ジョージ・いまさきもり の アンダンテ・カンタービレ

晴れた日は農業とウォーキングとライカ、雨なら読書と料理。
そして毎日ラジオがお伴です。

リベラルの灯を消えさせない

2012年12月31日 | 社会について独り言

2012年の12月、日本からリベラルは死んでしまったのか!

いやいや、そうではない。
私には、リベラルが、抹殺されたのでも、絶望して転換したとも思われない。
ただ、姿が突然消えてしまっただけのような気がする。

眼前から消えてしまっただけだから、
いつかまた突然姿を現してくれると思う。そう信じるしかない。

今夜NHKの紅白で「ヨイトマケの唄」を歌う美輪明宏さんも
自民党の新しい大臣に向かってこう言っている。
「これまで何十年もいろんな(悪い)事をして来た”後始末”を
やっぱり自民党にやらせようと、やり直す機会を神様がくださったのよ」と。
リベラルの灯を決して消してはならない。


さて、今朝の朝刊によれば、
安倍首相は、次期日銀の総裁候補として、
『自分の提唱する経済金融政策に賛同する人』から選ぶとして、
あの竹中平蔵氏が有力だそうである、という記事がおどっている。





この人にだけは、権力をもたせるのは危険だ。
たぶん、行く末、安倍首相は、日銀の機能・権限を逆手にとられて、
日本経済の進路・施策を、竹中氏に牛耳られてしまうだろう。

そして、安倍首相は”恐る恐る”で進めようとしている
日米同盟の一層の深化、そして軍国化、階層分化、自然破壊、への道を
あれよ、あれよという間に、一直線に引っ張られて歩かさせられることになろう。

竹中平蔵氏の近著『国が亡びるということ(中央公論新社刊)』(写真上)で、
私が印象に残った怖い部分を引用してみよう。

ー - - - - - - - - - - -

「オバマ大統領が2009年になってから、
突然TPP参加に積極的な姿勢を示すようになったのには理由があります。
それは、米韓のFTAをめぐるゴタゴタに懲りたことです。
韓国で「これは、植民地化だ」と恐慌反対派が出て、
国会にデモ隊が突入するような事態にまで発展してしまった。
この米韓FTAの経験を経て、
米国は「二国間のFTAは大変だから自由貿易を推進させるなら多国間でやるしかない」
と方針転換したんですね。(中略)

そうした米国の戦略が背景にある以上、
日本は米国の同盟国として、TPPに参加するしかありません。(中略)
TPP反対派に聞きたいのはこういうことです。
「ではあなたはTPPに参加せずに、つまり『日米同盟』を放棄して、
中国の軍門に降るという選択がありえるとお考えなんですね」

「努力して乗り越えよう」と訴えるリーダーからのエールを、素直に受け取って努力するのか、
「そんなリーダーはいらない」とポピュリズム型を熱望するのか、大きな違いです。
今さらながらですけども、(中略)自分の力で生きていくという気持ちが、人間を人間たらしめている。

自助自立というのは、社会の基本です。
特に日本人は非常に誇り高く、自立を志向してきたはずなのですが・・・・・・・・。
まさに慶応義塾大学というのは、そういう学校ですからね。(中略)
一個人の独立なくして、一国の独立はありません。
その当たり前のことを、全国民にもう一度思い出してもらいたいです。

自立して、しっかり働く。(中略)
みんなが労働して生産していけば、経済は成長するに決っているんです。
もし、経済を成長させることを諦めて、「分配」の仕方で物事を解決しようとするならば、
これは熾烈な闘争になることを覚悟しなければなりません。
人間という動物が常に成長を希求してきたのは、
殺し合いをせずに生き残っていくための叡智なのです。

ぜひ橋下さんが国政で活躍する政治家に脱皮するのを手伝ってあげてください。

ー - - - - - - - - - - - 

竹中平蔵さんは、もちろん学者の一人であり、その点では、同じ大学の教授の金子勝さんや、
同志社の浜矩子さんと同じで、どんな学問や研究をするのも自由である。
ですが、竹中さんの前回の大臣在任時の仕事振りからすると、
彼を抑え気味にサポートしてくれる人が絶対必要である。
竹中さんが次期総裁に選ばれない、ことがあっても、
これだけは、安倍首相も是非、常に肝に銘じておいて欲しいと思う。

同じ慶応大学の金子さん、今年も1年中、私達の先頭に立って、吼えて下さってありがとう。

さて、来年は、同じ慶応の、清家さん、竹中さんが、政策決定に大きな影響を与えそうである。
そこで、金子さんにお願いがある。
それは、今年1年間24回の金子さんの朝のお話で、
『この20年間の衰退が、誰も謝罪や責任を負わなかった事に起因していること
電力の送配電分離をして、地方が共生する経済を作らなければいけない。』
ということが毎回必ず語られたので、その点はよく理解できた。

来年は、早口でなくもう少しゆっくりとした口調で、
「それでは、どうしたら良いか」を一つ一つ解りやすく展望して欲しい。
リベラルを思考する国民には、何しろ、もう、時間がない。
次期参議員選挙までには、平和、平等、博愛がみんなの信条になる社会にせねばいけない。
12.16に票を生かせなかった国民も、忍びに忍んで投票した国民も、きっとそう願っていると思う。


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『新幹線の基地清掃を担う現場』~12/27 NHKラジオ 遠藤 功さんのお話の要約

2012年12月27日 | ラジオ番組

『新幹線の基地清掃を担う現場』
12/27 NHKラジオ 遠藤 功さんのお話の要約です。

遠藤さんが昨年8月に紹介された『鉄道整備』は、(その時のお話は⇒こちら)
その後『JR東日本テクノハートTESSEI』に社名変更されたが、
そのテッセイの田端サービスセンターを、遠藤さんは初めて訪れた。

              
ここにも、新幹線東京駅の清掃現場に負けず劣らずの『現場力』があると、絶賛されている。
それと言うのも、ここでは毎年50~60人の人を新規採用するが、
労働環境が厳しいという事で、1年で半分は辞めてしまうそうである。
それを逆に言うと、残った人のモチベーションは非常に高く、
与えられた仕事をこなすだけでなく、
仕事のやり方を改善するための提案活動が、熱心に行われているとの事である。

その他、同氏のサイト『Weekly現場通信 vol.139』で紹介されている『現場力』を、
詳しく、熱心にお話された。

遠藤さんのお話は、零細企業の経営者としては、一言一句として、聞き逃せない。



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『揺らぐ国際経済、日本は何を学ぶか』~12/24 NHKラジオ 浜 矩子さんのお話の要約

2012年12月25日 | ラジオ番組

『揺らぐ国際経済、日本は何を学ぶか』
 12/24 NHKラジオ 浜 矩子さんのお話の要約です。

今年の世界経済を振り返ると、まさに、波乱万丈、物情騒然、右往左往の1年であった。
特に、ユーロ圏の債務危機問題、ここに来ては、『米国の財政の崖』のショックが大きい。

総じて、国々の財政が窮地に陥り、
国民国家としての経済の切り盛りが非常に難しくなって来た。
そして、次第次第に金融政策にも財政危機の影響が波及してして行く、という事が
どの国においても、非常に深刻な問題として、はっきり見えるようになって来た。

それでは、国々の財政危機が起きて来た理由は何であろうか?

グローバルの時代と、国民国家・国民経済とは、いかにも相性が悪い。
人・物・金は国境を越える、されど国は国境を越えられない。
人・物・金が国境を越える事に伴って起こる金融危機や雇用の空洞化など、
厄介な問題に、国の財政や政策全般が対応しなければいけなくなっている。

しかし、それに対応しなければいけない国々の財政や政策は、国境を越えられない。
このミスマッチがすごく大きいのである。

例えば、金が国境を越えて暴走すると、リーマンショックのような事が起きる。
その大きな危機に対応しようとして、
国々が非常に無理をして財政出動をして、財政赤字を大きくする。
また、公共事業をやっても、
下請けに海外企業や外国人労働者を使ってしまうかもしれない、という
国境を越えた経済活動の漏れの問題も、政策を難しくしている面もある。

それでは、この先、政策当局はどのようにすれば良いのか?
なんと言っても、国々の間で、市場や金、特に知恵の分かち合いをする事が必要である。

個々の国の財政・金融政策が、隣国や地球全体にどういう影響を及ぼすか、
逆に、地球全体での経済展開が、自国にどのような影響が及ぼしてくるか、
そういう事について、お互いに信頼感を持ちつつ、一緒になって考える....。
こういう事が非常に求められる、という事である。

今や世界最大の債権大国である日本に必要なものは、成熟戦略である。
高齢化の意味を含めて経済の成熟度が高まっている。
こういう成熟」経済を上手くまわして行くポイントはどこにあるのか、
という事をしっかり見据える」べきである。

そこでのキーワードはやはり『分かち合い』であり、
「この日本が蓄積した巨大な富を、いかに分配していくか」が、政策上最大のポイントである。
つまり、成熟国家として、分配政策が焦点になって来ている。

そういう意味では、世界各国が注目しているところでもあり、
また、未踏の地に足を踏み入るわけで、ワクワク感のある所に差し掛かっているという事である。

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国民の暮らしから~12/18 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約

2012年12月18日 | ラジオ番組

『国民の暮らしから
 12/18 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。

今回の選挙の結果からは、
国民の民主政権への失望が大変大きかったことが窺える。
つまり、政権交代直後の大きな国民的期待に、
民主党が応えられなかったということである。
政権交代に大きな期待を寄せた有権者ほど、裏切られた思いが強かっただろう。

政治への期待が冷めてしまって、
民主党排除とさえ言えるような厳しい雰囲気が、選挙前から広がっていた。
政党のあまりにもの多極化や投票率の低さも大きく響いたであろう。
これこそ、すなわち、民主政権への失望の裏返しであった。

一方、安倍自民党の取った戦法であるが、
景気好転を望む国民的願望に応えるキャッチフレーズを、強く前面に打ち出した。
無制限の金融緩和、インフレ目標の設定、日銀法改正等々を掲げ、
強烈な脱デフレ、景気対策を印象づける発言を繰り返していた。

これが経済界や中小企業に共鳴を呼び起こしたと思われる。
つまり、現在の厳しい経営環境の裏返しでもある。

更に遡れば、2002~2007年にかけての『いざなぎ超え景気』の
仕上げの 1年を担ったのが、安倍政権であった 。
当時を知る者にとっては、夢よ再び、という期待があったかも知れない。

しかし、ここで強調しておきたいことは、
今回、『見るべきを見る』という事が出来なかった有権者の危うさも、

また露呈されているということである。
圧勝した自民党にしても、いつか将来、今回の民主党と同じ轍を踏まないとも限らない、
そういう可能性も秘めている、という事である。

さて、今回の選挙では、日本を歴史的岐路に立たせる重大なテーマである、
1.憲法改正、2.TPP、3.エネルギー選択(脱原発か原発維持か)の3つが問われた。
しかし、これらの3つの争点について、
本当に国民の意思が問われたのだろうか? また、
国民の意思が示されたのだろうか? 
つまり、『見るべきを見る』事が出来たのだろうか?
いずれも強い疑問が残っている。

また、『いざなぎ超え景気』を懐かしむ経済人がいるかも知れないが、
実はそれは幻想である。
『いざなぎ超え景気』と呼ばれた長期の景気回復は、
財政出動がなくてもGDPの成長率が2.5%を達成した、とされるが、
実際は違っていて、後になって、この成長率は2.0%に下方修正された。

また、『いざなぎ超え景気』では、
マクロの数値は好況を示し、株価は8,000円台から18,000
円台まで上昇した。
しかし、『いざなぎ超え景気』は、
いわゆる『トリクルダウン理論』の虚妄性を証明したのものでもあった。

トリクルダウン理論とは、雨水が大地に滴り落ちるように、
金持ちがもっと大金持ちになってくれれば
底辺層の貧しき人々も豊かになれる、という米国発の理論であった。

日本でもしきりに言われたものであるが、そうはならなかったのである。
この『いざなぎ超え景気』の持続の中で、
逆に雇用者報酬は減少している、という事実を言っておきたいと思う。

この構造をそのままにしておいて、
いくら景気刺激策を展開しても、国民の暮らしは豊かにならない。
それで、政権交代への国民的要求が高まった、ということである。
まさに、『国は富めるも民は貧し』というのが現実だったのではないだろうか。

この時に、民主政権が、「格差を拡大する構造そのものを改革する」
という事を盛り込んだマニフェストを示したわけである。
そして、3年前の前回の総選挙では、まさに国民の意思表示があったのである。

前回の総選挙では
経済変動の影響が社会的弱者に集中する構造を、そのままにしておいて、
いかにGDP等の数値を膨らませてみても、
国民生活は向上しないという現実に、国民は気付いていた。

つまり、『いざなぎ超え景気』と言われた2002年以降、
小泉構造改革の下での景気拡大は、しばしば実感なき景気回復と言われたように、
早くから国民はその正体を見抜いていたのである。

これに対して、民主党がマニュフェストで、
個々の生活者を『豊か』にする事を追求し、家計部門を潤わせて、
国民の可処分所得を増やして消費を拡大させる政策を掲げたわけである。
つまり、先に国民生活を潤せば、
日本経済全体も自然に成長する、という考え方を示したのである。

高齢者介護とか、子育て中の女性、健康を損なった人々、
障害を持つ人々、非正規雇用の労働者、
こうした人々への社会的(公的)支援を謳ったのが、民主党のマニュフェストであった。

そういう期待が裏切られてしまった、と国民は実感してしまったわけである。
そして、国民の暮らしの厳しさは、
今も少しも変わっておらず、むしろ、もっと厳しくなっているのである。

そうした中で、今回の総選挙の結果、
リベラルが消え、新自由主義的改革が復活する事になって来たわけである。
社会的弱者にも自助を迫る、という考え方である。
今年6月現在で、全国で211万人が生活保護を受けている。この10年で2倍に増えた。
この人数は多すぎると言って、新政権が削減を図る方向は必死であろう。

厚労省が実施した国民生活基礎調査によれば、
生活が苦しいと答えた人は62%にも上っている。
また金融広報中央委員会の調査によれば、
貯蓄ゼロ世帯も、家族2人以上では29%、単身世帯では4割以上に上っており、
やがて本格的な『貯蓄ゼロ時代』が到来するのではと、予測されている。

さらに、現在の雇用総数(役職員を除く)は、5,111万人であるが、
そうち、非正規雇用が1,755万人にも達している。
非正規雇用の労働条件の厳しさは、誰も皆、承知しているところである。

そして、今年2月の厚労省の調査によると、
完全失業者の1/3が1年以上の長期失業者になっている。
失業保険を受けられない失業者が、全体の8割を占めており、
ブラジル、中国に次ぐ世界ワースト3の状況になっている。
まさに、不安社会のゆえんであると思われる。

日本の社会を、真に安心社会へと転換することは可能なのか?
『国民の暮らしから政治を考える』あり方が、今こそ求められている。


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『インサイダー取引規制のあり方を考える』~12/6 NHKラジオ 中北 徹さんのお話の要約です。

2012年12月06日 | ラジオ番組

『インサイダー取引規制のあり方を考える』
 12/6 NHKラジオ 中北 徹さんのお話の要約です。

インサイダー取引の規制についての審議会(ワークショップ)が設けられていて、
今月中にも、規制の改定に向けた提案がまとめられる予定である。

インサイダー取引とは、
経営者や証券会社の関係者等が、未だ一般に公表されていない情報を使って、
証券取引をする行為で、厳しく禁止されている不正行為である。

インサイダー取引が横行するようだと、
企業の内部情報にアクセスできる一部の人だけが大儲けをして、
他の一般投資家は割を食っているのではないか、という不信感を増幅させかねない。

これでは、投資家は証券市場から遠ざかってしまい、
最後には、企業が、証券市場で資金調達できなくなってしまう恐れがある。

それで、インサイダー取引については、現在でも、厳しい規制や罰則が定められているが、
なかなか、後を絶たずに、新聞紙上を賑わしてしる。

現在の規制の仕組みには、大きく言って2つの問題がある。
まず、企業の内部情報を伝達する行為を、どこまで規制できるのか明確でない、という事。
次に、課徴金の金額の計算方法が、懲罰としては軽すぎる、という事がある。

この先、インサイダー取引をどうやって排除させるか、
中北さんは、次のような欧州での規制方法も、検討すべきだと紹介された。

欧州では、インサイダー取引の規制については、簡単な条文を掲げているだけである。
権限なく第3者にインサイダー情報を伝達し、その情報に基づいて株式の売買をする行為は、
裁判所も関与して、禁止されている。

つまり、簡明な規定をおいて、
その先は『刑法の詐欺行為などでしっかり取り締まる、というやり方である。


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『塗り変わる世界のエネルギー地図~12/5 NHKラジオ 十市 勉さんのお話の要約

2012年12月05日 | ラジオ番組
『塗り変わる世界のエネルギー地図』
            12/5 NHKラジオ 十市 勉さんのお話の要約です。

国際エネルギー機関(IEA)が、11月はじめに、
『世界のエネルギー見通しに関する報告書(年次報告書)』を公表した。
この中で、シェールガス・シェールオイルの開発を背景に、
米国が2020年頃までにサウジアラビアを抜き、
世界最大の産油国に復活するとの見方を示している。

従来のIEA報告書では、
2035年までサウジが最大産油国の地位にとどまる、と言っていたので、
今回の報告書で、世界のエネルギー予測は、大きな方向転換を示したことになる。

さらにIEAは、米国は現在はエネルギー需要の約20%を輸入に依存しているが、
2030年頃までには、米国が純石油輸出国になるとも予想している。

このように、米国のエネルギー開発は目覚しく、
これが、電力・ガス価格の下落をもたらして、産業界の競争力が強化されるなど、
米国の経済活動を活発化しているとも言っている。

これで、米国が中東産の原油やガスに依存することが、なくなって来る。
IEAは、2035年までには、中東産原油の約90%がアジア向けとなると予測し、
そして、今後数年で、中国が米国を抜いて世界最大の石油輸入国となる、としている。

さて、このような石油貿易の大きな変化は、エネルギー問題にどのような影響があるだろうか。

まず、中東における米国の役割に変化が出て来る、と言える。
これまで、米国は、中東からの石油の安定供給のため、
ホルムズ海峡をはじめとする輸送ルートの安全確保に関与し、警察官役を担ってきた。
しかし、今後は、多大なお金や犠牲を負担しての役割を、段々減らして行くであろう。

今後は、中東産の石油は、殆どがアジア向けとなる。
アジア諸国としては、中東産の石油を、安定的に、安価に買えるようにする事が重要になる。
同時に、中東の石油にあまり依存しないようなエネルギー戦略を進める事も大切である。

例えば、アジア地域のエネルギー・ネットワークの構築が必要になろう。
日本について考えられる事は、例えば、
日韓両国間で送電線を繋げる、日露間で天然ガスのパイプラインを通す、等々である。

日本は、エネルギー関連分野で高い技術をもっている。
次世代の省エネ型自動車、ITで電力を賢く使うスマートグリッド、効率的な火力発電、
原発の技術、再生可能エネルギーの技術、等々である。
こういうものをアジアに広めて行くことが、アジアの、そして、日本経済の繁栄に繋がって行く。

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『良い円安、悪い円安』~12/4 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約

2012年12月04日 | ラジオ番組

『良い円安、悪い円安 
         12/4 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。

総選挙を前にして、円安・株高が続いている。
そのきっかけは、どうも、某政治家の発言にあるようである。

つまり、無制限な金融の量的緩和を日銀に求め、
さらに、インフレ目標の設定、マイナス金利政策、日銀法改正までエスカレートした。
それにつれて、円安・株高がさらに加速しているという状況にある。

再選なったオバマ大統領が、
ドル安とTPPで、輸出拡大に力を入れているこの時期に、
円安について、今一度ここで、考えてみることは、とても重要なことである。
それにあたって、韓国政府が行った『ウォン安』政策を例にして述べてみたい。

2008年2月に発足した李 明博(イ・ミョンバク)政権は、
財閥系の大企業をエンジン役として、輸出拡大による経済成長を政策の中心に据えた。
その援護として、政府はたびたび為替介入を繰り返し、『ウォン安』を誘導してきた。
この『ウォン安』政策は一見成功して、
財閥系の自動車メーカーや電機メーカーは、大きく輸出を拡大することができた。
その結果、韓国の年間貿易高は、昨年ついに1兆ドルを達成した。

ところが今になって、この『ウォン安』誘導という大企業優先の政策が、
大きな矛盾を露呈するようになってきた。

1.まず、長期のウォン安で、輸入価額の伸びが輸出価額の伸びを上回り、
  いわゆる『交易損失』が巨額になってしまった。
  交易損失というのは、海外に所得が流出することで、
  その分、国内の購買力は低下し、内需が衰えていくということである。
  その交易損失の額が、2011年には、65兆8千億ウォン(約4兆7千億円)に達している。

2.次に、ウォン安の影響で、原油・穀物など輸入品の値上げが著しくなり、
  大衆、
庶民の家計を逼迫・悪化させた。
  昨年末の家計負債(一般世帯の借金)の合計は、
  前年比で7.8%も増えて、913兆ウォン(約68兆2千億円)にも達しているようである。

3.そして、大企業優遇反対のデモが頻発するようになり、労働組合が強硬姿勢に転換した。
  また、日本以上に深刻な就職難の状況になり、大卒者の就職率は6割程度にすぎない。

  
ウォン安によって大企業は成長したけれども、それが一般国民の豊かさに結びつかなかった。
ウォン安を誘導して輸出を増やすために、国民が犠牲になったという事であり、
この構造が、一層深く、鮮明になってきた、ということである。

さて、日本について振り返ってみよう。
円高であるのに、日本の交易損失は高くて、GDPの5%にも上っている。
(米国は0.8%、EUは0.4%程度にすぎない。)
つまり、日本は、構造的に海外への所得移転が大きい。

それに加えて、近年は貿易黒字が減少して、赤字が増えている。
かつて、1980年代、貿易黒字は毎年10兆円を超えていたが、
2008年のリーマンショック後4兆円になり、その後もじりじりと減少した。
そして、記憶に新しいが、2011年はついに、2兆5千億円の赤字に転落した。

今後の見通しとして、貿易収支の赤字は毎年3兆円づつ増加しして、
3年後の2015年には、10兆円規模に拡大するという声もある。

これでは、貿易赤字を、所得収支・サービス収支で補うことは難しくなり、
経常赤字国に転落ということで、海外からの借金で遣り繰りしなければならなくなる。
こうなると、円の価値は大きく下がり、本物の円安になってしまう。
弱い円の時代、つまり、悪い円安の時代が、放っておいても始まってしまう。

これまで、円高を、輸出企業の競争力が低下し、国内の空洞化が進む、とか、
円高デフレが解消できない、等と否定的なマイナス・イメージで語り、
正反対の円安を待望する空気が醸成されてきた。

現在も、円安歓迎で株価が上昇している。
しかし、総選挙を前にして、
冷静に、韓国の味わった深い矛盾と悩みの例を、じっくり学ぶ必要があろう。


 


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市況下落と不況深刻度~12/3 NHKラジオ 鈴田敦之さんのお話の要約

2012年12月03日 | ラジオ番組

『市況下落と不況深刻度』
 12/3 NHKラジオ 鈴田敦之さんのお話の要約です。

このところ市況の下落が目立っている 。
これまでは、半導体や液晶、テレビなど、電機業界の不況が伝えられてきたが、
その他、石油化学、鉄鋼、紙、太陽光発電パネル、等の製造業でも、
市況が急落してきて、不況色を強めている。
非製造業でも、海運市況が暴落している。

いずれも、日本だけでは対応できない需給バランスの悪化によるもので、
家電業界では業績悪化、操短・リストラ、再編成などして、生き残りを図ろうとしているが、
産業界の不況色を一段と深めている。

具体的には、
石油化学では、家電などに使う合成樹脂の原料となるアクリルニトリルのアジア地区の価格が
昨年春に比べて 4割下落している。
これは、需要が減ったところへ、中国や中東などの供給能力が増えたことによる。

鉄鋼では、熱延コイルの価格が、前年同期比で11%低下し、3年ぶりの安値になっている。
世界的に需要が落ちているところに、中国をはじめとして供給力の拡大が止まらないのが理由である。

製紙では、雑誌の表紙に使う上質コート紙が、9年ぶりの安値になっている。

太陽光の電池パネルの価格も、4割以上も下落している。
これは、需要の多かった欧州諸国で、
財政難による電力買取制度の縮小・打ち切りが相次いで、需要が減少したことと、
一方、中国をはじめとして、新規参入による供給拡大が、その理由である。

海運では、鉄鋼石や穀物の大型バラ積船の市況が暴落している。
平均の相場が1日25,000ドルが目安で、好況時には、200,000ドルにもなるらしいが、
今は、10,000ドルを割って、5,000~2,000ドルの時があるようである。
これも、好調時に大量に発注した船が最近になって続々完成し、供給超過になった事による。

いずれの業界を見ても、
需給バランスが一気に、しかも、大きな揺れ幅で崩れたのが今回の特徴である。
しかも、世界的な需給バランスの崩れであるので、
日本だけで多少需要を増やしても、焼け石に水である。
日本の場合は、
さらに、円高、電気料金の上昇、中国の不買運動、等が加わり、厳しいものになっている。

今回の不況は、まだまだ続くが、世界的需給バランスの崩れの主役を演じた、
『需要が一気に増え、供給も一気に増やす』という中国の需給動向に、今後も注目して行く必要がある。


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