日本男道記

ある日本男子の生き様

鈴振り

2009年04月19日 | 私の好きな落語
【まくら】
原話は、松浦静山が文政4年(1821年)に出版した随筆、『甲子夜話』でいわゆる艶笑話。原話では、五戒の一つである『邪淫戒』のテストとして鈴を使い、弟子が全員アウトになった後で師匠の様子をみると、師匠が真っ先にアウトになっていたことが判明する。

【あらすじ】
禁欲の世界にいる出家たちは、十八檀林で修行をするが、その厳しいことは大変なことであった。その十八檀林はまず、下谷 幡随院を振り出しに、最後に芝の増上寺に着いて、大僧正の位を与えられたが、修行もそこまで行くのが大変であった。
そのころ、藤沢にあった易行寺(いぎょうじ)で、若者たち1千人程が、同じように修行をしているので、大僧正の位のある住職が跡取りを誰にするかが分からず、悩んでいた。そこで一計をはかると・・・。
旧の5月18日知らせを出して、「跡目を出す相談をしたいので28日にお集まり願いたい」と、修行僧を集める。客殿に集まった若い修行僧に一人ずつ脇に呼んで、「あなたかもしれないので、”せがれ”にこれを・・」といって、金の小さな鈴を付け、同じように千人全員に付けてしまった。「今日は特別な日なので、酒、肴を許す」と。そのうえ、酌人に17~8の美人揃いの綺麗どこが、揃いの紺の透綾(すきや)で現れた。白い肌が透き通る短めの紺透綾を素裸の上に着ているだけなので悩ましい上に、立て膝をついて「いかがですか?」とお酌をされると、「なんたることだ、これも修行の内か」と思いながら、下を手で押さえていたが、お酌をされるので手を離したとたん、『チリ~ン』。あちらでも『チリ~ン』。こちらでも『チリ~ン』。それが千人『チリ~ン、チリ~ン』と、鳴り響いた。、それを聞いた大僧正が嘆いていると、一人の若者が目を半眼に開いて座禅をしている。その彼だけが鈴の音がしない。彼こそが跡継ぎであるというので、別室に案内して「鈴を見せてくれ」といい、見ると鈴が無い。彼曰く「鈴はと~に、振り切りました」。

出典: 落語の舞台を歩く

【オチ・サゲ】
途端落ち(終わりの一言で話全体の結びがつくもの)

【噺の中の川柳・譬(たとえ)】
『日の本は岩戸神楽の始より女ならでは夜の明けぬ国 』
『外面如菩薩内心如夜叉 (げめんにょぼさつないしんにょやしゃ)』
女は表面は菩薩のように柔和だが、心の中は夜叉の如く恐ろしいとの意。お釈迦 様の言といわれる。
『庭に水新し畳伊予簾、数寄屋縮みに色白のたぼ』

【語句豆辞典】
【五戒(ごかい)】仏教において在家の信者が守るべき基本的な五つの戒のこと。不殺生戒(ふせっしょうかい) - 生き物を殺してはいけない。 不偸盗戒(ふちゅうとうかい) - 他人のものを盗んではいけない。 不邪淫戒(ふじゃいんかい) - 自分の妻(または夫)以外と交わってはいけない。 不妄語戒(ふもうごかい) - うそをついてはいけない。 不飲酒戒(ふおんじゅかい) - 酒を飲んではいけない。
【関東十八檀林(だんりん)】浄土宗(鎮西派)の学問寺のことで、関東に18ヶ所有ったので、関東十八檀林といった。
【十八檀林(だんりん) 】檀林というのは栴檀(せんだん)林を詰めた言い方です。「栴檀は双葉より芳し」の栴檀です。学問をする寺のことで、寺の若者を集めて学事に従わせた。中国からきた考え方。
【透綾(すきや)】スキアヤの約。薄地の絹織物。もと、経(タテ)に絹糸、緯(ヨコ)に青苧(アオン)を織り込んだが、今は生糸ばかりを用い、また、配色の必要から半練糸や練糸をも混用。夏の衣服に用いる。

【この噺を得意とした落語家】
・五代目 古今亭志ん生

 



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