は許されないのです。これは「樋口理論」と呼ばれています》、《あらゆる運転差し止め訴訟で裁判官に原発の脆弱な耐震性を知らしめ、電力会社の非科学性と非常識を理解させることによって、日本の全ての原発は必ず停止できます》。
 古賀茂明さん《11年の東日本大震災の最大の揺れは2933ガル(「ガル」は、地震の強さを測る単位)。21世紀最大の揺れは、08年岩手・宮城内陸地震の4022ガルだ。16年の熊本地震は1700台。今世紀の1000ガル以上の地震は18回とかなりの頻度だ。原発の耐震設計基準はと言えば、大飯原発が設計時に405ガル後に856ガルまで大丈夫だとされたが、他の原発も1000以下が多い。一方、三井ホームの耐震性は5115ガル、住友林業の住宅は3406ガルで、日本の原発がいかに地震に弱いかがわかる》。志賀核発電所では、《1号機で最大957ガルを観測し…2号機も…871ガル》。

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https://mainichi.jp/articles/20240424/k00/00m/040/075000c

「原発安全」は思い込み、耐震性も低い 元裁判長、樋口氏が講演
024/4/24 11:13(最終更新 4/24 11:13)

     (「国策である原発政策が安全性を軽視するわけがない
      というのは先入観だ」と話す樋口氏=新潟県柏崎市駅前の
      市文化会館アルフォーレで2024年4月7日、内藤陽撮影)

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の運転差し止め訴訟で、2014年に再稼働を認めない判決を出した元福井地裁裁判長樋口英明氏(71)が新潟県柏崎市で講演した。樋口氏は能登半島地震(M7・6)発生時の北陸電力志賀原発の例から、原発の耐震性の低さを指摘。「日本の原発はそれなりに安全だろうという先入観が脱原発を妨げる」と主張した。

 講演のテーマは「能登半島地震と原発」。地元住民団体「原発を再稼働させない柏崎刈羽の会」(本間保・共同代表)の主催で7日にあり、市民ら約160人が耳を傾けた。

 能登半島地震では、石川県志賀町で最大震度7、北陸電力志賀原発(同町)で震度5強を記録した。志賀原発では外部電源から電力を受ける変圧器が破損し、2万3400リットルの油が漏れた。樋口氏は原発の耐震性について「一般に考えられているよりはるかに低い」と指摘した。

 「原発に関心のない人は、日本の原発はそれなりには安全だろう思い込んでいる」とし、福島第1原発事故までは自身もその一人だったと告白。「日本の原発の最大の弱点は耐震性だが、私たちは耐震性が高い思い込んでしまっている」と話した。脱原発を妨げているのは「原発回帰にかじを切った岸田(文雄)政権でも、電力会社でもない。私たちの先入観だ」と話した。

 また樋口氏は原発の本質とは「原発は人が管理し続けなければ暴走する」「暴走時の被害は想像を絶するほど大きい」の二つだとし、「(これを理解していなければ)間違った判決や政策になると結論付けた。【内藤陽】
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●3.11東京電力核発電人災の教訓はどこに? 能登半島地震の警告は? 正気だろうか? 東電に核発電所を運転する資格や能力は在るのかね?

2024年03月12日 00時00分47秒 | Weblog

[↑ ※「地震列島の原発安全性に警告」(週刊金曜日 1457号、2024年01月26日号)]


(20240228[])
10年前、(2014年2月26日)《いま、東電で起きていること、原子力規制委員会の危うい動き》(鈴木耕さん、マガジン9)を思い出す。原子力〝推進〟委員会、原子力〝寄生〟委員会、昔から酷かったが、ここ数年、あまりに酷い。全く「規制」する気のない委員会。委員会そのものに核発電について「適格性がある」かどうかを判断する「適格性がある」のか?
 《能登半島地震は、複数の断層が連動して大きな揺れを起こしたと立石さんはみる一方、柏崎刈羽原発の周辺で断層が連動する事態が十分に検証できていないとし、こう唱える。「現状ではどれほどの揺れや津波が原発を襲うのかは分からない。能登半島地震を機にさらに議論すべきだ」》《◆デスクメモ 想定外」に抵抗感を抱く厳しい想定を検証しないまま、深刻な事態が生じると「想定外」と言い逃れる。そんな印象を持つからだ。甚大な汚染をもたらしうる原発地震に耐えられるか住民は逃げられるか。必要なのは懸念に向き合う姿勢。責任逃れの言い訳は救いにならない。(榊)》(東京新聞)。

   『●原子力「推進」委員会であり、「規制」委でもなく、「寄生」委員会(1/2)
   『●鈴木耕さん《一度、活断層だと判断したものを電力会社が独自調査で
     否定したら、それを受けて規制委が再調査するというのであれば…》

 渡辺聖子記者による、東京新聞の記事【「何が言いたいのか分からない」敦賀原発2号機の再開審査で規制委を呆れさせた、原電の支離滅裂な説明】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/293775)。《地質データの不適切な書き換えで中断していた日本原子力発電原電敦賀原発2号機(福井県)について、原子力規制委員会は新規制基準に適合するかどうかの審査を再開したが、またも滞り始めた。原電の説明が科学的根拠に乏しく、肝心の断層を巡る議論では自らの主張にほころびが出る事態に陥った。(渡辺聖子)》。

 はぁ? 全く「規制」しない原子力「寄生」委は正気か??
 渡辺聖子記者による、東京新聞の記事【柏崎刈羽原発の「運転禁止」解除、原子力規制委は甘くないか 書類確認3カ月、現場調査10日間、議論1時間】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/294448)。《東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の運転禁止命令解除に道筋を付けた6日の原子力規制委員会の対応は、東電に対する甘い姿勢が浮き彫りとなった。テロ対策不備の再発防止の取り組みを、改善途中にもかかわらず是正したと判断原発を運転する適格性については表面的な確認作業でお墨付きを与えた。世界最悪レベルの原発事故と重大なテロ対策不備の当事者への厳しい姿勢は感じられない。(渡辺聖子)》。

 3.11東京電力核発電人災の教訓はどこに? 正気だろうか? 東電に核発電所を運転する資格や能力は在るのかね?
 東京新聞の記事【柏崎刈羽原発、「運転禁止」命令を解除 東京電力のテロ対策は改善と判断 原子力規制委員会】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/298081)。《原子力規制委員会は27日の定例会合で、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)に出している事実上の運転禁止命令の解除を正式に決めた。2021年4月の命令から2年8カ月余り、福島第1原発で世界最悪レベルの事故を起こした東電再び原発の運転に向けた準備に入る。定例会合では、東電に対する特別な検査態勢を解くことに対し、委員5人全員が賛成。これにより、運転禁止命令の解除が決まった。27日午後に東電に通知する》。

 そもそも東電に資格はあるのか? 未だ《原状回復》することも無く、堂々と《原発回帰》へと暴走し、この12年間、着々と《原発復権》…3.11東京電力核発電人災の教訓はどこに? 柏崎刈羽? バッカじゃないのか!
 山田祐一郎西田直晃両記者による、東京新聞の記事【こちら特報部/「柏崎刈羽」周辺道路にも無数の亀裂…「原発は本当に大丈夫か?」地元に広がる不安の声】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/301911)。《犠牲者が200人を超えた能登半島地震。阪神大震災を上回るマグニチュード(M)7.6を記録し、日本海側でも巨大地震が起きると改めて浮き彫りになった。やはり心配なのが原発だ。東京電力柏崎刈羽原発が立地する新潟県刈羽村では、安全面を危ぶむ声が強まっている。原発があっても本当に大丈夫か。検証は尽くされているのか。(山田祐一郎西田直晃)》。

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/293775

「何が言いたいのか分からない」敦賀原発2号機の再開審査で規制委を呆れさせた、原電の支離滅裂な説明
2023年12月4日 06時00分

 地質データの不適切な書き換えで中断していた日本原子力発電原電敦賀原発2号機(福井県)について、原子力規制委員会は新規制基準に適合するかどうかの審査を再開したが、またも滞り始めた。原電の説明が科学的根拠に乏しく、肝心の断層を巡る議論では自らの主張にほころびが出る事態に陥った。(渡辺聖子


 敦賀原発2号機の審査 2015年11月、日本原子力発電(原電)が原子力規制委員会に新規制基準への適合性審査を申請。20年に規制委側の指摘で地質データの書き換えが発覚した。活断層の可能性につながる記載を、否定につながる記載に無断で書き換えるなどした。修正後の資料でも、地層の観察場所を間違えた。審査は2度にわたり中断。原電が今年8月、修正した申請書を再提出し、9月に再開した。


◆建屋近くのK断層、活動時期は?

 審査の一つ目の焦点は、原子炉建屋近くにある「K断層」が活断層かどうか。新規制基準は、約12万~13万年前の後期更新世以降の活動を否定できない断層を、活断層と定義。活動時期がキーポイントになる。
 この点を議論した11月10日の規制委の会合で、原電が矛盾した説明を展開し、規制委事務局の担当者を困惑させた。
 原電は、K断層が活動した形跡のある地層の年代を「12万4000~14万2000年前」とした分析結果について、K断層の活動時期は後期更新世よりも古く、活断層ではないと主張した。

 だが数値の一部は後期更新世に含まれており、原電の説明はつじつまが合わない。規制委事務局が繰り返し矛盾を指摘しても「総合的に判断した」と不明確な回答に終始。規制委側が念押しのように「後期更新世に入っているという認識でいいのか」と問いただすと、原電の担当者は「(後期更新世に)かかるのはそうなる」と認めた。
 このやりとりを見れば、原電が活断層の可能性を認めた格好だ。


◆申請書に必要なデータがない?

 原電の審査は、再提出された申請書に必要な説明やデータが漏れなく盛り込まれたことを「前提」として、今年9月に再開した。
 ところが、この日の審査会合では、原電の要領を得ない説明が続いた。規制委事務局の質問に対し、原電は「あらためて整理する」「持ち帰り検討する」などと繰り返すばかり。質問の意味が理解できない原電の担当者が、沈黙する場面もあった
 いら立った規制委事務局の幹部が「これからデータを取る話なのか」と、審査再開の前提が守られているのかを確認しても、原電の剣田裕史副社長は「根拠となるデータを整理して再度示したい」としか答えられなかった。規制委と約束した前提はほぼ崩れている。
 K断層が活断層と判断された場合、審査はK断層が2号機直下にある別の断層につながるかどうかの議論に移る。K断層が活断層であり、なおかつ2号機直下の断層につながると判断されれば、「2号機直下に活断層あり」という結論になる。


◆2号機廃炉の可能性があるのに

 2号機直下の断層を巡っては、2012年に規制委の専門家チームが「活断層の可能性が否定できない」と指摘。新規制基準は活断層の上に原子炉など重要施設の設置を認めていない。原電が今回の審査で、活断層の可能性はないことを立証できなければ、2号機の廃炉は免れない
 再開した審査も、根拠が足りない説明で始まり、踏み込んだ議論に入れないまま。能力不足を露呈した原電に対し、規制委事務局の幹部は疲れた様子でこぼした。「質問と答えがかみ合わない。何が言いたいのか分からない


【関連記事】「これで十分と思っているのか」 再開された敦賀原発2号機の審査で規制委委員がデータ不足を指摘
【関連記事】不備だらけ申請を修正したら3倍超の1600ページに…どうなる?敦賀原発2号機の再稼働
【関連記事】敦賀原発2号機「審査中断」でどうする原電? 原子力規制委から「最後通告」
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/294448

柏崎刈羽原発の「運転禁止」解除、原子力規制委は甘くないか 書類確認3カ月、現場調査10日間、議論1時間
2023年12月7日 06時00分

 東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の運転禁止命令解除に道筋を付けた6日の原子力規制委員会の対応は、東電に対する甘い姿勢が浮き彫りとなった。テロ対策不備の再発防止の取り組みを、改善途中にもかかわらず是正したと判断原発を運転する適格性については表面的な確認作業でお墨付きを与えた。世界最悪レベルの原発事故と重大なテロ対策不備の当事者への厳しい姿勢は感じられない。(渡辺聖子


 柏崎刈羽原発 新潟県柏崎市と刈羽村にまたがって立地。東電福島第1原発と同じ沸騰水型という軽水炉が計7基あり、総出力は821万2000キロワットと世界最大規模。東電は新しく、出力が大きい6、7号機の再稼働を優先し、2013年に原子力規制委員会に新規制基準の審査を申請。17年に適合した。新基準に沿った事故対策では、工事の未完了や溶接の施工不良などの不備が続いた。

     (柏崎刈羽原発の検査について説明する原子力規制委員会の
      山中伸介委員長=6日、東京都港区で)


◆規制委で追及の場面なく、議論は1時間足らず

 「追加することはない」。6日の定例会合で、山中伸介委員長が検査結果が妥当かどうかを4人の委員に確かめると、いずれも同じ返事を繰り返した。山中委員長も事務局の報告をすんなりと受け入れた。
 委員らは、現地調査や東電社長への聴取をしないと最終的な判断はできないとの意見で一致したが、伴信彦委員が「明らかに改善が図られている」と発言するなど、東電の取り組みを前向きにとらえる見方が続いた。問題点を追及する場面はなく、1時間足らずで委員間の議論を終えた。
 テロ対策の検査は荒天時の監視体制や、IDカードの不正利用など不備再発防止の取り組みを一過性にしないなど、4項目が最後まで残った。報告書案は、これらすべてについて「自らミスを見つけて改善できる仕組みが定着しつつある」とした。


◆検査中もあったテロ対策の違反

 「しつつある」という改善の途中段階と受け取れる表現は、検査官19人全員の一致した認識という。山中委員長は記者会見で「規制当局が介入して改善を促す状況は脱した」と繰り返した。東電内で自律的な改善を担う社長直轄の部署は発足から半年余りと日が浅く、事務局は取り組みの定着までは確認していない。
 テロ対策の違反は検査中もなくならなかった。東電が4項目の是正完了を規制委に報告した後の11月にも、薬物検査で陽性反応が出た社員を誤って防護区域に入れていたことが発覚。しかし規制委は「軽微な事案と取り合わなかった。「ミスが起きても、自ら見つけて改善できれば良い」と事務局担当者。山中委員長も「報告書に影響はしなかった」と強調した。
 命令解除の判断材料となる適格性の再確認は、うわべだけの確認作業で引き続き「あり」と判断した。
 6年前に適格性が「ある」と判断した際に規制委が確認した7項目には、福島第1原発の廃炉への責任も含まれる。


◆「正確な情報発信」は適格性と関係ない?

 ところが今回は「正確な情報発信を通じて関係者の理解を得ながら廃炉に取り組む」という部分が「規制に直接関係しない」との理由で確認の対象外に。漁業関係者らの反対を押し切って始めた処理水の海洋放出目標が達成された」とする項目に入った。

     (テロ対策についての検査報告書案などを議論した
      原子力規制委員会=6日、東京都港区で)

 10月に浄化処理設備で起きた作業員の被ばく事故は「現在検査中としただけで考慮されなかった。始まる見通しのない原子炉内に溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しをはじめ難航する作業ばかりだが、確認結果は「廃炉は総じて進捗(しんちょく)している」とした。
 事務局が報告までにかけた期間は8月から約3カ月。主に書類で確かめる作業だった。内容の確認や聞き取りのため職員が現地や本社に出向いたのは計10日間。山中委員長は「時間的に不十分だとは思っていない」と言い切った。


【関連記事】柏崎刈羽原発「問題ない」規制委が今年中にも運転禁止命令解除へ 東電の再発防止策を評価
【関連記事】「飛散しない」自己判断でカッパ着ず、廃液が飛散して被ばく
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/298081

柏崎刈羽原発、「運転禁止」命令を解除 東京電力のテロ対策は改善と判断 原子力規制委員会
2023年12月27日 11時10分

 原子力規制委員会は27日の定例会合で、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)に出している事実上の運転禁止命令の解除を正式に決めた。2021年4月の命令から2年8カ月余り、福島第1原発で世界最悪レベルの事故を起こした東電が再び原発の運転に向けた準備に入る
 定例会合では、東電に対する特別な検査態勢を解くことに対し、委員5人全員が賛成。これにより、運転禁止命令の解除が決まった。27日午後に東電に通知する。


◆命令の後も続いた違反

 柏崎刈羽原発では、2021年1月以降、東電社員によるIDカードの不正利用や、侵入検知装置が多数壊れた上に代わりの対策も不十分なまま放置したテロ対策の不備が相次いで発覚。規制委はこの年の4月に核燃料の移動禁止を命じ、東電の再発防止策に対する検査を続けてきた。

     (東京電力柏崎刈羽原発の6号機、7号機(右から))

 しかし、規制委の検査中も東電のテロ対策不備は相次いだ。2022年6月には監視用の照明設備が非常用電源に接続されていなかったことが発覚。これを是正したものの、翌年の2023年6月に別の照明設備に電源が接続されていないことが発覚した。

 ほかにも、手荷物検査が不十分で未許可の携帯電話やスマートフォンが持ち込まれた違反が、2023年1月以降で少なくとも3回起きた。今から2カ月まえの2023年10月には、薬物検査で陽性反応が出た社員を防護が必要な区域に一時入域させるなど、違反は後を絶たない。


◆規制委は「影響は軽微」と判断

 規制委はこれらの違反について、いずれも「影響は軽微」として再発防止策の検査には影響しないと判断。今月(2023年12月)6日の定例会合で、すべての再発防止策は妥当とする事務局の検査報告を大筋で了承した。
 また、柏崎刈羽原発の新規制基準適合性審査では、東電が2013年に6、7号機の審査を規制委に申請。規制委は東電が福島第1原発事故の当事者であることを考慮し、東電に原発を運転する適格性があるかも確かめた。2017年9月に「適格性がある」と判断し、その上で同年12月に事故対策が新規制基準に適合するとの審査書を決定した。
 今回の命令解除の手続きでは、規制委は今月(2023年12月)20日、東京電力の小早川智明社長を呼び、テロ対策の再発防止策と原発を運転する資格(適格性)があるかどうかを判断するために説明を聴いた。この日の委員5人による話し合いでは、小早川社長の説明に大きな問題はない、との意見で一致していた。
 今後、東京電力が柏崎刈羽原発を再稼働するには新潟県などの立地自治体の同意が必要となる。花角英世知事は同意の是非を巡って「県民の信を問う」と述べている。


【関連記事】20日の聴取 小早川智明・東京電力社長が答えあぐねたシンプルな質問
【関連記事】自民県議も「東京電力には原発を運転してほしくない」…新潟が裏切られ続けた2年半
【関連記事】「下請け任せ」は企業文化なのか…作業のリスクを軽視し続ける東京電力の姿勢
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/301911

こちら特報部
「柏崎刈羽」周辺道路にも無数の亀裂…「原発は本当に大丈夫か?」地元に広がる不安の声
2024年1月11日 12時00分

 犠牲者が200人を超えた能登半島地震。阪神大震災を上回るマグニチュード(M)7.6を記録し、日本海側でも巨大地震が起きると改めて浮き彫りになった。やはり心配なのが原発だ。東京電力柏崎刈羽原発が立地する新潟県刈羽村では、安全面を危ぶむ声が強まっている。原発があっても本当に大丈夫か。検証は尽くされているのか。(山田祐一郎西田直晃


◆震源地から百数十km離れてても震度5強の揺れ

 10日午前、「こちら特報部」は雪がちらつく刈羽村に入った。前日夕には、佐渡付近を震源とするM6.0の地震があったばかり。村では震度3を観測した。
 JR刈羽駅から南に1キロ離れた村役場に徒歩で向かう。道路には真新しいひび割れが無数に見られた。役場近くの国道116号は片側3車線から歩道までひびが斜めに伸び、中央分離帯部分が盛り上がっていた

     (国道に広がる路面のひび=新潟県刈羽村で)

 「元日の地震でできたひびですね」。説明してくれたのは歩道橋工事の交通誘導員をしていた男性。1日の能登半島地震では、震源地から東に百数十キロ離れた刈羽村は震度5強の揺れに襲われた。ひびは既に応急処置されたというが「交差点の脇に立っていると、大型車両が通るたびに歩道が揺れる」と男性は話す。


◆もし原発で事故が起きたら、避難できる?

 「海岸部を中心に液状化の被害が多数報告されている」。村議の武本和幸さん(74)は、数日前に村内で撮影した写真を見せながら説明する。「昨年、整備したばかりの村道も地盤が液状化してアスファルトの路面がひび割れている」
 1日は外出先から帰宅したところに地震が起きた。「2007年の中越沖地震を思い起こさせる揺れ。原発は大丈夫なのかというのが最初に脳裏によぎった」。中越沖地震はM6.8で、最大震度6強。柏崎刈羽原発の屋外変圧器で火災が起き、微量の放射性物質を含む水が海に流出した。

     (村内の被害について説明する武本和幸さん=新潟県刈羽村で)

 今回は燃料プールの水があふれたが、大きな異常は確認されていない。それでも武本さんが問題視するのは、大地震により柏崎刈羽原発で事故が起きた際の対応、特に避難のあり方だ。懸念を強めるのは1日の経験から。地震直後、国道や高速道路は通行止めとなった。「避難しようとした住民が渋滞に巻き込まれたという話が多く寄せられた」


◆道路は見渡す限り車、高台への避難を断念

 原発の南西約3キロに住む無職宮崎孝司さん(79)は1日に避難を試みた一人。「防災無線で津波警報が出たことを知り、家族3人で車で高台へ避難しようとしたが、道路は見渡す限り車で埋まっていた。Uターンして当初とは別の場所に避難した」と振り返る。

     (1日の地震の影響で路面がひび割れた道路
      =6日、新潟県刈羽村で(武本和幸さん提供))

 付近の国道では2022年12月に記録的な大雪で多くの車が立ち往生した。大雪の際に原子力災害が発生した場合、政府は原発の5キロ圏について「避難経路の除雪が完了するまで屋内退避を継続」との方針案を示している。宮崎さんは「津波も起き、避難が必要な場合はどうすればいいのか」と危惧し、避難するにしても「道路は地震で寸断され、雪で立ち往生する複合災害もあり得る」と訴える。


◆想定外の揺れ、海底隆起…もし原発が稼働中だったら?

 刈羽村と同様、柏崎刈羽原発が立地する柏崎市在住で医師の本間保さん(73)は「能登半島の北陸電力志賀原発も柏崎刈羽原発も運転停止中のため、これだけの被害で済んだのでは」とみる。「原発を再稼働させない柏崎刈羽の会」共同代表でもある本間さんは「原発を動かすのは無理だともう一度、声を上げる時期に来ている」と続ける。

     (地震で海底が隆起したとみられる石川県輪島市
      門前町の深見漁港周辺=本社ヘリ「あさづる」から)

 今回の地震では、能登半島の海底が隆起し、従来は海だった場所が陸になったことが確認された。先の武本さんは柏崎刈羽原発周辺でこうした地盤の隆起が生じることを危ぶむ。「外部から冷却水を取ることが困難になる可能性もある
 さらに「中越沖地震では想定外の揺れが、東日本大震災では津波が問題となった。今回、原発周辺の地盤が変動するリスクも明らかになった。再稼働の議論の前にリスクについて改めて評価すべきだ」と訴える。


◆日本海側でも巨大地震が起きると実証

 日本で大地震といえば太平洋側を思い浮かべがちだが、過去には日本海側でも起きた。ともに津波で多数の死者が出た1983年の日本海中部地震(M7.7)、93年の北海道南西沖地震(M7.8)などがある。

     (1日の地震の影響で路面がひび割れた道路
      =6日、新潟県刈羽村で(武本和幸さん提供))

 政府の地震調査研究推進本部は、日本海側の一部の海域活断層について、地震発生の確率の評価を公表してきたが、能登半島沖を含む大部分は未公表だ。金沢大の平松良浩教授(地震学)は「太平洋側に比べ、日本海側の評価は後回しになっている」と説明する。
 再来周期が数十年〜数百年のプレート境界型地震を想定する太平洋側に比べ、日本海側で起きる活断層型地震の再来周期は数千年〜数万年程度とされる。「予算や人員が限られる中、活動性の違いから日本海側は二の次にされている」
 そう語る平松さんは「個々の再来周期は長くても、多数の活断層があるため、平均的に考えればどこかしらで地震は起きてしまう。津波を伴う大地震もあり、日本海側でも調査を進めるべきだ」と指摘する。


◆原発設計時の想定上回る揺れも

 地震の被害は丁寧な検証が不可欠だ。想定を上回る場合があるからだ。能登半島地震では、石川県地域防災計画で想定されたM7.0を超えた。先に触れた中越沖地震では、柏崎刈羽原発の設計時に想定した最大の揺れを上回ったほか、建屋地下にある鉄筋コンクリート製のくいの損傷が、地震発生から14年を経て発覚する事態も起きた。

     (新潟県の東京電力柏崎刈羽原発=2021年4月撮影)

 そんな不安があっても政府は原発再稼働に躍起になる。柏崎刈羽原発も例に漏れず、2017年末に6号機、7号機が原子力規制委員会の適合性審査を通り、テロ対策の不備で21年に出された事実上の運転禁止命令も23年末に解除された
 再稼働の判断に関わる新潟県が安全面の砦(とりで)になるはずだが、厳しい視線を向ける研究者が近年、「排除」を思わせる扱いを受けた
 11年の東電福島第1原発事故を受け、県は柏崎刈羽原発の再稼働判断のため、三つの検証委で議論を深めたが、技術面を扱う委員会に名を連ねた新潟大の立石雅昭名誉教授は21年、高齢を理由に再任が見送られた。三つの検証を総括する委員会のトップ、名古屋大の池内了名誉教授も23年、任期が更新されなかった


◆「今回の地震を機に議論深めるべき」

 厳しい検証が遠のく中、改めて浮かび上がったのが日本海側の巨大地震リスクだ。地質学者の立石さんは「県は再稼働に前のめりにならず、従来の考え方を改める必要がある」と語る。
 能登半島地震は、複数の断層が連動して大きな揺れを起こしたと立石さんはみる一方、柏崎刈羽原発の周辺で断層が連動する事態が十分に検証できていないとし、こう唱える。「現状ではどれほどの揺れや津波が原発を襲うのかは分からない。能登半島地震を機にさらに議論すべきだ」


◆デスクメモ

 想定外」に抵抗感を抱く厳しい想定を検証しないまま、深刻な事態が生じると「想定外」と言い逃れる。そんな印象を持つからだ。甚大な汚染をもたらしうる原発地震に耐えられるか住民は逃げられるか。必要なのは懸念に向き合う姿勢。責任逃れの言い訳は救いにならない。(榊)


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