あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

奈良 西大寺展 叡尊と一門の名宝 三井記念美術館

2017-05-05 16:28:45 | 日本美術
  







 
 日本橋の三井記念美術館では
 特別展 創建1250年記念
    奈良 西大寺展 叡尊と一門の名宝  
          が6月11日(日)まで開催されています。
  こちら

 サブタイトルに
 元興寺、浄瑠璃寺、白毫寺、法華寺、岩船寺、称名寺、極楽寺他一文寺院の名宝も一同に

 とあります。
 私が30才の頃、奈良に足かけ3年住んでいたこともあり、
 「奈良」に対する思いもひときわ親しく濃いものを持っています。
 当時は元興寺の直ぐ側に住んでいて、ご紹介された西大寺一門の
 奈良近郊の寺院は殆ど行きましたが、
 どういうわけか、西大寺には訪ねることなく戻ってきてしまいました。

 西大寺、奈良の南都七大寺の一つといわれた立派なお寺であることは知られていても
 どういった歴史があったのでしょう。

 西大寺の冊子「西大寺の文化」が丁寧な歴史を伝えています。
 (ミュージアムショップで価格500円 販売中)
 それによると、
 奈良時代、765年(天平神護元年)に称徳天皇の発願によって営まれ、
 藤原仲麻呂の反乱のようなことがないよう、念願したもの、ということのようで
 最初に天部の四天王が造られたそうです。 
 その後、12年の時を経てようやく南都七大寺、西大寺ができあがるも、
 平安期には焼失が相次ぎ、荒廃してしまうのです。
 鎌倉時代に入り真言律宗が復興運動と合致して再興を目指した時に
 叡尊が現れ、次々と再興造営の仕事を尽くしました。
 ところが、叡尊の亡き後、再び火災にあい、寺運が下がっていったようです。
 災難の続いた西大寺ではありましたが、江戸時代になって、江戸幕府からの
 支援をもらいようやく今見る西大寺の姿ができあがったようです。

 ざっと、西大寺の歴史を辿りましたが、
 会場の展示物をみて、意外にも、密教系のお寺だったことを知りました。
 また、創建当時の伽藍地図などは大変広大で、立派な姿だったことも驚きました。
 奈良市内のお寺は西大寺と関係も深く、真言律宗という繫がりがあったことを
 初めて教わったのでした。
 叡尊の弟子として活躍した、「忍性展」が去年奈良で開催されたことも御縁のようです。

 そんな復習もかねて、会場を思い出します。

 展示室 1 密教と修法具

  ずらり、密教の独古法具が並びました。
  「白銅密教法具」 
  「鈴虫」という銘があり、光明真言会で長老が導師を務める際に
  大壇上に安置される特別な法具。
  いちど、「鈴虫」の音を聞いてみたいものです。

  「藍染明王座像」(厨子入)
  コンパクトなサイズで、現代の住居にも置けそうな可愛らしいものでした。
  厨子の造りも鮮やか。
  

 展示室 2 戒律と舎利信仰

  「国宝 金銅透彫舎利容器」
   大変細密な金工が施され、蓮台とともに舎利容器が外に展示されました。
   火焔宝珠も華麗な姿でした。

 展示室 3 西大寺の瓦と塼
   
   創建当時の土、質感が残っているようでした。

 展示室 3 如庵
     
   西大寺、といえば、大茶盛式。
   赤膚焼に奈良絵ののどかな絵付けの大きなお茶碗。
   介添えの方がいないと、そりゃ、安心してお茶が頂けませんが
   一度、体験したいものです。
   お軸が墨書のゆるい山水でいい雰囲気でした。

 展示室 4 西大寺の創建から平安時代まで
    
   国宝、重文クラスがずらり
   お経、経箱、資材帳、
   国宝の十二天像、
   艶めかしい如意輪観音半跏像、それらは皆、奈良時代、平安時代のもの。
   よくぞ、この平成の時まで、護られてきたものだと感じ入ります。

      叡尊の信仰と鎌倉時代の復興
   
   西大寺中興の祖といわれる興正菩薩叡尊の長い眉と存在感のある
   立派な鼻梁に80才の姿としては大変力強く、  
   西大寺復興のため奮闘したリーダーとしての情熱、人徳の深さが伝わります。
   また、寺宝の愛染明王座像などの納入品が展示され、
   像内に魂を入れた、大切な証拠を見るようでした。 
   元興寺からは、聖徳太子2才の凛々しい像。
   川端康成も、聖徳太子の幼い像を所蔵していたことを思い出しました。
   
 
 展示室 5 戒律と舎利信仰

   こちらでは寺宝のお像に入れられていた、舎利などがずらり展示されていて、
   小さな水晶の五輪塔群にときめきました。
   舎利容器、舎利厨子、それらに大切に守られ、信仰を捧げてきたのでしょう。
   舎利塔にかけられた、紐も美しいのでした。

 展示室 6 西大寺の伽藍配置図

   当初の広大な伽藍の様子などを知ることができました。

 展示室 7 真言律宗一山の名宝

   西大寺と並ぶ真言律宗のお寺より、名宝が展示されていました。
   奈良市内の地図に関連寺院が建ち並んでいることも記されています。
   
   五色椿で有名な白毫寺からは空恐ろしい強面が。
   「太山王座像」康円作
   ごめんなさいを強要されなくとも言ってしまいそうな眼力にひれ伏します。

    *6月6日〜11日まで、浄瑠璃寺の吉祥天がお目見えです。
     ご開帳の期間限定でなかなか目にかかれませんが、
     日本橋で、拝観できるチャンス到来です!



      忍性と東国の真言律宗

    叡尊の弟子として著名な忍性さん、去年、奈良で展覧がありましたが、
    こちらにもおでまし。
    なかなか厳しい方のようで、日蓮さんとぶつかり合いをし、
    鎌倉幕府に処刑を申し出たとのこと。
    東国、鎌倉にも真言律宗を拡大した功労があるようです。
    
    「釈迦如来立像」神奈川 称名寺
    衣紋の襞が特徴的で、清涼寺式だとわかります。
    清涼寺式の釈迦像は真言律宗によって全国に広められたのだそうです。

 こうして一巡して作品リストを確認して見ると
 どれもコレも国宝や、重文クラスの名宝ばかり。
 西大寺、大変なお寺だと思い知ります。

 いつか、また奈良を訪問し、西大寺を訪ねたいと思いました。
 また、保存、補修に潤沢な寄進があることを願いました。
 
 次回は夏のイベントらしい、「地獄絵ワンダーランド」
 7月15日〜9月3日まで。 こちらも楽しみです!

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 花*Flower*華 ー琳派から... | トップ | 2017年半年の振り返り »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。