あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

7月のアート鑑賞記録(2015) 

2015-08-18 17:14:31 | アート鑑賞記録
 7月は割合と狙った展覧会を目指すことができました。
 今年初めてアート鑑賞したなぁという実感がありました。
 うまくいけば、月にこのくらいの量が一番良いペースかも知れません。

 *春信一番!写楽二番! 
  フィラデルフィア美術館浮世絵名品展 三井記念美術館
  このフィラデルフィア美術館の所蔵している浮世絵が日本に来る、里帰りする、
  それだけで驚きの機会を得るわけですが、
  選りすぐりの150点のどれもが素晴らしいので本当に驚きました。
  前期、後期に分かれての展示ですが
  後期もしっかり目に焼き付けてこようと思います。
  同時に超絶技巧、自在置物、緑山の牙彫置物も脇をしっかり固めてくれています。
  8月16日で終了しています。

 *時松はるな きみの顔が好きだin東京 ギャルリー東京ユマニテ
  7月6日~7月18日
  軽やかな群像の中に切ないシーンが潜んでいます。
  青春の思春期のツンとした甘酸っぱさが思い出されてます。
  人体の造作よりも集合体から生まれる心地よいリズムが
  感じられるけれど、ほんの少し痛みも混じる、巧さが効いています。
  ご本人とも母娘のようなお話をさせて頂きました。
  国立能楽堂のチラシにイラスト制作もされていたり、
  これからも思いがけない活躍が広がりますように!









 *シネマ歌舞伎 三人吉三 東劇
  勘九郎、七之助、松也の三人吉三の映画バージョン。
  串田和美氏の演出、美術が光る構成に。
  歌舞伎を知らなくても、映画作品として充分楽しめます。
  淡路屋、笹野おじの怪演も見所。
  勘三郎、橋之助、福助の三人吉三は不滅保存版だとしても、
  若い三人吉三もアクティブでとても良かったのでした。
  画像は勘三郎のコクーン三人吉三のパンフレットから。

  
 *歌舞伎座ギャラリー
  東劇で三人吉三を見て歌舞伎熱を帯びたので、
  一幕でも、と思いましたが、運悪く売切れ、さすがの猿之助丈でございます。
  では、とうことで、歌舞伎座初潜入の友を連れ立ち、
  ギャラリー体験してきました。
  鳴り物をガンガン鳴らしても良いところなので、
  太鼓で雪の音を出してみたり、友は思いっきり銅鑼を叩いて自爆したり、
  効果音の雨の音やら、波の音など楽しんできました。
  特集のビデオも興味深いシーンが集められています。



 *ギャルリさわらび
  建築物として文化財クラスの奥野ビルにあるギャルリさわらびに
  御贔屓にしている佐々木誠さん作品の実物を見たいという友を案内しました。
  やはり、実物から溢れる霊的オーラはいつもながらビシビシ感じられました。
  初見の友も大満足のようで私も喜びました。
  8日から松濤美術館で開催される「スサノヲ展」にも
  佐々木さんの作品が展示されます。
  今から楽しみにしています。


 *川本喜八郎人形ギャラリー ヒカリエ8階
  ヒカリエが開店してから初めて入店しました。
  銀座線から思いの外スムーズに館内に入ることができ、
  杞憂は直ぐに解消されました。
  久しぶりに会う従妹と幼稚園に通い始めた彼女の娘となんなく遭遇できて安堵しました。
  思いがけないことに川本喜八郎さんの人形がケースに入れられていました。
  その中になんなく入場し、三国志の勇姿をながめることができて、
  ヒカリエはなかなか良い場所だと感じたのでした。 



 *ヒカリエ 現代茶湯アワード
  渋谷ヒカリエ 現代茶湯アワード
  急遽こちらに出品されるという兼藤忍さんのtweet連絡で
  従妹親子と一緒に行ってきました。
  茶湯で使われる、茶陶はいつの世でも魅力あるものとして
  継承されているようですが、
  実際、それらを使って楽しい茶会体験がもっとできれば
  もっと手にする実感として茶碗が、茶陶が生き生きしてくることと思います。
  現代アートと、茶湯コラボ、広がること期待したいです。
  ヒカリエ全体の様子がまだつかめませんでしたが、
  銀座線からはとてもアクセスしやすかったので、
  億劫がらずに行けるのだと思ったのでした。
  ロブションのパンもなかなかでした。 

 *ヘレン・シャルフベック展 芸大美術館
  藝術大学美術館でヘレン・シャルフベックという
  フィンランドの女性画家の軌跡を辿る展覧会がありました。
  その前にどこかの駅ホームでただならない視線をこちらに向ける
  大きなポスターがあって、その存在感が気になっていました。
  彼女の生い立ちや、事故で左足が不自由になったことや、
  何処にも出かけない引きこもりの時代、失恋の時代、
  どんな人生であったのか、ともかく自画像にその思いをゆだねたかのような
  孤独に充ち満ちた作品群でした。
  ちょっと、いたたまれないのですが、グレコに影響を受けたり、
  絵画に対する真摯な気持ちが充満していました。
  絵があったからこそ、彼女の人生が成り立っていたのだと
  切なくも辛い視線を浴びてきたのでした。
  7月26日で終了。



 *うらめしや~、冥土のみやげ展 芸大美術館
  ブログ記事にしましたが、
  これは一見の価値あり展覧会。
  純情が怨念に変わるとき、その薄ら寒さが
  酷暑の避暑地となっています。
  後期は18日から。
  松園の「焔」は9月1日からです。
  会期は9月13日まで。ぜひ。



 *クレオパトラとエジプトの王妃展 東京国立博物館平成館
  平成館がエジプトの宮殿のように変身していました。
  延々と続くエジプトの発掘研究はいつ終わりが来るのか、
  見当もつきません。
  しかし、ファラオたちの血流とクレオパトラの美貌が
  壮大な空間と宇宙との交信と人々の技術力とが絡まって、
  今も尚、その不思議にとらわれる迷路が続くのです。
  そのミステリアスな魅惑の泉が枯渇することはないのだと
  発掘された王妃の美しさに思わず跪きたくなったのでした。
  会期は9月23日まで。
  夏休み企画も沢山あるようです。
  
 *呉服商大彦の小袖コレクション 東京国立博物館本館
  この展示についてはすでに拙ブログで画像を含めてご紹介しました。
  日本人の身体があまりに平坦であるが故に、着物を纏うことで
  ネームバリュー、権威、美の競演、個人の力を発揮したことなのでしょう。
  その衣裳への執着、技術向上へのたゆまない努力と
  プライドまでが見えてきそうな、
  また、その着物を注文する人の心意気、引き受けた呉服屋の力量、
  呆れるほど素晴らしいものばかりを拝見しました。

 *蔡國強 帰去来 横浜美術館
  こちらもブログ記事に致しましたが、
  長い展示期間中、より多くの方が
  あの空間を体験できればと思います。
  10月18日まで、ぜひ現場の圧倒的空間を
  体験して欲しいと思いました。

 *横浜美術館コレクション
  夏、戦後70年を迎えた日本で、戦争を体験してきた
  アーティストの作品が特集されました。
  併せて、個人的にはポール・ジャクレーの
  新版画、浮世絵を橋口五葉、伊東深水らの作品と共に
  たっぷり鑑賞できたことも大きな収穫でした。
  コレクション展の解説はこちら


 *絵巻を愉しむ 《をくり》を中心に 宮内庁三の丸尚蔵館
  熱海のMOA美術館に岩佐又兵衛の「山中常盤物語絵巻」を見に行った事もあって、
  三の丸尚蔵館でのこの企画展に岩佐又兵衛の
  「小栗判官絵巻」が展示されることを知って、
  行かねばなりませんでした。
  やはり、並々ならぬ画力と物語の展開に
  目がくらむようなものでした。
  他にも「「絵師草紙」「酒呑童子絵巻」「彦火ヶ出見尊絵巻」(ひこほほでみのみことえまき)
  等も展示されて、それも入場無料というありがたい展覧会は
  8月30日までの開催です。展示替えがあったようなので、
  もう一度場面変えなども確認したいと思っています。
  「小栗判官絵巻」を知るためにも
  「小栗判官と照手姫」という広げてわかるわくわくシリーズ、という
  解説書を求めて、じっくり学ぼうと思っています。



 *画鬼暁斎展 三菱一号館美術館
  江戸、明治にわたり、浮世絵、狩野派などの画法をものにし、
  描けないものはないのではないか?と思わせる巨匠、
  河鍋暁斎の展覧があるとなれば、
  行かずにはいられません。
  いままで、どこかの展覧会で数点の展示が小刻みにあっても、
  全部暁斎尽くし、という展覧は私にとって初めての展覧鑑賞でした。
  まぁ、本当にエライ絵師、画家がいたものだと、
  ため息ばかりの傑作尽くしでした。
  丁度、東博でも巨大な「地獄絵」が展示されていましたし、
  芸大美での「うらめしや~」にも圓朝の肖像画と
  お化けの作品が登場しました。
  7才で国芳に弟子入りし、10才で狩野派も学び、外国人とも交流し
  ついには建築家ジョサイア・コンドルを「暁英」と名付けて
  弟子にしてしまう、幅の広さに仰天するのです。
  ともかくは、9月6日までの展覧会、面白すぎて困ります。
  胃癌で享年59才とはちょいと短命であったことが残念です。
  
 *田能村竹田展 出光美術館
  没後180年記念の田能村竹田の展覧が8月2日までの開催でした。
  渋い文人画を得意とした人です。
  酷暑の中、出光美術館で山水の涼風に吹かれたような
  展覧会でした。
  青木木米との交友もほほえましく、
  同時代の蕪村、池大雅なども展示されていました。
  竹田はなんだかいつも拙い絵ではあるが、と自身の出来を
  卑下しているようなところがあって、
  絵から伝わる真面目さが滲んでくるようでした。
  愛らしい草花の作品を見ることができて、
  ホッとしました。
  (サイトの見所解説などがあっさり消えてしまっていて残念です)

 と、ともかく書き出しただけとなりましたが、
 世の中にはなんて楽しい芸術作品が溢れていることでしょう。
 それを見ることの至福を今一度感じた眼福の初夏となりました。


 遅すぎる7月のアート鑑賞記録でしたが、
 なかなか充実度が高かったのでした。

 8月は、中だるみしそうですが、
 それなりに追いかけてみようと思っています。

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