
実母がなにやら美術展に行きたいというので、
どこがいいかと考えたが、
上京するのは月曜日、自ずと行かれる場所に限定感あります。
そこでこの「貴婦人と一角獣」展開催の国立新美術館が月曜日開館で
火曜日休館を思い出し、チャンス!と向かうことにしました。
あちらこちらでの評判を耳に目にし、日曜美術館でも取り上げられ、
これは日本に来ること自体が一大事件のようなので、
楽しみに乗り込んできました。
母ときたら貴婦人は貴婦人が見るべきだわ、とかなんとか、ごにょごにょ。
しかし、ものは実物を見ないと伝わらないのは今回ほど知らされることも
少ない事でしょう。
圧倒的な大きさと、天井の突き抜けた会場によくぞ収まってくれたものと
母娘でぽか~んと仰ぎ見てきたのでした。
会場に入るといきなり大広間、ドームといった方がいいくらいの展示室。
ここにあの魅力的な赤に染められた巨大なピスリー6連作にぐるり囲まれます。
一瞬どこから始めたらいいのか戸惑うくらいの
大画面の大迫力。
「触覚」、「味覚」、「嗅覚」、「聴覚」、「視覚」、
そしてラストに「我が唯一の望み」
それが「愛」なのか、「結婚」なのか、はたまた「知性」なのか
未だに謎に包まれているそうです。
解明されていないというミステリーも大きな魅力の一つとなっています。
朱赤地の巨大な布は
フランス国立クリュニー中世美術館の至宝、パリから奇跡の初来日という
一大イベントの主人公です。
門外に出たのは1974年アメリカ、メトロポリタン美術館に行っただけとのこと。
その美しさとロマンティックな甘い表現と
登場する貴婦人の姿、動物たちの愛らしい様子は併設された
高精細デジタルシアターや、映像コーナーで堪能することも出来ます。
また、場内には関連作品も数多く展示されていて、
それもまた美しいものばかり。
マグダラのマリア像や、聖女バルバラの彫像も興味深い作品です。
数珠を持ったマリア様の足下に骸骨が転がっていた像は
マリア像のもつ清く美しい透明感ある神々しさとは違った
ダークサイトな悩ましいお姿でした。
輝くガラスのステンドグラス絵、アクセサリーなども洗練された工芸に見えましたし、
他のタピスリーの連作も見所満載です。
中世ヨーロッパ美術の華麗で典雅な展示は
7月15日までです。
ぜひ現場体験、国立新美術館での鑑賞をお勧めします。
余談ですが、日曜美術館で現地を来訪された
原田マハさんのこのタピスリーの物語り上梓を心待ちにしたいと思ったのでした。
至宝流転の歴史に何を見るのか、楽しみです。
国立新美術館のサイトはこちら。
母はすっかり堪能できて、やっぱり、貴婦人は貴婦人を見ないとね、と嬉々として
東京駅から伊豆へ帰途についたのでした。



被写体としても面白い美術館です。