ジョージ・いまさきもり の アンダンテ・カンタービレ

晴れた日は農業とウォーキングとライカ、雨なら読書と料理。
そして毎日ラジオがお伴です。

同じことの繰り返しには、直近史を学ばないといけない。

2013年04月30日 | 社会について独り言

昨今、同じことの繰り返しが多い。
直近史を学ばないといけない、とつくづく思う。

其の一。
『MRIインターナショナル』という米国の投資会社が、
不正をして、日本人投資家の虎の子をネコババというか、消失してしまった。

思い起こせば、
丁度1年前の昨年2月には、『AIJ投資顧問』がやはり不正をして、
多くの年金基金加入者を窮地に陥れたことがあった。

両方とも、証券取引等監視委員会という、第三者機関が見つけたと言う。
進歩がないと言うか、よくも次々と上手に騙す奴が現れるというか、
まさに、『歴史を学ばないと、暮らして行けない』時代に私達は生きているような気がする。

其の二。
同じ昨年2月、日銀は『年に1%の物価上昇を目指す』ことを決め、
事実上のインフレ目標を発表した。

日銀がこのように方針を変えたのは、
明らかに、産業界の『円高悲鳴』に応えるための決断であった。

その1月前の2012年1月25日に、米国では、FRB議長のバーナンキ氏が、
『物価上昇率2%をゴール』とするインフレ目標を発表した。
これで、ドル売り円買いが急加速し、
日銀は、インフレ目標の政策を採らざるを得ないところまで、追い込まれたのであった。

日本の『インフレ目標1%』は、サプライズとして、世界市場を駆け巡り、
たちまち円は売られて、前年に政府・日銀が円売り介入したどの時よりも円安になった。
東証でも、日経平均は軽く9000円を回復した。

その当時、エコミストや評論家から、次のような声が多く聞かれた。
『デフレを脱却して、経済を成長させるには、
日銀が貨幣量を多く供給するだけでなく、
日本企業が投資活動を活発化させることが必要である』

その1年後の今、まさに同じ事が繰り返されている。
それは、昨日の山田久さんのお話が良い手本である。

『2011.3.11』で、
多くの日本人が『日本を取り戻す』と誓った事を、忘れてはいけないと思う。

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『異次元緩和の行方』 ~ 4/29 NHKラジオ 山田 久さんのお話

2013年04月29日 | ラジオ番組

『異次元緩和の行方』 ~ 4/29 NHKラジオ 山田 久さんのお話の要約です。

そもそも、金融政策の効果を発揮するには、
黒田日銀総裁が述べているように、「期待に働きかける」ということが重要である。
これまでの20年もの間、デフレが続いてきたが
そういう状態から脱するためには、かなり強力な起爆剤がいるわけで、
今回の日銀の大胆な金融緩和策というのは、
「消費税の2%上昇を必ず達成させる」という強い覚悟を示すという
アナウンスメント効果を狙ったということであった。

全く心理的な効果ではあるが、これは大いに意味があり、
円安・株高で経済は活況を取り戻した。
しかし、そのあと実体が付いてこない、とだめである。
もしこの心理的な効果だけで終わってしまうと、
いわゆる量的質的緩和というのは、いろんな副作用を伴うリスクの大きい賭けであるからである。

デフレ脱却の最終的なカギを握るのは、成長戦略と財政政策をきちっとやることであり
それはまさに政府がやるべきことである。

つまり、日銀が今回大きなリスクをとって、賭けに出たわけであるが
それを望ましい結果につなげるためには、
このあとは、政府がこれらの二つの課題をきっちりとやっていくことである。

最終的に消費者物価2%上昇ということは、今の段階ではこだわることが重要であるが
最終的には「必ずしもこだわらない」ということも必要である。    
                   (お急ぎの方はここまで読まれれば充分です)


日銀の新方針で、日銀が大量の国債を購入することになった。
2014年末には、同行の保有国債は190兆円、同行の資産の60%を占めるようになり、
日本国の国債残高の2割強を保有することになる。まさに異次元緩和と呼ばれるものである。

この日銀の動き(動かせ方)は、
長期金利・資産価格・為替相場をまずは動かして、
その結果として、実体経済や物価に影響を及ぼそうとするルートを期待したものである。

具体的には、
これだけ日銀が大量の国債を買い上げて行くには、
民間の金融機関が保有する国債も買い上げ対象にしている。
そこで、民間金融機関としては、
株式の購入とか、海外資産への投資などを増やして行かざるを得ないことになる。
その過程で、株高・円安が進むことになるのである。

円安が進むと、輸出企業には利益を増やす要因になる。
株高についても、高額商品の消費が活発化して、景気を押し上げる要因となる。

ただ、現時点で企業がどの程度設備投資を増やすかという面をみると
必ずしもまた投資を増やすという状況にはなっていない。
それから、賃金についても、ボーナスは少し増えたようであるが、
基本給の上昇については限定的のようである。

一方で円安により輸入コストが上がっていて、
輸入品に依存している産業については、むしろ収益が圧迫されていきている。
また、ガソリンや光熱費、そして 食料品の一部の物価も上昇している。
賃金がなかなか増えてこないということになってくると、
日用品の消費はむしろ低迷してくる恐れがある。

だから、マクロと景気そのものは回復してきているが、
ミクロでみると好調の分野とそうでない分野の二極化がみられる。

物価についてであるが、
今は、マイナスであるがいずれプラスに転じて消費者物価は上昇していくとは思うが、
この1年ほどは、上がる品目と下がる品目に分かれてくるだろう。

さて、標題の異次元緩和とアベノミクスの今後の行方のシナリオを描こう。

一つ目のシナリオとして、
政府の成長戦略が掛け声倒れに終わり、設備投資は引き続き低迷する。
円安は一層進み、今起こっている経済の抑圧状況はさらに強まっていく。
株式をはじめとする資産価格は上がり続け、バブルの様相を呈してくる。
円安で、ガソリン代・光熱費や食料品、高額商品などが牽引して物価が上昇し、
結果として日銀が目標としている消費者物価2パーセント上昇がもたらされる。
実体経済が付いてこないので、いずれバブルははじけて、再びデフレに戻る。
ついには、グローバル資本から日本売りが始まり
超円安となり、超インフレとなり、スタグフレーションとなる。

もう一つのシナリオとして、
成長戦略が進み、企業の設備投資が増えてくる。
金利が上昇し始め、賃金も上昇する。
日本経済は再び成長軌道に乗り始める。
このようになるなら、2%の物価上昇にはこだわる必要はない。

◆◆◆◆◆◆◆◆ いまさきもりの一言 ◆◆◆◆◆◆◆◆ 

研究所のエコノミストさんらしい、教科書的 お
話でした。
強い支持率を背景にしてか、安倍政権の強気の政治・外交が気になります。
この『放送要約』も、題材にしたいお話が少なくて困っています。


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円安局面をどう見るか~ 4/15 NHKラジオ 浜 矩子さんのお話

2013年04月15日 | ラジオ番組

『円安局面をどう見るか』    4/15 NHKラジオ 浜 矩子さんのお話の要約です。

いま進行している円安は、通貨量を増やして、人為的に作り出しているものである。
円とドルの実体経済の力関係から見て、ドルが相対的に弱くなっていることから、
これまで、円高・ドル安の流れで進んできたのであるが、
それを、人為的に逆向きの動きにしよう、という動きが起きているのである。

一方で、安倍首相はデフレからの脱却と成長を盛んに説いている。
デフレ脱却そのものについては特段の問題はないが、そのやり方には問題がある。
安倍首相が、バブルを作ることによってデフレから脱却しよう、としているやり方は、
毒をもって毒を制するというやり方であり、
このような方向に走ってしまっているのは一つの恐ろしい問題を隠ぺいすることになる。

それは、実体的なデフレは脱却しない中でバブルが進む
つまり『デフレとバブルが同時進行する』ような状況になって行く、という恐ろしい事態である。

金融緩和で、ばく大な資金を市場に流しているわけなので、
これが株式や不動産などの投機性の高いものに回る流れが出来る。
一方で、生産が増えたり、消費が増えたり、賃金が上がったりという実体経済の面では、
これまで通りのデフレのままで、何も変わらない、というふうになってしまう恐れがある。

今後は実体経済の動きを注視する必要がある。
例えば、企業の支払う人件費。
見かけだけでなく、人件費の総額において増えていくかどうかである。
特に円安が進んで、輸入している原材料のコストは上昇しているので、
企業は他の部分でコスト全体を抑え込む必要が出てくるわけで、
その場合、人件費抑制が一番手っ取り早いので、ここにしわ寄せがくる恐れがある。

次に、企業に回った資金。
企業に回った資金が、国内における生産的な投資につながるか、どうかである。
そうなれば、国内の生産を増やし雇用を増やして行くことができる。
しかし、それが投機に廻ってしまえば、バブルを扇ぐことにつながってしまう。



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株高に沸く日本経済の現局面をどう見るか~4/12 NHKラジオ 寺島実郎さん

2013年04月12日 | ラジオ番組

株高に沸く日本経済の現局面をどう見るか
        4/12 NHKラジオ 寺島実郎さんのお話の要約です。 

最初は円安の話をしよう。
このほど日銀から3月の国内企業物価指数が発表された。
アベノミクスという言葉が聞かれるようになってから 5カ月が経過するが、
この企業物価指数を分析して、今、日本の実体経済がどう動いているか説明したい。 

企業物価指数によれば、3月までの5ケ月間で
原材料・素材は18%、中間財は2.8%、最終財は2.0%それぞれ上昇した。
このうち、原材料・素材の大きな価格上昇は、円安による輸入インフレの影響である。
そして、中間財や最終財には価格転嫁がされていない、という状況が窺える。 

つまり、原材料・素材等で川上のほうは、再びインフレであるが、
川下の方は、デフレ脱却の動きが少ない、
ということである。 

今後、川上のインフレ加速が、日本経済に与えるインパクトは、
次第にボデーに効いてくるようになると思われる。

昨年日本は、化石燃料を24.1兆円、食料を5.9兆円、それぞれ輸入している。
為替が昨年に比べて2割円安に振れているので、
今年は全く輸入量を増やさなくても、円安の影響で6兆円は価格が高騰する事になる。 

それで、これに見合うだけの輸出金額が伴えばよいが、さてどうだろうか? 

次には株高の話をしよう。
今の株高を引き起こし、支えているのは、主として外国人投資家である。
3月までに5.9兆円の買い越し、4月の第1週も0.35兆円の買い越しであった。
外国人投資家は、『売り抜く資本主義』であるから、
安く買って高く売り抜いて儲ける、のが目的である。

このおこぼれを得ようと提灯をつけている日本人投資家がいる。
外国人投資家が儲けを目論んでの株高に、何を日本人は考えているのだろうか?

売買による儲けだけを目指す『売り抜く資本主義』も確かに認めないといけない。
しかし、『育てる資本主義』への投資こそ、本当は健全で大切な事である。
自分が、その企業に投資して、
その企業が良い仕事をして育ち、それが産業や事業を興し、雇用を産み、
日本経済を安定的に上昇させて行く、ということである。 

ところで、企業にとっては、株高で(バランスシートで資産が増えて)業績が良くなるが、
経営者は、このような業績は評価しない。
また、経営者は、海外での業績を重要視している。
それで、株高による業績回復では、国内の労働者への利益の分配に意識が向かない。

総じて
円安で原材料が高騰してインフレが進むが、
それに対して、家計の収入が増えるまでにはギャップがある。
それは、タイムラグが生じたり、あるいは、増えないということがあるからである。 

やはり重要なことは実体経済である。
華やかに見える株高にばかり目を奪われず、産業や事業をしっかり育て、
ベンチャーとか新しい技術を育てるほうに、しっかりお金をまわし、
将来に花咲くものを作って行く、ことがこの局面では一段と重要である。


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円安の日本とアジア経済への影響

2013年04月11日 | ラジオ番組

『円安の日本とアジア経済への影響』
 4/11 NHKラジオ 関 志雄さんのお話の要約です。

昨年11月の安倍政権誕生をきっかけに、円安基調に転じている。
安倍首相はかねてから、
大胆な金融緩和、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という

3本の矢からなるアベノミクスと呼ばれる経済政策を提唱してきた。
中でも金融緩和への期待が、円安につながっていると思われる
実際、昨年11月中旬以降の約5カ月の間に、円はドルに対して20 %ほど減価してきた。

これまで円高の進行は、
日本の価格競争力の低下と、生産の海外への移転による産業の空洞化、の原因とされてきた。
これに対して円安になると、
海外での生産と比べて、日本での生産コストが相対的に安くなり、
国際市場において日本製品の価格競争力が回復し、
国内の産業空洞化の圧力も緩和されることが期待される。

もちろん円安に伴って、輸入品の価格が高くなるなどマイナスの影響もある。
輸入への依存度への高い石油製品や食料品などの国内価格が上昇している。
価格の上昇は、家計にとっては実質収入の低下、企業にとっては生産コストの上昇を意味する。

このように円安は、日本経済にプラスとマイナスの影響を同時に与えるが、
総じてプラスの影響の方が大きいと思われる。

実際、円安をてこに、企業の収益が改善し景気が回復に向かう、という期待が高まることを背景に
日経平均でみた東京市場の株価は、昨年11月中旬以来約 50%ほど高騰している。

さて、標題に挙げたアジア経済への影響について述べる。
アジア各国にとって日本は
輸出市場における競争の相手であると同時に、重要な輸入先でもある。
また円がドルに対して安くなることは
ドルとの連動性が強いアジア通貨に対しても安くなることを意味している。

円安になると
アジア各国では、自国製品の日本製品に対する価格競争力が低下する一方で
日本からの輸入価格が低下するというメリットもある。

アジア各国の貿易構造が多様であることを反映して、
輸入面と輸出面を合わせた影響は国によって大きく異なっている。

1.まず輸出の面において、
円安により輸出競争力が大幅に低下する国として
日本と同じハイテク製品を中心とする輸出構造を持つ韓国をはじめとする
アジアの新興工業国が挙げられる。
その影響は日本向けの輸出にとどまらず、第3国市場にも及ぶ。

例えば韓国は、
主力輸出製品である自動車をほとんど日本には輸出していないが、
円安になると、自国製品は日本製品に代替されてしまい、欧米など他の市場への輸出が減少する。

これに対して中国や ASEAN諸国は、
輸出構造が日本と大きく異なっていることを反映して日本との競合度が低い。
このため、円安が進んだとしても、
これらの国が得意とする労働集約型製品の輸出が、日本の製品によって代替されることはない。

2.一方輸入の面では、
アジアの国々は、対日輸入に占める部品や機械といった生産材の割合が高く、
円安に伴う日本からの輸入価格の低下は、生産コストの低下を意味し、
生産を拡大させる要因にもなる。
こうした円安メリットは
日本への輸入依存度が高く日本と補完関係にある国ほど大きいと考えられる。

つまり、輸出面と輸入面の二つの波及経路を合わせて考えると、
円安の影響は、
その国が日本と補完関係にあるか、それとも競合関係にあるかによって明暗が分かれる。

日本と補完関係にあり、
日本からの輸入価格の低下という、円安メリットを享受できる国として、中国が挙げられる。
その一方で、日本と競合関係にあり、
輸出競争力の低下という、円安デメリットを大きく被る国として、韓国が挙げられる。

ところで、中国を含めてアジア各国の報道では、
もっぱら円安による自国経済への悪影響が強調され、

『円安は日本政府が取った一種の近隣窮乏化政策ではないか』という批判がある。

これに対して、しかし投資家の動きは、そういう見方ではなく、関さんの指摘と合致している。
実際、昨年11月中旬以来、
ニューヨークをはじめ、世界主要市場の株価が上昇基調に転じている中で
円安の恩恵を受けると思われる東京市場は最も大きな上昇を示しているが
これに対して円安によって大きな打撃を受けると思われる韓国では、逆に株価は伸び悩んでいる。

一方、中国の上海市場では、株価の上昇幅は東京には及ばないものの、ソウルを上回っており、
円安は中国企業の株安につながっていないようである。

 
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『欧州金融危機の行方』  4/5 NHKラジオ 藤原直哉さんのお話

2013年04月05日 | ラジオ番組

『欧州金融危機の行方』  4/5 NHKラジオ 藤原直哉さんのお話の要約です。

昨日、日銀が大胆な金融緩和を実施するという決定をした。
しかしこれは以前からアメリカとヨーロッパがやっていることである。
それを見ればわかるように、大胆な金融緩和だけで景気が良くなるということはない。
円安とか株高が進行していると言っても、それは今回一時的なものだと思われる。

やはり 1か月に発行する国債の7割を日銀が買い取るというのは
実質的に国債を日銀が直接引き取るのとあまり変わらなくて、
いったんこういうことを始めると終わりにできなくなる。
欧米でも、ずっとやって来た超金融緩和を、終了にできなくて困っている。

このようなやり方は、『片道切符の金融政策』といって、戻ることができなくなる。
その間にも、実体経済の中身はますます薄くなるという弊害が出てくる。
今回の日銀の決定は、後から評価が二転三転するのではないか、と思われる。

現在日本は、実体経済は不景気と物価高の最中にあり、
医療・福祉あるいは建設・土木のように、国の資金が出ている所以外は雇用は増えていない。
そして来年度の設備投資計画を見ても、相変わらず低調である。
だから個人・企業ごとに、
それぞれ自力で未来を突破する現場の実力がないと、とても乗り切れそうにない。

 さて標題の欧州危機についてであるが、
欧州ではユーロが大きく下落しており、金融危機が全面的に再燃する時期が近づいて来ている。
ドイツでも、ドイツ銀行がデリバティブズで最大1兆4千億円の損失飛ばしをした疑いがあるとして
ドイツの中央銀行が捜査を始めている。

アメリカでも雇用を中心に決して景気があまり良くない、という指標が出ているし
中国も習金平体制になって株価は非常に不安定であり、
どう見ても、世界大恐慌は依然として継続中である。 

中でも欧州の金融危機というのは構造的に非常に重要な問題をはらんでいる。
キプロスの破たんに、その問題が見えている。

キプロスというのは、ロシア人の経営者や富裕層のお金を集めて
ちょうど中国に対する香港のような立場に立って、経済的に伸びてきた。
ところが 2006年のサブプライム危機以降に銀行経営が行き詰まり、
いよいよEUから資金援助を受けざるを得なくなった。 

しかしこの資金援助の見返りとして、
キプロスの銀行預金は、少額の引き出しや少額の決済を除いて封鎖されて、
日本円で1200万円以上の高額預金は、4割あるいは6割場合によっては8割が、
強制的に税金として召し上げられるという見通しである。

さらに、銀行自動引き落としとかクレジットカード決済はほとんど止められて
外国送金や現金持ち出しも厳しく制限されており、小切手の現金化も禁止されている。
さらに定期預金も満期が来ても、残高の9割は強制的に満期が延長されることになっている。

実質的に銀行破たんに伴う処理ではあるが、
ある日突然預金を封鎖して、税金でそれを召し上げるという新しい手法が使われたのである。
この方法だと、現在の預金保護制度は有名無実となったわけであるので、
国内外の預金者は、自分の預金が危ないと本気で心配している。

同時に、金融立国キプロスの経済は、根底から崩壊ということになってしまう。
こうした資金の移動規制を同じユーロを使っているキプロスで行っているために
事実上ユーロには、一般のユーロとキプロス国内のユーロと、
『二つのユーロが存在している状況』である。

この資金移動の規制は、解除すると一気に資金が逃げ出すので
かつてドイツにあったベルリンの壁のように、これを撤廃するのは現状では非常に困難である。
なぜなら、これは事実上ユーロが分裂したということを意味しているからである。

さらに、スロベニア・スペイン・イタリアなど、ドイツやEUの言うことをあまり聞かない国々では、
同様の措置が取られるのではないか、という不安が高まっている。
そして、キプロスに対して強硬姿勢を最後まで貫いたドイツに対する不信感や懸念が広がっている。 

思い起こすと、ドイツはかつて第1次世界大戦で崩壊して、
戦勝国から返しきれない巨額の借金を負わされた。
その戦勝国の圧迫をはね返して、借金を事実上返さないということで
ヒットラーが国民の圧倒的支持を受けて登場して来た。
そして、ヒットラーのドイツが欧州各国を電撃的に攻撃して、征服して行った。
今回のキプロスの事件の最初と最後をつなげると、
ドイツがキプロスを借金を理由にして一瞬でつぶした、ということになる。 

まさに当惑するほど歴史が繰り返されている部分がある。
すでに欧州では極右勢力の台頭が著しいし、
またドイツを中心とする EUの強硬的姿勢には非難が多い。 

だが同時にドイツとしても、激しい不況と政治の右傾化で、
これ以上ドイツ人の税金を外国の救援に回すことは許せない、という声が広がっている。 

まさにこれは80年前の世界大恐慌、第二次世界大戦前に見たことのあるような光景であり、
これがいま欧州に広がっているというわけである。 

本題に戻って、ここまで欧州・米国が大胆な企業緩和をやっても、金融危機が止まらない、
あるいは本格的な景気回復にならないということは、
やはり、この先は 97年のアジア危機、98年のロシア危機のような
世界的な破たんの連鎖が広がる可能性が高いと思われる。 

今度は、政府も打つ手を全部を尽くした後の事であるから、何ができるというわけでもない。
考えてみると
今の経済システムというのは
輸出も輸入もそれから投資もみな外国に依存して動いている。
だから、不景気になると立ち行かない国が出てきて、金融破たんをする国が出てくる。
つまり、おカネとモノの貿易やグローバルな取引きがあまりにも激しいがゆえに、
世界経済は不安定になっているという部分がある。

実は、これが今の人類の持っているシステムの、一番の弱さである。
無理に貿易や海外の資金の流れを増やして、それを経済成長だと言っているために
『経済が踊り場に達した時にこういう恐慌が始まり、それが連鎖する』
という問題を、第2次世界大戦の前のころから続けている。

そろそろ、こういう大きな問題について、文明の構造や世界システムを変えて、
もっと自給率を高め、あまりこういう世界の破たんが連鎖しないように
自国の国民の雇用を使って、経済成長できる体制に変えて行かないといけない。 

しかしながら、今、
そういう大きな枠組みに対して、意欲を持って取り組んでいる政府あるいは企業がない、
というのは非常に残念なことである。
こういう状況の中で、
日本も今までと同じような経済を復旧するという考え方をしても元には戻らない。
全く新しいパラダイムを模索する以外に方法はないわけで、
今年はその大きな正念場の年になると思われるので、当面の情勢を注視する必要がある。 



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