礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

商法は御雇独逸人のロヱスレルが起草せられました

2024-08-08 03:29:41 | コラムと名言

◎商法は御雇独逸人のロヱスレルが起草せられました

 大槻文彦『箕作麟祥君伝』から、箕作麟祥の「一代記」を紹介している。本日は、その五回目。

民法の事は、それだけにして置いて、商法の事を申しませう、商法は、御雇独逸人の「ロヱスレル」と云ふ人が起草せられましたのて、以前、参事院があつた時に、商法編纂局があつたさうであります、尤も、是れは、鶴田君などが御関係ので、私は関係しませぬ、十七年に、商事会社の法律が必要と云ふので、会社条例編纂局と云ふものを置かれました、「ロヱスレル」氏の草案の中から、商社法と、それから、破産法を抜いて、其取調委員を置かれました、私も其委員になりました、然るに、そんな切れつぱしではいかぬ、と云ふので、今度は、商法編纂局と云ふものを置かれ、私も商法編纂委員と云ふものになりました、其中で、商社法は出来まして、上奏し、元老院に下付になり、元老院の議を経て、政府に出しましたが、それも、それつきりになりましたそれから、商法全部も、討論を畢りまして、議定〈ギジョウ〉上奏しましたが、政府で都合があつたと見えて、商法編纂局もやめになつて、矢張、外務省法律取調局のタツマキの中に集つて、そこが法律の問屋になりました、
私はなかなか気が短いが、「フランス」の民法の翻訳には気が短くない、現に第三の校正は、銀座の博聞社と云ふ本屋で、出版いたしました、又、民法や、商法の編纂などは、やりかけては毀され毀されしましたが、もう、どうか、毀されないやうにしたいものであります、いつになつたら、日本の民法が出来上ることか、誠にぼんやりして居ります、尤も、政府で、貴様は入らぬと云ふなら、そりや仕方が無いが、命じて居らるゝ中は、気長にくツついて居ります積りですから、これだけは、御安心なすつて下さい(大喝采)
前に申しまする通り、私も、法律には、随分、尽力し居ると、自分でも思つて居ます、それでございますから、明治法律学校から、名誉校員になれと云ふことのお話に対して、お断りをしないで請けました、(大喝采)【以下、次回】

 箕作麟祥が、この演説を行ったのは、1887年(明治20)9月15日だった。その後、1890年(明治23)に、民法のうちの財産編・相続編・人事編などが公布され、1893年(明治26)から施行される予定だった。しかし、1891年(明治24)に、いわゆる「民法典論争」がおこり、1892年(明治25)の第三回帝国議会で、施行延期が決定された。

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