礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

サンキュー黒田、ノーサンキュー安倍

2014-11-20 04:41:58 | コラムと名言

◎サンキュー黒田、ノーサンキュー安倍

 今月一四日の日本経済新聞「大機小機」欄に、「世界の展望開いた『クロダプット』」と題するコラムが載った。署名は(恵海)。少し、引用してみよう。

 日銀が黒田東彦〈ハルヒコ〉総裁の主導で異次元緩和第2弾(QQE2)のバズーカ砲を撃ってから2週間が経過した。発表前日と比べ為替は6円超の円安・ドル高となり日経平均株価は1700円強上昇、米ダウエ業株30種平均は400㌦強の上昇と大きな効果を発揮した。
 4月の消費税率引き上げによる消費の落ち込みが予想より若干大きく、景気にやや足踏み感が出て、僅かではあるが先行きに対する迷いも生じていたが、このQQE2により不安は払拭され、来年にかけて新しい展望を開くこととなった。
 世界全体としても国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しが先月、下方修正され、やや不安感が台頭していたが、各国の株価も上昇し「サンキュウ、クロダ」の声も聞こえてきている。【中略】
 今回のQQE2の最大の特徴も、このまま何らかの手を打たなければ2%の物価上昇を安定的に達成するという目標が危うくなり、アベノミクスの成果が台無しになる可能性もあるとの強い危機感に立ち、デフレリスクの出ばなをくじくという危機管理の王道を果敢に実行したところにある。世界全体を救った感もあり、「黒田プット」と称することもできよう。

 このコラムが掲載された時点ですでに、安倍晋三首相が、衆議院を解散するという噂が流れていた。コラム子の本音は、せっかく、黒田バズーカが効いたのだから、このままアベノミクスを続けよ、消費税も予定通り上げよ、解散などは論外といったところだったと思う。ところが一昨日一八日、首相は、衆議院解散の意思を正式に表明した。噂の通りとなったのである。財界、あるいは日本経済新聞の本音は、「ノーサンキュー、アベ」であるに違いない。

 ところで同コラムは、さらに、次のようなことを言っている。

 この成果を大きく生かし、アベノミクスを確実に成功させるための最も重要な要素は、企業が今冬のボーナスや来春の賃金改定をできうる限り引き上げて、実質賃金の上昇をプラスに保ち、人々の先行きに対する期待を明るくすることだ。
 米国では雇用コスト指数が2四半期連続のプラス、中小企業の賃金も上昇し始めている。経営者達は「日本を救うのだ」との覚悟を定めて実質賃金の上昇を目指すべきだ。消費を喚起して成長を確実なものとしなければならない。(恵海)

 企業に対し、賃金の上昇を要請している。安倍首相と同じ発想である。しかし、「日本を救うのだ」という覚悟で、賃金を上げる企業が、どこにあるというのか。企業が賃金を上げるのは、優秀な人材を確保したいからであり、労働組合の厳しい要求があるからであり、あるいは、法的規制(最低賃金のアップなど)に従わざるをえないからである。
 それにしても、日本の労働者・労働組合も見くびられたものである。「実質賃金の上昇をプラスに保」つのに一番有効なのは、労働組合が、賃上げを要求することである。「日本を救うのだ」という覚悟からではなく、「みずからの生活を救うのだ」という覚悟から。労働組合は、今こそが奮起しなくてはならない。その奮起によって、実質賃金の上昇が実現できれば、日本の労働組合は、世界から「サンキュー、ユニオン」と感謝されることだろう。

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