あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

誰が袖図 ー描かれたきものー ・根津美術館

2014-12-10 22:41:04 | 美術展

 錦秋の紅葉を感じるまもなく、晩秋にはいってしまいましたが、
 ようやく根津美術館に行ってきました。

 新旧あわせての友人たちとのカフェタイムを楽しくすごし、
 ゆったりと鑑賞した後、先を急ぐ友と別れ、残った旧友と庭園に繰り出しました。

 こういった庭園環境を持っているところは
 やはり日本美術の生まれたところはうつりゆく自然であると改めて感じます。

 誰が袖図、としての展示品は17点ですが、
 5点もの屏風が並ぶ様は艶やかのひとこと。
 色使いも金色をベースに多彩な色が輝きます。
 一挙に絢爛な世界へ誘われるのです。

 今回初めて拝見する作品ばかり。
 寄贈された福島静子氏は、上野精養軒社長を務められた方とか。
 明治期の実業家の底力は果てしがなさそうです。

 三作品の屏風を見比べることも面白く、
 描かれた洗練された調度、文具、着物、という工芸品への愛情も深く、
 細やかな描きようにため息が漏れます。

 この掛けられた衣装は一体どんな人なのか、
 それを想像することがゲーム的愉悦です。
 同時に「洛中洛外図屏風」が展示されましたが、
 これもまた目が疲労する位の描き込みようで、素晴らしく上等な作品でした。
 金雲もまぶしく、京都の彼方此方を丁寧にガイドしてくれます。

 場内に点在するやきものも色絵付けされた
 伊万里の皿が共鳴して華やかさを引き立てています。
 日本のタイル研究者、山本正之氏寄贈とのこと。
 自然と顔の表情筋が緩んで、豊かな気持ちになっていきます。

 隣の展示室には
 旧竹田宮宅所蔵品の婚礼衣裳を見ることができます。
 ゆかしい衣裳に伝統の重厚さと品格を垣間見ました。
 
 同時に2階では、根津美コレクションの名碗20撰。
 雨漏堅手茶碗、高麗茶碗の名碗とされますが、
 このしみしみの汚点を雨漏りと表しておもしろがる民族、
 茶人の美学、うなるばかりです。
 美濃のやきものは土味が面白いので見ていて楽しい気分になります。
 仁清の端正な茶碗が2碗。
 絵付けも京都らしい雅な鉄仙、武蔵野図。
 
 茶室展示室は「霜月の茶」として
 夜の茶会、夜咄の茶器が並びました。
 炭おきや火箸、灯明、茶器の銘も霜月らしいものが選ばれ、
 深々と静かで寒い冬に向かって
 集まるお客様への温かな心遣いが伝わってきます。

 こうして根津美術館の鑑賞も今年この日が最後となりましょう。
 来る新年からまたおめでたい、清々しい展覧が始まるようです。
 今年一年、根津美での時間をありがたく振り返りながら、
 来年もまた素晴らしい出会いが待っていることを
 楽しみにしいています。

 根津美術館のサイトはこちら。
 会期は23日までです。
 次回は新年10日から「動物礼賛」が始まります。











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