ON  MY  WAY

60代になっても、迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされながら、生きている日々を綴ります。

豊かな発想、共感できる感覚 ~「思わず考えちゃう」(ヨシタケシンスケ著;新潮社)を読んで~

2024-02-04 19:52:30 | 読む

去年、新潟の美術館で気になる名前の展覧会をやっているというCMを、テレビで何度も見た。

その催しの名は、「ヨシタケシンスケ展かもしれない」という。

「…展」でなく、後ろについている「かもしれない」というのが気になった。

普通は、そんなことは言わない。

 

ヨシタケシンスケの代表的な絵本に、「りんごかもしれない」というのがある。

その本について、出版社(ブロンズ新社)からの内容紹介(あらすじ)には、こうある。

テーブルの上にりんごがおいてあった。 ......でも、......もしかしたら、これはりんごじゃないかもしれない。もしかしたら、大きなサクランボのいちぶかもしれないし、心があるのかもしれない。実は、宇宙から落ちてきた小さな星なのかもしれない...... 「かんがえる」ことを果てしなく楽しめる、発想絵本。

ここからすると、きっと、そんなふうに発想力の豊かな人だから、面白い命名の展覧会なのだろうな、と思った。

だけど、わざわざ出かけて見てみようとは思わなかったので行かずじまいだった。

 

このたび、そのヨシタケシンスケの本が目に入り、気になってとってみた。

それが、「思わず考えちゃう」という本。

彼はスケジュール帳の後半部分をメモ帳として使っていて、そこにあったこととかなかったこととか「思わず考えちゃったこと」とかを描きとめるクセ、というか習慣があるのだそうだ。

この本は、そうやってヨシタケシンスケが思わず気になったことをスケッチした絵がもとになっている。

そこに、思ったことや考えたことを書き加えて、短いエッセーとなったものが集まった本である。

 

その内容が、私には、なかなかよかった。

彼なりの独自の感性には、共感できるところがある。

彼が感じる迷いや惑いの感覚は、私もよく味わってきたことだった。

自信をもって断言したり行動したりする人ではないから感じることだなあ、と自分と似ているところを見つけてうれしくなってしまう。

 

たとえば、子どもとの関係でこういうこと。

あるよなあ。

子どもとかかわれるのは、今しかないと分かっているのに、心に余裕がないとそれができないってこと。

 

そして、言葉はなくていい。

昔の自分が感じていた孤独感を考えると、「分かっているよ」「いつでも味方だよ」との思いで寄り添ってあげたいと思う。

そういう人がそばにいるだけで、十分癒やされたはずなのだ。

 

次のことなどは、素晴らしい感覚だ。

何か自分がやりたいことがあって、それができないっていうことは、大した悩みじゃないんですよ、多分。

自分は自分でどうにかできるし、自分で目標は設定し直せる。

そうではなくて、自分のそばにいる人に、できてほしいことができないってときに、どう一緒にやっていくかっていうのが、実は一番難しい。

人の悩みとは、つまりそういうことなのではなかろうか。

うーん、深いなあ。

 

もう一つ、「幸せとは」。

何かが決まっていない状態は、不安がつきまとうという。

で、僕にとって若さっていうのがそういう状態だったんですよね。

若いと、あれもできるし、これもできるし、今からあれになろうと思えば、まあできなくもないしって、選択肢がものすごくたくさんあるときって、逆に、もう何か不幸なんですよね。どうすりゃいいんだよって。

そうか、若さゆえの不安、不幸感はそこから感じたものでもあったのかも、なんて思ったよ。

 

まあ、全ページ深刻にならなくても気楽にあっさり読めるし、この感性いいなあ、と思った本だった。

 

さて、前述の「ヨシタケシンスケ展かもしれない」は、後で調べてみたら、2年前の2022年4月の東京を皮切りに、全国を巡っている。

新潟は7か所目の開催で、今は9か所目の静岡で開かれているが、今後は長野、神奈川、岡山でも開催される予定だとのこと。

新潟で、やっぱり見ておけばよかったかな、なんて思ったりもしたのであった…。

 

 

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