ON  MY  WAY

60代になっても、迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされながら、生きている日々を綴ります。

「ちばてつやとジョーの闘いと青春の1954日」(ちばてつや・豊福きこう著;講談社)

2022-05-09 20:55:43 | 読む
2月にNHK「アナザーストーリー」で「あしたのジョー」に関する番組を見てから、漫画家ちばてつや氏やその作品「ジョー」に対しての関心が高まった。
その後、再放送のNHKのインタビュー番組でも、氏の人生に触れることができた。
そこでは、子どものころの満州での生活や日本に帰り着くまでの大変さについて知ることができ、「ひねもすのたり日記」という自伝マンガを描くに至った契機なども知ることができた。
時代を知る一人として、戦争について描いておく必要があると考えて、その連載を始めたのだと言っていた。

ちばてつや氏が書いた本を探していると、図書館に「ちばてつやとジョーの闘いと青春の1954日」(ちばてつや・豊福きこう著;講談社)というのがあると分かり、さっそく借りて読んだ。



豊福きこう氏が、週刊少年マガジン誌で「あしたのジョー」についての資料を、その連載開始から終了までを追ってまとおめていったのが本書である。
内容としては、「あしたのジョー」の連載第1回の少年マガジン発売日(昭和42年12月15日)から最終回掲載号の発売日の昭和48年4月20日までの、1954日を連載実日数の公式記録として、本書のタイトルが出来上がっている。
その期間の少年マガジン誌の各号に、「あしたのジョー」がどのように載っていたか、何ページあったかなどを6年分載せている。
そこに、連載当時から本書出版までの間に発表されたちばてつや氏自身の言葉や文章が散りばめられ、日記を読むような感じで、時間を追って披露されるストーリーや当時のエピソードに触れることができる。

「あしたのジョー」は、梶原一騎氏の別名、高森朝雄原作となっている。
ちば氏は、ただ単純に原作者の意向に添おうとするばかりでなく、梶原氏に対して自分の考えも反映させながら、このマンガを描き進めていたということがよく分かった。
だから、連載開始当初は、原作とは違う内容のものを何回か描いていたり、原作には出てこない「紀子」という女性を登場させたりして、物語にふくらみを持たせていたのだ。
紀子との会話に出た言葉が、最後の「真っ白に燃え尽きた」という名言につながるシーンを生んでいたのだった。
ただ、そこに至るまで、どのようにラストシーンを描くか、迷いに迷っていたことも知った。
でも、マンガ史に残る名作となったのは、ジョーが真っ白に燃え尽きたからこそだった。



描く人としてのちば氏が、原作者も考えなかったその言葉、そのシーンによくぞ思い至ったものだと、深い感動を覚えた。

日記のように少年マガジン誌各号が載るものだから、連載中ちば氏が非常に頻繁に体調を崩し、休載を余儀なくされたことがあった。
ひどい場合には、十二指腸潰瘍で3か月近くも連載を休止したことがあったのだった。
ストーリーが進むにつれて、ちば氏本来の絵のタッチから、よりリアルさを求めていくにつれ、劇画調の表現が増えていきもした。
当時まだ30代だったはずのちば氏、まさにタイトル通り「闘いと青春」の日々だったのだと言えた。

本書には、当然ながら、「あしたのジョー」のマンガのシーンが作品そのままに登場する。そのシーンの1つ1つが、少年時代に、ジョーのすべてを書店や床屋や友人宅等で立ち読み、借り読みして読んだ私には懐かしい。
「巨人の星」は全巻単行本を買ったが、「あしたのジョー」は何度か全巻立ち読みで済ませていた私であったとしても。

この本、いいなあ、と思った。
だが、2010年発行の本書は、すでに絶版のようだ。
古本なら、と思ってネットで調べて見たら、1300円だった本が、今は古本なのに3200円で売られていた。
いやあ、本書を欲しがる人は同様にいるということですね。


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