『復興特別法人税撤廃を考える』
9/30 NHKラジオ 浜 矩子さんのお話の要約です。
何のために『復興特別法人税を前倒しで撤廃する』というのか、
この政策は、とにかく分かりづらい。
消費税増税に対応して、ということなのか?
企業減税に力を入れている安倍政権が、その方向の為にやるのか?
とにかく、何故、何の為に、という論理が非常にわかりにくい。
国民の側からすれば、復興のための特別税が、
所得税のほうはそのままで、法人税だけを撤廃するというのは
不公平だという声が出てても当然だし、気掛かりになるのは、当然だろう。
特に、消費税増税に対応するということであれば、
消費者や生活者にとって、負担増となる影響を軽減するための
対応措置が必要である。
そうであれば、法人税の方ではなく、個人の所得税の方だろう、という事になる。
安倍政権は、『企業が元気になれば、その結果が全体に及ぶ』という発想で、
法人税の引き下げによって、経済全体が腰折れすることを防ぎ、
なおかつ、個人の所得も上げていく、というシナリオを描いているようである。
しかしながら、そもそも、そういう形で成長を追い求める中で、
今、日本経済が当面している問題の解決につながるか、納得できるものではない。
ここまで規模が大きくなった経済を、さらにパイを広げることによって
デフレ脱却を図ろうという発想であるが、
しかし、その『パイをどんどんどん大きくしていけば何とかなる』という発想は、
非常に古い、時代遅れのもので、まさに浦島太郎の経済学に思える。
むしろ、今、問題とすべきは、
この『豊かな経済の豊かさを、うまく分ちあうことができていない』という分配の問題である。
そこのところからは、焦点が全くずれている。
繰り返して言うが、『企業を元気にすれば、それで何とかなるだろう』という政策では、
時代錯誤的な限界がある。
一方で、政府が企業側に対して賃上げを要請する、という動きがあるので、
これで、局部的な賃上げにつながるかもしれない。
つまり、企業として『上げ易い賃金』を上げるというのは、あるかも知れない。
問題は、
それが全体として、総人件費(労働の側からみれば労働分配率)が、増えるかどうかである。
現状では、賃上げに企業が協力するという姿勢を見せる一方、
実際問題としては、増えている雇用のうち、増えているのは非正規雇用であって、
しかも、その中でも、
アルバイト・パート等、非常に賃金水準が低いところばかりが増えている格好である。
企業としては、賃金単価を上げやすいところは上げる一方
非正規部分への依存度を高めることで、総人件費を増やさないように、やっているわけである。
企業の対応としては、やむを得ないかもしれないが、こういう格好になっている限り、
いくら法人税減税をやっても、それで分配の問題が是正される、ということにはつながらない。
そもそも、法人税を払ってない企業が非常に多いわけで、
そういう企業にも減税といっても、それは全くつじつまが合わないことであり、
結局は見せかけに終わるのではないか、という懸念を強く感じさせるところである。
総じて、
今の日本経済社会が当面している問題は、豊かさの中の貧困の問題である。
このように豊かな経済社会であるのに、その中にそれこそ非正規雇用者の厳しい現状がある。
このような歪みを是正しない限り、デフレ脱却などはいつまでたってもできない。
こんなに豊かな経済にしては、
統計上、貧困者というふうに分類される人の比率が、明らかに高すぎる。
貧困な生活を強いられている人たちがたくさんいるという中で、デフレ脱却はあり得ない。
この豊かさの中の貧困問題が起きるというのは、
それはやはり『豊かさの分配の仕方』が下手だからである。
そこに政策の焦点を当てていくという事をしないと、
いつまでたっても、日本経済の立て直しといったものには、つながっていかない。
★★★ お読み頂きましてありがとうございます ★★★
## 私(いまさきもり)への応援拍手とメッセージはこちらからお願いします ##
## この文章は私の覚えとして放送を要約したものです ##
今週金曜午後から、NHKホームページで放送が聴けます。
右上のブックマークから入って下さい.