あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

6月の鑑賞記録 その一

2012-07-02 22:26:26 | アート鑑賞記録


 *原美術館 杉本博司 「ハダカから被服へ」
  映画「はじまりの記憶」を見た後に早く原美術館訪問をしたかったが
  ようやく鑑賞。去年の「杉本文楽 冥途の飛脚」から文楽の再発見を
  しているのだが、今日の文楽の有り様をぜひ、杉本氏から一言を懇願。
  杉本氏の有り様は今一番気になる殿方である。
  その人の目によってハダカにされた被服は原美術館という環境を
  見事に食べきった感があって心地よかった。
  「洒落本 秘すれば花」という図録の和綴本とその値段。
  まったく目のデュシャンであり、利休の井戸茶碗。
  現代の服飾モノクロ写真は実に建築的。
  所々の赤の入りようはなまめかしい。
  エロスに関心のある医者のための茶事にかけられた
  「ジャック・ゴーティエ・ダゴティ 背筋図」の軸が軸装と共に
  最強であった。
  庭園内の竹箒を逆さまにしたクーラー室外機隠しは
  その諧謔趣味にいちいちにやけた。
  氏の文章もそのニヒリズム満載である。
  素直に跪くしかなかった。 


 *新宿高島屋 草月花展
  毎年恒例の草月展新宿バージョン。
  今回はことばと寄り添う企画。
  いつもの圧倒的量感から離れて、選ばれたことばとそっと寄り添う。
  緑深くなってきた頃に花器と花とことばと見る人の
  嬉しい共鳴が体験できた。
  勅使河原茜家元は圧巻の幻想的な大作。

 *新宿高島屋 三瀬夏之介
  去年のミズマギャラリーによる高島屋でのジパング展以来の
  鑑賞。大気の大きなうねりをこれまた大きな大画面に表した大作から
  狭小マンションの壁にも可愛いかも?という作品まで。

 *東京江戸博物館 日本橋
  お江戸日本橋400年のピンスポットヒストリー。
  江戸時代の旅行グッズから
  マップ、名所、解体新書や、絵師の憧れヤン・ヨンストンの動物図譜。
  日本橋にまつわる賑々しい絵図だらけ。
  名だたる浮世絵師の名所図は壮観。
  明治期の電気・ガスが使われ始めたことの夜景などがセンチメンタル。
  新版画の川瀬巴水や、海外から浮世絵を学びに来たノエル・ヌエットの新しい
  浮世絵の姿も。
  国芳の様々な日本橋シリーズも見応えあり。
  光の加減で夜の街に変わる絵巻。これが一番の目玉であった。
  会場入って直ぐに「隅田川風物図巻」が長々しく展示してあるが
  本当に行燈から漏れてくるぼんやりした夜景にみとれた。
  一見の価値あり。
  大地震や戦争を経て困難をくぐり抜けてきた日本橋。
  現代との橋がかりにあの高速の下に泣く日本橋が切ない。
  7月16日まで。
   
 *三井記念美術館 北斎
  北斎の絵をどのぐらい拝ませてもらってきたことだろう。
  それでも、毎回毎度うなってしまう魅力は失せない。
  いつもの茶道具の重厚な展示室にも浮世絵が並んだ。
  北斎を愛するコレクターは海外にも沢山。
  そのコレクターの嗜好、趣味も様々。
  北斎を持っているんだという、嬉しそうな気持ちも溢れているようだった。

 *日本橋高島屋 美術画廊 
  高島屋に行ったときには忘れずにこちらを拝見するようになった。
  思いがけないものと出会えるのもこの美術画廊Xならでは。
  新たな仏像美の世界☆佛師(ほとけし)村上 清展
  作家は平等院の飛天の修復をしてきたそうだ。
  無垢の木地を生かした首のない彫像に惹かれた。
  首のない仏像の胎内仏が金色に光を放っていた。
 
 *日本橋高島屋 シャガール展
  あぁ、シャガールね。
  そう思って入って反省。
  芸大美のシャガール展とはまた別の切り口。
  版画が多く、色鮮やかなシャガールのイメージから
  想像もつかなかったが、実はとてもよかった。
  線が上手い人は版画も強いのだと。
  品を作った鶏の流し目の作品なども愛らしく、こちらもにやりとしてしまった。 

 *国立劇場 歌舞伎鑑賞教室 俊寛 中村橋之助
  先月文楽を見た帰りに、チケットを求めていた。
  どんなことになるのかと思って楽しみに幕を待った。
  まずは花道のスッポンから歌舞伎界の若手大谷廣太郎君が登場。
  若干二十歳の初々しい袴姿のナビで舞台裏の色々を教わる。
  今回は歌舞伎研修生の登場で若い担い手さんたち紹介も嬉しいファンサービス。
  竹本さん、杵屋さんたちの役割、鳴物さんたちや、
  回り舞台の動きなどなど客席と一緒になってのお勉強会。
  あら、楽しいじゃないですか。
  俊寛はなんと中村橋之助さん。
  そのお父さんたちの俊寛を見てきた世代にとって、まぁ、ご立派になられて。
  というしみじみもあった。
  橋之助さんのお兄さん福助さんところの児太諸さんが初々しい
  千鳥を頑張った。まだ18歳。ウブな千鳥を熱演。
  平清盛で大河テレビが盛り上がってきたところ、(視聴率は今ひとつらしいが)
  清盛を討つ計画がばれて島流し。
  奥方は清盛の手で殺され、理不尽を極めるも
  未来ある若者を身を賭して守る、夫、父の顔、を演じきる俊寛橋之助。
  清々しい俊寛だった。
  一幕で終わるので、気楽に観劇でき、お値段も3800円とお手頃。
  次回はらぶりん、愛之助による「毛抜」
  歌舞伎初体験にとても丁寧な手始めだと思う。
  ぜひ未体験の方にお勧めです。
  同時にすぐ隣にある伝統芸能情報館で「菅原伝授手習鑑の世界」が
  企画展示。入場無料!
  家康が開幕した慶長8年、1603年。
  阿国のかぶき踊りが始まったとのこと。
  こういった企画展示は浮世絵などを見るのにもとても役立つ。
  義理と人情の掛け合いになんだかな~なのだが、
  今もなお理不尽と純情の掛け合いは人気なお芝居なのですね。
   
 このつづきは又次回。
  

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