天心が「國華」第一号に載せたのは、興福寺の「無著像」
小川一真の写真だった。
一冊1円という法外な値段。
当時初任給が3~5円位だったような話だったと思う。
今も、4600円という値段に、
月刊誌の常識的値段からは普通じゃないことは確か。
それでも、手元にある958号を開くと、
宗達のフリア美術館の「松島図屏風」と
今は石川県立美術館の「槙檜図屏風」について、
延々と対談と、論文と、考証が立派な図刷と共に
高尚に語られている。
水尾比呂志、田中一松、秋山光和氏の対談は、
もはや、宗達にイカレテイル。
今回の「対決」の図録にも寄稿している水尾氏は、
日本美術界の重鎮だ。
何十年もこんなことを続けているのだ。
辻惟雄氏も、河野元昭氏も、みんな日本美術に魂を
奪われているのだと思った。
そういう熱い方々の足元には及ばないけれど、
自己流日本美術愛好家として、
「対決」に白黒をつける、それをやってみることにした。
運慶・快慶
●運慶
快慶の「地蔵菩薩立像」は、奈良国立博物館の常設コーナーで
見た記憶がある。なんとも綺麗で、截金の細やかな模様と、
白雲、蓮の造形、全体の端正さはビジュアル嗜好に唸らせるものはある。
でも、今回の運慶の「地蔵菩薩坐像」の表情と手の造形、衣の襞に
軍配を上げたい。彼がいたから、快慶になったのだということも。
肉眼では確認できにくいけれど、ここにも截金が施されているそうだ。
本館の六波羅密寺特集もすばらしい。
雪舟・雪村
●雪舟
「慧可断臂図」と「秋冬山水図」が登場したら、仕方がない。
「秋冬山水図」は後期の出展だけれど、国宝室で見たことがある。
「梅下寿老図」のおどろおどろした雰囲気。
狩野派にも影響を与えた、雪舟、凄すぎるではないか。
もちろん、雪村も、「蝦蟇鉄拐図」の2幅はとても愉快で
楽しいし、「花鳥図屏風」もいいけれど、線が堅い。
「四季花鳥図屏風」の前には敵わない、と思う。
特に冬の雪景色のほうはなんともいい緊張感があって、
絶賛したい。
永徳・等伯
●等伯
秀吉のご下命、御用絵師狩野派の永徳と、
茶の湯の利休に着いた等伯の立場の違いが
二人に求められた世界の違いにつながっているよう。
図録解説で、田沢裕賀氏が述べられているが、
自然を屈服させる永徳、
風、大気自然を心象として表現した等伯。
まさにその通り。
等伯の絵には、絵に取り込まれて、
画中に入り込んで行きたくなる幻想がつきまとう。
「萩芒図屏風」には、しばし呆然。
私は勝手に長谷川等伯は、琳派の源流が流れている、
そう思っている。
長次郎・光悦
●長次郎
もちろん、光悦のすばらしい才能には感嘆する。
するけれど、あふれる才能に対して、
この無欲なありように、生きている世界の違いを感じる。
利休の所望通りに作陶しただけで、ただそれだけで、
後世の陶芸家達の苦闘ぶりをしても敵わない。
森川如春が16歳で手に入れた光悦の「時雨」
光悦茶碗の中でも群を抜いて作為がなくて、
素直で存在感ある茶碗。
ちなみにその展覧が三井で10月4日から始まります。
古美術ファンの方垂涎物が並びます。
長次郎のハタノソリタル茶碗「道成寺」の素直な様子。
利休の目線が届くよう。
ストイックな、禅僧のような、無欲な素朴な佇まいに
息を呑むのだ。
このコーナーの超ゴージャスな特典コーナー
光悦・宗達の「鹿下絵新古今集和歌巻断簡」
「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」
こんなオマケがさすがの展覧会です。
宗達・光琳
●光琳
もちろん宗達の凄さは私の中でも一番上の位置を
不動のものとしている。
でも、今回は、光琳の仕事ぶりに感動した。
宗達を尊敬してやまない、情熱を感じた。
宗達の「蔦の細道図屏風」に逢えた事は、最高に嬉しく
大感動した。萬野美術館から相国寺に移管されたのだ。
この蔦図の美しさは、日本の美の全てがあると思った。
その横に異彩を放つものがあった。
光琳「白楽天図屏風」
波の斬新さ、構図の大胆さ、なんという冒険だろう。
宗達の波を学んだのだろうか。
はらはらする何かは、光琳の宗達へのチャレンジ精神なのだろうか。
他、「菊図屏風」の簡素で愛らしく、構図が洗練されている。
また、「流水図乱箱」のデザインと配色のすばらしさ。
などを見て、光琳が今まで以上に
宗達を越えたいと願っていたように思えた。
宗達は、もはや、日本美術の基本、お手本となってしまっていて、
雲の上の人。
そこを目指した光琳の頑張りと才能に今一度
応援とエールを送りたくなったのだ。
様々チャレンジをしてきたではないか光琳よ。
という感じ。
「菊図屏風」は特に今回のお気に入りとなった。
龍神雷神は出光で拝見したしね。
・・・ということで、
第一会場の対決終了です。
次回、第二会場にチャレンジします。
これもまた、悩ましい~~~~
小川一真の写真だった。
一冊1円という法外な値段。
当時初任給が3~5円位だったような話だったと思う。
今も、4600円という値段に、
月刊誌の常識的値段からは普通じゃないことは確か。
それでも、手元にある958号を開くと、
宗達のフリア美術館の「松島図屏風」と
今は石川県立美術館の「槙檜図屏風」について、
延々と対談と、論文と、考証が立派な図刷と共に
高尚に語られている。
水尾比呂志、田中一松、秋山光和氏の対談は、
もはや、宗達にイカレテイル。
今回の「対決」の図録にも寄稿している水尾氏は、
日本美術界の重鎮だ。
何十年もこんなことを続けているのだ。
辻惟雄氏も、河野元昭氏も、みんな日本美術に魂を
奪われているのだと思った。
そういう熱い方々の足元には及ばないけれど、
自己流日本美術愛好家として、
「対決」に白黒をつける、それをやってみることにした。
運慶・快慶
●運慶
快慶の「地蔵菩薩立像」は、奈良国立博物館の常設コーナーで
見た記憶がある。なんとも綺麗で、截金の細やかな模様と、
白雲、蓮の造形、全体の端正さはビジュアル嗜好に唸らせるものはある。
でも、今回の運慶の「地蔵菩薩坐像」の表情と手の造形、衣の襞に
軍配を上げたい。彼がいたから、快慶になったのだということも。
肉眼では確認できにくいけれど、ここにも截金が施されているそうだ。
本館の六波羅密寺特集もすばらしい。
雪舟・雪村
●雪舟
「慧可断臂図」と「秋冬山水図」が登場したら、仕方がない。
「秋冬山水図」は後期の出展だけれど、国宝室で見たことがある。
「梅下寿老図」のおどろおどろした雰囲気。
狩野派にも影響を与えた、雪舟、凄すぎるではないか。
もちろん、雪村も、「蝦蟇鉄拐図」の2幅はとても愉快で
楽しいし、「花鳥図屏風」もいいけれど、線が堅い。
「四季花鳥図屏風」の前には敵わない、と思う。
特に冬の雪景色のほうはなんともいい緊張感があって、
絶賛したい。
永徳・等伯
●等伯
秀吉のご下命、御用絵師狩野派の永徳と、
茶の湯の利休に着いた等伯の立場の違いが
二人に求められた世界の違いにつながっているよう。
図録解説で、田沢裕賀氏が述べられているが、
自然を屈服させる永徳、
風、大気自然を心象として表現した等伯。
まさにその通り。
等伯の絵には、絵に取り込まれて、
画中に入り込んで行きたくなる幻想がつきまとう。
「萩芒図屏風」には、しばし呆然。
私は勝手に長谷川等伯は、琳派の源流が流れている、
そう思っている。
長次郎・光悦
●長次郎
もちろん、光悦のすばらしい才能には感嘆する。
するけれど、あふれる才能に対して、
この無欲なありように、生きている世界の違いを感じる。
利休の所望通りに作陶しただけで、ただそれだけで、
後世の陶芸家達の苦闘ぶりをしても敵わない。
森川如春が16歳で手に入れた光悦の「時雨」
光悦茶碗の中でも群を抜いて作為がなくて、
素直で存在感ある茶碗。
ちなみにその展覧が三井で10月4日から始まります。
古美術ファンの方垂涎物が並びます。
長次郎のハタノソリタル茶碗「道成寺」の素直な様子。
利休の目線が届くよう。
ストイックな、禅僧のような、無欲な素朴な佇まいに
息を呑むのだ。
このコーナーの超ゴージャスな特典コーナー
光悦・宗達の「鹿下絵新古今集和歌巻断簡」
「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」
こんなオマケがさすがの展覧会です。
宗達・光琳
●光琳
もちろん宗達の凄さは私の中でも一番上の位置を
不動のものとしている。
でも、今回は、光琳の仕事ぶりに感動した。
宗達を尊敬してやまない、情熱を感じた。
宗達の「蔦の細道図屏風」に逢えた事は、最高に嬉しく
大感動した。萬野美術館から相国寺に移管されたのだ。
この蔦図の美しさは、日本の美の全てがあると思った。
その横に異彩を放つものがあった。
光琳「白楽天図屏風」
波の斬新さ、構図の大胆さ、なんという冒険だろう。
宗達の波を学んだのだろうか。
はらはらする何かは、光琳の宗達へのチャレンジ精神なのだろうか。
他、「菊図屏風」の簡素で愛らしく、構図が洗練されている。
また、「流水図乱箱」のデザインと配色のすばらしさ。
などを見て、光琳が今まで以上に
宗達を越えたいと願っていたように思えた。
宗達は、もはや、日本美術の基本、お手本となってしまっていて、
雲の上の人。
そこを目指した光琳の頑張りと才能に今一度
応援とエールを送りたくなったのだ。
様々チャレンジをしてきたではないか光琳よ。
という感じ。
「菊図屏風」は特に今回のお気に入りとなった。
龍神雷神は出光で拝見したしね。
・・・ということで、
第一会場の対決終了です。
次回、第二会場にチャレンジします。
これもまた、悩ましい~~~~
光琳にエールを送るというあべまつさんの優しさに、じーんとしました。
長次郎の素朴さは、絢爛たるラインナップの中でほっと一息つけました。
夏に入り暑さがいちだんと増して辛いですね。
こんな時はやはり、「東博」は良いですね!
美に囲まれて嬉しくなる空間です。
この対決は面白いですね!!!
宗達も光琳も市中の美から出たものですよね。
そして装飾的ですが、その裏にはそれぞれの
心が反映させていて面白いです。
本当に、ヘトヘトです。
第一会場は、特にあり得ない展示ですね。
大御所、本家、巨匠、ビッグネームを冠に何個付けても間に合わない。
琳派に、対決は厳しかったです~
後半戦、アップしましたよ~
お元気でしたか?
ここのところ、毎年夏にビッグイベントをぶつけてくる東博ですね。
これが終わると、大琳派展だそうです。
これもまた、悩ましい~~
このワクワクがあるから、日本美術の追っかけがやめられません。
暑いけどがんばっていらっしゃるようで、
TBをありがとうございました。
もうこの展覧会何から書いてよいやら
混線しています。もう来週は後期が始まるし、
いつになったらまとめられるのやら。
あべまつさんので、たのしんでいます。
「対決」のあべまつ流をお楽しみ下さり、
嬉しく思います。
やっと、頭の整理がついて、溜飲を下げたところです。
とは言っても罪深い展覧会です。
また、風神雷神を拝まなければと思うし、
もう一回はみておかないと、こんな事
二度々あり得ないと思うし・・・
今は、とりあえず息子との夏休みツアーの行程組に
追われています~
前半は宗達・光琳がすごくハマりました。
金と緑の空間の切取り方。
やっぱり日本画ってすごいなあ~。
コメントとTBありがとうございます。
琳派ファンならば、悶絶するのではないでしょうか?
「蔦細道図屏風」の本物と対面できて、
最高に嬉しかったです。
宗達の絵に対し、全身全霊を注いだ光琳も
素晴らしい芸術家ですね。
ここ三週間ほど日本美術館から
遠ざかっています。ひと段落ついたので
またこちらの世界へ戻ろうと思います。
まずは、対決展後半ですね!
無事のご帰国、お疲れ様でしたし、
フェルメール完遂おめでとうございます。
対決も最後の週となりますね。
さてさて、いつ風神雷神と対面しましょう?
雷ゴロゴロに気をつけないと!