あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

BIOMBO/ 屏風 日本の美 ・サントリー美術館 その二

2007-10-23 15:24:06 | 日本美術
この展覧会の少し前、
東博の4~6月に本館で屏風特別展覧をやっていた。
思い掛けず、その魅力のルーツに触れることができたのだった。
そこには
もう少しで奈良の正倉院展が開催されるが、
そこに今も残される「鳥毛立女屏風」
その複製屏風が展示されていた。

その屏風が新羅から伝わる日本に残る最古の屏風なのだそうだ。
元祖、屏風ということか。

屏風は、中国で生まれ、衝立として使われていたが、
その後2,4,6,8枚を繋ぎ合わせる様になり、
王族の贅沢品としてその地位を作った。
新羅の屏風もそうして中国の文化の流れを汲み取ってきたものだろう。
日朝の交流から伝わり、正倉院にも伝わることになったのだろうか。

屏風は畳むことができる室内の調度品。
今和室にある畳は何故畳と言われるのだろう?
昔は畳めたのだろうか?
その一扇のサイズから、い草でできた敷物のサイズが生まれ、
今の畳になったのではないかと想像したりもする。
その近くにある、襖とも関係が深そうだ。
作りが似ているし、襖絵から、屏風絵がどれだけ生まれたか。
これは、引き手後です、という襖の名残を沢山見ることができる。
自分の家の壁、襖、戸、に絵を描いて日常を美しく飾り、
回りの自然と共存した民族がいるだろうか?
そう思うと、胸が高揚してドキドキが収まらない。

屏風はその作り上、繋ぐことが必要で、
パネルぐるりを木枠で縁取り(押木)、穴の開いた金具をはめ込み、
革紐や、麻紐などで結んだ。
折りたたんだ内側に絵を入れて保護したので、偶数の面でできている。
6面(6扇)が二つ揃いで六曲一双となる。
2扇だけのものや、4扇のものもある。
中世になり、和紙の蝶番を開発した後は
押木や、縁取りの軟錦(畳のヘリのようなもの)もいらなくなった。
すると、続き物の大画面の絵が可能となったのだ。
この発明は日本オリジナルで、これからが屏風絵の大発展。
海外への進物として、ますます発展するのだ。
明国だけではなく、キリスト教を布教しにきた宣教師によって、
ポルトガル、スペインの遙か遠くの異国まで
果てはローマ法王に贈呈するため派遣団と共に海を渡ったのだった。
その交流から、西洋絵画法を目にした日本絵師達は、
また、日本絵師達の技巧を目の前にした西洋人達は
どのくらいの衝撃があったことだろう?
もちろんそれを見た人達全ての人達が驚き、驚嘆したことだろう?

そして、国内では屏風絵百花繚乱の時を迎える。
信長が謙信に送った洛中洛外図屏風。
貰い受けた謙信は、さぞ驚愕しただろう。
狩野派もこの時に華の時を迎える。

今、京都に集結した永徳の屏風絵の展覧会が評判だ。
新・日曜美術館でも永徳の突出したパワーにゲスト山本寛斎も
シンパシーを感じている様子だった。
突き抜けるパワー。
信長と、秀吉、永徳、が三つどもえとなって、
襖絵、屏風に莫大な力が表現されている。
過労死とも言われた永徳。
命の限り持てる画才を神、信長、
その使徒、秀吉に使い果たしたのではないかと切なくも感じる。
ともかく、あの時代は底知れない熱風を感じるのだ。

秀吉のお陰で、朝鮮との関係は厳しいものだったが、
江戸時代朝鮮通信使を送り、
お互いに戦いをしない友好関係を250年続けてきた。
その交流の中で、屏風も朝鮮へ渡ったそうだ。
残念ながら、残る作は2点だけとか。
その中の一点がこのビオンボ展に展覧されたことは、
一つの見所ではないだろうか?
二国間の間に蝶番のように屏風が役立ってきたのだから、
その恩恵は計り知れないものだろう。

そうやって、屏風は進化し、人々の生活に入り込み、
絵師達も狩野派に留まらず、
色んな絵師達の手によって、その目指す美の世界を表現し、
共存していったのだった。

今回のビオンボ展で、世界に残る屏風が一堂に会するチャンスを得たのも
大きな見所で、一つの作品がバラバラに保管、所蔵されていたが、
この展覧のために帰国したものもあり、
百年に一度の機会だと石田佳也氏も
サントリーミュージアムニュースで熱く語っていた。

集められた屏風は、
国内の寺院に限らず、韓国、オランダ、アメリカから運ばれ、
とにかく日本の国宝が一挙に並んで、
圧巻、の一言。

ともかく圧倒された展覧会であった。

お気に入りの屏風については、また次に機会に。

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