礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

私は自分に腹を立てています(半藤一利)

2015-08-22 05:56:11 | コラムと名言

◎私は自分に腹を立てています(半藤一利)

 発売されたばかりの『サンデー毎日』八月二三日号で、半藤一利〈ハンドウ・カズトシ〉、保阪正康、青木理〈オサム〉の三氏による鼎談の記録を読んだ。半藤一利、保阪正康の両氏は、これまで、比較的、穏健な論調で知られてきたが、最近はかなり発言が過激になっている。この鼎談においても、保阪氏は、次のように言う。

保阪 僕は75歳になり、がんを二つも患ったし、一期〈イチゴ〉とはこんなものだろうと達感しかけていた。でも安倍政権が本性〈ホンショウ〉を現すにつれ、何としてでも生き延びて、この政権を倒さなければいけないと思い始めました。そうでなければ、昭和史を検証してきた意味がない。

 一方、半藤氏も、こう言う。

半藤 安倍さんは「岸〔信介〕がやったことが正しい。今にも歴史が証明する」なんて言うが、実際には安保一つとっても歴史を学んでいないし、未来を見通せてもいない。今、軍事大国として限界にきている米国に対し、さらに従属することにどんな意味があるのか。

 両氏とも、明確に「反安倍」の立場を打ち出している。しかも表現が、かなり過激である。
 この鼎談で半藤氏は、二年前に麻生太郎氏がおこなった「ナチス憲法」発言にも言及している。これについて、「おっちょこちょいな麻生さんが口を滑らせたにすぎない、その程度に高を括っていたのですが、あの時、事の深刻さに気づくべきでした」という感想を述べている。
 つまり、半藤氏は、二年前の麻生発言の時点では、「事の深刻さ」に気づいていなかったのである。確認したわけではないが、氏が、「反安倍」の立場を表明するようになったのは、ごく最近、たぶん、本年にはいってからではないのか。
 ところで、二年前の麻生発言について、半藤氏がおこなっているコメントには、若干、誤解があるようなので、これを指摘しておきたい。まず、半藤氏の発言を引用する。

半藤 私は自分に腹を立てています。こんな日本になることに、一昨年の夏、私は気づいていなかった。麻生(太郎=財務相)さんが「ナチス・ドイツはいつの間にかワイマール憲法をナチス憲法に変えた。あの手口を真似たらどうかね」と放言した。新聞をはじめメディアは、「歴史を知らないにもほどがある。ナチス憲法など存在しない。ワイマール憲法は改正も破棄もされておらず、ナチス政権に無制限の立法権を与える全権委任法を強引に可決したのだ」と批判はしました。
 麻生さんの勉強不足が露呈したわけですが、批判には冷やかしのトーンがあった。【以下略】

 半藤さんは、当時のメディアがおこなった「批判」を紹介しているわけだが、その部分に事実誤認がある。「ナチス憲法など存在しない」というが、戦前・戦中の日本では、ナチス・ドイツにおける憲法状況を指して、「ナチス憲法」と呼んでいた学者もいた。もし、このことを麻生氏が知っていたのだとすれば、「歴史を知らないにもほどがある」という批判は、適切でない。【この話、続く】

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