酒井抱一の画業というのは
どうみても品がよく、崩れることのない安定感、安心感、
えもいわれないはんなりとした色合い、巧みな構成、
その中で煌めく温かみのある美しさ。
時には厳しく、時には荒々しくもなるけれど、
ほとんどから癒やし系のオーラが放たれているのです。
お育ちの良さもさることながら、本来の性格が滲んでいるようです。
こちらがどんな精神状態でも受け入れてくれます。
これは若冲たち、奇想の画家にはありえない懐の深さです。
今回、その画業で外せない
「夏秋草図屏風」をまじまじとみてきました。
何度となく見てきたはずですが、
やはり目の前に現れてくれるとドキドキします。
宗達から継承された光琳の風神雷神図の裏に描かれた、
光琳へのオマージュ、夏秋草図。
異界の嵐を招いた猛々しい神の姿の裏に、草です。
嵐に抵抗せずにしなやかに身を任せるのです。
東博の展示はカメラOKというサービスがあるので、
お構いなくiPhoneでジロジロ撮ってきましたので、
ご紹介します。
葛の花はちょっと盛り上がっていて、胡粉を使ったのでしょうか。
筆もあちらこちら動いて、
あぁ、抱一がこの画面に向かっていたのかと息遣いを感じます。
また、展示室は変わりますが、
「四季花鳥図巻」下巻も展示してあります。
そのまたはかなげな美しさにウットリします。
虫も鳥も草花もみんなひとときの移ろいを愉しむばかりです。
はかなげな美しさ、これこそが陶酔への誘いです。
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鈴虫とコオロギが秋の訪れを告げます。
萩が咲き、明月が秋を引き立てます。
カマキリが鎌を振り上げてもピンクの芙蓉や菊の咲き乱れる中では
何か踊っているようにしか見えません。みずひきも見えます、この繊細さ!
小さな豆粒のようなありんこさん、見えますか?
発見したときのドキドキした嬉しさといったら。
水色の実を付けているのはイシミカワという蔓らしいです。
枯れかけた草はオミナエシでしょうか。
葉裏に蝉の抜け殻が残されています。
この実はもしかしたらアオキかなと思います。
もはやここから抜け出した蝉は一夏の命を終えたのです。
柏?に止まる鳥の視線の先はどこに。蔦も赤く染まりました。
そこへ初雪が散るのです。
梅には雪が積もり、菰を被せられた水仙は初春を呼ぶ
かぐわしい香りを放っているはずです。
こうしてみていくと、抱一の描く様は
友禅の着物柄にしたくなります。
染め物との関係はなかったのでしょうか。
光琳も呉服屋だったのですから
抱一の着物、きっとあったと思うのです。
それにしても、鳥の名前わからなくてがっくりします。
東博の秋の特別公開の案内サイトはこちら
9月29日までの特別公開です。
やっぱり生を見るという経験は作者の魂がダイレクトにドシンときます。
抱一の甘美なる世界に浸ることが出来て
じんわりとした充実感に満たされたのでした。
「四季花鳥図」は生で見るのは初めて。本当に素晴らしかったです。
右から左に横移動しながら、物語を読んでいるような気持ちになり、初雪がはらはら散る場面でこみ上げてくるものがありました。
水仙が咲き誇り再び季節は巡りゆく。本当にちょっと泣いてしまったんです。恥ずかしいので我慢しましたが…(^^;)
抱一の溢れる詩情に素直にのって
感激された様子、キュンときます。
まさにそういう純な気持ちを思い出させてくれる
そういう絵師ですね。
よかったです、堪能されたようで。