あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

北斎の橋 すみだの橋 すみだ北斎美術館

2018-10-22 16:52:06 | 日本美術
 
 いつもアート関連企画をさくっと継続されているTakさんの
 特別内覧会企画に参加させて頂きました。
    *写真画像アップは美術館の許可を頂いています。

 今回は、すぐに行ける場所にありながら、未訪のままだった、
 「すみだ北斎美術館」
 設計は、あの妹島和世さんのクールなアルミの塊のような、どどーんとした建物に初入館です。





 展覧会は「北斎の橋 すみだの橋」というややマニアックな
 「橋」の作品を集めた企画展です。
 そういえば、お江戸には川が集中していて、浅草から出ている遊覧船クルーズは
 橋めぐりのようなものでもあり、川と海が近いことを再確認します。

 その橋を一筋縄ではいかない北斎がどう描いてきたか?
 今回のフライヤーです。





 会場は4階から

 富嶽三十六景シリーズ(天保2、3年1831〜32)を出していた北斎、
 瀧シリーズ「諸国瀧廻り」(天保4年1833)の頃
 「諸国名橋奇覧」(天保4,5年1833〜?)を制作していたのだそうです。
 さすがである、と感心するそばからやはり奇態に引っかかる習性に
 こちらもつい罠にかかって、にやついてしまうのでした。
 「諸国名橋奇覧 足利行道山くものかけはし」
 橋が主体なのか、雲なのか、どちらにもかけはし。


 確認されている11作のうち、現存していない橋が2作、あるとのこと。
 富嶽シリーズの中でも、現場に行っていないでしょう、という作があることを思えば、
 さも、なのですが、
 「かうつけ佐野ふなはいの古づ」(万葉集の佐野の舟橋を題材)
 川の流れでたわんだ橋、ってのがあるのでしょうか?謎です。



 「三河の八つ橋の古づ」(伊勢物語の八つ橋)
 ここに杜若はあるのかとよく見ると橋脚のあしもとに花はないけれど、それらしい葉の群生が。


 この2作、橋の形が尋常ではないので、是非とも入れたかった、と思われます。

 他にも実見していなかっただろう橋も何かの資料で変な橋、奇橋として
 カウントしたかったのだと執着が見て取れます。

 福井の足羽川に架かる九十九橋。
 橋の半分が木材、もう半分が石材だったという珍しい構造。奇橋として有名だったそうです。




 すほうの国きんたいはし
 岩国の錦帯橋。五連のアーチを支える石組も美しい。


 諸国にちらばる奇橋は思えば、色々な形、景観、があるものだと感嘆します。
 その変な橋集合の夢を見た北斎、とんでもないものを制作します。
 「百橋一覧」



 夢の世界ですから、当然架空の世界なのですが、山水図にところせましと
 橋が架かります。やはり、北斎の変人ぶりが噴出です。
 1作ずつ奇橋を描いているうちに全部いれてみるってのはどうだ?になったのでしょうか。
 なんでもエンターテイメント化、したくなるんですよね、北斎さん。
 その「百橋一覧」きっと面白がる人が沢山いて、実際の名橋を書き入れようと
 版元が全国有名橋図に替えてしまいます。
 「諸国名橋一覧」



 
 無理矢理感がすごいのですが、大変面白いのです。
 名所にかかる橋、いったことあるか、いってみたいとか、
 この絵図をみて、旅好き、面白い物好き、新しい物好きな人々は
 おおいに喜んで楽しんだことでしょう。

 その橋「諸国名橋奇覧」の元原稿、のような半紙本が展示されています。
 そこにも奇態な橋の形をこまごまとスケッチしてきたことがわかります。
 谿谷に縄を張り、そこに板を差し込んで橋を作りながら渡る、
 「辺鄙谷の渡」



 舟一艘が川をまたいで舟自体が橋となる、「船橋」

 貴人が渡るためだけのための橋に覆いをかぶせた「廊下橋」



 めちゃくちゃだなぁと苦笑していまします。



 他、橋関連の冊子が展示されて、興味深いものでした。

 会場を3階に移します。

 

 この美術館は墨田区に位置しているので、川、といえば
 「隅田川」なのは当然で、架かる橋もその隅田川の両国橋。
 絵師も北斎のお弟子さんたちの活躍めざましく橋関連の絵を制作していました。
 大阪方面でも北斎に憧れる絵師達も多かったそうです。
 ご近所の江戸東京博物館からの出品もあり、
 展示されていた作品にも再会しました。
 その橋の歴史と変遷が明治期の版画とともに展示されています。
 絵師達も世代交代、小林清親、井上安治、らへと受け継がれていきます。
 お相撲さんたちや、墨田の花火大会、賑々しい忠臣蔵の両国橋。
 威勢の良い土地柄なのでした。






 時代はぐっと下がり、土木建築としての橋、開通記念行事などの資料が並びます。
 時の流れと共に橋も交通の要となり開通の記念絵はがきにも気合いが入ります。
 こうして現在の姿となるまで、橋はとても重要な存在だったことに
 気づかされるのでした。
 お近くに橋、架かっていませんか?橋の数ほどものがたりも潜んでいそうです。







 我が家からも近くの墨田、浅草界隈。
 様々な橋がかかる隅田川、人の往来、物流の拠点としての橋。
 橋という切り口のユニークなとても面白い企画展覧会でした。
 会期は後もうすこし、11月4日まで。
 じつは、前期、後期と相当な入れ替えがあったとのこと、前期を拝見できず残念でした。
 
 企画展示のすぐ隣には、常設展示室が有り、
 北斎の名品が満天の夜空の下で楽しむような照明の下で楽しめます。





 リアル北斎とお栄ちゃんが部屋の中で作画中の場面もドッキリします。




 こちらは江戸博の本当にすぐ近く。これからは気軽に訪ねてみようと思いました。
 
 Twitterではハッシュタグ #北斎の橋 #Hokusai_Bridge でこの展覧会をつぶやいている 
 すみだ北斎美術館 @HokusaiMuseum アカウントの他、
 特別内覧会に参加された方がいらっしゃいますので、ぜひ、探してみて下さい。
 すみだ北斎美術館のサイトはこちら
 次回は、なんと「大江戸グルメと北斎」11/20〜1/20ですって!

 特別内覧企画をされたTakさん、すみだ北斎美術館の方々に感謝とお礼申し上げます。

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