田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)
 
 科学者で構成する政府機関、日本学術会議がにわかに注目を集めている。日本学術会議が推薦した会員候補6人について、菅義偉(すが・よしひで)首相が任命を拒否したからだ。
 
 「学問の自由」を危険に陥れると、ひと月ほど前までは反安倍政権だったマスコミ、識者らを中心に批判の声をあげている。野党の一部も国会でこの件を審議するという。いつもながらご苦労なことである。
 
 日本学術会議については、既得権が異様に強い組織であり、その提言の類いも経済政策関係では弊害があるか、まったく使い物にならない、日本の経済学者の傲慢(ごうまん)と無残さの象徴であると以前から思ってきた。

 この機会に、ぜひ日本学術会議は民営化するなり、組織廃止するなりした方がいいのではないか、と個人的には強く思っている。
 
 日本学術会議とはそもそも何か。公式サイトに設置根拠となる法律とともに解説されている。
 
 

 

昭和24年(1949年)1月、内閣総理大臣の所轄の下、政府から独立して職務を行う「特別の機関」として設立されました。職務は、以下の2つです。

・科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。

・科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。

 
 また、日本の科学者を内外に代表し、210人の会員と約2千人の連携会員で職務を行うとしている。勝手に代表されても困るが、後述するように経済政策に関しては知的腐敗臭すらする提言しかしていないので、日本の経済学者の「代表」がいかにダメかを内外に広報する結果になっている。
 
 菅政権の任命拒否の理由は、具体的には明らかにならないだろう。もちろんリーク的なものはあるかもしれないが、個人投資家で作家の山本一郎氏がここで指摘しているように、現在の政権批判という基準で任命が拒否されたかどうかは分からない。
日本学術会議の会員に任命されなかった大学教授(左奥)らに質問する野党議員ら=2020年10月2日午前、国会
日本学術会議の会員に任命されなかった大学教授(左奥)らに質問する野党議員ら=2020年10月2日午前、国会
 安倍政権の政策に批判的で、その趣旨の発言がマスコミでも取り上げられていた劇作家の平田オリザ氏は今回、会員に任命されている。今回の任命拒否の理由として注目されている集団安全保障法制でも、平田氏は反対の立場だ。