そのそも、東京アートフェアというイベントがどんなものなのか入ったことがないから
想像するしかなかったが、
つまりはギャラリー、美術展というお店が大広場での市場で
その存在を広く知ってもらおうというキャンペーンも兼ねているよう。
ともかくは広大なスペースを具に巡る予定を立てずに
イベント参加にメール予約までして気合い入れて
ひたすら美術史家と茶人トーク参戦して参りました。
山下祐二さんは今はとても著名で
狩野一信の五百羅漢様図を江戸博で目もくらむ展覧を企画された。
今や専門の室町美術史から近代、現代美術のキャパの広い
日本美術応援隊隊長をされている。
私と比べるのもおこがましいが、
同年代男子である。
かたや、お茶の名家、千宗屋氏は若干30代の若宗匠。
しかし、このお兄さん、ただ者ではなく、
仏門に帰依し、美術史家でもあり、
山下先生からの推挙で明治学院大学で教鞭も執り
当然ながら本家のお茶の先生もされている。
山下先生はお兄さんを気取り、婚活ピーアールをされていた。
彼を引き立て、守り、応援するに値する女子は絶賛募集中。
ほ
二人の共通なところは日本美術に対するアグレッシブな視点。
杉本博司さんとも渡り合える凄腕の眼力の持ち主たち。
このお二人のトークは相当好みの壺に入り
始終ニヤニヤした危ないおばさんと化して
楽しいひとときを味わった。
トークはお互いを紹介する他己紹介で始まった。
シャッフル展示における作品をボーダーレスにしかも
なにかで繋がっていることをいかにも楽しげに
若干の上から目線で得意げに自慢されることも
ほくそ笑み系で心地よい。
つまりは、単純に山下先生の趣味。
それに違いないわけで、それがどうしたという具合。
日本美術の工芸美術品はその品質と技術と美しさと
その大切に守られてきた伝承が今の存在を物語っているのだが、
現代に生きている私たちにもっと生身でその美術品とやらと
つきあってもよいのではないかと思えてくる。
実際、美術館に収まったセレブなお宝群は
実は生きていない、お宝の埋葬箱でもあったりする。
朝起きて寝るまでの間にそれらを楽しまないでどうするのだという
精神はかの白洲正子の生き様から教わるが、
はたしてこのお二人もそれを仰っているようだ。
そして、畏れ多くも日本美術を研究してきた
山下氏はあの岡本太郎との結びつきで大きく転換。
法隆寺は燃えてけっこう論は私も驚いた名著
「日本の伝統」
それでシャッフルも会場真ん中に縄文コーナーを
屹立させたのだと納得。
そこから展示会場の作品をスクリーンに紹介してのお話。
このお話を伺ってから展示品と会うことの有意義さも
大変意義があったと思う。
記録していないので間違いがあるかもしれないが、
場内の様子などを書きとどめておく。
丁々発止の芸術トークはちょっとした講談にちかい。
色々うろついてきたお陰でお話の中身がなんとなく
理解できたのはとても嬉しいことだった。
さて、会場内の展示へ。
場内へは横から入るシステム。
否応もなく縄文のサークルに吸い寄せられる。
ぐるり見渡してから、
その中央に
すさまじい存在感のある木彫に目がとまった。
現代の彫刻家、佐々木誠作「八挙須」つまり日本の原始の神様のかたち。
力強いが諦めの潔ささえ溢れている。
この作家に目をつけられた山下先生の眼に
ちょっとくらり。
背面には祠が静かに鎮座。
ノミ跡が生々しく、作家との時間が刻まれる。
もう一体。
「祖形ヒトガタ」
男子の筋肉の塊がどうしようもない業と存在する。
白塗りの踊りをする、舞踏家を思い出した。
森淳一さんの女神。「coma]
ブツブツとした表面からその空洞の形をとらえたのではないかと
空虚だけれど温かいマリア様のお恵み。
近江は良い、というのも白洲正子の「かくれ里」から。
十一面観音の段ボールは実にその形をとらえていた。
断面が透けていてもなんら十一面観音の形に問題が生まれていない。
本堀雄二作。
四天王の阿吽立像。
大きな仏手。
それらが中央で円陣を組む。
突き当たりは屏風だが、
なんとすだれが描かれただけのシンプルさ。
こんな屏風画題は初めてお目にかかった。
山下先生曰く、屏風は照明器具だった。
庭から入る太陽光が畳に映し出された光を受け止めていたはずだと。
金や銀を使うのは部屋の照明だったことを意味している。
当時は照明は蝋燭で、上からぶら下がることはあり得なかった。
屏風は照明器具、これは驚きの観点。
「簾躑躅図屏風」
その隣には大ぶりの縄文土器。
桜の頃、花見をして楽しむしつらい。
土器の土が山となって見頃の桜がはかなげに活けててあった。
この花を慈しむようなスポットは効いていた。
この展示の照明は江戸博の五百羅漢でも腕をふるった尾崎さん。
壁面には絵画の展示。
現代から神戸智行さんの作品。
薄い和紙を貼り重ね、気の遠くなるほどの行程を
丁寧にやる方とトークで伺った。
清廉潔白なきれいな自然界からの妖精がふわり現れそう。
反対側はおどろおどろしい系。
といってもシャッフルの名にふさわしいお茶目なセレクションでもあった。
応挙描く「虎図」 まるで弟子の芦雪っぽい。
芦雪描く「美人図」これは師匠の応挙っぽい。
山口素絢が「幽霊図」とは応挙じゃないのかと
思ってしまったが、これが応挙の幽霊図を模写したものだとのこと。
極めつけは
横浜美術館で堂々の個展を開いたばかりの
松井冬子の「咳」
現代の幽霊画家だろうな~ なっとく!!
山下先生個人のもの。
若い手作家を応援するのも先生のお努めとか。
神様に捧げる御神酒を入れた
根来の瓶子が仏手の奥にでんとある。
漆芸の板絵 岩田俊彦さんの作にこの瓶子が映り込む。
反対側の角には工芸品。
コレがまた超絶工芸で呆れる程の緻密さ繊細さ。
瀑布図の刺繍、六角流水図の七宝花瓶。
石榴に蝉が止まるリアルさに目眩。
が、しかし、それよりも凄い現代作家が現れた。
木彫でノミにトランプのダイヤの2が一枚刺さっている
ただならない緊張感。
壁面にぼうと照らされている。
前原冬樹さん作。
もう一つは懐中時計にまたトランプカードが刺さる。
ゆるくトランプがたわんでいる。
これが驚きなことは
すべて一木から彫刻されたと言うこと!!
懐中時計のつガラスだけはガラスだが、
あとは全部一木の木彫!!
この痛快さは何だろう?
シャッフル。
既成概念や、お約束や、保守的な目線をシャッフルする。
一見カオスであっても
どこかふつふつするものが通っているようでもある。
山下先生の描くイメージが
これからの美術とのつきあい方の提示としてどす黒くそして
きらびやかに輝いていた。
一期一会、楽しもうぞ、と言われたのかもしれない。
ともかくは一々楽しく、興奮し、縄文土器の欠片を求め、
会場内の照明を担当された尾崎さんにもお目にかかれ
たっぷり楽しむことが出来て
大満足のシャッフルであった。
ごちそうさまでした。
また来年、再開できることを楽しみにします。
http://kaigastory.seesaa.net/
コメントに今頃気がついて、申し訳ありませんでした。
遅くなりましたが、リンクの件了解致しました。
お役に立てることがありましたら幸いです。
そちらのうっとり美しいサイトも拝見させて頂きました。
よろしくお願い致します。