阿部ブログ

日々思うこと

米軍のシリア撤退〜アルメニア人150万虐殺の前科のあるトルコの対クルド戦

2018年12月22日 | 雑感
トルコ軍は、北東部ユーフラテス川以東地域への侵攻作戦を準備中だが、12月20日、シリアからの米陸軍2000人の撤退報道を受け、トルコ陸軍の増援部隊がシリア国境ガジアンテップ県に展開。トルコ特殊部隊Su Alti Savunma(破壊工作旅団)と偵察部隊は国境を超えて浸透し監視ポイントを設置。同日、トルコのエルドアン大統領とイランのロウハニ大統領がアンカラで会談している。米軍のシリア撤退は、トルコ、イラン、そしてロシアによるトライアングルがシリア内戦後の中東における勢力地図を書き換えることになりそうだ。今回のトランプの決断により、イスラエルは米国カードを失い、イランの影響下にあるレバノン、今の所、良好に見えるヨルダンとの関係も今後は怪しい。既にトルコはヨルダン軍との連携を強化しつつあり、現実に12月15日から22日にかけて「トルコ=ヨルダン軍国境安全軍事演習」と「トルコ=ヨルダン大隊司令軍事演習」が行われた。そして、IS掃討後のシリア安定化に向けたロシア、イラン、トルコによるアスタナ会議は、来年ロシアで開催される。

翌21日、エルドアン大統領が「叩き潰す」としているシリア民主軍の共同議長が仏大統領府を訪問。この訪問前にフランス陸軍の偵察・監視部隊数十名がシリア民主軍とmanbijに移動している。米軍撤退後は、フランス軍がシリア民主軍と連携するようだが、米国のようなプレゼンスは無く、影響力は限定的だろう。事実、シリア民主軍のマンビジュ軍事評議会は、manbij北のサージュール川の部隊拠点に対し、親トルコの武装集団から発砲・挑発されている。

12月22日、エルドアン大統領は、延期している北東部ユーフラテス川以東地域への侵攻作戦を、米軍撤退後に実施すると発言。トルコの目標は、シリア民主軍の主力であるクルド人民防衛部隊(YPG)の壊滅である。シリア民主軍とYPGは、12月1日から2日にIS掃討戦に投入した15000人規模の部隊を、トルコ軍侵攻に備えて再度、部隊移動させている最中。また、予備兵の招集も始めたとの情報もあり、対トルコ戦に備えている。負ければトルコによる民族浄化と言う名のクルド人の迫害と虐殺が行われる。トルコは、アルメニア人150万人虐殺の前科があるが、現在トルコ軍が占領しているafrin地域では、トルコに教唆されたアラブ人による民族浄化が行われた。だからクルド民族は自らの生存をかけてトルコ軍を撃退する必要があるのだ。

当然ながら、米軍もシリアから撤退すればクルド民族の行く末は簡単に想像できる。そこでシリアに展開している米軍部隊は、イラン北部のアルビールに駐留・展開する。アルビールは、イラク国内におけるクルド自治区の首都である。米軍は、シリア民主軍とクルディスタン武装部隊のペシュメルガなどと、シリア・トルコ国境地帯での軍事活動や情報活動を行う合同作戦センターを設置する方向で調整している。

何れにせよ、トルコのシリア侵攻とクルドの防衛戦闘の行方に注視が必要。

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