礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

「ナチス憲法」という用語のルーツ

2015-08-23 03:52:15 | コラムと名言

◎「ナチス憲法」という用語のルーツ

 昨日の続きである。戦前・戦中の日本には、「ナチス憲法」という用語を使用している憲法学者がいた。ハッキリしているのは、当時、明治大学教授・法学博士であった大谷美隆〈オオタニ・ヨシタカ〉である。この人は、一九四一年(昭和一六)年に出た日本国家科学体系第六巻『法律学(二)』(実業之日本社、一九四一)に、「ナチス憲法の特質」という論文を寄せている。この論文については、すでに今月の一七日、一八日、当ブログにおいて、内容の一部を紹介した。
 ところが、大谷教授は、その論文において、「ナチス・ドイツ憲法」という用語も併用している。このことから、「ナチス憲法」というのは、「ナチス・ドイツ憲法」の略称ではないかという推定が成り立つ。
 さて、「ナチス・ドイツ憲法」という用語だが、これならば、他にも使用例がある。まず、一九三九年(昭和一四)に出た、オットー・ケルロイター著、矢部貞治・田川博三訳『ナチス・ドイツ憲法論』(岩波書店)、そして、一九四一年(昭和一六)に出た、大石義雄著『ナチス・ドイツ憲法論』(白揚社)である。
 それ以前の一九三八年(昭和一三)に、土橋友四郎著『ナチス独逸国の修正憲法』(錦松堂書店)という本も出ているが、とりあえずこれは、除外しておこう。
 そうすると、「ナチス・ドイツ憲法」という用語の最も古い例は、オットー・ケルロイター著『ナチス・ドイツ憲法論』であり、ここで使われはじめた「ナチス・ドイツ憲法」という用語が、大谷美隆教授によって、「ナチス憲法」と略称されたということになる。なお、大谷美隆教授以外の法学者が、「ナチス憲法」という略称を用いていたか否か、この略称が、どの程度、普及していたのかについては、今のところ、ハッキリしない。
 いずれにせよ、「ナチス憲法」という用語のルーツは、オットー・ケルロイター著、矢部貞治・田川博三訳『ナチス・ドイツ憲法論』(岩波書店)にありそうだという推定が、一応、成り立つわけである。
 そこで、続いて検討しなければならない問題は、オットー・ケルロイター自身が、「ナチス・ドイツ憲法」という用語を使用していたか否か、ということになる。【この話、さらに続く】

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