フクロウは夕暮れに

接触場面研究の個人備忘録です

アメリカの匂い

2005-10-02 21:51:12 | old stories
アメリカ留学の昔話、第5回は匂いの話。

その国の匂いというのは確かにあるもので、その国その社会に生まれ育った人間には気がつかないことが多い。たとえば、日本で言うと、それはお醤油やご飯やみそ汁のだしの臭いだったりする。外国人はこのむっとした特有な臭いに慣れるまで、なかなかご飯が進まないもののようだ。

ニューヨークに降りたぼくにとってアメリカの匂いはまず何よりも葉巻やタバコのそれだった。JFK空港の警備員のどすの効いた声のように、タバコの強い臭いは地下鉄や駅やYMCAなど、いたるところに漂っていた。その臭いはじつに迫力のあるアメリカだったのだ。ぼくが海外でつねに周囲を注意して歩く習慣が出来たのはまさにこのニューヨークの経験からだったのではなかったかと思う。しかし、そんなニューヨークでも、鞄を持ってくれようとする中年の婦人がいたり(警戒してぼくは鞄から手を離さなかった訳だが)、初めてニューヨークを歩いているぼくに道を聞くアメリカ人がいたりと、のんびりなのか、危ないのか、よくわからないところでもあった。はっきりしているのは、ぼくがここでは外国人として扱われていないということだった。英語が話せないことが外国人の証拠でもないのだ。逆に言うと、アメリカではどうやらアメリカ以外に世界があるとは思われていないフシがありそうなのだが ...

写真はマンハッタンと島を往復するフェリーからの眺め。中米かプエルトルコあたり出身の家族をスナップ・ショットしたもの。フェリーにもタバコの臭いは流れている。
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科研研究会

2005-10-02 21:14:32 | research
28日(水)は科研研究会でした。久々ということで、勉強会として桜美林大を終えてATOSで仕事をしている大関さん、千葉大大学院の薄井さん、そして日本に一時帰国していた齊藤さんに話をしてもらいました。大関さんは、Mehanの枠組みでメキシコの大学の授業参加を調査したもの、薄井さんはEricksonの枠組みで13秒の沈黙を分析したもの、そして齊藤さんは科研コーパスのための指針をまとめて下さいました。

大関さんの研究は、非常に綿密で授業全体の教室参加から、メキシコの学習者参加が多く、しかも適切な位置での参加になっていることを明らかにしています。薄井さんは、教師が指名もせず「ほかには?」と言って教科書に目を落としながら続いた13秒の沈黙が、Academic task structureとsocial participation structure、つまり授業の内容による構造と参加順序との共有が崩れたときに、沈黙が起きたことを明らかにしています。どちらも興味深いわけですが、それでも授業の構造と、ミクロなシグナルとの両面からの調査の視点が必要というのが結論のようでした。

しかし、両方の調査分析を行うことの大変さはだれもがわかっていることではあるのです。
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