宇都宮といえば、餃子。
その餃子の町、宇都宮で、朝鮮王朝の絵画展。
このミスマッチに愉快な気分で乗り込んだ。
見えてきた美術館の建物は、近代建築で、
白い直線のスマートな涼しげな建物だった。
JR宇都宮駅からの車の道のりから見えた
昭和の名残がみえる商店街や、
花崗岩でできた蔵や、塀なども面白かった。
自宅から、ここまで、2時間位。
便利な世の中だなぁ。
まぶしい気持ちで荷物をロッカーに置いて、
受付カウンターのお姉さんにウェルカムスマイルを頂き
いざ潜入。
そこで、はたと戸惑う。
朝鮮の歴史を何も知らないでいることを。
李朝のやきものは大好きだし、
日本民藝館の所蔵されている民画や、
家具、工芸品なども、どこか温かみがあって、
これらも大好きだ。
雨森芳洲による朝鮮通信使の歴史も
なんとなくは知っているが、実は詳しく知らない。
そもそもどんな美術史があったのか?
どんな画家がいたのか?
中国絵画は、東博の東洋館でいつも見ることができるのに、
朝鮮絵画の作品は、その比較にならないほど展示数が少ない。
それほど知られていない朝鮮絵画展が
栃木、静岡、仙台、岡山を巡回する。
それも、「宗達、大雅、若冲も学んだ隣国の美」
という、副題。
この展覧会が今後の日本美術を考える時に、
新しい一歩になるような、そんな気がして、
妙に興奮した。
朝鮮の雑器、井戸茶碗を茶の湯に使った利休の時代、
秀吉は朝鮮に兵を送った。
なんでもわびたものを茶の湯に使い始めた
利休へのあてつけのためにまさか兵を立てないだろう、
そうは思いつつも、
それからの悲惨な日本からの戦いで
朝鮮のやきものを奪ったのは、日本だった。
それが気になって、ずっと以前に
「近世の日本と朝鮮」三宅英利 講談社学術文庫
を手に入れているが、それをちゃんと読んでくればよかった。
中国にはキラキラ憧れ目線を感じるが、
朝鮮に対してはなにか、下目線のような、
高ビーな気配を感じる。
そのわけがこの本で少し判ればいいのだけれど。
本題。
会場は思いがけず奥行きがあって、
うなぎの寝床のようだった。
第1部 朝鮮絵画の精華
1章 前・中・後期に分けて山水画を中心に朝鮮絵画の大枠の流れを見る。
いかにも中国からきたような山水画から、
墨絵の花鳥図、葡萄図が並んだ。
しかし、名前がよくわからない。
前・中期には、伝とあるものが多く、
要するに作者が判明していないということか。
後期の草虫図、葡萄図などに目が奪われる。
美術倶楽部でみた、正木コレクションにも、
草虫図のようなものがあったように思う。
2章 仏画の美 高麗から朝鮮王朝へ
大方公仏華厳経巻のすばらしさ。
三十三間堂のような、金色の仏様が居並んでいた。
日本のあちこちのお寺から集まった
阿弥陀様や、観音様の図
朝鮮半島を渡り、同じ仏様を拝む
心があったことに感慨深くなる。
16世紀は仏教絶頂の時だったのかもしれない。
3章 絵画と工芸・越境する花鳥の美
4章 「民画」誕生
この3,4章が一番私の好きな世界だ。
大阪東洋陶磁からも青花梅竹文壺などが来ている。
駒場の日本民藝館から民画の数々。
静岡の芹沢美術館からも彼の作品の母体となった
文字図屏風なども。
なかでも仰天は紙織画の一連作品群。
気の遠くなるような工程で、
紙を織物のように縦糸と横糸に分解して
画面を再構築してしまう。
色大島のような、不思議な色合い。
織物との関係が深い絵画を見るのは初めてだ。
どこの国にもない、朝鮮独自の工芸らしい。
また、鑑賞できず、残念なことだったが、
会期の初めに、かの若冲が描いた「虎図」の
本画とされる絵が陳列されていたようだが、
あれが、中国のものではなく、
実は朝鮮王朝期のもので、
若冲が中国絵画とみなして学習していた中に
相当数の朝鮮絵画が混在していたと推測する、
と図録で解説されていたことに愕然とした。
若冲本人は、まさか朝鮮絵画を手本とした
とは思っていなかった、ということか?
これこそが中国絵画と朝鮮絵画が
混在していたという証なのではないだろうか?
それにしても、プライス・コレクションは
美味しいところを持っているなぁとため息をつく。
感想が長々しくなり、まとまる気配もないので、
第2部は、次回にする。
2部は日本人のまなざし。
これはもう、垂涎物の嵐。
なにしろ、朝鮮王朝期の絵画をこれだけまとめてみるチャンスを
得た、それだけで、宇都宮まで行った甲斐は充分あった。
さすがに岡山までは、ちょっと新幹線で、とは行かない。
あべまつ、しばし、朝鮮絵画に埋没します!
今年度のベストテンも選出せねば。
いそがし、いそがし・・・・
その餃子の町、宇都宮で、朝鮮王朝の絵画展。
このミスマッチに愉快な気分で乗り込んだ。
見えてきた美術館の建物は、近代建築で、
白い直線のスマートな涼しげな建物だった。
JR宇都宮駅からの車の道のりから見えた
昭和の名残がみえる商店街や、
花崗岩でできた蔵や、塀なども面白かった。
自宅から、ここまで、2時間位。
便利な世の中だなぁ。
まぶしい気持ちで荷物をロッカーに置いて、
受付カウンターのお姉さんにウェルカムスマイルを頂き
いざ潜入。
そこで、はたと戸惑う。
朝鮮の歴史を何も知らないでいることを。
李朝のやきものは大好きだし、
日本民藝館の所蔵されている民画や、
家具、工芸品なども、どこか温かみがあって、
これらも大好きだ。
雨森芳洲による朝鮮通信使の歴史も
なんとなくは知っているが、実は詳しく知らない。
そもそもどんな美術史があったのか?
どんな画家がいたのか?
中国絵画は、東博の東洋館でいつも見ることができるのに、
朝鮮絵画の作品は、その比較にならないほど展示数が少ない。
それほど知られていない朝鮮絵画展が
栃木、静岡、仙台、岡山を巡回する。
それも、「宗達、大雅、若冲も学んだ隣国の美」
という、副題。
この展覧会が今後の日本美術を考える時に、
新しい一歩になるような、そんな気がして、
妙に興奮した。
朝鮮の雑器、井戸茶碗を茶の湯に使った利休の時代、
秀吉は朝鮮に兵を送った。
なんでもわびたものを茶の湯に使い始めた
利休へのあてつけのためにまさか兵を立てないだろう、
そうは思いつつも、
それからの悲惨な日本からの戦いで
朝鮮のやきものを奪ったのは、日本だった。
それが気になって、ずっと以前に
「近世の日本と朝鮮」三宅英利 講談社学術文庫
を手に入れているが、それをちゃんと読んでくればよかった。
中国にはキラキラ憧れ目線を感じるが、
朝鮮に対してはなにか、下目線のような、
高ビーな気配を感じる。
そのわけがこの本で少し判ればいいのだけれど。
本題。
会場は思いがけず奥行きがあって、
うなぎの寝床のようだった。
第1部 朝鮮絵画の精華
1章 前・中・後期に分けて山水画を中心に朝鮮絵画の大枠の流れを見る。
いかにも中国からきたような山水画から、
墨絵の花鳥図、葡萄図が並んだ。
しかし、名前がよくわからない。
前・中期には、伝とあるものが多く、
要するに作者が判明していないということか。
後期の草虫図、葡萄図などに目が奪われる。
美術倶楽部でみた、正木コレクションにも、
草虫図のようなものがあったように思う。
2章 仏画の美 高麗から朝鮮王朝へ
大方公仏華厳経巻のすばらしさ。
三十三間堂のような、金色の仏様が居並んでいた。
日本のあちこちのお寺から集まった
阿弥陀様や、観音様の図
朝鮮半島を渡り、同じ仏様を拝む
心があったことに感慨深くなる。
16世紀は仏教絶頂の時だったのかもしれない。
3章 絵画と工芸・越境する花鳥の美
4章 「民画」誕生
この3,4章が一番私の好きな世界だ。
大阪東洋陶磁からも青花梅竹文壺などが来ている。
駒場の日本民藝館から民画の数々。
静岡の芹沢美術館からも彼の作品の母体となった
文字図屏風なども。
なかでも仰天は紙織画の一連作品群。
気の遠くなるような工程で、
紙を織物のように縦糸と横糸に分解して
画面を再構築してしまう。
色大島のような、不思議な色合い。
織物との関係が深い絵画を見るのは初めてだ。
どこの国にもない、朝鮮独自の工芸らしい。
また、鑑賞できず、残念なことだったが、
会期の初めに、かの若冲が描いた「虎図」の
本画とされる絵が陳列されていたようだが、
あれが、中国のものではなく、
実は朝鮮王朝期のもので、
若冲が中国絵画とみなして学習していた中に
相当数の朝鮮絵画が混在していたと推測する、
と図録で解説されていたことに愕然とした。
若冲本人は、まさか朝鮮絵画を手本とした
とは思っていなかった、ということか?
これこそが中国絵画と朝鮮絵画が
混在していたという証なのではないだろうか?
それにしても、プライス・コレクションは
美味しいところを持っているなぁとため息をつく。
感想が長々しくなり、まとまる気配もないので、
第2部は、次回にする。
2部は日本人のまなざし。
これはもう、垂涎物の嵐。
なにしろ、朝鮮王朝期の絵画をこれだけまとめてみるチャンスを
得た、それだけで、宇都宮まで行った甲斐は充分あった。
さすがに岡山までは、ちょっと新幹線で、とは行かない。
あべまつ、しばし、朝鮮絵画に埋没します!
今年度のベストテンも選出せねば。
いそがし、いそがし・・・・
NHKのアートシーンの紹介でも、「なかなか良さそう?」くらいだったのですけれど、
あべまつさんの記事で、俄然「観たーい!」モードになりました。
もう終わってしまったのですね…残念です。
でも、リンクのバーチャルツアーも楽しんで、少しは行った気分になれました。
素敵な記事をありがとうございました!
あべまつは、いつも感想が遅く、美術館へのタイミングが遅れてしまって、申し訳ないブログでスミマセン!!
それに、この展覧会はまた、地方行脚なので、アクセスに厳しい状況ですねぇ。
それでも読んで下さって、ありがとう~ございます!!今まで中国絵画の影響ばかりを追いかけていたそのなかに朝鮮絵画が紛れ込んでいるようです。