◎詩歌を高吟し煩悶や懊悩を吹き飛ばせ
昨日の続きである。『青年愛誦 ポケット詩歌集』(大日本雄弁会講談社、一九三七)から、本日は、次の三つを紹介してみたい。順に、「大いに詩歌を高吟しま〔せ〕う」、「はしがき」、「ローレライ」である。
「大いに詩歌を高吟しま〔せ〕う」は、表紙見返しにあって、本書の利点を一〇箇条で示しているもの。「はしがき」は、本書の趣旨を、高らかに述べているもの。「ローレライ」は、ドイツ人が愛唱する歌である。「佐藤朔風」はママ。正しくは、「近藤朔風」である。
大いに詩歌を高吟しま〔せ〕う
○肺活量が増し腹力が増大します。
○心気が爽かになり能率が上がります。
○質実剛健の気魄が培はれます。
○煩悶や懊悩が吹つ飛びます。
○音声が美しく、言葉が明瞭になります。
○情藻が豊かに、語彙が豊富になります。
○態度が端正に、人品が高尚になります。
○志士仁人の魂が我が血脈に融け込みます。
○高潔赤誠の大人格が養はれます。
○天地自然の大道に融和渾一〈コンイツ〉します。
は し が き
歌は人生の活力素です。人心に明朗と弾力とを与へるものです。而も、興国の民には健全の歌があり、亡国の民には廃頽の歌があります。
日本は今躍進の勢【いきほひ】にあります。東洋平和の確立と共に世界を指導し、全人類の福祉を進むることは肇国以来の大理想で、儼然たる皇謨〈コウボ〉の大精神であります。
この大聖業に参加する吾等は、雄渾なる気魂を練精する為に、大に健全なる詩歌を高吟しようではありませんか。恰も、古来の聖賢が、音楽を以て救世済民の具に善用したやうに。
この搬子を、野に、山に、携へて、心ゆく許り朗咏愛誦しませう!
その声が、天地に響き渡り、乾坤【けんこん】に漲り溢るゝ時、躍進日本の真意気【しんいき】は、彌【いや】が上に燃え上ることゝ信じます。
ロ ー レ ラ イ 佐藤朔風
なじかは知らねど 心わびて
昔の伝説【つたへ】は いとど身に沁みむ
侘【わび】しく暮れゆく ラインの流【ながれ】
入日【いりひ】に山々 赤く映【は】ゆる
美【うるは】し乙女【おとめ】の 巌頭【いはほ】に立ちて
黄金【こがね】の櫛とり 髪の乱れを
梳【と】きつゝくちずさむ 歌の声の
神怪【くすし】き魔力【ちから】に 魂【たま】もまよふ
漕ぎゆく舟人【ふなびと】 歌にあこがれ
岩根【いはね】も見やらず 仰げばやがて
波間に沈むる 人も舟も
神怪き魔唄【まがうた】 唄ふローレライ
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