腎臓に優しいお菓子、真打登場。
これまで2回ほど腎臓に優しいお菓子について書いた。
(過去記事は、左のカテゴリー「健康と滋養)にあります)。
今でもその記事を検索してお読みくださっている方が多くて驚く。
ただ、腎臓に優しいと言っているのは、たんぱく質と塩分が少ない、というだけで、
カロリーや炭水化物、その他の成分は考えているものではないので、ご注意願いたい。
今でも、スーパーに行った時は、
菓子棚の前で、袋をひっくり返しては見て、成分を確かめるのが習慣になっている。
スーパーの菓子棚に並んでいるお菓子の多くについて言えば、
たんぱく質は、
小麦が主成分のもの(ビスケットなど)で、 平均100g中、8~15g含まれている。
米が主成分のお菓子(せんべい・あられなど)で、5~10g含まれている。
そこで私は、100g中に5g未満というのを、腎臓に優しいお菓子の一つの目途にしている。
それと、袋にバラで詰められているものは、ついつい、食べ過ぎにつながってしまうので、
1枚か2枚づつ個別に包装してあることも、選択の際のポイントである。
さて、これまで、値段が高いので買うことがなかった、
製薬会社の『たんぱく調整プチクッキー』なるお菓子を始めて購入し、食べてみた。
値段は20個(100g)入りで、550円。
成分表示によると、たんぱく質は100gあたり1gとなっている。
包装は5gのものを個別包装してあるから、一つなら、0.05gとなる。
炭水化物が同80g、エネルギーは同500kcalと、
高い数値になってしまっているのが気になるところだが、
名前の通り、たんぱく調整の腎臓に優しいお菓子である。
味はどうか。
ウーン、これは少々書きづらい。
『決して、一度に沢山食べてしまうことは絶対ない味』とでも言おうか。
いやいや、もっと前向きの姿勢で、
『ひとつ食べただけで、それで、お菓子や甘いものを食べたい欲望が抑えられる』
と言うほうが、意外と正確に言い当てているかもしれない。
『消費増税は何をもたらすのか』
11/29 NHKラジオ 森永卓郎さんのお話の要約です
日本経済は、来年4月以降、もの凄く大きな変化が起こってくる。
日本経済はおそらく失速してしまうだろう。
それはなぜかというと、来年4月以降、もの凄く高い率のインフレが日本を襲うからである。
一つの理由は、もちろん消費増税の影響。
3%消費税が増税されると、2.5%ぐらい消費者物価が上昇する。
もう一つは、日銀が今年の4月からやっている異次元の金融緩和による影響。
これの目標が再来年の 3月末て物価上昇率を 2%にするということであるので、
来年度の平均上昇は1.5%くらいになるだろう。
消費税増税で2.5%、金融緩和で1.5%、合計4%も物価が上昇することになる。
物価上昇が4%というのは、1981年以来、33年振りの、高いインフレ率である。
ただ、33年前の時は、賃金も大幅に上がっていたのに対し、
今回は、賃金がベースアップのような形で大幅に上がるということは望めそうにない。
それに、年金も今年の10月から1%下がり、来年の4月から更に1%下がる。
賃金は増えない、年金は減る、という中で、物価が4%も上がったら何が起こるか?
国民が買い控えをして、消費が失速することは目に見えている。
来年の3月までは、景気はまずまず好調に推移するだろうが、
4月以降は、
一気に切り替えして、奈落の底に落ちて行くような変化が起こるのは間違いない。
景気の失速が観測された場合は、
政府は思い切った財政出動をすると言っているし、
日銀も、今の異次元金融緩和を上回大胆な金融緩和をすると言っている。
しかし、それらの出動や効果には、大きなタイムラグが出て、どうしても手遅れになる。
総じて、
来年4月以降は、年末まで、景気が落ちて行く可能性が極めて高い。
それを止められるのは、今や、賃金を上げるしか手段がない。
春闘では、一時金を増やすだけではなく、
消費意欲を落とさせないように、ベースアップを実施すべきである。
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2013年2月28日、安倍晋三首相は、所信表明演説の中で明言した。
『世界で一番企業が活躍しやすい国を目指します』と。
そういう『国』は具体的にはどういう『国家』なのか?
その『国』で、国民は、どう生活しやすくなるのか?
参院選の後、急ピッチで、カーテン越しに、舞台と役者と筋書きが見え始めた。
そして、高い入場料を払って見ている観客は全員『99%』の人のようである。
今日は、高い入場料を払わなくても、舞台と役者と筋書きがわかる書物を紹介したい。
一冊は、堤 未果さんの『(株)貧困大国アメリカ』(岩波書店)。
同社の発表では、10月のベストセラー第2位とかで、売れまくっている。
『大きな政府』を掲げて大衆に支持されて当選した、と(私も)思っていたオバマ大統領。
しかし、真っ先にやったことは、国民を監視する政府権限を強化することだった。
巨額の税金が大企業やウォール街に流れる一方で、公務員の行動は管理され、
SNAP人口は拡大した。
『オバマのケア』と呼ばれ、無保険者に民間医療保険加入を義務づけたが、
その保険料は、平均の4人家族で年間2万ドル(約200万円)になるらしい。
そして、医師は保険会社の下で働く労働者に化し、
公立病院や過疎地の病院は廃業に追い込まれる。
株価や雇用は回復したはずなのに、
貧困は拡大を続け、2極化はますます加速している。
民主党が批判した『ブッシュの新自由主義』、共和党が批判する『オバマの社会主義』。
マスコミはこの構図を差し出すが、これでは、アメリカ経済の実体についての疑問は解けない。
今アメリカで進行しているのは、
単なる新自由主義、社会主義を超えた『コーポラティズム』(政治と企業の癒着主義)である。
この本では、アメリカの『コーポラティズム』の全貌を
『デッドトラップ』『SNAP』『GM種子・モンサント保護法』『ALEG』等、
日本にも少し情報が入り出したキーワードを交えて、詳細に述べてくれている。
ちなみに、『SNAP(食料配給プログラム)』は、貧困層に支給するものであるが、
日本の生活保護費と違うのは、
生活が苦しいと申請すれば、ほぼ無条件で支給してもらえる事である。
日本では、やれ不正受給が多いとかで、
なかなか受け付けてもらえないのと大違いであるが、それには訳がある。
それは、『SNAP』で食料品が売れ、ウォルマートや、巨大食品企業が儲かるからである。
政府は、税金をばら撒くが、
その果実はしっかりと巨大企業に収まるようになっているからである。
だから、今後、日本で生活保護申請がすんなり認められるようになった時は、
日本でも、コーポラティズムが進行したと理解して間違いなかろう。
以上の説明は、主として「あとがき」の一部を引用させてもらった。
読後感として、
ひょっとしたら、
安倍首相は、この本や、同著者の前作、前々作を『教科書』にして、
アベノミクスを思いつき、TPPを進め、特区構想を練ったのではないかと思った。
もう一冊は、中島孝志さんの『これから日本経済は途方もなく凄いことになる』(さくら舎)
この本を手にした時、
『日本経済が崩壊する、破滅する』という恐ろしい本かと思った。
しかし、そうではなかった。
『これから日本は、本来持っている力を発揮して凄い国になる』
と、冒頭で宣言していて、それが本の題名となっている。
大きく4つの章で区切られている。
まず、最初に日本経済の現状分析と強みについて。
次に、世界のエネルギー事情の分析と、日本の対応策について。
そして、TPPに潜むアメリカの野望について。これは堤さんのお話の復習になる。
『世界の食料を支配すれば、世界を支配できる』、アメリカの戦略を述べている。
最後に、ならず者国家(あの国です)の経済崩壊について。
さすがに松下幸之助研究の第一人者だけあって、考え方が前向き。
同じ松下政経塾の民主党幹部が、なぜこう言えないのだろうかと不思議に思う。
流行語大賞ではないが、よく『○○に勇気をもらった』という言い方を聞く。
私はこのような、べんちゃらっぽい言葉は大嫌いだが、
この本には、前向きに考えることの大切さを再認識させてもらった、と言いたい。
『日露関係の新展開』
11/22 NHKラジオ 寺島実郎さんのお話の要約です。
日本とロシアによる初の外務防衛担当閣僚会議『ツープラスツー』が今月初め開かれた。
今、日ロ両国間が好転し、お互いに密着の動きがみられる背景には、
日本からもロシアを必要とし、ロシアも日本を必要とする力学が生まれ始めているからである。
その最大要素はエネルギーである。
日本は、原油の85%、LNGの 4割近くを中東に依存していて、
エネルギーについては中東に過剰に依存している状態であるが、
米国が中東から後退を始めたこともあり、エネルギー源の多角化が課題となっている。
現在、日本はすでにロシアから原油・LNGの1割をすでに輸入しているが
これをもっと増やす方向を目指している。
一方ロシア側では、
これまで主要な輸出先であった欧州市場が、シェールガスの影響で揺さぶられて
足元を見透かされて、量・価格ともに芳しくない。
そこで、近年では、太平洋側つまり日本をはじめアジア市場を重視していて、
シベリアから原油やガスのパイプラインが太平洋岸に辿りつこうとしている。
また、30兆円をかけて、ロシア極東地区に巨大な石化産業の一大基地を築こうとしている。
その他、余談のようだが実は重要な話で、
これまで氷に閉ざされて航行出来なかった北極海航路が、最近になって通れるようになった事も、
世界の対ロシア関係に大きな影響が出てきそうである。
この航路では、スエズ運河経由よりも1/3ぐらい短縮して航海できる。
昨年は、これで、46隻の船がが欧州からベーリング海峡を抜け航海し、
今年は、10倍の428隻の船が既に航海している。
プーチン首相は、最新鋭の砕氷船を投入して、この航路を制覇しようとしている。
このような動きにあるプーチンのロシア要素を視界に入れておくことは重要である。
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『中国における低成長下の景気過熱』
11/21 NHKラジオ 関 志雄さんのお話の要約です。
中国では、今年の第3四半期に経済成長率は3四半期ぶりに上向いたが、
それでも7.8%にとどまっている。
リーマンショック以降の経済成長率の平均値である8.8%を判断の基準にすれば、
中国経済は、
2008年第4四半期から2009年第2四半期までは低迷期、
2009年第3四半期から2011年第4四半期までは好況期、
そして
2012年第1四半期以降、再び低迷期に入っている。
一方、今年10月のインフレ率は3.2%に上昇している。
住宅価格の急騰も加わり、低成長にも拘わらず、景気の過熱色は鮮明になってきた。
前回の低迷期との相違点
『低成長下の景気過熱』という現象は、
リーマンショック後の前回の低迷期には見られなかった。
両期間の経済成長率には大差がないのに、
インフレ率は前回の平均が0.1%であるに対して、今回は2.6%と高くなっている。
インフレ率だけでなく、住宅価格も上昇している。
今年10月の70の主要都市の新築住宅販売価格は、前年比9.3%上昇し、
上海と北京に至っては、同20%以上急騰している。
これは、住宅価格が下落した前回の状況と大きく異なっている。
また、雇用問題が今回は深刻化していない。
前回は、リーマンショックを受けて、多くの出稼ぎ労働者が職を失い、
都市部から農村部に戻らなければならなかった。
これを反映して、
都市部の求人倍率(求人数/求職者数)は2008年第4四半期には0.85まで低下した。
しかし、今回の低迷期において、求人倍率は一貫して1を超えており、
求人数が求職者数を上回っているという状態が今でも続いている。
さらに、大規模な景気対策が今回は行われていない。
それゆえに、
4兆元に上る内需拡大策が実施されたことを受けて、
中国経済がV字型回復を遂げた前回とは対照的に、
今回は回復のペースが緩やかであり、低迷期が長引いている。
潜在成長率の低下を反映
これらの相違点は、中国において、
生産年齢人口の低下と農村部での余剰労働力の解消を受けて、
労働力が過剰から不足に転換した結果、
潜在成長率が大幅に低下していることで説明できる。
景気過熱の現状から判断して、中国の潜在成長率は、
1979年から2012年の経済成長率の平均値である9.8%はもとより、
リーマンショック以降の平均値である8.8%にも及ばず、
すでに足元の実績値である7.8%を下回る7%程度まで下がっていると見られる。
現在の潜在成長率が従来と変わらないのであれば、
7.8%の経済成長率は景気の低迷を意味する。
その場合、雇用問題が深刻化し、インフレ率と住宅価格が低下し、
政府も景気回復を目指すべく積極的に拡張政策に取り組むはずである。
しかし、潜在成長率がすでに7%程度に低下しているとすれば、
同じ7.8%という経済成長率はむしろ好景気を意味する。
その場合、失業よりも、景気過熱が懸念され、
政府のマクロ経済政策のスタンスも慎重にならざるを得ない。
今回の状況はまさにそれに当たる。
予想される金融引き締めへの転換
一般論として金融政策を考える際、
経済成長率の実績値だけでなく、潜在成長率も重要な参考指標となる。
経済成長率の実績値が潜在成長率を下回れば、
経済が冷え込み、その対策として緩和策が採られ、
逆の場合、経済が過熱し、その対策として引き締め政策が採られる。
無理して拡張的マクロ経済政策を以て、潜在成長率を上回る高成長を追求すれば、
バブルの膨脹を招いてしまう恐れがある。
中国では、金融当局は景気回復を促すべく、
2011年12月、2012年2月と5月の三回にわたって預金準備率を引き下げたのに続き、
2012年6月と7月の2回にわたって利下げを実施した。
その際、経済成長率の実績値は、潜在成長率を下回っていたという判断があっただろう。
しかし、その後、
経済成長率がほぼ横ばいで推移しているのに、景気の過熱色がますます強まる中で、
当局も、潜在成長率の低下、ひいては引き締め政策の実施の必要性を認識するようになった。
すでに、インフレを抑えるために、当局は人民元の対ドル上昇を容認し始めている。
インフレが今後さらに上昇すると予想されることから、
人民元の対ドル上昇のペースが速まるだろう。
また、預金準備率の引き上げと利上げも視野に入りつつある。
来年にかけて、インフレ対策の本格的実施は、成長率低下のきっかけとなるだろう。
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『GDP成長率の中身を考える』
11/19 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。
先週11月14日、
内閣府が今年7月―9月期の国内総生産 (GDP)の成長率を発表した。
年率換算で1.9%の増加であったという。
これは物価の変動や季節変動要因を除いた実質成長率であるが、
その前の期つまり4月―6月期は3.8%の増加であったから、
それに比べて半分の伸びで、成長率が大幅に鈍化したのが今回の特徴である。
今回の数値には重要な意味がある。
それは、安倍政権が進めつつある経済政策の実効性、
つまり、実体経済に対して効果を及ばしつつあるのかどうか、
それを検証できる最初の数値である、ということである。
そういう観点から客観的な分析の光を当ててみると、三つの特徴が浮かび上がってくる。
まず第一に、
国内景気の回復に向けて、今、”良い循環”が始まっているのであれば、
何よりも企業の設備投資、次に個人消費、それから輸出 のこれら3項目が、
順調に伸びていなければならないはずであるが、
今回は、それらの指標が揃ってマイナスかせいぜい横這いに止まっている、という点である。
具体的な数字を挙げておくと
個人消費は、前期に比べて僅か 0.1%の増に止まり、これは、前の期の1/6である。
設備投資も、0.2%増、前期の1/5以下になった。
また輸出は、円安が続いていたにもかかわらずマイナス0.5%となり、
前期はプラス3%だったから、勢いがガクンと落ちていることがわかる。
次に第二に、
はじめに話した全体の成長率 1.9%の内の、
実に1.4%が公共事業の膨張による効果で占められていたという点である。
何があったかといえば、言うまでもないが、
今年一月に、2012年度の補正予算で、
10兆円という巨額の緊急経済対策が打ち出された事である。
その効果の始まりが、この時期に現れたというわけで、
公共工事は前期に比べて実に26%も増えている。
こうした巨額の財政出動による公共工事効果で、
かろうじてプラス成長が保たれたということがわかる。
そして第三に、
個人消費が僅かに伸びたといっても、全体としての個人消費が伸びたというわけではなくて、
株価上昇で潤った富裕層・資産家中心の、
ある種高揚感に乗って、高級腕時計・美術品等の売れ行きが好調だったというだけで、
それ以外の大衆消費は 、
逆に円安による原材料の値上がりによる値上がりで、縮み始めている。
大衆消費が伸びないまま、本格的な景気回復などはない。
以上要するに
『財政出動と異次元金融緩和で、じゃぶじゃぶお金を溢れさせればデフレから脱却できる』
という『貨幣数量説』に依拠する経済政策は、
果たして、このまま順調にゴールにたどり着けるのか、
厳しい問い掛けが発せられている。
今、進められている国家戦略特区構想など
安倍政権の打ち出す成長戦略の真の効果が厳しく問われることになるだろう。
日本経済の最大の問題は、(これまでもこの時間に何度もお話ししてきたことであるが)
『マクロ経済不均衡』に走っているということである。
例えば、
世界一巨額の対外債権を持っている一方で、国内では巨額な財政赤字であることである。
つまり国の借金が大きくて、
年々国債費(国債の利息支払い)だけでも大変な国民負担になっている。
その一方で、また、巨額の個人の金融資産が積み増しされている。
その上、海外への工場の生産拠点の移転は加速しており、
国内は絶えず空洞化のリスクにさらされたままといった具合である。
今、政府は、設備投資減税などして、企業の設備投資を何とか促そうとしているが、
仮にそれに応えて、企業が設備を拡大増強して生産力を増やしていけば
たちまち需給ギャップの拡大というリスクが襲って来るであろう。
これまさに、デフレ要因である。
現に今、今回のGDP成長率を見ると、設備投資はほとんど増えていない。
国民生活における格差拡大の問題も、
政府の懸命の呼びかけにもかかわらず、これも言うまでもないが進展が乏しい。
そういう不均衡経済の構造を正面から論じないままに、
さらに一層の規制緩和万能論を押し進める等、これでいいのであろうか? いい訳がない。
今は、いったん後方に退ぞいたように見えるが、
働く人の首を斬り易くすれば雇用が増える、というような『解雇特区』構想は、
レーガノミックス時代の理論が、そのまま罷り通っているという感じがする。
国民の将来不安はますます深刻になって、不均衡経済の構造はもっと進化して行くだろう。
これで本当に豊かな国民生活は可能か?と、強く強く問いたいと思う。
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『資金が循環しない日本経済』
11/15 NHKラジオ『ビジネス展望』 藤原直哉さんのお話の要約です。
早速に、今朝のテーマについてであるが、
日銀の大規模な金融緩和によって、金融機関に出た資金の多くは、
経済界には流れていなくて、日本銀行の当座預金勘定に戻って来てしまっている。
今年に入って、日本の金融機関は日本国債を大きく売却している。
それは、日銀の新しい金融政策で金利が高騰して、国債が値下がりすることを恐れたためである。
この売却された国債を日銀がどんどん買い取って、金融機関に資金を供給しているのであるが
その資金が、金融機関から企業に融資されていない。
つまり経済界へ資金が流れて行っていない。
金融機関に、新しい資金の融資先がないからである。
借り入れが必要で、なおかつ借り入れができる企業が、まだまだ増えていないからである。
(お急ぎの方は、ここまでお読みいただければ充分です)
安倍政権下で金融緩和が非常に大規模に行われたが、
昨日発表されたGDP成長率の低い伸び率を見ると、厳しいものがある。
経済の持ち上がり方は僅かであり、そして限定的である。
かえって不動産ミニバブルを起こしているという事もあって、
当初の期待通り、資金を循環させて日本経済を活性化させるというには、
まだ相当距離がある段階である。
円安・株高による一時的なマネーの増殖効果のようなものは、今年上半期でピークを打ってしまった。
下半期になると、次が無いので、だんだん成長率も下がって来ることが懸念される。
世界的に見ると
米国は、今だに金融緩和の縮小に踏み切っていないし、
EUは、先日金利を引き下げて金融緩和を行った。
世界は終わりなき金融緩和を続けている、というのが現状である。
しかし今は構造的な世界大恐慌であるから、
金融緩和でお金を出し続けるだけでは、損失は消えなくて、問題を先送りする事にしかならない。
さて、今朝のテーマであるが、
日銀の大規模な金融緩和によって、金融機関に出た資金の多くは、
経済界には流れていなくて、日本銀行の当座預金勘定に戻って来てしまっている。
今年に入って、日本の金融機関は日本国債を大きく売却している。
それは、日銀の新しい金融政策で金利が高騰して、国債が値下がりすることを恐れたためである。
この売却された国債を日銀がどんどん買い取って、金融機関に資金を供給しているのであるが
その資金が、金融機関から企業に融資されていない。
つまり経済界へ資金が流れて行っていない。
金融機関に、新しい資金の融資先がないからである。
借り入れが必要で、なおかつ借り入れができる企業が、まだまだ増えていないからである。
世の中を見ていると、
円安により、輸入物価の上昇が消費者物価や企業間物価に跳ね返ってきていて、
現実には『不況と物価高』だと感じている企業や個人が多いと思われる。
『アベノミクスで好景気』と言われるが、必ずしもすべての企業が良くなるというのではないのである。
これまでは、
”売れてるマーケットを見つけて、安値で参入して、利益はリストラで稼ぐ”という
いわゆる『デフレ経営』 が、この15年くらい大企業中心に行われて来た。
しかしながら今後は、
この『デフレ経営』しかできない企業は、もはや、この物価上昇局面においては生き残ることはできない。
簡単に言えば、
コスト削減が限界に達したところで物価が上がってきたわけで、行き詰った企業が多いということである。
こういう転換期だからこそ、
”顧客に喜ばれる新商品を出して利益を稼ぐ”という本来の経営ができなければ、企業は生き残れない。
今までのように物価が下がっている局面では、
引き締めだけやって、コストを下げて 、社員の首を切ればよかったのであるが
それは通用しないということである。
そういう中で、明るい話しがないわけでもない。
一つは、電気事業法の改正案が成立したことである。
これで、発電と送電を分離する、あるいは電力の小売り部分が自由化される。
新しいビジネスの機会が生まれ、コストの削減がかなり進むと思われる。
次に、最近になって、小泉元首相や細川元首相が、『原発ゼロ』を唱えていること。
これは、大きな反響を呼んでいる。
電力、エネルギーに関して、新しい風が吹き始めたと言えよう。
この風に乗って、日本の経済にも新しいチャンスが出てくると、大いに期待できよう。
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今週は、ビジネス展望のテーマに、お二人の方が『東電の分社化』について述べられた。
お話の内容は、詳しく要約をしているので、そちらをご覧いただきたい。
ただ、お二人のお話を聴いたわけではあるが、正直言って、論点がよくわからない。
要約する際に、私見を交えて、わかり易く書こうとしたが、難しい。
ちょうど『週刊朝日』の最新号で、この件の特集があった。
とてもわかり易い記事で、お二人の話を補足してもらうことができるので紹介したい。
(朝日新聞出版のサイトに載っている本号の表紙)
記事の冒頭で、経産省官僚と電力会社の社員の間で交わされたメールが示される。
『自民党の復興本部の大島氏が近く廃炉専門会社を作る提言をまとめる。
これで、描いたものが軌道にのって進むようになる』(経産省官僚)
『廃炉・汚染水をそっちの会社に押し付ければ、そこの連中の責任に出来る。
そうなれば、肩身の狭い思いをしなくてよい。宴会も存分に出来る』(社員)
このメールは9月に交わされているそうだが、
分社化して、別会社に移される社員ではなく、
身軽になって超優良会社となる東電に残るエリート社員の笑いをこらえる姿が浮かぶ。
そして、電力会社や金融機関の天下り先を死守できた官僚の満面の笑みも。
東電は、事故を起こした責任については、まるで他人事である。
『上手にやれば、国から資金が投入されても、これまでの体制が維持できる』
『マジックでもごまかしでも、早く進めて欲しい。廃炉・除染とは、おさらばしたい』
また、東電の4-9月期決算が、なんと黒字になったと発表されていることについて。
人件費や修繕費を抑え、電気料金を値上げした事もあるが、
なんと言っても、この先、数十兆円に上ると確実に見込まれる賠償・除染費用などを、
経産省が、『どれだけかかるか不明だから計上しなくて良い』としたので、、
特別損失に計上しない会計基準に曲げてしまった事が大きい、としている。
『こんな理不尽がまかり通るのはおかしい』とは、金子さんが指摘されるとおりである。
その前に、東電破綻処理の議論が飛び交うのも当然である。
東電が破綻処理されると、3.4兆円以上の金融機関の債権が吹っ飛ぶ。
経済への影響は計り知れない。
金融機関の体力が奪われると、金融不安が起き、アベノミクスどころではなくなる。
そうではあるが、破綻処理をして、東電が3兆円の借金が返済不要となれば、
その分、国費投入すなわち国民負担は減少する。
破綻処理をしなければ、国民の税金3兆円分が、銀行への返済に充てられてしまう。
ただ、実際には、諸富さんのお話にもあったように、
金融機関は、融資から社債への切り替えを進めているから
破綻処理して金融機関が受けるダメージは減少つつある。
ならば、直ちに破綻処理をして
『新生東電』を誕生させるべき、と言うのが朝日の結論である。
そして、破綻処理後の『新生東電』の社長には、金子さんは孫正義氏を推しているそうだが、
小泉純一郎氏を待望する声もあるようだ。
詳細については、週刊朝日11月22日号をご覧いただきたい。
(ネットの電子書籍の店舗で、立ち読みできる所もあるようです)
『東京電力分社化案は何が問題なのか』
11/13 NHKラジオ 金子 勝さんのお話の要約です。
自民・公明両党が、除染・廃炉などに国が資金を拠出できるように、という提言を、
安倍首相に提出した。
この中には東京電力の分社化が触れられていて、
原発事故処理を専門に行う会社と、電力事業を行う会社に分け、
その上で、廃炉・除染事業に国が税金を投入する、と言っている。
分社化案として、『社内分社化』『完全分社化』『独立行政法人化』の3つの選択肢を示し、
どれかを選べと言っている。
そこには東京電力の『破綻処理』という選択肢はない。
東電の原発事故処理に『破綻処理』という選択肢などは、まるで無いかのような、
間違った印象を与えている。
原発事故処理の問題の本質は、
賠償と除染の費用10兆円を、誰が、どのように負担するのか、
そして、どうすれば、国民負担を最少化できるのか、にある。
それなのに、提言の3案では、
いずれも、株主責任も、経営責任も、貸し手責任も問わず、
国民だけが『税金』と『電気料金』でズルズルと負担を強いられることになる。
かつての不良債権問題とソックリである。
提言の内容を細かく見ていくと、まず事故対策費については、
株主、銀行、経営者は責任を取らないまま、
経産省は原発の廃炉の会計ルールを変更して、省令ひとつで公聴会も開かずに、
福島原発の廃炉費用を電気料金に上乗せできるようにしてしまっている。
次に除染については、
セシウム回収型焼却炉の設置等、有効な手段はお金がかかるので回避し、
安価にできる中間貯蔵施設に無理やり貯える方式をとろうとしている。
これでは、中間貯蔵が最終貯蔵になってしまう可能性が高いので、
地元が反対するので設置場所が決らず、よって除染も進まないことになる。
また、この中間貯蔵施設の建設費1~2兆円を賄うために、
不足する場合は、電源開発促進税を増税して、電気料金に乗せようとしている。
つまり、提言にある東電分社化案は、
経営者・株主・貸し手の責任を問わないまま、
汚染水対策を含む福島第一原発事故の廃炉費用も除染費用も、
電気料金と税金にズルズルと乗せていって、国民負担を膨らませるだけである。
東電の経営や賠償負担のありかたを変えるには、
原子力賠償支援機構法(原賠機構)の見直しが必要である。
自民・公明両党は、東電を破綻処理した場合、
東電が発行した4.4兆円の「電力債」が紙屑になり、金融市場を混乱させるから、
民間企業としての東京電力を残すべきだ、という理由を挙げて、破綻処理に反対し、
東電を温存させようとしている。
しかし、今や、東電を民間企業と呼べるのだろうか?
すでに東電には、1兆円の公的資金が投入され、
また原賠機構からは3.9兆円の交付金が認可され、
合計5兆円もの公的基金が入っているのである。
東電は、
原賠機構と協議して作った経営再建計画の下にある事実上の国家管理企業である。
電力債の処理も、国会の立法次第でどうにでもなるはずである。
例えば、電力債を「新会社」が引き継ぐ方法もあるし、
国家が『政府保証をつける』と約束してもいいだろう。
もし新会社が債務を引き継げば、
発電所の売却をしたり、新会社の株式を売却しても
賠償・除染費用の支払いが不足するだろう。
そこで、エネルギー特別会計の原発促進予算を削って
事故処理費用に年間2~3千億円を集中的に投入させる。
また、六ケ所村の「核燃料サイクルル事業」を中止し、
そのための積立金3.5兆円の一部と、電気料金に上乗せしている再処理料金から、
年間2~3千億円のお金を出して、賠償や除染費用に充てればよい。
このような抜本的な対策を打つ事こそが、国民負担を最少化する道である。
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『国費投入によるう東京電力救済でよいのか』
11/12 NHKラジオ 諸富 徹さんのお話の要約です。
政府は、昨日、正式に自・公両党の提言を受けて、
福島第一原発事故の事故処理費用について、
これまでの東京電力負担から、国費投入つまり国が負担するという方向へ、
方針転換すべく、その見直しに着手した。
この方針転換の背景には、
東電の経営が事実上破たん状態にある、ということが明らかになった事がある。
報道によると、東電は今年の2月の時点で、
国が立て替えた除染費用404億円の内、2割に満たない74億円しか支払っていなくて、
しかも、それ以上の支払いを困難だという理由で拒否しているという事が明らかになった。
会計検査院の報告によれば、国が立て替えている約5兆円と見積もられる賠償費用を
東電から回収できるのは31年後になってしまうらしいのである。
原発の事故処理にかかる費用というのは、大きく四つに分けることができる。
一つは賠償、2番目に除染、3番目に中間貯蔵施設、4番目に廃炉・汚染水対策になる。
これらの総費用は約10兆円にも上ると見られていて、
現行法の枠組みでは、すべて、事故原因者である東電が負担することになっている。
これらをすべて回収できるのは、半世紀後以降という事になってしまって、
事実上の破綻状態であるという訳である。
こういう状況では、銀行からの融資継続も困難となり、東電は命脈を断たれるという事になる。
このことから、東電は『もはや、これらの費用を負担できない』として、
経産省に全額免除を求めているのであるが、
このような事情が、今回の政府の方針転換の背景にあるのは間違いない。
自・公両党の提言の内容で最も重要なポイントは、
『東電が事故処理費用をすべて負担すべきだ』としていたこれまでの方針を転換して、
国費投入、つまり税金で負担する方向を打ち出したということである。
具体的には
第一に、賠償はこれまで通り東電負担とする。
第二に、除染については、計画済みの除染については東電負担とするが、
追加除染については、国費負担とする。
第三に、中間貯蔵についても国費負担とする。
第四に、汚染水対策には、(既に決っているが)、国費投入とする。
要するに、賠償を以外はすべて国費投入で行うということになる。
環境行政の費用負担は汚染者負担が原則で、
環境被害を引き起こした原企業が、賠償や関連費用を含めてすべて負担する、
というルールになっている。
水俣病の原企業であるチッソも、ルールに則って、これまで賠償費用をすべて負担してきている。
これは社会的公正に適うだけでなく、企業に事故防止のインセンティブを与えているとも思われる。
この原則に則ると、賠償費用以下総ての費用は、原企業である東電が負担すべきであるし、
また、払い切れない場合は、国費投入ではなく破綻処理をすべきである。
その上で、銀行・株主にも、それぞれ貸し手責任・株主責任をそれぞれ取らせて、
発電所を含めた東電資産の売却を行って、
それで得た現金で、これらの費用が支払われるべきである。
あらゆる手を尽くしたが、どうしても費用が賄えないという場合に、
初めて国費投入が議論されるのが筋道ではないだろうか。
自・公両党の提言は、これらの努力を東電に求めておらず、
誰が見ても、東電の破綻回避のための救済、というふうに見えるだろう。
『事故を起こしても、国費で救済される』となれば、電力会社のモラルハザードを助長しかねない。
ただ、実はは破綻処理にも問題がある、というのが悩ましい点である.
それは、第一には、
破綻処理は、株主と銀行に責任を取らせた上で企業を再生を図れるメリットがあるが、
(JALではそのような方法で行われた)、この意義が実際は失われつつある。
なぜなら、銀行からは、『無担保銀行融資』という形でこれまで資金供給されて来ていたが、
それが『一般担保付き社債』というものに転換されつつある。
破綻処理の際の弁済は、優先的に社債に対して行われる事になっているので、
この事から、東電が仮に破綻処理されても、
銀行は優先的に資金回収ができて、損失を被らないようになりつつある、のである。
第二に、
仮に破綻処理を経て東電の資産を売却しても、費用の総てを賄えない時は
結局、国費投入せざるを得ないという問題もある。
最後に、
国もこれまで原子力政策を推進してきた責任があるということである。
結局それで、条件付で、何らかの形での国費投入をせざるを得ないということになる。
しかし、今回の自・公両党の提言のように、
なし崩しで国費を投入して東電を救済する、ということでは、納税者の納得は当然得られない。
仮に国費を投入するのであれば、むしろ廃炉・汚染水対策こそが、
国費を投入しても国が責任を引き受けて取り組むべき重要な事業だと言えよう。
東電がその当事者能力を失っているから、東電の大胆な再編も必要になる。
いま『東電の社内分社化』が議論されているが、
これは東電の単なる生き残り策、延命策であって、いかにも中途半端である。
今後は、原子力規制委員会が、どれだけ『しっかり判断していくか』にもよるが
老朽化原発(40年以上経った原発)、活断層の直上にある原発、等々が、
規制委員会の判断により、廃炉を迫られて行くということになる。
つまり、いずれ廃炉が本格化する時代に入っていくわけで、
それを見据えて、国が主導権を取って廃炉・汚染水対策を推進していく必要があるだろう。
そのためには、東電から廃炉部分を完全に切り離して、
『廃炉・汚染水対策の専門会社』を創設するということも考えられるべきである。
廃炉は東電だけでなく、総ての電力会社に関わってくることであるので、
責任の程度に応じて、国、東電そしてその他の電力会社が費用負担して、
海外と全燃料会社から最高の技術と人材を結集して課題の解決に当たって行くべきである。
他方で、東電には、賠償と除染の負担を徹底して行ってもらうことである。
賄いきれない場合は、場合によっては、
発電事業を売却させ、それで得た現金で弁済して行くことを求めるべきである。
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『99%のための経済学を求めて』
11/5 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。
今日、経済学は誰のためにあるのか?、という厳しい問いかけが世界的になされている。
一握りの富裕層つまり 1%の自由のための後付けの経済学理論ではなくて、
圧倒的多数の庶民つまり99%の人々の生きる・働く・暮らすという、
人間丸ごとの豊かさや幸せをどう実現していくのか、
それを追求する全く新しい経済学が 『99%のための経済学』である。
今日主流の新古典派経済学とは次元の違う、
具体的、現実的かつ高度な理論体系に裏付けられた
社会的歴史的経済学が、生まれつつある。
日本で一番早くこの『99%のための経済学』のための研究に取り組んで
すでに大きく貢献して来られたのが、新潟大学経済学部教授の佐野誠さんである。
佐野教授は、ラテンアメリカ研究の権威として世界的に著名であるが、
今回、世界史的な視野から日本の現実を分析した
『99%のための経済学』の教養編と理論編を前後して出版された。
新評論という、利益追求でなくて社会的有用図書に全力集中する、高い志の出版社からである。
佐野さんは、たくさんの新しい言葉を世界に発信し続けてきた研究者である。
例えば、後述する『新自由主義サイクル』とか、
『共生経済社会』、『日本のアルゼンチン化』等々、挙げていけばきりがない。
ちなみに、多くの日本人が、今では普通名詞のように使う『おまかせ民主主義』という言葉がある。
これも本を正せば、佐野さんが、アルゼンチンでの『委任型民主主義』、
(これが実は同国に深刻な危機を招いたのであるが)
これを警鐘の意を込めて日本に紹介する時に始めて使ったのが、
『おまかせ民主主義』という言葉であった。
このように、
ラテンアメリカその他世界を凝視し、一転して日本の足元の地域社会へと光を反転させて照射する、
あるいは逆に、日本での現実を世界に当てはめて何が見えるのか、
そういう研究の在り方をさして、佐野さんはこれを『往還型知研究』と命名して自ら実践されてきた。
例えば、「チェルノブイリ原発事故の詳細を知って、得られた教訓を福島に」と、
そういうように往還させていくということである。
現実社会の過酷な矛盾と真正面から向き合おうとする人は
ぜひとも、この『99%のための経済学』に学んで欲しい。
「ここに光がある!」と、強く皆さん方に呼び掛けたい。
さて、今朝のお話しの核心部分に入るのであるが、
佐野経済学にいう『新自由主義サイクル』とは一体何なのか、概要を説明したい。
一般に景気の変動(好況・不況を繰り返すサイクル)を、ケインズは市場の欠陥と定義付けた。
それは、モノやサービスの需要と供給の不均衡が景気の変動を生み出す、ということで、
これが一般的な意味での景気のサイクル(景気循環)と呼ばれるものであった。
しかし、佐野経済学では、こうした一般的な景気循環の時代は、
今日のグリード(強欲)な マネー資本主義、あるいはグローバル化の進展する世界では
もはや、古典的な単なる図式モデルにすぎなくなってしまった、としている。
それで、現実には何が始まっているのか?というと、
それとは全く本質を異にした新たな景気循環が、世界経済を覆うというステージに入ったという学説である。
それは一体何か?、どのようなサイクル(景気循環)なのか?、を明らかにすることによって
今日困難を強いられている99%の人々の置かれた位置というものが、
くっきりと目に見えるようになると説いている。
そもそも、なぜ、『1%の超富裕層対 99%の貧困層とその予備軍』
というように社会が分断されてしまったのか?
その由来が、佐野経済学の先ほど話したような『往還型研究』によって、
初めて、深く経済学の理論として明らかにされたのである。
新自由主義サイクルは、次のように示すことができる。
まず
金融自由化、資本自由化、規制緩和といった市場開放の下、
少しでも国内に景気のプラスの指標が兆すと、海外マネーがどっとなだれ込んでくる。
そして容易にバブル化してしまう。
すると
今度はこれを抑制するために、公的な介入が行われる。
それで景気がちょっと下降に転じると、入ってきた海外マネーがたちどころに外に流れ出す。
そして景気は落ち込む。
そうすると、
それを食い止めるために、(実はここが曲者であるが)、必ず公的介入が始まってしまう。
佐野経済学では、このステップを『補整』と呼ぶが、これが始まってしまう。
この『補整』のステップで、社会的歪みが拡大して、社会統合は崩壊へと進んでいく。
これを繰り返す循環を、新自由主義サイクルということになる。
ケインズの古典的モデルとは大違いである。
佐野さんの著作では、七つのステップを示した詳細な概念モデルが示されている。
こういうことから、アベノミクスも、
新自由主義サイクルの中の『補整』という一つのステップにすぎないことが明らかである。
行き着く先を読み解く、予測することが、こうして可能になるのである。
産み出される矛盾も、まだ深くなって行くことになるであろう。
佐野教授の経済学はこれまで話ししてきたほかに、
第一に、新自由主義サイクルから、いかにすれば脱出できるか、
第二に、新自由主義サイクルにも、アルゼンチン型と日本型では違いがあるが、その詳細な分析、
等々が説かれている。
総じて、『99%のための経済学』は、
米国からの翻訳経済学ではない、
日本で生まれた、日本から世界に発信する経済学として
学界においても正当な高い評価がなされるべきだと、強く強く申し上げたい。
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