阿部ブログ

日々思うこと

米軍の電子戦能力喪失問題~ステルスもイージスも無効力化される~

2014年11月03日 | 雑感
米軍の電子戦能力の喪失がようやく顕在化している。
2014年4月12日、黒海を遊弋していた米海軍アーレイ・バーク級ドナルド・クック駆逐艦(Arleigh Burke-class guided-missile destroyer USS Donald Cook:DDG-75)に対しロシア空軍の戦闘機スホイSU-24フェンサー1機がUSSドナルド・クックから1,000ヤード地点を高度500フィートと言う低空飛行を繰り返した。スホイは、イージスシステムを無力化する電子戦攻撃を実施。ドナルド・クックが搭載するイージスシステムはベースライン5。この電子戦攻撃でイージスの一部のシステムが作動しなかった。空域にいた2機のフェンサーはイージムシステムへの電子戦攻撃機の掩護を行った。電子戦攻撃機はクックの上空を12回飛行した。
ロシアは旧ソビエト時代から電子戦能力の向上には並々ならぬ努力を継続しており、イージスシステムへの攻撃はその集大成の観がある。しかし、スピン場、またはトーション場とも言うが、アインシュタインの理論では無視されたエーテルを再認識させる知られざる物理法則に基づく兵器開発も進めている。スピン場では光速を越える事が可能。
マックスウェルのオリジナルの方程式の復権

イージスだけではない。ステルスも無効化される。
米軍の通信システムは、既存の周波数帯に大きく依存したままだが、ロシアや中国など対米勢力は、高周波数帯(Cバンド、Xバンド、Kuバンド)と低周波数帯(Sバンド、Lバンド)へ移行し帯域幅が広がっており、米軍の電子戦部隊はその対応に遅れとっている状況。
ステルス技術は所詮、レーダーで探知されるのを遅らせる技術にすぎない。ロシアや中国の地対空ミサイル用レーダーは、低周波数帯を採用しており、米空軍のステルス効果は明らかに減っている。VHFを使う早期警戒レーダーでは明らかにステルス性は低下する。それにステルスはレーダーに探知されにくいと言うだけで物理的に見えなくなっているわけではない。そこで、防空システムに直結する高精度の赤外線探知追跡システムが登場している。しかしSバンドやLバンドなどの低周波レーダーでは、兵器を誘導出来ないと指摘があるが、それは間違いだ。イージスシステムの要となるSPY-1レーダーや次世代対空・対ミサイル防衛レーダー(AMDR)は、Sバンドでも作動する設計であり、兵器を精確に誘導すること可能なのだから。

そんな中、中国が対ステルスレーダーを開発したとしている。DWL002レーダーだが、探知能力は戦闘機で400キロメートル、早期警戒機では600キロメートル。実は中国のDWL002レーダーの原型は、チェコの電子機器メーカーElectronic Reality Associates (ERA)社のVERA-Eレーダー。このレーダーは陸海空において探知・識別・位置標定可能なパッシブ監視レーダー(Passive Surveillance System)で、受信した信号のタイムラグを調べることで、陸・海・空レーダーの種別と、ジャミング波なのか、また二次レーダーやIFFなのか、TACANやDMEといった航法波なのか、はたまたデータリンクなどパルス発信波なのかを瞬時に処理できる優れもの。またこのVERA-Eレーダーは、防空レーダーとして使用可能で米軍がセルビア爆撃を実施した際にF-11を撃墜した事は有名だ。

米軍のステルスやイージスの技術的優位が喪失した事を、米国防総省のアラン・シャファー(Alan Shaffer)も認めている。シャファーは、高性能装備を配備しても低価格デジタルジャマーで対抗されたら対応するのは大変だと発言している。この発言は極めて率直だ。米軍は、電磁スペクトルで優位性を取り戻す必要があるが、航空自衛隊も導入を決めているF-35においても、電磁スペクトラムに配慮しないとステルス性を喪失する可能性がある。米軍の電磁スペクトラムの優位性が揺らいでいる原因の一つに、米国連邦通信委員会(FCC)が、周波数帯の大部分を民間等に売却してしまったことにもある。所謂、周波数オークション制度だが、この周波数売却で米軍が利用できる帯域が限定される由々しき事態に陥っている。世界の動向としては、低周波数帯、若しくは高周波数帯へ移行し利用出来る帯域幅が広がっており周波数を機動的に運用出来る状況になっている。このような中、10月10日、最新鋭の早期警戒機E-2Dが初期運用態勢(Initial Operational Capability)に入った。E-2Dは、UHF周波数帯レーダーを装備しておりステルス機の探知追尾能力があるとされる。今後の電子戦能力の向上に注目する必要がある。
米軍の電子戦能力の喪失の例としては、下記の過去ブログをご参照下さい。

※過去ブログ:「イランのステルス RQ-170 捕獲 と GPSジャマーの脅威

最後に、GPSの脆弱さが気になるので少しだけ言及する。米軍は、通信衛星とGPSに完全に依存しており、ロシアや中国の地上発射型衛星破壊ミサイルの脅威を排除できていない。特にGPSの電波は、典型的な微弱電波であり、妨害するのはワケない事だ。GPSのジャマーは秋葉原で18,000円程度で購入できる。DARPAは現在、衛星を使わないGPSの開発を進めているが、部隊配備までは、まだまだ時間がかかる。目先、GPSジャマーへの対応が必須だ。
米軍はGPSジャマーへ極めてセンシティブになっており、日本の宇宙研究開発機構(JAXA)が開発した屋内測位技術IMES(Indoor MEssaging System)に付与しているPRNコード(GPS衛星の識別コード)10セット(173~182)について、2017年に予定されているPRNコードの更新を許可しない可能性がある。米軍は活動領域がアウトドアなので屋内や地下街の位置測位には関心が薄いが、日本、特に都市部では屋内測位は重要だ。人間の生活の85%は屋内での活動だし、複雑怪奇な地下街での防災などを考えると、IMESのような国土地理院の場所情報コードと紐づいている屋内測位情報は、今後整備するべき社会インフラの一つである。