あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

誌上のユートピア ・ うらわ美術館

2008-05-28 23:27:56 | 美術展
春休み、息子と二人で、木場の現代美術館の「通路」展を見た。

ベニヤがずっと張り巡らされた中で、ちょっとしたライブラリーがあるので
覗いてみた。
ちょっとした、ではなかった。
最近の図録がごっそり立ち並び、
世の中の図録は、ここで見ればいいのだと、思ったもの。
その中で、誘われる表紙があった。
それが「誌上のユートピア」展用の図録だったのだ。
本が美しい。
それだけで、引きつけられた。
本だけでも欲しい。
そういう図録は珍しいと思う。

その時は既に3月末だったから、葉山での展覧が終わっていたわけだけれど、
GWにその葉山に行くことになろうとは思っていなかった。
ベニヤ板は、又異次元で面白かったけれど、
頭の隅っこにあの本、図録の魅力がじんわりと残った。

いくつかの連鎖があって、
ブロガーの方(Takさんや、とらさん、遊行さんや、すぴかさん達・・・)
の濃い記事を読むにつれ、
ますます恋い焦がれる気持ちが募っていた。
そこにチケットが舞い降りてきた。
ありがたや。

そうして、幾日かが過ぎ去り、
昨日、息子の運動会がビカビカ太陽光線も凄い中、無事終了。
さて、今日は疲れているかと思いきや、
なんとか動けそうな気配。

上野から、高崎線に乗れば、意外と早く着くことがわかった。
それがわかれば、後は行くだけ。

浦和は意外や大きな街で、
駅前の商店街も楽しく、ふらふら「うらわ美術館」の看板を目指した。
高層ビルのホテルの入った建物の3階がその美術館。
最初に訪ねる時は、なんとなくよそ者風で、きょろきょろ。
でも、とてもわかりやすい所だったので、
安心した。
余裕ができれば、帰りに商店街をふらつくのも面白そう。

さて、本筋。
これが、大変なことになった。
最初から、最後まで、見惚れるばかり素晴らしい本が立ち並び、
思いがけない傑作絵画との対面もある。
本の美しさを展示してくれる事の嬉しさ。
あの時代の熱狂の渦巻き。
版画、摺りものが好きな人には本当に心臓バクバク、
汗がたらたら、目眩がする展覧だと思う。

時代は1889年から、1915年のこと。
世紀末、アールヌーボーの芸術が誌上を通して伝わる。
今年は同時期のロートレックをサントリーで見た。
ビアズリーが、クリムトが、日本芸術家を刺激する。
そのイントロダクションだけでもキューン。
日本も豊かな時代を送っていたのだろう。

頭が飽和状態になる。
だから、今日は記事にならない。
図録を目の前にして、素敵な絵に見惚れるだけ。

でも、必然に影響され合って、互いに高め合った芸術家達の
美への追究がまた物語となって、
ユートピアとなったこと、夢のように感じられた。

日を改めて、記事にできるよう、頑張ります。

時代を追った、わかりやすい展示にも感謝したい。
そうして、現代の道に繋がってきたことが
とても嬉しく、誇りにも思える展覧会だった。

重たい図録、
これは私にとっても素晴らしいテキストになるでしょうし、
美本として、長く側に置きたい本となることだと思うのでした。
そうそう、
併設の図書コーナーも充実していました。

ともかく、頭、クールダウンした後、記事に臨みます。



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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (すぴか)
2008-05-28 23:45:05
こんばんは
やっぱり凄いことになってますね。私も行ってきてもすぐにはかけませんでした。
思いは同じ、そのうちゆっくり書いてください!
楽しみに待っています。
ほんとに素晴しい展覧会でした。
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Unknown (遊行七恵)
2008-05-29 12:54:33
こんにちは
この展覧会は本当に書けなくて苦しみました。
書いても書いてもたどりつけない・・・そんな感じでした。行かれたブロガーの皆さんの記事を一つ一つ大事に拝見してはときめきが蘇り、「あたし書かなくてもいいかな」と逃げそうでした。
あべまつさんもがんばって素敵な記事をアップされてください。お待ちしてます。
とにかくこの展覧会は本当に素敵でした。
返信する
大正時代! (悲歌・哀歌)
2008-05-29 14:48:37
本当に素晴らしい展覧会です。
うらわ美術館に遠征したい気持ちが、ブスブスと燻ぶっています。
遊行さんに続いて、あべまつさんも、すぐには記事に出来ないとはっ!!
それだけ充実かつ強烈な展示だ、ということですね。
小生は、この表に出た作品群の裏に見え隠れする、民衆・大衆の存在をヒリヒリ感じます。
印刷された本・ポスター・絵葉書等を買い求め、支持した人々、美の嗜好を一部の人間に独占させない新しい表現を獲得したのだな、と勝手に思ってしまいます。
大杉栄を始めとする、アナーキズムなどの労働・政治運動は、また芸術運動とも連動していたのでしょう。
人間全体が、全人格をぶつけて芸術にも社会にも関わっていった時代なのか?!
自由を求める切実さも伝わってもきます。
明治末から大正は、日本における美術・工芸の光芒のときだったのだろうか。
美は乱調にあり 殻を破るべく、もがき苦しみ、またそれ以上に創造の喜びに生きた彼らに幸いあれ!
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Unknown (oki)
2008-05-30 20:36:14
この展覧会図録、あべまつさんは現代美術館でご覧になったのですか、僕は国立新美術館の図書室です。
現代美術館はインターネットコーナーもあっていいのですが、図書室に関して言うと荷物を持ち込んではだめとかうるさい!
しかしいい図録だった。
僕も葉山の券がはいったのに行かれずがっかりしていたら、なんとか浦和の券もはいった。
そうそうおっしゃるように高崎線を利用すれば浦和は近いですね。
明日京都日帰りしようと思ったら、歯が痛くなって、歯医者に一時半にいかなければならなくなった。
というわけで京都の件は未定なのです。
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すぴか さま (あべまつ)
2008-05-30 22:54:23
こんばんは。
本当に困っています。
でも、なんとなくまとまりつつあり、
美を通した文学とアーティストの甘い巡り会い。
時代が呼んだ、新しい工芸のあり方。
和洋の芸術の交流の熱気。
そんなものが具体的に目の前に現れた。
その証言者達。
きらめいていましたね~
よくぞ企画してくれたと思いました。
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遊行 さま (あべまつ)
2008-05-30 23:04:07
こんばんは。
私の中で、混沌としていたものが目の前に突然現れて一大イベントショーを見せてくれました。
この企画をしてくれた方々に感謝します。
そういうことだったのかと、図録に様々を教わっています。
前期に現れた、清方の「妖魚」見たかったです。
この時代の文学と美術の蜜月を見ることができて、
幸せです。記事は、もう少し~お待ち下されませ~
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悲歌・哀歌 さま (あべまつ)
2008-05-30 23:14:45
こんばんは。

>明治末から大正は、日本における美術・工芸の光芒のときだったのだろうか。
悲歌・哀歌さまが仰るようにそれを感じました。
洋画が入ってきた喜びととまどいと、従来の日本スタイルとの融合と、そしてあくまでも美を求める時代と。と同時に、西洋の方も工芸の新しいムーブメントが切望されていたようにも思いました。
戦い疲れた戦士と、宗教の閉塞感と、耽美への執着。
新しい物の切望とあちこち不安の塊が内在しているようです。記事はもう少し、かかりそうです。
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oki さま (あべまつ)
2008-05-30 23:20:39
こんばんは。
そう、現美でこの図録を見たのです。
図録を見てから、展覧会に行くという珍しい体験をしました。丁寧な作りですが、作品目録がないのが残念なところでした。
上野から高崎線で浦和に出ると、とても早かったのでした。
早く歯医者さん通いから解放されて、
京都の緑に癒されることを願っています。
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