あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

松平不昧の数寄 ・畠山記念館

2014-12-14 00:09:11 | 日本美術

 5月に叔母と訪問して以来、久しぶりの畠山記念館に行ってきました。
 まだまだ紅葉が楽しめる頃で目に癒やしのひとときでした。





 門扉が目新しくなった畠山記念館。
 昭和39年(1964)に開館して丁度今年が50周年記念を迎えたということです。
 創始者、畠山即翁が50年掛けて集めた東洋美術品が季節ごとに
 50周年記念として展示する特別の一年となりました。







 今回は出雲国松江七代当主、というよりも大名茶人、として有名な
 松平不昧公(1751~1818)の数寄、という展示です。
 この茶器の横に解説されている伝来と、その価格にぎょっとするのですが、
 松江藩が一時財政難に陥ったときに不昧公が必死に立て直したという功労の後、
 茶器収集に邁進し、「雲州蔵帳」を編纂したという逸材の御仁で、
 執心した茶器の伝来も超一流の名品ばかりのようです。

 ぐるりと重厚な茶入が並びました。
 仕覆の布も様々に大事に守られてきたことが伝わります。

 天下三井戸、と呼ばれる名碗 喜左衛門、加賀、細川の三碗のうちの
 重要文化財、井戸茶碗 銘 細川が展示されていました。
 その伝来をメモしてきました。
 細川三斎→仙台伊達→冬木喜平次→松平不昧→月潭→出雲松平→畠山即翁
 茶器の凄さはこういった伝来が明かであることでしょう。
 堂々とした形と大ぶりながら派手さのない、
 素直な深々とした井戸茶碗の典型のようでした。
 解説には不昧28歳の時に三百両で入手したと記されていました。
 根津美術館での「井戸茶碗」展を思い出します。
 東博での国宝展ではあの、大徳寺弧蓬庵から喜左衛門が存在感を示していました。
 
 井戸茶碗細川の隣には粉引茶碗 銘 松平 
 この茶碗もとても有名で、享和年間に無準墨蹟(東博所蔵)と共に千五百両で手に入れたとか。
 釉薬が一刷毛掛けられずに土肌が見えるところが景色となっています。
 粉引の茶碗にはどことなくあたたかみがあって、安堵感があります。
 
 そして、重要文化財の茶入、唐物肩衝茶入 銘 油屋
 南宋時代の物です。
 今年は本当に南宋時代のいい物を見ることができました。
 この茶入を手に入れるときも不昧33歳の時に冬木家から千五百両で入手するのですが、
 天下の宝物として、生涯茶会に使うことなく大切にされたという
 気の入れようだったようです。
 いかにも堂々とした肩の張った立派な姿です。
 
 彫三島茶碗
 この三島はとても優しい彫りで三島暦のようだという三島手の文様も
 淡い表情で、素直な形でした。
 
 薩摩文林茶入 銘 雪の花
 こちらの箱書きは寛永の三筆、近衛信伊の筆によるものです。
 さりげなく、端正でステキな文字でした。
 
 唐物籐組茶籠
 この籠の中に収められる小さな茶器の愛らしいこと。
 ころんとした茶入は仁清のものでした。
 黄瀬戸の素朴な茶碗、茶筅入れは象牙。
 こんな可愛らしいセットをぜひ旅の荷物にしてみたいものです。

 他に不昧公の筆の作品、蓋置、
 さらりとした墨絵と自賛の一幅がさりげなく展示されていました。
 文字はさらりとした自由な筆致でした。
 
 執心した茶器を手に入れて不昧ならではのコレクションを作ってきたわけですが、
 それをまた、畠山即翁がしっかりと受け継いできたわけですから、
 これもまた大変なエピソード、ご苦労があったとしのばれます。
 
 畠山記念館の見所のひとつは畳の展示ケースです。
 そこには
 館の名宝、国宝クラスが並びます。
 国宝 離洛帖 藤原佐理筆 平安時代
 不昧はこれを七百両で手に入れたようです。
 佐理といえば、平安の名筆、和様の書を確立したといわれる三蹟のひとり。
 (もう少し、書を学ばなければと反省しつつも少しも身についていない残念さ)
 利休の書状、
 鷺が空から舞い降りる臨場感ある、伝牧谿の蓮鷺図
 などをうやうやしく拝見しました。
 
 その奥のお茶室の床にいつもそっと茶花が活けてあるのを
 拝見するのも楽しみの一つです。
 今回は
 竹の一重切花入に 灯台躑躅(どうだんつつじ)の紅葉した一枝に
 白椿(加賀八朔)という控えめながらも華やかさが淑女らしく飾られていました。

 今年50周年記念を記念して「畠山記念館ハンドブック」が作成されました。
 コンパクトにお茶室の鑑賞方法などが館蔵品の紹介もかねて
 とてもわかりやすい入門編となっています。
 なんと、お値段四百円のかわいらしさ。
 入館記念にお勧めです。


 
 さて、来期は畠山記念館のお宝、琳派の名品がお出ましとか。
 新春を琳派で言祝ぐ、良い機会となることでしょう。
 いまから楽しみに致します。

 松平不昧の数寄展は14日が会期末最終日となります。
 畠山記念館のサイトはこちら

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