ジョージ・いまさきもり の アンダンテ・カンタービレ

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そして毎日ラジオがお伴です。

岐路に立つ日本経済、回顧と展望~12/31 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約

2013年12月31日 | ラジオ番組

『岐路に立つ日本経済、回顧と展望』   
           12/31 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。     

今年は、元旦の1月1日朝の ビジネス展望で、私がお話ししたが(記事はこちら)、
今年最終回の今朝も、また私の番という巡り合わせとなった。
1年の初めと締めくくりということで、
日本経済の今、そして新年の見通しについて率直に話したい。 

昨日30日、東証の大納会で、日経平均株価は、またまた今年の最高値を更新し、
昨年末の終値に比べて、1年間で 56.7%もの値上がりとなった。
この高い上昇率は41年ぶりということで、
大納会に出席した安倍首相の”ご機嫌振り”がテレビを通じて放送されたばかりである。

これをすべアベノミクス効果という解釈が、今や社会通念とまでなってしまった。
前回のこの時間に紹介したような、
経済学の泰斗、伊東光晴さんのように、これに異論を唱える論者の声に(記事はこちら)、
耳を傾けようという向きは、さらに少数派になってしまうかも知れない。 

しかし歴史の真実が姿を現すまでには、いつも一定の時間が必要である。
あの80年代後半のバブル膨張の時代、
その真っただ中で、これに警鐘を鳴らした人がどれだけいたであろうか?
90年代を迎えて初めて、人々はその幻想性と代価の大きさに気付かされたということであった。
それは、『経済変動の細部を、実証的に読み解いて、未来を予測する』、
という事のためには、相応の知識と勇気が必要だということを教えている。

さて、1年前の今年 1月1日、私は次のようなことを話した(記事はこちら)。
第一に、
発足早々の安倍政権は、まずは即効性のある政策を重視して景気対策に全力を集中し、
国民的な議論の分かれる国家的テーマについては、
少なくとも7月の参院選挙が終わるまで先送りするだろう。
これを私は『政治の経済化』と呼んできた。、政治がすべて経済に集中する、という意味である。 

2番目に、
参院選の後、国民の意思と政治との乖離をもっともっと小さくしていく努力を怠れば、
安倍政権の危うさというものが露呈して、議会制民主主義が危機に立つ、という警鐘を鳴らした。 

3番目に、
発足早々の安倍政権、早速始まった円安・株高で期待感が高まって、
高い内閣支持率を得ていた。
しかし総選挙の結果でみれば、自民党の獲得票数は、
小選挙区では、有権者数からみれば、25%足らず、比例代表では、17%足らずであった。
こういう中で”決められる政治”が暴走すると、民意とのねじれが際立つようになるだろう。
 
以上のような内容のことを話したが、1年後の今、
こうした予測を修正する必要は全くないと思っている。 

さて、この年の瀬をピークにして、日本経済は岐路に差し掛かったと私は考えている。
”政治の経済化”から”経済の政治化”へ分岐点だと言いたい。

それは何故かと言うと、
まず第一に、実体経済への波及がほとんど見られないということである。
円安・株高は進んだが、実体経済は何も変わっていない。

前回にも伊東光晴氏の論説を紹介したが、
異次元の金融緩和ということで、マネタリーベースは急増させたが
市中に流通するお金は、ほとんど増えていない。
例えば、4月末と11月末を比べてみると全く、同じ89兆円である。
その間どんどんお金を供給したはずなのであるが、市中に流通するお金は同じである。

日銀の当座預金口座残高は 、その中の冷凍庫に眠ったままで、
企業が新規の借り入れを必要としていないからである。

2番目に、消費についてであるが
消費というのは、ストック型消費とフロー型消費の二つがある。
株とか土地など、資産価格の上昇・増加によって増える消費がストック型消費であり、
これに対して、月々の給与所得などからされる消費がフロー型消費である。 

今はしきりに”高額商品が売れている”と報じられて、盛り上がってるように見える消費であるが
そのほとんどはストック型消費、
つまり、株式の値上がり益など資産価値の増加が増やす消費である。
ストック型消費は長続きしない、持続性がない、というのが経済学の定説であり、
過去の歴史の証明するところである。
一方、今、フロー型消費はほとんど増えていない。

3番目に、リフレ派の学者の方々は、
『実際に市中にお金が流れなくてもよい、
インフレ期待を高めるだけで、脱デフレの目的は達せられる』と言っている。
しかし、実体経済への実効性が一向に認められない時、
この、”期待への過剰なる期待”こそが破たんするのである。 

伊東光晴さんは、『expectation』について、
『期待』というふうに翻訳しがちであるが、期待ではなくて『予測』と言うべきだと言われている。

4番目に、
この株価上昇が、外国人投資家による巨額の買い越しによって保たれているという事実である。
日経平均株価の上昇は、15兆円に迫るファンドなど外国人投資家の買い越しによるもので、
彼らは1/1000秒という猛烈なスピードでコンピューター売買を繰り返している。
現在の特徴は、日本の個人投資家の売り越しが巨大で、
それら個人が売った株を外国人投資家が買うという構図になっている。
まさに、不安定そのものと言える。

さらに、この4月の消費税増税も、
上述した問題の上にさらに積み増しされるものである事に、注意しないといけない。 

以上、日本経済の特徴だけ述べてきたが、
成長戦略なるものの中身が、”規制緩和一辺倒、虚弱にすぎる”と、いう事が心配である。
安倍政権の本音は、
『質の高い日本の労働力を、アジア並みの低賃金で差し出すことではないか』
という批判も台頭してきた。 

経済が政治問題化する、つまり”経済の政治化”という季節の到来が予想される。
岐路に立つ、ということはそういうことである。  

来年の経済見通しについては、楽観・悲観の両論があるだろう。
しかし、安倍政権の
『まず企業が力をつければ、それが自然に国民生活の豊かさにつながる』という強い国家政策は、
これまで民主党政権が当初掲げてきた、
『国民の豊かさ第一』という政策とは、180度正反対の政策選択である。

『国益と国民益は違う』という事ことを、かねてから言ってきたが、
日本人がこの言葉を噛み締めるべき時が、
いよいよ間近に迫ってくる年になるのではないだろうか。  


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『改めて福島復興を考える』  12/25 NHKラジオ 金子 勝さんのお話の要約

2013年12月26日 | ラジオ番組

『改めて福島復興を考える』  
              12/25 NHKラジオ 金子 勝さんのお話の要約です。

12月20日に、政府は、福島の復興を加速させる新たな指針を決めたが、
この指針で、復興が加速されるなどとはとても考えられない。
政府は、事故を起こしても誰も責任を取らない東京電力を、ゾンビ状態で生き残らせる一方で、
被災者の福島県民には、自己責任を負わせようとしている、と言わざるを得ない。
何よりも、東京電力の破たん処理が先決である。

(お急ぎの方は、ここまでお読みいただくだけで充分です)

原子力災害:早期帰還に賠償金など、 復興加速の新指針

今月の20日に、政府は福島の復興を加速させるとして、新たな指針をまとめて閣議決定をした。
その概要を見ると、
まず第一に、
東京電力に 1兆円の公的資金を返済しなくてよいとしたこと、と、
原子力損害賠償支援機構からの交付金枠を 5兆円から9兆円に増額したことである。
また、福島第一原発の廃炉費用は、
経済産業省令で電気料金に上乗せしてよい、とする措置が取られた。

第二に、
5兆円と見積もられていた東京電力の除染費用を2.5兆円に圧縮する。
そのために、汚染土や汚染がれきを、丈夫な化学繊維でできた袋にに詰めて、
それらを積み上げておく中間貯蔵方式を採ることとし、その建設費・管理費は1.1兆円とされた。

第三に、
長期的な除染目標は1ミリシーベルト以下とされたけれども、
具体的な期限はなく、工程表も示されず、追加的除染の費用の見積もりもなかった。 
つまり『除染を行なわない方針』ともとれるのである。

第四に、
全員帰還の方針を転換し、移転先に住居などを建てたら補償することにした。
しかし、その賠償費用については詳細な提示はない。
帰還したら、早期帰還賠償として90万円を払うけれども、補償は一年で打ち切りである。
そして、帰還後は各人が個人線量計を使って、被ばく量を1ミリシーベルト以下に管理せよ、
ということ である。

あいも変わらぬ責任逃れ体質

かつて2006年12月の国会で、安倍総理は『全電源喪失は起こらない』と、答弁をした。
その答弁など、すっかり忘れているようである。
国会の答弁の責任すらとらない首相である。
つい最近では、『汚染水は完全にコントロールされている』という発言を改めないままで、
その事実を隠すように、国を前面に出そうとしている。 

つまり今度の施策も、東京電力の救済措置を採っているのにすぎない。 

原発事故後に、東京電力の経営者も株主も貸し手も責任を問われていない。
それにもかかわらず、1兆円の公的資金を返済しないでよい、というのである。 

そして2兆円以上と伝えられる原発の事故処理あるいはを潜水対策を含む廃炉費用を
経済産業省の省令だけで電気料金に乗せられる、というのである。

さらに、社債を含めて8兆円弱の借入があるのに
東京電力を、生かさず殺さずの状態で生き残らせて、
9兆円もの公金を返済できる見込みが立つのであろうか。

これらすべては国民の税金が電気料金の訳で、
つけの先送りというのは、かえって国民負担を増大させてしまう。

福島放射能汚染は、戦後最大の環境問題

福島の放射能汚染というのは、戦後最大の環境問題である。
東京電力を生き残らせるために、このような安上がり方式の除染を採るのであるが
これをもって、『福島の復興を加速させる』と言ってよいのであろうか?
むしろ、福島の復興を遠のかせてしまう、と言うべきであろう。

現在、福島県内では汚染物質が 一万数千箇所で野積みになっている状態である。
福島県民としては、
政府の言う中間貯蔵施設に持っていってもらい、
目の前から汚染土が無くなって欲しいと考えるのは、ある意味では自然なことである。
放射線の管理が杜撰なわけだから、なおさらなその思いは強いであろう。

政府は、30年後に他の地域に『最終処分場』を造って持って行くので
中間貯蔵施設だと言っている。
しかし、最終貯蔵施設になる可能性が極めて高い。

なぜなら、
これまでも放射能汚染の疑いがあるという理由から
東日本大震災の被災地域のがれきは受け入れられてこなかった。
また、政府は、使用済み核燃料の最終処分場を造る、と言って来たけれども
何十年たっても、その施設の受け入れ地域が出て来ていない、というのが現実である。

最終処分場になる可能性が高いとすれば
東京ドーム20個分にもなる2000万トンの汚染土を積み上げた『ボタ山』を想像してみるがよい。
最終処分場を福島に建築すれば、それが永遠に汚染のシンボルになってしまう。
風評被害も終わらなくなってしまうだろう。

しかもその中間貯蔵施設というのは、『民間企業による環境アセスメントをしない』と環境相は明言している。
実際の運用は 、
PCBの処理のための事業会社法で作られた、日本環境安全事業というところが担うことに決まっている。
集中豪雨で流出してしまうような危険性が高くて、汚染水問題の二の舞いになりかねないことも懸念される。

汚染物質の濃縮処理と隔離が有効

日本は、水俣、富山、四日市、新潟(阿賀野川)と、深刻な公害被害を繰り返してきた。
その経験から言えることは、
環境汚染を取り除くには、汚染物質の濃縮処理と隔離が必要であるということである。
福島も、放射性物質の濃縮・隔離が重要になってくるということである

日本には、セシウム回収型焼却炉という技術がある
すでに郡山でも実証実験済みであるし、飯館村でも実証実験が始まった。
この機械の利点は、
汚染された土や草木を1000℃以上で焼くので」、セシウムが気化して、
その後に低温化して、分離濃縮することができることである。

つまり、汚染された土からセシウムが取り除けるので、その土をリサイクルすることができる。
分離されたセシウムは、防水を徹底した保管施設で長期保管して減衰を待つことになる 。
この技術は、ダムやため池などの底の汚染土壌の処理にも必要になってくる。

もっと良いことに、セシウム回収型焼却炉を森林バイオマス発電につければ
再生可能エネルギーを生み出すとともに、漁船費用も節約することができる。 
もちろん作業員が被ばくしないように、全自動の機械で伐採や運搬をすることは必要である。 

早期帰還を促すより、環境回復が先

以上述べたように、優れた除染の技術が 既に存在している。 
ところが、政府も環境省も東京電力も『費用がかかる』からという理由で、
この優れた技術を採らずに、安上がりの方式を選択しようとしている。

環境省は公害裁判を契機に出来たのであるが、
福島の環境回復の責任を放棄して、
4大公害以前の日本に戻そうとしている、と言われても仕方がない。

いま一番重要なことは何かといえば
原発事故の被害にあった福島県を中心とする人々の立場に立つことである。
帰還か移転か、当事者が決められてようにすることである
そのためには、福島の環境回復が前提となる。
環境を回復させない限り、帰還しようとしまいと、被害者の苦しみは続くことになる。

ところが政府は、
除染をやめ賠償金を上積みすることで、早く帰還するように促して、
しかも、被災者が地元に帰還したら、1年後には賠償を打ち切って、
被ばく線量を個人線量計で管理せよ、と言うのである。

政府は、
事故を起こしても誰も責任を取らない東京電力を、ゾンビ状態で生き残らせる一方で、
被災者の福島県民には、自己責任を負わせようとしている、と言わざるを得ない。
この20日に出された指針で、復興が加速されるなどとはとても考えられない。
東京電力の破たん処理が何よりも先決事項である。 

  
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『2013年 日本経済回顧』~12/17 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約

2013年12月17日 | ラジオ番組

『2013年 日本経済回顧』   
           12/17 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。     

2013年は、政府・日銀によって進められたアベノミクスが、
現実的な効果つまり実効性を発揮しつつあるのかどうか、
一般生活者の方も高い関心をもって注目し続けた一年であったと言えるだろう。 

専門家の間でも、アベノミクスの実効性については、様々な議論が交わされた。
しかしその多くは、
『日銀による金融の量的緩和と政府の財政措置が、株価上昇と円安をもたらした』、
という認識を大前提とした上で、
その効果が、今後、
『企業の設備投資、個人消費の拡大といった実体経済へのプラス効果となって
波及して行くのか否か』、
そういう議論のなされ方がほとんどであった。
こうした空気に乗って、高い内閣支持率が続いてきた、というわけである。

ところが、わが国経済界の泰斗として知られる伊東光晴さんが
『株価上昇も円安もアベノミクスの効果ではなく、
別の要因に基づくものであると断言できる』
と説く論考を、雑誌『世界』8月号(岩波書店発行)の誌上に発表して、各界に衝撃を与えている。 

その伊東論文は、
極めて実証的、かつ緻密な分析の上になされたものであり、
リフレ派への警鐘として十分に説得できた、というふうに思われる。
その論文の表題からして、『安倍・黒田氏は何もしていない』というものである。 

この伊東論文の要点をまとめておこう。
第一に、
黒田体制下の日銀による、異次元の金融緩和の帰結はどうだったのか?について。
異次元金融緩和といえば、ジャブジャブ市中にマネーを溢れさせる、というイメージである。
しかし実際には、日銀による貨幣供給量の増加分は、
その大部分が、各銀行が日銀に持っている当座預金の増加となっただけで滞留してしまっている。

つまり、現実には企業への融資として引き出されることなく、
いわば冷凍庫の中で眠ったままということである。
企業への融資として引き出されるならば、それが設備投資資金となり
そうなれば実体経済の活性化へとつながっていくわけである。
しかし、そうはならずに、
通常は銀行間の決済に使うのが目的の当座預金勘定の中に、
大部分は冷凍されたままだ、ということである。 

結論から言えば、
企業の資金需要そのものがない、つまり借り手企業がないのである。
これでは異次元金融緩和が、実体経済の活況へとつながるはずがない。

第二に、それではなぜ株価は上昇したのか?ということについて。
伊東さんは、ここでも緻密な分析を行って、
『株価上昇の原因は、アベノミクス以外の別のところにあった』としている。

異次元の金融緩和を決めた日銀の金融政策決定会合というのは、
今年4月4日に行われているのあるが
その数カ月前から、すでに株価は上昇に転じていて、
黒田氏の日銀総裁就任決定時のはるか以前から、
つまり、遡れば、あの衆院解散以前から
株価上昇は別の要因で既にすう勢として始まっていた、ことを明らかにしている。 

この文脈を理解するのに大切なことは、日本株式市場の特異性ということである。
伊東さんは、日本市場での株価の価格形成メカニズムというのを明らかにしていて
これを色々な分野から明らかにしているのである。
つまり、日本の株式市場での株価というのは、
主として外国人投資家のファンド・ヘッジファンドの行動によって決められているということである 。
それから、世界を視野に繰り広げられる海外投資家の分散投資の標的は
既に昨年2012年6月に、アメリカヨーロッパ市場からアジアへ、中でも日本に向かうと予想されており
2012年4月から9月まで売り越しだった海外投資家の行動が、
2012年10月を境に、つまり衆院解散以前に、もう、一転して買い越しへと変っていたということである。 

すべては政権交代とは何の関係もない動きから始まっているということで、
詳細なデータと時間的推移が示されている。 

第三に、それではなぜ円安に転じたのか?ということについて。
これも既に2011年の頃から、密かに日本政府による巨額の為替介入が行われていた、
と伊東さんは推測している。
政府短期証券を使って円を調達し、
これを為替先物のショートとロングの組み合わせといったような大変に複雑な手法を使って行った。
そして、その効果が 2012年末以降に出るようにしていた、と伊東さんは見ているわけである。 

ひとたび、世の中で何か大きな流れというものが起こると
とかくマスコミは、その流れに合う現実だけをつまみあげて、人々を納得させようとする。
しかし大切なことは、異論、つまり冷静に物事を見ている意見を、
これを例えば、『景気に水を差す』などとして排除を続けると、
思いもかけぬ別の要因で流れがひっくり返ってしまうことにもなる。

仮に、一般に信じ込まれているのとは異なった要因で経済に変動が起きている、とすれば
当然、今度は一般の通念とは異なった要因で、突然の変動が経済を見舞うことになるだろう。
対策も違ったものにならなければならないはずである。
伊東さんは、『誤った理論は誤った政策を導く』という警告の書を、既に著しているのであるが
今回の雑誌『世界8月号』での伊東論文も、また、私たちにその危うさを教えてくれているのである。

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『99%の経済学(教養編)』を先週やっと入手して、読み終えました。
まだ(理論編)は入手できていません。(最近ア〇〇ン嫌いなので、書店か図書館が頼りです)
後日、感想など書きたいと思います。



今朝のお話は、伊東光晴さんの論文のご紹介でした。
雑誌『世界』はたまに買うのですが、この号は読んでいませんでした。
伊東光晴さん、お元気なんですね。
私が大学入学したての頃、50年近くも昔の話ですが、
伊東さんの著作、岩波新書『ケインズ』は、サミュエルソンの『経済学(都留重人訳)』と共に、
経済学を学ぶ学生のバイブルみたいなものでした。
今改めて、1927年のお生まれと知ったのですが、
34~5歳の時に、岩波新書『ケインズ』を書かれているんですね。

私たちは、内橋さんが言われる通りで、
色々考えたり判断する時に、ついつい新聞やTVや大きな声に頼ってしまいます。
それではいけない、という事が、ここ2~3年の間に、実際たくさん起こっています。
もっと目を見開いて、多少のお金を使っても、広く視野を求めるべし、とつくづく思いました。
  

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臆病者の『特定秘密保護法案』の検証

2013年12月05日 | 良心に恥じない意見

特定秘密保護法案が、今日(5日)にも強行採決されそうである。
法案が成立した後では記事に載せ難いのか、
とうとう地元の静岡新聞でも、この法案の県民生活への影響例を朝刊1面に載せた。
それによると、3つのケースが挙げられている。

ケース1。
浜岡原発で放射能漏れ事故が発生。
しかし、政府からの避難指示の発動が遅れ、多くの人が被爆した。

(その理由)
原発の重要施設の構造などは秘匿される対象とされる(可能性が高い)。
事故が発生した場合でも、
特定秘密を洩らさずにどこまで情報提供すべきか、政府内が混乱し、
避難指示が遅れた。

ケース2。
オスプレイが、キャンプ富士(御殿場市)周辺の住宅地に不時着した。
住民は日米両政府に原因の公表を求めたが、拒否された。
さらに、秘密漏えいの教唆・扇動と見なされ、住民らが処罰された。

(その理由)
安全保障上、軍事関連情報は秘匿される対象となる(可能性が高い)。
よって、オスプレイの性能や運用状況などの情報が漏れるとして、
トラブルが隠されるかもしれない。

ケース3.
官公庁を退官後、現役時代を振り返る本を出版した浜松の男性が家宅捜査を受けた。
本の内容の一部が特定秘密に該当したらしいが、男性は理由が分からない。
捜査員に問いただしたが、捜査員も「特定秘密だから自分も知らない」と答えた。

(その理由)
この法案は、構造自体に無理がある。
男性がどんな秘密を漏らしたのか、捜査員が容疑内容を知らないまま、
むやみに家宅捜査するのは不法行為である。
また、この捜査員が男性に”自白”を求めれば、
こんどは捜査員が”秘密漏えいの教唆”を行ったとして、捜査員自身も処罰される。
さらに男性も、捜査員の求めに応じて、特定秘密を再び漏らしたことになる。
違法行為の連鎖が止まらなくなる。

また中日新聞では、
特定秘密に該当する仕事で出張した自衛隊員の場合、
家族に行き先や日程を教えることもできなくなるし、
子供にお土産を買って帰るのこともできなくなる、などのケースを載せている。

国会審議の中で森雅子担当相は、
「特別管理秘密を取り扱うことができる職員数は警察庁、外務省、防衛省でおよそ64,500人」と答弁。
「都道府県警察職員のほか、契約業者も対象になる」と述べている。
そして、対象者が特定秘密を家族や知り合いに洩らし、
家族や知り合いが誰かにしゃべると処罰対象になる、とまでは答えた。

どうもそれだけの範囲には、止まりそうにない。
もし、今日にもこの法案が成立すれば、明日から3年間、
臆病な私は、政治や経済がらみの事を書くのは、やめておこうと思う。


『地域包括ケアのモデルに学ぶ』~12/3 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約

2013年12月03日 | ラジオ番組

『地域包括ケアのモデルに学ぶ』   
           12/3 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。    

地方だけでなく、東京や神奈川といった都市部で
人口減少と社会の高齢化が同時に進行する時代が、やって来ようとしている。
いや、もうすでに始まっているといえよう。

先週、国立社会保障人口問題研究所が2040年の予測を発表した。

それによると、2040年には 65歳以上の高齢者が全人口の3割を超えるということである。
例えば神奈川県でも2040年には65歳以上の人口が 2010年に比べて1.6倍に増え、
75歳以上の人口となると、
東京・埼玉・千葉・神奈川・愛知といった主要な都市で1.7~2倍以上に増えるという予測である

高齢化率(全人口の内 65歳以上が占める割合)の最高は、
秋田県の 44%、青森県42%、高知県41%と、
人口の半分近くが高齢者という時代がやって来る、ということである。

出生率が低くなるというだけでなくて、
新生児の絶対数そのものが減ってしまう、という深刻な時代の到来である。

こうした時代に大切なことは、
『たとえ年をとっても、住み慣れた地域で、人が人らしく生きていけるためには、
どのような社会システムが求められるのか?』について、
今、市民一人一人が、まじめに向き合わなければならない、ということである。

その際、すでに各地方に育っている先進的なモデルというものがあるので
そうしたモデルに学ぶということも大切になる。

そういうモデルを具体的にいくつかあげてみたい。
最初に、
長野県下の例として、すでに十数年にわたる歴史を育くんできた
『くらしの助け合いネットワーク“あんしん”』というのがある。

もともとは、JAあづみの女性部がそれまでも展開してきた助け合い活動、
つまり、介護が必要な高齢者への安心訪問介護が始まりであった。
次いで通所介護、あるいは在宅介護支援という方向に進めて、
同じ地域に住むヘルパー、ケアワーカー、ケアマネジャーの方々が
『親身になって、助け合いの心で担っていこう』という運動として始まったものである。

そうした担い手の方々には、地域の病院(厚生連病院)と連携して
まず、ホームヘルパー2級の資格を取ってもらい、
次に、その資格をとった人の中から、
介護福祉士あるいはケアマネジャーといった資格取得へと進めて、
実際の介護にあたってもらう、ということである。

介護に際しては、
介護を受ける側の人々の暮らしを十分に理解できるように、
必ず、ホームヘルパーとして、家庭訪問から始めるといった具合であった。

大切なことは、助け合いという思想とその実践という在り方である。
このケースでは、今年8月、この主体がNPO法人になって活動を広げる方向へと発展した。
介護保険の対象から外れる人にも、高齢者の日常生活を支えるために
例えば、住まいの掃除、家事の手伝い、入浴、
さらに介護なども引き受けることになったということである。

重要なことは、介護を担う人も、介護を受ける人も、同じNPOの会員であるという点である。
元気な間は地域の高齢者を支え、
自分が介護が必要となれば、今度は若い他の会員に面倒を見てもらうという、
地域内での循環を何よりも大切にしているという点である。

もともとは無償ボランティアとして始められたものであるが、
今や、介護福祉のプロとして展開して活動している。
介護を必要とする会員は、
介護認定の有無にかかわらず、料金を払ってサービスを受けることができる。
一方、元気な会員の方は、サービスを提供して報酬を得ることができる。
そういう助け合いの社会システムであるということである。

こうした組織は、現在全国に 660以上数えられるようになった。

次に埼玉県に例があるが、
都市近郊で地域の市民が医療機関の設立に加わり、
医療介護福祉というトータルな地域ケアに成功しているケースも少なからずに見受けられる。

あるいは、中国山地の中間山間地帯である、島根県の旧瑞穂町(現・邑南町)では、
『お年寄りは町の宝』と呼ぶ運動が地域全体で繰り広げられて、
高齢者ケアを中心に働く場を生み出して、
若者の都市への流出を食い止めるということに成功した。そういう地域も少なくない。 

一足早く過疎化・高齢化に見舞われた地方で、数々のモデルが生まれている。
『地方が都市の先生』という時代がやって来たといえよう。

こうした学ぶべき先進モデルに共通する点は三つある。 
第一に、地域にある医療機関と深い連携を関係を築いていることと、
そして、ヘルパー、ケアワーカー、ケアマネジャーを計画的に育成してきたことである。

第二に、地方であれば農的生活、例えば『生きがい農業』といったように、
いつまでも元気で働ける高齢者を育て、応援する組み合わせがあることである。

最後に、様々な学習活動、上述の長野県の例で言えば、
『いきいき塾』といった学習会を定期的に開くなど、学びの場も作っていることである。

総じて、
『出来る時に、出来る人が、出来る事を!』という、
ケアの自給圏づくりを目指す時代が始まった、ということである。 

  

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