- 韓国に後れをとる整備事業 日本はトンガなど同ランク
2012.11.13
連載:ニッポンの防衛産業
韓国の大韓航空(KAL)が昨年9月、嘉手納基地に所属する米空軍F15戦闘機の整備事業を全面的に請け負うことになったことは、日本ではあまり報じられていない。
驚くことにKALは今年5月には、三沢基地のF16についてもランディングギア(着陸装置)の整備を行ったと発表している。三沢は航空自衛隊との共同使用であり、エリアが違うとはいえ聞き流すわけにはいかない話ではないか。
韓国が自国の防衛産業に最大限の投資をして育成し、国産兵器の輸出を国をあげて行っていることはよく知られていた。しかし、こうした維持・整備事業への積極参入となると2国間の関係も強化されることになり、わが国に及ぼす影響は大きい。
ここには韓国政府による助成金が入っていて、整備にかかる費用は8割以上を負担しているというから国家意思が働いていることは明らかだ。
この背景には、米国による「グローバル・ロジスティクス戦略」がある。これはNATOを中心に世界の約60カ国がいろいろな装備品を登録し、ナショナル・ストック・ナンバー(NSN)と呼ばれる単位で識別されるものだ。
この枠組みには「ティア2国」と「ティア1国」とが分かれ、前者は互いに部品などの情報共有と取得ができるため当然、整備事業にも乗り出せるが後者は買うことしかできない。日本はティア1国に入ることはできたが、すでにティア2国となっている韓国より下のランクということになる。
この事情に早い時点から気付き、警鐘を鳴らしてきた日本の老舗スペック調査会社「データクラフト」は、わが国の早急なティア2国参入を提唱している。日本と同じティア1国にはトンガやウクライナなどが含まれており、優秀な国産装備品開発の技術を有する日本がこの位置付けでいいのかとも呼びかけている。
これまで頑固に貫いてきた武器輸出3原則や集団的自衛権の解釈変更が求められるだけに一足飛びにはできないと、ついのん気に考えてしまいがちだが、わが国内事情などどこも待ってくれない。米国主導の兵站革命は淡々と進んでいるのだ。
全ての国産装備品に13桁の識別コードを付けるべきとは私は決して思わない。しかし、このままでは置き去りになることは明らかである。特定分野だけでもこの流れに乗ることを検討する必要があるだろう。韓国のティア2国参入には各国の審査を経て8年かかったという。決断は1日でも早い方がよさそうだ。
軍事までも韓流。お母さんは韓国ドラマにくぎづけ、そして米軍までも…。
■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「誰も語らなかった防衛産業」(並木書房)、「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)など。
部品に関しても同様。
むしろ心配しなければいけないのは、
あの国に整備をまかせている米軍機の方だろう。