あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

藤田美術館の至宝 ・サントリー美術館

2015-08-20 23:25:14 | 美術展
 藤田美術館の至宝
 国宝 曜変天目茶碗と日本の美


 

 この展覧が六本木で開催されるとは、本当に歓喜しました。

 早速前期のうちに行ってきました。
 
 明治時代、関西の二代事業家、藤田、白鶴、が不同の位置を誇っていました。
 その藤田家、藤田傳三郎が収集してきた
 至宝が119件大阪から運ばれてきました。
 何度も大阪に出る機会があっても
 なかなか藤田美術館まで足を伸ばすことが叶わないままで、
 いつか訪問したいものだと思っていました。

 その所蔵品のレベルの高さは国宝9件、重要文化財52件という数字からも
 想像できます。
 今回はその中から優品がごっそり選ばれての展覧です。
 どうしてもテンションが上がってしまいます。
 傳三郎の収集は廃仏毀釈の中、海外に流出することを杞憂し、
 日本の愛玩してきた宝を守ることに奔走しコレクションの柱ができましたが、
 その後は長男、次男に継承され、今に至るそうです。

 収集されたのは、特に茶道具や、古美術が中心で、
 長州藩士、外務大臣、財務大臣など務めた井上馨や、
 三井財閥の益田鈍翁などと社交場として茶会がしばしば催されたそうです。
 そうすると、このコレクションが大茶人たちの間で茶会用のものとして
 披露されてきたのかと思うと、一層臨場感が沸いてきます。
 (資料:サントリー美術館ニュースから)

 会場に入りますと、
 千体聖観音菩薩立像が五体並んでお出迎え下さいます。
 そのお姿にノックダウン。
 これはとんでもないコレクションだと鳥肌が立ちました。
 その奥には法隆寺の羅漢様。
 法隆寺からどうやってこちらにいらしたのでしょう?

 振り向くと神々しい光を放つお地蔵様が現れます。
 仏師、快慶の地蔵菩薩立像です。
 この世の美しいものをすべて持つ事を許されたかのような、
 美仏さまです。
 360度ぐるり拝見できます。
 
 入り口付近からこのハイレベルでこれから
 会場を進んでいくと一体どうなることかと
 くらくらしました。

 国宝 玄奘三蔵絵 鎌倉時代
 玄奘三蔵が夢を見た,その景色が現れます。
 須弥山を目指す足下には蓮台が波を越えるように
 現れ玄奘を導くのです。
 波間には龍も見えています。
 須弥山には霊山にかかる雲も白くたなびきます。

 また、平安時代の奈良、内山永久寺に伝来した
 国宝「両部大経感得図」が厳かに展示されます。
 1136年とされていますが、よくも保存されてきたものだと
 感嘆します。

 平安の貴族の嗜みとしての書、歌が
 藤原佐理、藤原俊成、紀貫之、小野道風、後醍醐天皇、
 などの超セレブ、名筆が伝付きではありますが、雅に並びます。

 そして、茶の湯の世界が展開されます。
 利休の松茸をありがとうという、利休尺牘(松茸の文)に
 少し、利休に親しみを感じます。
 
 中国の南宋時代の
 馬遠、伝梁楷、による李白、寒山拾得が重厚感を演出し、
 因陀羅の寒山拾得が掛けられ、ちょっと脱力します。
 いいなぁ、この緩さ加減。

 雪舟の自画像(模本)
 梅花水禽・遠浦帰帆図が扇に描かれます。絵師は伝狩野永徳!永徳です。

 茶道具の収集は会期中展示替なく、全期展示されます。
 世の中に3碗しか確認されていない、
 曜変天目茶碗、一碗のために立派なステージで
 やきものとは思えない、怪しい輝きを確認できるように展示されました。
 藤田家の曜変天目は水戸徳川家から伝来したものだそうです。
 中国にも完品は残っておらず、破片しか確認されていないそうです。
 それで、日本に残された3碗、どれもが国宝指定されました。
 一つは静嘉堂、もう一つは大徳寺龍光院。
 大徳寺のものはそうそうお披露目が叶わないのでしょう。
 静嘉堂のものも本当に宇宙との交信ができそうだと感心したのを
 思い出しますが、こちらも劣らず、発色の良さに驚かされたのでした。

 中国の南宋時代、という時代には何が起こったのでしょう。
 陶磁器の頂点をやり尽くしてしまったのではないでしょうか。

 大井戸茶碗 銘 蓬莱(武野井戸)
 この茶碗は利休の師匠、武野紹鴎が所持し、後に娘婿の今井宗久に渡った
 という事もあり、蓬莱もしくは武野井戸と呼ばれるのだそうです。
 井戸茶碗の有楽(東博)柴田(根津美)の二碗も
 もとは藤田傳三郎が所有していたものだそうです。
 (資料:根津美術館井戸茶碗図録、目の眼2014年10月号)

 黒楽茶碗に銘太郎、次郎と名付けるほど、子息に愛情を
 注いでいたことも傳三郎の情の深さを感じます。
 また、本阿弥光甫、空中斎のアバンギャルドな
 花入れ「空中信楽花入」が突如現れ、驚きました。
 空中斎の作陶はいつも驚かされます。

 南宋の砧青磁袴腰香炉 このとろみのある青磁に
 金工の超絶技巧の蓋がのります。
 梅花のレース状に目眩がしました。

 そして、傳三郎の愛玩した交趾焼の香合、染付の香合、
 仁清の鴨形香合、など小さなものが展示されます。
 乾山・光琳の銹絵絵替角皿も並び、
 愛らしさについつい頬が緩みます。
 その中の交趾大亀香合は
 傳三郎氏が亡くなる10日前に手に入ったという
 大変ご執心されたものだそうで、念願叶ったものだったようです。

 他、能衣裳、能面。
 絵画では菱川師宣の大江山酒呑童子絵巻。
 竹内栖鳳の立派なライオン図、大獅子図屏風が並びました。

 ともかく、大変なコレクションでしたので、
 展示替え後もしっかり見に行かねばと
 心に決めたのでした。

 相当はしょりましたが、
 ともかくは一見されますこと、お勧め致します。

 会期は9月27日までです。
 サントリー美術館のサイトはこちら






コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第21回秘蔵の名品アートコレ... | トップ | 画鬼 暁斎 ・三菱一号館美術館 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。