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礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

高津正道『邪宗新論』(1936)について

2014-11-23 09:27:54 | コラムと名言

◎高津正道『邪宗新論』(1936)について

 数年前に、高津正道著『邪宗新論』(北斗書房、一九三六)という本を入手した。入手した当時は、パラパラと内容を確認した程度であったが、今になって読み直してみると、なかなか興味深いものがある。ちなみに、この本が刊行されたのは、一九三六年(昭和一一)一二月二六日であるが、それより三か月ほど前、ひとのみち教団への弾圧が開始されている(同年九月二八日に、同教団の初代教祖・御木徳一〈ミキ・トクハル〉が、信者の娘一五歳に対する「強姦」の嫌疑で逮捕された)。
 筆者・高津正道〈タカツ・セイドウ〉が、同書で示している立場や宗教観、あるいは「姿勢」に、私は共感しない。この点は、このブログの読者の多くも、たぶん同様であろう。しかし、同書に含まれている、当時の情況等の諸情報は、きわめて貴重なものであり、今日の日本における宗教問題、たとえばオウムや幸福の科学をめぐる問題について考える際、参考になると考える。
 本日は、とりあえず、同書の「序――なぜこの書を出すか」を紹介してみよう。

 序――なぜこの書を出すか
 一九二九年〔昭和二〕に私は「無産階級と宗教」といふ論文集を世に問うた。この書には、私が階級的な立場からの宗教批判のために執筆した論文が、集められたが、それらの論文は、主として教界関係の新聞雑誌に掲載せられたもので、その執筆に際して、教界の青年層を無神論的に啓蒙しようといふ意図が、働いてゐたものであつたから、したがつて、多分の通俗性をもつてゐた。この書が相当広い範囲の読者に迎へられたのも、恐らくそのためであつただらうと、考へられる。
 また、一九三〇年〔昭和五〕に私は、反宗教運動者としての立場から、支配階級と結ぶことの最も深い既成教団たる東西本願寺を、全面的に暴露するところの、「搾取に耽る入々」と題する一書を出版したが、この既成宗教の牙城を調査し、解剖するために、数ケ月間京都に出張した私の努力は、幸ひにして酬いられ、この書は版を重ねること九回に及んだ。
そして、この時から現在まで既に六年を経過した。
 この六年間においてわが無産階級運動は一時的な退潮を示した。それとともに、反宗教運動の砲火によつて、一時はまつたく沈黙せしめられてゐた既成宗教は、支配階級の政策的掩護の下に、いよいよその反動的性質を強化しつつ、大衆への再進出を開始したのであつた。これすなはち、一九三四年〔昭和九〕頃よりのいはゆる「宗教復興」現象の本質である。この時に当つて、友松圓諦〈エンタイ〉、高神覚昇〈タカガミ・カクショウ〉等の流行僧が出現し、ラヂオ説教と宗教ジヤーナリズムの著しい活躍が見られたことは、周知の如くである。が、いはゆる「非常時」の社会不安の深化と、止むことを知らざる生活条件の低下は、この既成教団を中心とせる「宗教復興」のお祭り騒ぎから、早くも大衆を離反せしめた。とはいへ、大本教、ひとのみち、生長の家、天理教、金光教〈コンコウキョウ〉などの新興諸宗教の流行は、未だ依然として止まるところを知らないのである。この事情は、現在支配階級がまつたく大衆の信頼を失ひつつあるとき、その一部であるところの、いはゆる「新興分子」が、そのデマゴギー政策によつて、未だなほ後れ〈オクレ〉たる大衆の間に若干の支配力を揮ひつつある事実と、まつたく対応するものである。特にこれらの新興諸宗教々団が、意識的に、この支配階級内部のいはゆる「新興分子」に結びつき、そのデマゴギーに積極的に共働しつつある事実は、注目すべきであらう。が、最近激化せるわが国支配階級内部の分裂抗争の状態は、そのまま宗教界にも反映し、支配階級の一部におけるいはゆる「新興分子」の政治的進出と同じく、これらの諸宗教の活動もまた、今や、彼らのより大なる部分の意図に鋭く対立し、好ましからざるものとして処遇せられつつあるのである。【以下、次回】

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