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礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

着―助字ニシテ現在ヲ示ス

2016-04-25 03:32:57 | コラムと名言

◎着―助字ニシテ現在ヲ示ス

 昨日に続き、『速習 軍用日満支会話』(尚兵館、一九二九)という本を紹介する。本日は、その第一篇「語法略解」の「九」を紹介してみたい。なお、四声の記号は省略した。

 九、助辞  助辞
 助辞ハ語句ニ付随シ其意味ヲ完成スル働キヲナスモノデ、次ニ掲グルモノガ其レデアル
了【ラ】――助字ニシテ過去ヲ示シ又ハ事物ノ動作ヲ指定スル時アリ
着【チヨ】――助字ニシテ現在ヲ示ス
没【メイ】――助動詞トシテハ常ニ過去ヲ示ス
罷【バ】――命令詞又ハ推定詞ニ用フ
麼呢【マニ】――語尾ニアルトキハ疑問タルコトヲ表ハス
哪【ナ】――語尾ニアルトキハ疑問タルコトヲ表ハス
呀啊【ヤア】――疑問ヲ示ス
児子【アルツー】――語尾ニアル時ハ附字ニシテ別ニ意味ナシ、各々「陰平」ニ変ジテ発音ス

*このブログの人気記事 2016・4・25(9位にやや珍しいものが入っています)

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砲兵在那児(砲兵ハ何処ニ居ルカ)

2016-04-24 04:14:16 | コラムと名言

◎砲兵在那児(砲兵ハ何処ニ居ルカ)

 今月二一日、二二日に続き、『速習 軍用日満支会話』(尚兵館、一九二九)について紹介する。本日、紹介するのは、同書の第三篇「会話」の「二十」。発音および四声の記号は省略している。

 二十、斥候  探子
アノ山ノ敵兵ハ何程居ルカ  那山頭裏的敵兵有多少
 六百人余リ居リマス     有六百多兵
砲兵ハ何処ニ居ルカ     砲兵在那児
 アノ村ノ後方ニ居リマス   在那個荘児後辺児
アノ村ニハ歩兵騎兵モ居ルカ 在那個堡子裏有歩兵騎兵没有
 ハイ、砲兵モ又居リマス   是、砲兵也有了
オ前ハ我等ニ道案内ヲシテ呉レルカ 你可以給我們帯道罷
 ハイ、旦那ノ命ニ従ヒマス  査、従老爺的命
アノ村ニ敵ガ宿営シタカ   在那個堡子有敵兵札過営麼
 今朝早ク出発シマシタ    今児清早抜隊走了
此ノ道ニ橋ガアルカ     這条道児上有橋没有
 敵ガ退却スル時悉く破壊シマシタ 敵兵退的時候児都折壊了
渡船ハ無イカ        有擺渡船没有
 艀舟【ハシケ】ガ有リマス  舢板是有
幾船ノ艀舟ガ有ルカ     有幾隻渡船
 三隻有リマス        有三隻
毎船幾人乗レルカ      毎船可以坐幾個人
 毎船五十人バカリ乗レマス  毎船可以坐五十来個人

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新たに祭神4万1318柱を合祀

2016-04-23 02:55:37 | コラムと名言

◎新たに祭神4万1318柱を合祀

 この間、中村正吾秘書官、および黒木勇治伍長の「日誌」によって、七一年前(一九四五年)の「今ごろ」の出来事を紹介している。出典は、それぞれ、中村正吾著『永田町一番地』(ニュース社、一九四六)、および黒木雄司著『原爆投下は予告されていた』(光人社、一九九二)である。
 本日は、『原爆投下は予告されていた』から、四月二三日から二八日までの日誌を紹介する(一〇〇~一〇六ページ)。なお、『永田町一番地』は、四月九日のあと、四月二八日まで、なぜか日誌が飛んでいるので、次回の紹介は四月二八日になる。

 四月二十三日 (月) 雨
 午前五時ごろからの雨音で目がさめる。目がさめるが真っ暗だ。【中略】
 午後四時、上下番の挨拶をして上番する。情報室は壕の中、雨や風の心配はなく、夜も昼も裸電球が煌々として室内は明るく、扇風機もほどよく回って快適というほかない。
 午後五時ごろ、隊長、上山少尉は、雨ということもあって珍しく早く引きあげられた。
 午後九時、NHKのニュースの時間に、先日、特攻隊員として戦死した海軍第十九期飛行予科練習生の森茂土君(大正十四年生まれ)の辞世の歌を放送していた。
『国民【くにたみ】の安きを祈り吾は征【ゆ】く敵艦隊の真只中【まつただなか】に』
『海ゆかぼ草むすかぽね』の音楽の中に、一句一句を区切りながら読まれてゆくので、一語一語がわが身に突きささり身震いを感じた。自分が大正十二年生まれだから二歳下の二十歳になったばかりか。冥福を祈るのみ。【後略】

 四月二十四日 (火) 雨
 昨日ちょっと補修しただけで、今日は雨漏りもなくよく眠れた。今日は雨そのものはしとしと降ってそんなに強くはないが、一日中降りつづく。【中略】
 午後四時、上番する。午後五時ごろから雨が強くなったようだ。雨で安心されたのか、隊長も上山少尉も、あいついで情報室から出ていかれた。
 午後七時、NHKのニュースでは、来日中の満州国の国務総理張景恵氏が戦災見舞品として塩、大豆の目録を本日、首相官邸に鈴木首相を訪問し贈呈したと放送する。
 午後十時、ニューディリー放送が流れる。
 ――こちらはニューディリー、ニューディリーでございます。信ずべき情報によれば、米軍B29約百二十機は本日、立川付近の航空施設や清水の軍需工場を空襲し爆撃しました。繰り返し申しあげます。…………。――
 一瞬この雨の中でと思ったが、この雨は南支のこと。沖縄も日本内地も雨が降っているとは限らない。むしろ、こっちが雨ならば晴れているのが普通だろう。
 沖縄に神風、が吹いてくれないかなあ。敵の航空部隊と艦船が一夜にして全部壊滅するようなやつ。しかし、台風の時期はまだ早い。【後略】

 四月二十五日 (水) 雨
 下番後、いつもなら横になるとすぐ眠れるのに、今日ばかりは棕梠〈シュロ〉の葉を叩く雨音はパラパラパラと喧騒このうえなく、そのために一時間近くも寝つけたかった。【中略】
 午後四時、勤務に上番する。午後六時ごろ、浴衣〈ユカタ〉に下駄履き姿の隊長は、片手に団扇〈ウチワ〉をバタバタさせて、「静かやなあ」といいながら、情報室に入って来られた。
「はツ、敵さん、雨で動けんようです」と答える。
「若い二人がやってくれるかどうか。まったくの子供で、本当に疑問でじつは心配していたんだが、よくも一人前になってくれた。よく教育してくれた貴様に礼をいう」と、隊長からいわれた。
 それだけいうと、ラッキーストライクを一箱、交換台の机の上において出て行かれた。ラツキーストライクは香港接収時のものが将校のみ配給され、下士官兵には羨望の品物であった。【後略】

 四月二十六日 (木) 雨
 連日の雨つづきで、洗濯物が溜まっていたが、九時ごろからの小雨の中を思いきって洗濯する。略衣袴上下各二、靴下三足、褌三枚、手拭三枚、内務班に紐を張って乾かす。【中略】
 雨は午後になってますます強く本降りになった。雨が降ってよいのは敵機がうろちょろしないので、のんびりできるような気がする。
 その雨の中、午後四時から勤務に上番する。下番者田中候補生の報告によると、「今朝午前十一時のニューディリー放送では昨日(四月二十五日)、ナチス・ドイツを東西から挟撃して来た米ソ両軍が、エルベ河畔トルガーで合流し、米ラインハルト少将とソビエト・ルサコフ少将が固い握手を交わしたそうであります」
「あ、有難う」とは言ったものの、ドイツ軍はいよいよ最悪の状態になって来たようだ。かつて松岡〔洋右〕外相が日独防共協定を結んで意気洋々としたニュース映画を見たことを思い出す。ドイツ、頑張れと叫びたい。もしドイツが敗れれぱ、米軍の欧州部隊が太平洋に回される可能性もあり、ますます日本は苦境に立たされる。ドイツよ頑張れ、最後まで頑張ってくれ。
 午後七時、NHKのニュースでは、去る四月一日、日本郵船の阿波丸が連合軍捕虜への救恤品【きゆうじゆつひん】を積んでいて航行の安全を保障された緑十字を船体に描いていたのに、これが撃沈されたことに対し、日本政府は抗議文を米国に提出した旨放送があった。これは交戦国が敵都隊の場所に赴くことを許可した安導券〔safe-conduct〕を無視したもので、米国はどう回答して来るか注目に値する。
 午後十時、ニューディリー放送が流れてくる。
 ――こちらはニューディリー、ニューディリーでございます。信ずべき情報によりますと、本日(四月二十六日)、米軍はB29百機にて南九州一帯を空襲し、爆撃致しました。繰り返し申しあげます。…………。――
 こちらは雨なのに、九州も敵の発進基地も晴れていると見える。午後十二時、田原候補生と勤務を交替して下番する。

 四月二十七日 (金) 晴
 宇宙の彼方まで透き通って見えるような真っ青な空、久しぶりの晴天である。本当に何日ぶりか。嬉しくなって朝から洗濯に取りかかった。
 九時半ごろ洗濯していたら、連隊本部から曹長が来られて、「給料を支給する。受領の印判〈インバン〉を押せ」とのことで、指定の用紙の指定の場所に押す。昨年は満州から南支へ、しかも転戦、転戦でまったく金を使う機会もなく、したがって全額軍事郵便貯金に自動的にさせられていた。ここでは配給品を買うのに必要ということで、取りあえず手持ちとする。もらった給料は儲備券【チョビケン】〔中央儲備銀行発行の銀行券〕で二千二百元である。田中、田原の給料もそれぞれの印判をあずかっていたので、代わりに受け取っておく。
 午後四時の勤務に先立って、一勤の田原に散髪してもらう。聞けば、「班長殿がせめて二十日に一回は散髪して、お互いに身を正しく清潔にしよう。それで、二十日目にバリカンを貸りておいたんですよ」という。こっちは忘れていた。
「田中君が下番したら、貴様たち同士で綺麗に散髪してくれ」と頼んでおく。
 午後四時、勤務に上番する。
 午後五時、重慶放送を珍しく聞く。
 ――重慶放送ニュースの時間でございます。本日、ソ連軍がベルリンのヒトラー総統本部を総攻撃致しております。またムッソリーニがイタリアの国内コモ湖畔において民衆義勇軍に逮捕されたとニュースが入っております――
 今日の重慶放送のアナウンサーは、日本語がちょっと下手で、たどたどしく感じた。日本民謡をうまくカットしてくれたので聞きやすい。しかし、どこからニュース源は入れるのだろう。
 午後七時、NHKのニュースでは、空襲による水道管破損のため、東京都では当分の間、午前六時~午前八時と午後五時~午後七時の時間制給水を実施すると発表した。やはり、東京都内空襲による被害が相当なものだろうなあと推測する。
 午後十時、ニューディリー放送が流れてくる。
 ――こちらはニューディリー、ニューディリーでございます。信ずべき情報によりますと、本日(四月二十七日)も米軍B29百十機は南九州を空襲し爆撃を致しました。繰り返し申し上げます。…………。――
 昨日、今日連続の空襲だ。南九州は大変だ。第二の沖縄のつもりで空襲しているのだろうか。こちらは雨が上がったら来ると思っていたのに、なかなかやって来ない。静かな夜だ。午後十二時、下番。田原候補生が綺麗な丸坊主になって上番する。

 四月二十八日 (土) 晴
 今日は昼間ゆったりできる最後の日である。明日からは二勤だ。
 午前十時ごろ、浴用石齢一コ、洗濯石鹸一コ、手拭一枚、褌一枚の希望配給があるから必要ならと、本部の酒保係の兵隊がやって来た。
 昨日給料をもらったところなので、三人分まとめて買う。儲備券で一人分二百十元、三人分六百三十元を支払う。儲備券の計算はどうも桁ばかり大きく、石鹸三十銭、手拭二十銭の頭の自分にとってはまったく勘が狂う。そのことを係の兵隊にいうと、街では石鹸一コが二百元から三百元で今日の配給品では数千元になるという。
 午後四時、今週最後の三勤に上番する。
 午後七時、NHKのニュースの時間の放送を聞く。
 ――天皇陛下におかせられましては、本日午前十時、臨時大祭が行なわれている靖国神社に行幸遊ばされ、新たに合祀〈ゴウシ〉された祭神四万一千三百十八柱をはじめ、数多【あまた】の英霊に御参拝あらせられましたと放送される。
 起立して直立不動の姿勢で放送を聞く。たび重なる東京空襲を聞き、脳裏から離れなかった陛下の御事と靖国神杜も焼失からまぬがれ、春の大祭が行なわれていると聞き、安堵感が胸をうつものがあった。
 午後十時、ニューディリー放送が流れてくる。
 ――こちらはニューディリー、ニューデイリーでございます。信ずべき情報によりますと、本日(四月二十八日)もB29百十機の米空軍は南九州を空襲し爆撃致しました。繰り返し申しあげます。…………。――
 三日連続やないか。しかも百機以上のB29で。どこから飛んでくるのだろう。沖縄か、あるいは九州南岸近くの空母からか。それにしても、百機以上が三日もつづけられては被害も相当だろう。高射砲も砲身が焼けはしまいか。こちらは静かそのもので、今日もどこからもベルもない。午後十二時、下番する。

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満洲国ノ用語ハ支那語デアル

2016-04-22 03:00:24 | コラムと名言

◎満洲国ノ用語ハ支那語デアル

 昨日に続き、『速習 軍用日満支会話』(尚兵館、一九二九)という本について紹介する。本日は、その「凡例」を紹介してみる。要するに、「日満支会話」と言っても、実質的には、「支那語会話」ということらしい。
 本書の紹介は、このあとも続けるが、たぶん断続的な形になるかと思う。

 凡 例
一、満洲国ノ用語ノ主ナルモノハ支那語デアルコトハ申スマデモナイガ支那語ノ中デモ北方系即チ北平語ガ最モ多ク移入サレ之ニ次グモノハ山東省、上海広東南京等デアルガ各地方カラノ移入者ガ多イ丈ケニ言葉モ種々雑多デアル
二、茲ニ本書ガ特ニ日満語ト称フルモ特別ノ満洲語ナルヲ意味スルノデハナイ、矢張リ北京語ニ基礎ヲ置キ語法モ専ラ之ニ依リ発音ニ於テ異ナルモノヲ右方ニ北京音、左方ニ満洲音ノ仮名ヲ附シテアル
三、又満洲ハ地方ニ依テモ言葉ヤ音ヲ異ニシテ居ル、殊ニ日本人ノ多ク居住シテ居ル地方ノ如キハ日本化サレテ居ル語モ少ナクナイ、将来ハ益々其傾向ガ甚ダシクナルコトモ想像セラレル、要ハ基本的ニ北平語法ヲ覚エ之ヲ大胆ニ活用スルコトガ必要デアル
四、満洲語(支那語)中日本ノ仮名デ発音ノ出来ナイモノニハ之二近イ仮名ヲ附シテアル、実際ト相俟ツテ研究セラレ度シ
五、本書ハ軍用ニ重キヲ置テアルカラ単語ヤ会話ハ勿論、軍隊ノ駐屯地軍事行動ノ起ルベキ方面等ノ重要地名ヲ附録トナシタル点等多ノ同類ノ書ニ此シ著意周到デアル

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『軍用日満支会話』(1929)

2016-04-21 11:21:49 | コラムと名言

◎『軍用日満支会話』(1929)

 先日、五反田の古書展で、『速習 軍用日満支会話』(尚兵館、一九二九)という本を入手した。本日は、その第三篇「会話」の「十九」を紹介してみる。本そのものの紹介は明日。なお、発音および四声の記号は省略した。

 十九 敵情  敵兵的情形
オ前ノ来タ道ニ敵ガ居ツタカ   你来的這一条道路上還有敵兵没有
 少シ敵ガ居リマシタ       有了些個敵兵了
敵ガ此ノ村ニ来タコトガアルカ  敵兵往這屯児来過了没有  
 此方へ来マセン         没往這児来有      
アノ村ノ敵ハ何レ程居ルカ    那屯児裏的敵兵有多少
 私ガ聞キマスニ一万余リデス   我聴見説有一万多
アノ一万ノ兵ハ何処ヘ行ツタカ  那一万兵是上那児去   
 私ハ何処ヘ行ツタカ知リマセン  我不知道上那児去   
オ前実ヲ言へ          你説実話罷     
 私ハ偽リハ申シマセン      我不敢撒謊
アノ東側ノ村ハ何ト言フカ     那東辺児的村荘児是■甚麼
 アノ村ハ寛城子デス        那個村荘児是寛城子
アノ兵ノ情況ハ何ノ様デスカ    那個兵的情形怎麼様
 総テ戦ヲ好ミマセン        都不願意打仗
何故戦ヲ嫌ガルノカ        怎麼怕打仗呢
 志気ガ沮喪シタノデス       人心都怯了
アノ森林ニ伏兵ハ無イカ      那児樹林子裏頭有埋伏没有
 居ルコトハ居ルガ多クハ有リマン  有是有可不多
私ハアノ歩哨ヲ生捕ツテ訊問シタイ 我活拿住那個哨兵来要審問、
オ前案内ヲシロ          你帯我罷
 宜ロシウ御座イマス        可以可以

 ■は、口偏に「斗」という字である。

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