ジョージ・いまさきもり の アンダンテ・カンタービレ

晴れた日は農業とウォーキングとライカ、雨なら読書と料理。
そして毎日ラジオがお伴です。

上昇に転じた消費者物価指数を考える~7/30 NHKラジオ 内橋克人さんのお話

2013年07月30日 | ラジオ番組

『上昇に転じた消費者物価指数を考える  
   7/30 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。    

(MC)身の回りの商品を見てみると、だんだんと値段が上がり始めたという印象がある。
デフレ脱却を目指す政府は、
これを、デフレからインフレへと流れが変わり始めたと歓迎しているようであるが? 

先週の7月26日に、総務省は、今年6月の消費者物価指数(CPI)を発表した。
これまで下落を続けてきた消費者物価指数が 1年2カ月ぶりにプラスに転じ、
前年同月比で0.4%の上昇を示した、ということである。
       (この指数には季節変動の激しい生鮮食品は含まれていない) 

異次元の金融緩和などで 、2015年度末までに物価を2%引き上げようと
懸命にデフレからの脱却を図っている政府は、
MCさんが言われたように、今回の消費者物価指数の上昇を歓迎しているように見える。

過去15年の長きにわたって続いた長期デフレに、いよいよ転機の時が来た、と
そういった歓迎の空気が生まれているように見受けられる。
しかし、、直接マイナスの影響をこうむる一般消費者はどうでであろうか。
そこで今朝は、なぜ物価が上昇に転じたのか、そのわけを三つほど解明しておきたい。 

第一に、まず円安が進んだことである。
円の相場は今年初めに比べただけでも、10%も下落している。
勿論、政策の効果によってこうなった円安である。

食糧から燃料・鉱物資源まで、海外に依存する度合いの高い日本は、
円安になると、輸入価格が膨れ上がって、
それが国内市場での販売価格の引き上げにつながっていくわけである。 

例えば豆腐・納豆について言えば、その原料は大豆であるが、
大豆の自給率はわずかに6%で、残り94%は輸入に頼っている。

今、その輸入大豆の価格が 30 %も跳ね上がっている。
その他の食品、生活用品も同じ理由で小売価格が上がり始め、
つれて一般消費者の生活にマイナスの影響が出始めた、ということである。

第二には、電気料金の引き上げが大きかったということがある。 

家庭用電気料金は、昨年同月比で 9.8%、およそ1割も高くなっている。
発電用燃料を輸入に頼る割合が高いから、このようなことになっている。
ガソリンも、また、6%上昇している。
電気代を始めわずか上位の10品目が、
全体の物価上昇をけん引してしまった、という格好になっている。 

3番目に、競争の激しいデジタル製品の分野で、
業界がこれまでの激しい値下げ競争に歯止めをかけ始めたのも、
消費者物価を引き下げる重し(ウエイト)を減らした、ということになる。 

このような要因による物価指数の上昇であるから、
『円安・株高で消費者の購買力が高まって、
それで物価も上昇して、やがて経済の活性化につながる』とか、
『デフレ脱却へ向けての良いインフレが起こりつつある』とか、
そういうふうに簡単に歓迎するわけにはいかない、のである。
消費者も、その点を鋭く見抜くべきではないかと指摘しておきたい。 

(MC)モノの値段が上がるだけで、働く人の賃金が増えないのなら、
生活は大変なわけであり、本当の意味での景気回復も望めないのではないだろうか?

最近百貨店で高級品が売れているとか、高級レストランで高額メニューが人気だとか
株価上昇=景気回復といった式の誤ったイメージが刷り込まれている。

しかし、株高で恩恵を受けた家計
というのは、ごくごく限られた一部の階層だけである。
選挙期間中も
『そのうち働く人々の賃金も上がりますよ!』、
『恩恵が皆さんに滴り落ちてきますよ!』、
と、演説を繰り返した候補者の言葉を耳にした人がたくさんいたことであろう。 

しかし、実は、そう簡単にはいかない構造が出来上がってしまっているのである。
現実には。物価上昇に対応できるだけの賃上げは行われていない。
これからも大きく期待することは出来ないのが現実である。 

だから、このまま消費者物価の上昇が進むと、
消費者、一般国民の所得は逆に物価上昇分だけ減ってしまう、という事になりかねない。 

ここで、各種調査の数値を紹介しておくと、
勤労者賃金は、長期継続的に低下を続けている状況である。
また、厚労省が発表した数字でも、
昨年の給料(賞与・残業代込み)は、1990年以降の最低を記録している。 

賞与(ボーナス)が上昇したと言うが、それは一部の大企業で、それも正規雇用の人に限られている。
この傾向に大きな変化は見えていない。 

また今回の株価上昇の恩恵を受けた家計は別として、
家計から企業への所得移転の構造は変わらず続いている。
例えば預貯金で言えば、『金利ゼロ』が常態化してしまっている。
いずれにしても、需要が盛り上がってくるという状況にはなっていない。 

(MC)先の参院選挙では政府与党が圧勝したが、景気回復に期待する民意は高いと思われる。
これに、どう応えていくべきだろうか? 

人工的にインフレを起こす『リフレ理論』に乗っかった安倍政権の経済政策というのは
まず、サプライサイドを重視する、つまり企業の利益を増やすことを最優先している。
企業の業績が良くなれば、結果として働く者、消費者、生活者の所得が増える。
そうすれば、おのずと需要不足も解消して、
再び活力ある日本経済を取り戻せる、というアプローチの仕方である。 

しかし、こうした突出した供給サイド優先の経済政策は、
遅かれ早かれ、いつか高いハードルが立ちはだかってくる。
何よりも、グローバル化が進んでいる現在、
世界的に供給過剰の構造はますます拡大しつつある。
国内の需給ギャップも、依然としてGDPの2.2%(今年1~3月期)であり、供給過剰のままである。
つまり、大きなデフレ要因は依然として存在していて、解消したわけではない。

だから、
『働く者、生活者の視点に立った脱デフレとはいったい何なのか、
そこから出発する新たな経済政策を生み出すこと』こそが、
真に国民の期待に応える道と言えるのである。
繰り返しになるが、
消費者物価指数の動向一つでも、私たちは鋭く見抜く目を持って臨むべきである。 

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働き方の多様化とは何か~7/16 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。

2013年07月16日 | ラジオ番組

『働き方の多様化とは何か  7/16 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。   

(MC)多様な働き方とか、雇用・労働の多様化、などといった言葉がよく使われるが、
今朝の『働き方の多様化』とというテーマには、どういう意味合いが込められているか? 

一言で言えば、働き方の多様化と働かせ方の多様化、は違うということである。

先週末の7月12日、総務省が2012年の就業構造基本調査の結果を発表した。
これは5年に一回、広範囲にわたり、行われているのもので
今回の調査は、昨年10月に全国を対象に実施されたものであり、
『今、日本人はどのような環境で働いているのか』、詳しく読み取ることができる。 

今回の調査結果で最大の特徴は 、
パート・派遣などの非正規で働く人の数が、2043万人と、初めて2000万人を突破し、
雇用全体に占める割合も、 38.2%、つまりほぼ4割程度に達している事である。
20年前に比べると、非正規で働く人の数は、ほぼ2倍にまで増えたことになる。 

調査結果の特徴を、そのほか三つほど挙げておきたい。
第一に、正社員だった人が転職すると、その内40%以上という高い割合で、
次の転職先では、非正規で働かざるを得なくなっている、という現実である。 

第二に、15歳~ 34歳の若者層では 、3人に1人以上の人が非正社員である。
高校や大学を卒業する時の厳しい就職環境を引きずったまま、
働き続けざるを得ない人が増えてきた。 

第三に、年齢別で見て、非正規の割合が最も高くなっている層は、
55歳以上の人たちで、55.8%が非正規で雇用されている。 

年金の支給開始年齢が引き上げられ、定年を迎えた人も働かざるを得なくなっている。
その場合、正社員から非正社員として同じ職場に再雇用されたり、
他の職場で非正社員として働かざるを得なくなる。
そういう勤労者が増えているという厳しい現実を示している。 

同じように働いても、正社員と非正社員では、
単に賃金格差にとどまらず
雇用保険や福利厚生の手厚さの違いなど、全般的な格差は極めて大きいものがある。 

正社員以外の働き方が増える事をもって『働き方の多様化』とするような考え方が、
いかに、働く人の現実から遠い議論かが、改めて分かるであろう。 

(MC)本来の意味の『働き方の多様化』にふさわしい、
雇用や労働の在り方は、どういうものになるであろうか? 

私(内橋さん)は、『職無くば、人間の尊厳もない』と繰り返し唱えてきた。
働くとは、すなわち、人間がどう生きるのか、という問題である。 

世界的に見て、この雇用の柔軟性という言葉は、二つの異なった意味で使われて来た。
まず第一には、米国・英国では、
『雇用者が被雇用者を解雇しやすいシステムにする』という意味に使われることが多い。
これを、アングロサクソン型モデルと言う。 

しかしそれだけではなく、2番目に、同じヨーロッパでも大陸側では、全く別の考え方である。
それらの社会では基本的に、
『働く人々の保護を前提とした社会システムというものを、歴史的にどう築いて行くか』
という事を中心に据えて考えている。
だから、労働の柔軟性というと、それは労働時間の柔軟性、
つまり、『働く人にとっての、働き方の柔軟性』という意味で使われている。
雇用環境が厳しくなったといわれる現在も、この考え方は少しも変わっていない。 

日本ではこの二つが混合されて、整理されないままに、改革の名において
『アングロサクソン型モデルを念頭に置いた働き方の多様化』だけが続けられて来たといえる。 

そうではなくて、学ぶべきは、上述の2番目(後者の方)であると言いたい。
言ってみれば、正社員として働くのは権利であって、
様々な働き方は、働く個人それぞれの、都合に合わせた選択である、という考え方である。 

例えば、一頃よく話題となった『オランダモデル』であるが、その核心は二つある。
第一は、あくまで同一労働同一賃金を前提にしして、
労働時間の長短による差別をなくして、賃金は均等割りしている。
いわば、長時間労働を正社員と、短時間労働制社員の2種類しか労働は存在しないのである。
均等待遇だからこそ、勤労意欲が高まるという循環である。 

日本で言われる『パートタイマー』について、
『そもそも、そういう呼び方(言葉)、あるいは概念そのものが可笑しいですよ』
と、私は聞かされた事がある。 

企業にとって、
当面の賃金人件費をどう切り下げるのか、という次元でとらえるのではなくて
働く人にとって
生きがいのある人生になるように、働きがいのある仕事にするようにするには、
どのような労働のシステム、社会的システムが可能か
と、いう視点において社会的合意の形成が進められてきた。 

オランダには、著名な『ワッセナー合意』がある。
1982年に政府、労働組合、使用者の3者間で
『雇用確保を最優先するためになされた自主的な賃金抑制の合意』であるが、
その『ワッセナー合意』に、すべてが象徴されていると言えよう。 

(MC)私たちの社会で、真に『働き方の多様化』を実現するには、どのようにしたらよいか? 

雇用の形態によって、労働への報酬も・雇用保険・社会保障等々、
総てにわたって、差別される事のないような制度、
例えば、オランダ型モデルとして上述したような
『均等割」というシステムを築き上げることもその一つであろう。 

労働の問題と社会保障制度がきちんとリンケージしていることによってのみ
先進国と言えるのではないだろうか。

労働とリンケージする社会制度が完備していること。
労働の形態によって、これを受ける権利が差別されてはならない。、
そいうい社会的合意を形成していく他にはないだろう。
働き方の多様化を求める事と、働かせ方の多様化を強制するという事は全く違う。
両社は截然(せつぜん)と区別されなければならない。

 

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『中国製の太陽光パネルと貿易摩擦』~7/4 NHKラジオ 十市 勉さんのお話

2013年07月04日 | ラジオ番組

中国製の太陽光パネルと貿易摩擦』
       7/4 NHKラジオ 十市 勉さんのお話の要約です   

中国は、太陽光パネルの生産では、世界シェアの64%を誇り、
しかも、低価格を武器にして世界中に、輸出・販売している。 

欧州のEU加盟国も、総額で、210億ユーロ(約2.7兆円))中国から輸入している。
これに対して、去る6月4日に、EUの欧州委員会が
この、中国製の太陽光パネルの輸入について、反ダンピング関税を決めた。 

欧州では、太陽光パネルについては、中国製が欧州市場を席巻してしまい、
昨年4月にドイツのトップメーカー『Qセルズ』が倒産した他、
昨年1年間で20社も倒産している。 

米国は、既に昨年5月に、同様の反ダンピング関税を導入している。
政府から巨額の借入れ保証を得ていた『ソリンドラ』社が、
一昨年の9月に倒産した事がきっかけであった。
この結果、米国の、中国製太陽光パネルの輸入は、今年は1/10に激減している。 

米国も欧州も、いずれも、反ダンピング関税で、中国製を牽制している。
しかし、米国では、
中国からの輸入を締め出しても、米国内での生産や雇用は増えていない。
いろいろな形で、結局、海外から製品が入って来てしまっているからである。
欧州でも、
再エネ買取金額が増え、消費者への賦課金が大きくなり、不満の声が多い事から、
価格の安い太陽光パネルへの要望も強い。
そこで、欧州委員会は、中国製品を完全に締め出す方向ではなく、
まずは2ヶ月間、暫定的に低率の反ダンピング関税をかけて、
中国側の出方を窺っている様子である。

日本も昨年7月から、再エネの買取制度が始まり、
太陽光パネルの需要が急増している。
欧米から締め出された中国製品は、日本に向かって来るに違いない。
太陽光パネルの老舗のメーカーである、シャープや京セラにとっては、脅威となる。 

日本が再エネの買取制度を導入したのは、
多少高くなる電気料金を消費者が負担する事を前提にして、
1.クリーンで低炭素のエネルギーであること、
2.国内で雇用が生じる、
という事から、支持されて始まったことである。

総じて、
太陽光パネルメーカーは、技術革新で生産コストを下げ、
あるいは、付加価値の高い製品作りをもっと目指さなければいけない。
20年も30年もダラダラと長期間にわたって、やっと回収できるような物ではなく、
短期間の買取(賦課)で、収支尻が合うような製品開発が望まれる。
そういう製品ならば、国内で生産が出来て、雇用も生まれて来て、
再エネ買取による賦課金についても、欧州のような不満も出て来ないだろう。


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『製造業復活への道』  7/2 NHKラジオ 内橋克人さんのお話

2013年07月02日 | ラジオ番組

『製造業復活への道  7/2 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。  

『モノづくり大国』日本の先行きに不安の声が高まっている。

日本製テレビ、と言えば、世界市場の9割近くを占めたこともあるが、
それらを送り出してきた電機メーカーが、そろって苦境に立っている。
昨年から今年にかけて、とりわけ電機メーカー大手5社では
数千人単位のリストラが行われて、大きな話題になったばかりである。

かつて『モノづくり大国』を誇った日本の製造業で働く人々の人数も、
ピーク時の1992年10月には、1600万人であったが、
今や、998万人と、6割そこそこの規模にまで縮小してしまった。

それが衰退するままに時が過ぎて行くと、働く人々の雇用から生活まで、
国内経済に深刻な影響が及ぶことは避けられない。
「もう、モノづくり日本はそこそこにして、金融立国の方向に舵を切るべきだ」
という議論さえ、強くなってきている。
はたしてそうだろうか?

グローバルなマネー資本主義の危うさに疎い、そうした論調に組する事はできない。
やはり、今、私たちに問われているのは、
まず第一に、なぜ技術革新あるいは技術開発の力が衰えてきたのか?
2番目に、技術革新・技術開発の先頭に立つ開発者をどう育てるべきか?
3番目に、製造業の新しい在り方とは何か?、またどう構築し直すべきか?
こういった『モノづくり』の課題を、真剣に掘り下げて行くべきではないだろうか。

技術革新とか技術開発については、1970年代や80年代に、
優れた技術を世に打ち出してきた人達が多くいた。
そういった人達に学ぶべき事は多い。
むしろ、今は、その遺産を食って生きて来たと言えよう。

製造業の復活・復権の条件については
もう、この番組で、何度も話してきたところであるが、
今朝は特に、技術開発を先導すべき人材の育成について、話をしてみたい。

すでに世間の記憶からは遠くなってしまったかもしれないが、
石油ショックが日本を見舞ったのは 1970年代半ばのことであった。

その当時、私(内橋さん)は、『匠の時代』というシリーズを書くために
全国の技術現場を、くまなく歩いていた。
昭和恐慌の再来が真剣に心配された、危機の時代であった。
その荒い河を渡るためには一本の杖が必要である。
その杖が技術開発のほかにはない、と私は考えたからである。

例えば
1.いったい新幹線はだれが可能にしたのか?
2.ぜんまい時計に代わるクォーツ腕時計が、時計王国スイスに1年半も先駆けて、
 戦時中の1疎開工場で誕生したのであるが、それはなぜ可能であったのか?
3.海水を真水に変えて飲料水にできる『逆浸透膜』というのがあるが、
 これを可能にした『超極細繊維』が、どのような苦心を経て生まれた物なのか?

今なお生き続けるそれら先端技術の、
開発を先導した人々の職場には共通する点がある。
それは、言わば先駆者の条件である。

第一に、
その職場には必ず、『ルーツ人間』とも呼ばれる人が存在していた。
不思議なことに、優れた技術開発に成功した現場には
必ず草創期の工場や研究所に、強烈な哲学を植え付けた先人が存在していた。
多くの場合、そのルーツ人間はすでに引退していて、
研究所や工場でその姿を見ることはないが、
しかし、確かにルーツ人間を実感することができた。

昼夜の別なく、開発に明け暮れる現場の技術開発者の中で
口から 『○○イズム』といった言葉が必ず飛び出してくる。
「ある優れた先輩の開発者からは、
『会社に入って3年、その間の上司がそれ以後の総てを決める』と言われた」とか、
「当時、○○さんの○○イズムがが実に強烈だった」といった言葉を
あらゆる職場で聞いた。

2番目に
部下が、アイデア・発想・ひらめきを持ち込むと、
「うん、それは良いね」と言い、絶対、「それはダメだ」と否定しない。
まず、やらせてみよう、という事であった。
『一番手の枝からしか、一番手の芽が生えることはない』
と励ますリーダーが必ず存在していたのである。

3番目に
現場で行われる技術開発には、異なった種類の技術(異種技術)が混交していた。
敗戦後、航空機の開発技術者が国鉄技術研究所(当時)に移り、大きく貢献している。
あの東海道新幹線も、自励振動いう現象の問題を解決しなければ
誕生する事は望めなかったであろう。
また、敗戦直後の鉄道事故の原因究明にも、彼らの技術が貢献している。

いずれも、今、開発の現場から、次第に失われつつある物ものばかりである。

日本が誇ってきたモノづくりの復権には、今、何が求められているのか?
例えば、
半導体で言えば、日本は大量生産に適している『DRAM』に傾斜していた。
つまり、量産効果にばかり地道をあげるやり方であった。
大量生産をすれば、それに見合って生産コストが下がって、
市場に優位に立てる、という事である。

一方、元々半導体技術を生み出した米国は、
日本との価格競争では日本に太刀打ちできなくなり、
より付加価値の高い『頭脳を持った半導体』、例えばMPU、CPUなどに、
方向変換してしまった。
無論、知的所有権は、しっかり押さえてしまっている。

日本製造業の復権を本当に望むのであれば
今ほど技術開発の現場の再構築が求められている時はないと言えよう。
  

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