ジョージ・いまさきもり の アンダンテ・カンタービレ

晴れた日は農業とウォーキングとライカ、雨なら読書と料理。
そして毎日ラジオがお伴です。

『中国経済の見通し(2014年)』~4/24 NHKラジオ 津上俊哉さんのお話の要約

2014年04月24日 | ラジオ番組

『中国経済の見通し』 
     4/24 NHKラジオ 津上俊哉さんのお話の要約です。  

中国経済の減速の理由

今、中国経済は大きな曲がり角に来ている。

ここ数年、中国経済は高度成長を続けて

2010年には日本を抜いて世界第二の経済大国になった。
遠からず、GDPでアメリカを抜くという見方もされてきた。

しかし、これほど高成長が続いたというのには、わけがあった。

よく経済成長は、投資と消費それに輸出という3頭の馬車で説明をされる。
その説明に従えば、過去数年間の中国の成長は、投資の伸びに頼る面がすごく大きかった。
これの発端は 2008年のリーマンショックである。

経済が落ち込むのを懸念した政府は、4兆元の公共投資で景気の底上げを図った。
それと同時に、大幅な金融緩和を実施したので
一時、銀行はいくらでもお金を貸してくれるという時期があった。
それで、製造業から不動産、地方政府のインフラ建設まで、いたる所で投資が爆発的に伸びた。

土地代も含めた全業種の投資額は、公式統計に従えば、
リーマンショック前の2008年には15兆元だったのが、2009年には、19兆元、
その後、24兆元、30兆元、36兆元と、毎年20%以上の勢いで増え続けて、
昨年はとうとう、43兆元(日本円で約700兆円)を超えたと言われている。

しかし問題は、そうして行われた投資の質である。
製造業では、大量の設備投資をした結果、
製品の作り過ぎで値段が大きく落ち込んで、
投資した設備を止めざるを得ないという会社が増えてきた。

不動産は、金融緩和で価格も急上昇したので、
今のうちに買っておこうとか、値上がりを期待した利殖買いが起きて、需要も旺盛であった。
この結果、全国いたるところで住宅建設が起きたのであるが、
今や、こんなに高い値段のマンションをたくさん作って、
今後まだ買う人がいるのだろうか、という状況になってきた。

そして、政府も、道路や地下鉄など膨大なインフラ投資を実行した。

しかし、これらの投資というのは出費のかなりの部分を借金で賄っている。
当然利息の支払いや元本の返済の必要があるのであるが、
利益を生まない投資が積み上げられた結果として、
借金の返済期限が来ても、借り換えでしのぐしかない、という会社が今増えてきている。

こうした、”投資頼み借金頼み”という経済成長は、いつまでも続けるわけにはいかない。
ところが、『それでは、投資を抑えよう』としたとたんに、
今度は、主たる馬車の力が失われて成長率が大きく落ち込んでしまうわけである。

残る2頭の馬車、消費と輸出は合計しても4%分足らずの成長力しかなく、
投資を前年の横ばいにするだけで、成長率は 4%をを切りそうになってしまう。
もし、投資を前年より減らそうとすると、もっと低成長に落ち込んでしまう。

こういうわけで、投資で経済成長を牽引してきたやり方が続けられなくなっている。
これで、中国の成長率がずるずる落ち始めているわけである。

不動産バブルがはじける心配

北京や上海では、すでに東京より値段の高いマンションがたくさんある。
いくらなんでも値段が高すぎると思う。
しかし、日本のイメージを当てはめて、
『これは、バブル崩壊必死』と見るのは考えものである。

中国は、土地は国有で、売り手は政府だけである。
それで、土地の売り急ぎがなかなか起きにくい。

また、中国の不動産開発業者というのは、すごく資金回収が早いので
マンションが今後値下がりしても、
業者が倒産するというよりは、買った人が含み損を抱える、という場合が多い。

そういう国情の違いがあるので、直ちに日本と同じ道を辿るというふうには言えない。

シャドーバンキングについて

中国のシャドーバンキングというのは、
日本で言えば、ノンバンク金融というのに近い概念で、違法な取引きというわけではない。
ただ、金利がなり高い、という資金調達である。

普通なら、借り手は金利の高いお金は借りたがらないのであるが、
今は、借金の借り換えのために、金利が高くても借りざるを得ないという人が増えている。
それで、このシャドーバンキングというのが急増したわけである。

これも、投資と借金頼みの経済成長が限界に来ていることの、もう一つの表れと言えよう。

中国政府の新しい経済改革

政府も、従来の成長スタイルというのは曲がり角に来た、という危機感をかなり強く持っている、
昨年11月に開かれた共産党の三中全会では、習金平主席が、
『規制を緩和したり、民間企業の活力で経済成長をする』という経済改革プランを発表した。
今まで国有企業とか地方政府の抵抗で採用できなかったような改革内容も多数盛り込まれていて
かなり大胆な内容になっている。

ただ、大胆なプランが発表されたのであるが、
その改革が本格的に始動したという印象は、まだない。

そして、この3月に開かれた全人代では、
李克強首相が、雇用を増大させる必要があるので、
『7.5%前後の成長のため、投資を合理的に伸ばす』という方針を発表した。

失業が増えると、社会の不満や緊張が高まるから、理解はできるが
だからといって、このまま、投資頼み借金頼みを続けたら、
中国経済は、もっと大きな問題を抱えることになるだろう。

このように、中国は、今後当分の間は、
投資を減速させなければいけないということ、そして、社会の安定を保たないといけないということ、
この二つの相反する要請の間で厳しい綱渡りを強いられることになる。

日本や世界への影響

これまで中国経済が世界経済の成長を支えてきたので、経済的には相当なマイナスが及ぶだろう。
日本の株価もかなり影響を受けている。
特に世界の資源国は、中国の需要が落ちると相当困ることになるだろう。

他方、これまでの中国は、高成長と同時に軍事費を増やしたので、
周辺諸国に脅威感を与えるとか、国際政治や外交安保に悪い影響を及ぼしてきた面もある。

成長が低下したからと言って、中国がすぐに軍事費を抑えるとは思えないけれども、
中長期的には、一方では東アジアの政治的緊張に変化が及んでくると思われる。



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日米首脳会談とTPP交渉~ 4/23 NHKラジオ 吉崎達彦さんのお話の要約 

2014年04月23日 | ラジオ番組

『日米首脳会談とTPP交渉』 
     4/23 NHKラジオ 吉崎達彦さんのお話の要約です。  

今夜、オバマ米国大統領が来日し、TPPも大きな議題になるようである。
他の加盟予定の10カ国も、注視しているところであろう。

先日、日豪のEPAが合意された。
その結果、オーストラリアの製品だけは、日本向けの関税が下がることになった。
それで、他のTPP参加交渉国が少しあせって、
『完全撤廃でなくてもよい。関税を少し下げてくれれば結構ですよ』
と、日本と条件について話合いたい、という動きが出てきたようである。

TPPでは『関税の完全撤廃』と皆が言っていたが、
オーストラリアが”抜け駆け”したことで、動揺が起きているのだ。

これで、『どうやら、今後のTPP交渉に俄然日本が有利になった』、
と言う声が聞かれるようになった。
自民党の人達も、手を叩いて、喜色満面といった風であるが、
それではいけない。

安倍政権にあっては、
TPPは、本来、”成長戦略の目玉”ともよばれていたわけで、
あえて『踏み込んだ交渉をしなければいけない』としていた。

つまり、貿易の自由化(関税の撤廃)は鋭意進めなければいけない。
その貿易の自由化を進める過程で、当然農業改革などもやって行き、
国際競争力のある農業というものを作る。
こういうことであった。

すなわち、『国際競争力のある農業を作ること』がゴールであって、
TPP参加は、その一過程にすぎないのである。

今後の日米交渉を始め、TPP交渉では、
敢えて一歩進んで、関税撤廃の方向を貫かないといけない。

関税を撤廃して、世界との貿易を活発にしないと、経済成長が出来ない。
日本のような成熟国でも、経済成長がないと雇用が保てないのである。

ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ―  
初登場の吉崎達彦さんのお話でした。
お仕事がらでしょうか、お話ぶりに余裕がありますね。
笑い顔の、経営者向けの講演そのものでした。

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『機能不全に陥っている日本の国債市場』~4/22 NHKラジオ 幸田真音さんのお話の要約

2014年04月22日 | ラジオ番組

『機能不全に陥っている日本の国債市場』 
     4/22 NHKラジオ 幸田真音さんのお話の要約です。  

4月14日の月曜日の国債市場で、
新規発行された10年物の取引が1件も成立しなかった。

国債市場は、国の信頼を表す市場である。
その指標銘柄であり、ベンチマークとされている10年物国債が、
1件も売買が成立しなかったということは、極めて異例の出来事である。

10年物国債の利回りは、そのまま日本の長期金利であるので、
このことは、言葉を換えれば、
『日本の市場で長期金利が不在、国債市場が機能不全に陥ってしまった』
ということを象徴している。

新聞では、銀行とか国債の買い手が、国債からリスク資産にシフトしている、
等と書かれているが、
それだけではない異例な事が起きているのである。

それでは、なぜこのような事態に陥ってしまったのか。

現在の国債の発行高を見てみると、
2013年度末で、850兆円(国の借金1018兆円のうち、83%)と巨額である。
この1年でさらに、125兆円も増える見込みということである。
『これだけ大量に発行されたら債券価額は暴落する』ことになると思うが、
そんな話は一切聞こえて来ない。

本来国債市場というのは、『国の政策を示す、鏡とか物差し』のような存在であっる。
政府や中央銀行が間違った政策をした時には、暴落をして警鐘を鳴らし、
逆に景気が回復して良い数字が出てきた時には、
価額が下がり金利が上がって反応を示すということである。

しかし、ここのところ、ほとんど日銀による管理相場というか、
10年物の金利は0.6%前後をずっと推移して、
全く何が起きても、良い事があっても悪い事があっても、何も起きない事になっている。

日銀が異次元の金融緩和として、
新規の発行額の約7割を市場からどんどん買い入れているという状況が続いている。
今、国債の保有状況を見てみると、
銀行と郵貯で40%、次に日銀が20%を保有するまでになった。
  
つまり全体の2割を持つほど、日銀が積極的に国債を買っているということで
市場機能が働かなくなってきた、という状況がある。
このことを、麻雀を例にして話がされている。

今の国債市場は、”3人麻雀”と呼ばれている。
(麻雀は元々4人でやるものだ)
国債市場のプレーヤーは、
まず発行元の財務省。
そして、入札業務や決済を行う日銀(円の番人である)。
そして、入札に参加、落札し、買い入れるメガバンク。
そして、流通市場で売買する証券会社。
この4者で成り立っていた。

ところが、日銀がどんどん国債を買い占めてしまうので、市場が動かなくなった。
それで、証券会社がプレーヤーから降りてしまい、
”3人麻雀”になったというわけけである。
メガバンクはプレーヤーに残っているが、
『入札に参加し、落札した国債を日銀に売って、終わり』という状況になっている。

日銀が国債を買い占めてしまうので、
市場機能が働かず、市場が歪んだものになっている、ということである。  

長期金利が0.6%前後に落ち着いて、国債が暴落しない、
ということは、とても良いことである。それがずっと続くのであればだ。
しかし、この先もこのまま、”良い状態”で推移するかは疑問である。
それが終わる時が恐い。

日銀の国債の大量購入による金融緩和は、
日銀が緊急の金融政策のための措置としては理解できるが、
これが常態化してしまうと、
出口では相当大きなショックが副作用として伴ってくることが考えられる。

その出口のことを考えると、
『それには付き合いたくない』という老練なプレーヤーが
どんどん市場を去って行くということが起きているのである。

つまり、感度のいい熟練なエキスパートが不在の市場になりつつある、
ということで、実はこれが大きな問題である。

日銀が今行っているのは、表の呼び名は金融緩和政策ではあるが、
事実上は、どう見ても”財政ファイナンス”で、
つまり、『市場の国有化が起きている』と言ってもいい状態になっている。

そして、日銀が永遠に国債を買い続けられるはずはない。
その理由は、日銀のバランスシートを見ればわかるように、
既ににGDPの50%になっている。
米国や欧州そして英国など他の国の中央銀行を見てみると、
それぞれGDPの23~26%に抑制している。

もし、このまま日銀が今のペースでずっと年に50兆円ずつ日本国債を買い続けるとしたら
オリンピックの2020年には、日銀のバランスシートは、GDPの100%に達してしまう。

『そんなにバランスシートを膨らませて日銀の信頼は大丈夫か』という声が
国内・海外から出てくる可能性は十分ある。
それで日銀も、『もうこれ以上買えない』となった時、
そのとたんに、市場にどのような反応が起きるか、心配なことである。
その時に、日銀や政府が適切な対応ができるかどうか甚だ疑問である。

かつて、長期金利が8%以上という時があった。
今後またそういう事態が来るかもしれない、ということである。
長い間金利が1%以下のところで慣れて、資金繰りをして来た企業も、
そして、低利でローンを組んで来た家計も、
金利が急騰したら、利息支払いに大変になるだろう。
どうしたらいいか、専門家のアドバイスが欲しくなるだろう。

国債市場でも同じである。
熟練した老練なプレーヤーがその場にいなかったら、
1で済む痛みや傷が、100にも1000にも拡大してしまい、
市場の破綻をきたすことにもなりかねない。

日銀は金融緩和の維持、さらに、いっそうの緩和の拡大なども言っているが、
そのことが、長期金利や国債市場にこういう側面を膨らましていることを、
肝に命じておかないといけない。

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『日銀、異次元緩和1年の評価』~4/21 NHKラジオ 山田 久さんのお話の要約

2014年04月21日 | ラジオ番組

『日銀、異次元緩和1年の評価』 
     4/21 NHKラジオ 山田 久さんのお話の要約です。  

金融政策にできることは限られている。
現在の円安・低金利の水準を維持することは必要であるが、
金融緩和をさらに一段と進めることはしない方がよい。
2%というインフレ目標に過度に固執すべきではない。

今後デフレ脱却を達成するには、金融政策よりも、
成長戦略の着実な実施や、賃上げに向けた政労使会議の継続といった
政府の取り組みこそがカギを握っている。

(お急ぎの方はここまでお読みいただければ充分です)

日銀、異次元緩和1年の評価

異次元の金融緩和で、日銀は大量の長期国債を買い取った。
これは金融機関の行動を変えさせて、
お金をの流れを変えることを意図したものであった。

つまり、金融機関はそれまで安全資産である国債を大量に買って、
貸出とか株式のようなリスク資産への投資に慎重であった。
それが経済活動の低下、ひいてはデフレの一因であった。

そこで日銀が国債を金融機関から買い取って、
金融機関はその他の資産で運用せざるを得なくなる状況を作ろうとしたのである。
そうすれば、株式などへの投資が増え、あるいは海外資産への投資が増え、
その過程で株高や円安が進むということになる、と目論んだわけである。

また、日銀が大量に国債を購入するすると金利が安定するだろう。

つまり、低金利・円安・株高が進んで経済が良くなって、
デフレから脱却できるという筋書きであった。 

その異次元金融緩和から 1年が経過したが、まさに期待通りになった。
円安・株高が進み、金利も低い。
家計のマインドが良くなって個人消費が増えて、企業の業績も良くなった。
円安で輸入品の価格が上がり、物価が押し上げられた。
消費者物価も前年比 1%台プラスで推移している。

円安は異次元緩和の効果ではない

ただ正確に言うと、円安は、異次元緩和の始まる数か月前から始まっていた。

そもそも、為替がどう決まるかというと、
短期的には、市場のコンセンサスによって動くが
中・長期的には、購買力平価が決定要因となる。
そこで実際には、為替レートは、あるレンジの間で動くことになる。

今回の円安が始まったのは、
2012年の秋頃に、その方向への市場のコンセンサスがあったからである。
だから、2013年春からの異次元の金融緩和で円安が始まったわけではない。
これほどに円安が進み定着したのは、タイミングの良さというものが重なったのである。

これ以上の金融緩和はいらない

日銀が金融緩和をさらに一段と進めても、円安がさらに進むことはない。

多くの方が指摘するように、これ以上円安が進むのは悩ましいことである。
現状、円安でも輸出が伸びず、輸入価格が上がるばかりである。

低金利の定着にも副作用がある。
本来景気が良くなり、物価が上昇してくれば、金利は上昇するはずである。
それが、低いままだと、いずれどこかの段階で急上昇するリスクがある。
また、金利が低いと国債費が安いので、財政再建に対する緊張感が薄くなることがある。

今後の金融政策に求められるもの

まず、金融政策にできることは限られてきている、という認識が重要である。
現在の円安・低金利の水準を維持することは必要であるが、
金融緩和をさらに一段と進めることはしない方がよい。
今後は消費増税で景気が減速するから、2%というインフレ目標に過度に固執すべきではない。

今後、デフレ脱却を達成するには、金融政策よりも、
成長戦略の着実な実施や、賃上げに向けた政労使会議の継続といった
政府の取り組みこそがカギを握っている。

 

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外国人技能実習制度 拡充の是非』~4/15 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約

2014年04月15日 | ラジオ番組

『外国人技能実習制度 拡充の是非』   
           4/15 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。  

外国人技能実習制度の表と裏

外国人技能実習制度の本来の意味は、
『発展途上国に日本の技能や技術を伝えて、途上国の産業の向上に役立ててもらう』
と、いわば国際協力活動の一環という位置付けで、始められたものであった。

そのため、途上国から条件付きで労働者を受け入れ、
最長で3年間、実習生として企業の現場で働きながら技能・技術を習得してもらい、
当然、正当の報酬を支払うということで、1993年に導入された。
現在、実習生という名で日本で働く外国人は、およそ15万人いると言われている。

しかし、もともとの狙いは、
それら発展途上国に進出する日本企業が、現地ですぐに役立つ、
つまり、実習を終えて帰国した労働者を、現地で雇用して即戦力として使える、
そういう便利な現地雇用者を、前もって日本で育てておくという狙いもあったようである。

しかし現実には、
実習の名において、いわゆる3K労働の担い手を途上国から調達する、
あげく、賃金未払い、長時間低賃金労働、人権軽視、
といったさまざまな社会問題が頻発するようになっている。

一昨年、厚生労働省が、およそ2800の事業所について調べたところ、
その結果、8割近くから法令違反が見つかったと言われている。
こうした現実に対して、
ILO(国際労働機関)が警告を発し、また米国務省の報告書でも 指摘を受けた。
さらに日本弁護士連合会も、『いったん廃止して、根本から見直せ』と提言した。
今やこういう現実になってきている。

建設現場などでの深刻な人手不足への対策、
零細企業・中小企業などのコスト合理化(人件費カット)への対策、
そうした現実を見れば、日本にとっては大変重宝な仕組みには違いないだろう。

安倍政権が成長戦略で拡充活用を狙う

このように、さまざまな問題が未解決なままであるが、
安倍政権が、この制度を日本経済の成長戦略として積極的に活用する方針を打ち出した。

この4月4日、経済財政諮問会議と産業競争力会議という二つの会議の合同会議が開かれた。
この会議で安倍首相は、この外国人技能実習制度を”拡充”するように検討を指示した。
そればかりでなく、『国家戦略特区で実施したらどうか』という趣旨の発言もしたようである。 

”拡充”について具体的に見ると、
まず技能実習の期間を 3年から5年に延長する。
3年でいったん帰国させた後、再入国によって2年、合計5年間認めることにする。
あるいは、特定活動という指定で出すビザがあるが、
それを活用して、そのまま 2年から3年の滞在延期を認める。
等々、様々なやり方が考えられているということである。

さらに、外国人活用の対象領域を
介護とか家事労働というような分野に拡充すべきだ、という提言も出されている。
かねて安倍政権が掲げてきた、女性の社会進出をしやすくするためには
留守宅において家事労働を外国人労働者にやらせるという発想もあるわけである。

かつて日本が植民地とした国では、
現地の人々をメード(女中・家政婦)に安い給金で雇って使うことがごく普通に見られたが、
そうした考え方に近いと思われる。

今建設現場などでの深刻な人手不足が、
公共工事また東日本大震災の復興などの進捗状況を大変厳しくしている。
公共工事予算の執行の足を引っ張る、
ひいては景気の空模様をもおかしくなってきた。
そういうことで、政府からすれば、この外国人技能実習制度の拡充は、
『不都合な現実に向かい合っている。とても良い政策だ』
ということになるのであろう。

偽装の実習制度とディーセント・ワーク 

これまで話してきたような
”外国人技能実習制度によって、安い労働力を途上国から調達する”といった事例は、
少なくとも欧米先進国にはない。
入れるならば、きちんと移民として受け入れることを原則としている。
労働力として、生産活動・経済システムに組み込みながら、
実習制度とか研修制度とか、そういう呼び方で労働を担わせるということ自体が
国の倫理とか品性の問題と考えるからである。

外国人技能実習制度が、国際貢献とか国際協調の一環というのであれば、
実態はまだそうであるべきである。

また、日本人労働者の賃金水準の引き上げを抑制する大きなブレーキ役ともなるかもしれない。
国家戦略特区で活用するということになると、
首切り自由と話題となった雇用特区の構想に通じているのかもしれない。

日弁連が指摘しているように、偽装の実習制度はいけない。
労働力が必要というのであれば、
きちんと労働として、つまりディーセント・ワーク(decent work、尊厳ある労働)として
きちんと受け入れて対応する、そういう国家の姿勢こそ大切であると強く思っている。

      
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『エネルギー基本計画案を考える』~4/11NHKラジオ 諸富 徹さんのお話の要約

2014年04月11日 | ラジオ番組

『エネルギー基本計画案を考える』   
           4/11NHKラジオ 諸富 徹さんのお話の要約です。 

相変わらず原発依存の計画案

去る 4月3日、自民党と公明党はエネルギー基本計画案について合意に達した。

このエネルギー基本計画案では、、
再生可能エネルギーを加速させると言いつつも、
原発をあくまでも基礎的な電源(ベースロード電源)として位置付けている。
また、事業として完全に破たんしている高速増殖炉もんじゅの延命を図るために
核廃棄物の減容量化を新たな目的として附け加えている。

結局、これまでの原子力政策と何ら変わりはない。
本来ならば、福島第一原発事故の深い反省に基づいて
エネルギー政策の大転換を打ち出すべきだ、と誰もが考えていたはずだ。

だから基本計画案では、
まず、徹底した福島原発事故の原因究明に基づく事故の再発防止と、被害者救済、
そして福島の復興というものが掲げられるべきであった。
そして、原発依存の段階的逓減や、省エネ・再エネ、
更には水素などの革新的エネルギー源による原発代替方策が議論されるべきであった。

しかし、この計画案では、
当初、冒頭にあった事故への反省というものを削除してまで、
もう一度、原発依存の世界へ戻そうとしている、と見ることができる。

貿易赤字は化石燃料輸入が理由か?

原発依存から離れられない理由として、
原発停止中の今、化石燃料の輸入で貿易赤字が増え、
電力料金が値上げされるからとしているが、これは国民をミスリードしている。

近年の貿易赤字の原因として、
原発停止による化石燃料輸入費の増加が挙げられるが、
実際には、貿易赤字の第一の原因は
日本企業の輸出競争力低下と海外生産の増加で、輸出が伸びていないのに対し、
輸入のほうは、一貫して増加が見られることにある。

化石燃料の輸入について詳しく見てみると、
原油については、輸入量は原発事故後も微減で推移しているが、
価格の高騰が著しく、また為替レートもアベノミクスによる円安で、
この両方の価格効果が相まって、化石燃料の輸入額を増加させているのが実際である。
たた、天然ガスの輸入については、数量は微増で推移しているが、
輸入価額としては、円安による高騰によること方がはるかに影響は大きい。

電力会社にコスト意識はあるのか?

つい最近、東電と関電において、
送電工事の発注に当たり、グループ企業内で談合をしたりして、独占禁止法違反を指摘された。
一般の企業なら、必死のコスト削減に努めるところであるが、
電力会社は地域独占の殿様商売で、談合して高コストであっても、
それを電気料金に上乗せできるのでいい、というわけである。

このように高コスト経営志向の電力会社のために、
高い化石燃料はやめて、安いと偽って原発を進める、政府や与党はアホか。
化石燃料の輸入費用云々の前に、こうした電力業界の体質を徹底的に改革をして
まっとうな市場競争を導入することがコスト削減には先決ではないだろうか。

いやいや、そんな事ぐらいは、自民も公明も、充分承知している。
しかし、ほおっかむりで、まず原発ありきだ。

エネルギー基本計画案の行方

そういうことで、こうした問題点があるにも拘わらず、エネルギー基本計画案は合意された。
多分、原発再稼働が始まることになるだろう。
しかし、そう容易には進められないだろう。
それは.
1.原子力規制委員会の安全基準のハードルが高くなった。
2.電力システム改革が進展すれば、価格競争が激しくなる。
  そこで、事故時の費用や廃炉費用なども考え合わせて、
  原子力発電が競争優位な電源でないことが明らかになる。
3.原発立地周辺自治体の反発が、事故前よりはるかに強く広くなっている。
また、大分薄れてしまったかもしれないが、国民の原発事故への恐怖は依然強いはずである。  

多少の再稼働は実現されるかもしれないが、
このエネルギー基本計画案は、机上の空論で終わってしまうだろう。
原子力発電が旧に復することは決して無い。

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『日銀、異次元緩和から 1年を検証する』~4 /7 NHKラジオ 浜 矩子さんのお話の要約

2014年04月07日 | ラジオ番組

『日銀、異次元緩和から 1年を検証する』  
       4 /7 NHKラジオ 浜 矩子さんのお話の要約です。    

日銀の異次元の金融緩和から1年が経過した。
”脱デフレのため”という錦の御旗を掲げた異次元の金融緩和であったが、
脱デフレには何の影響も及ぼさず、
結果は、ただ日銀の手元に国債が溜まってしまっただけで、
つまり、
日銀が事実上の国債買い取り専門機関になってしまっただけのことである。

日銀は、国債を大量に買い取って市中に資金をたくさん供給したが
それらは市中金融機関の手元に滞留しているだけで,
経済を元気にさせる為に世の中に流通していることはない。

したがって、現時点では日銀の意図が効果を発揮していることはない。

最近消費者物価が上がっているが、
これは、円安で輸入物価が上昇したことが最大の要因で、
経済が活発になり需要が増えて、モノの値段が上がったという恰好ではない。

脱デフレの方向にもっていくためなら、重要なことは分配政策である。
例えば、
貧困のコールド・スポットに座らされている人たちの状況を改善する、
拡大の一途をたどっている所得格差を解消する、等々。
つまり、
『まともな生活ができていない人達の生活が、まともな方向に向かっていく』
ことを支援しないかぎり、脱デフレなど、夢のまた夢である。

前回の時にお話ししたが、
大手企業の正規社員のベアが華々しく行われた。
半面それによる人件費上昇を補てんするために、
非正規雇用や低所得者層に対して、
むしろ賃金を抑え込むというような行動も出てきてしまい、
所得格差が一段と拡大することが懸念される。

そこへ、この4月から消費税増税である。
『痛んでいるところの痛みをより大きくする』、
こんなことをやっていては、
脱デフレや経済の好循環など到底出来ることではない。

今日から2日間、日銀の金融政策決定会合が開かれる。
さらに追加の金融緩和をするようだと、
国債が暴落し、円相場も大暴落するような事態になってしまう恐れが多い。


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『人を大切にする中小企業』~ 4/2  NHKラジオ 坂本光司さんのお話

2014年04月02日 | ラジオ番組

『人を大切にする中小企業』
                   4/2  NHKラジオ 坂本光司さんのお話の要約です。

静岡県の経済界や学生さんの間では、知らない人はいない先生、
坂本光司さんがビジネス展望に登場した。
『経営の目的は、人を幸せにすることにある』を信条とされて、
今も年間200社の中小企業を訪問して、診断・指導をされているという。

昨年(2013年2月)、ラジオ深夜便明日への言葉にも出演されているから、
これをお聴きになって感銘を受けた方も多いと思う。

坂本さんのお考えは、あさ出版などから出している多くの著書で披露されているが、
全く、その通りで、これぞ経営者指導の最高峰にあると思う。
最近では、WAVE出版から『強く生きたいと願う君へ』という、
就活生や若いサラリーマン向けの良書を出された(2012年)。
私は60歳台後半で、この本を読んだが、
このように考えて言動していれば、
私の人生はかなり違うものになっただろうと思う。

第1回の今朝は、浜松のばね製造の企業を紹介しながら、
『人を大切にする中小企業』について、坂本さんの企業哲学の序論を述べられた。

番組では企業名を言われなかったが、
この会社もまた浜松では知らない人はいない『沢根スプリング』のことである。
坂本さんの法政大大学院中小企業研究所などが主催する
「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で、
中小規模部門の最高賞「中小企業庁長官賞」を同社に授けたことで、
その授賞理由を詳しく述べられた。

数日後の4月5日に、この表彰について地元の静岡新聞が報じた。




静岡新聞の記事をお借りして、今回の要約に代える。

「大切にしたい会社」最高賞 浜松の沢根スプリング  (2014/4/ 5 )
 
 「会社の数字と社員の幸せのバランスが大事」と話す沢根孝佳社長=1日、浜松市南区  

浜松市南区のばねメーカー「沢根スプリング」(沢根孝佳社長、従業員53人)が、このほど、
法政大大学院中小企業研究所などが主催する「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で、
中小規模部門の最高賞「中小企業庁長官賞」を受賞した。

大賞事務局によると、
長官賞は過去5年に(1)会社都合の解雇がない(2)下請・仕入先にコストダウンを強制していない
(3)黒字経営―など五つの基準に該当する企業が対象。

沢根スプリングは
「人生を大切にする」との経営理念のもと、月間時間外労働を「6時間未満」としながら、
IT活用や通販に取り組み、創業以来47期連続で黒字を続けている。
社員の士気も高く、同賞に「最もふさわしい」
と評価されたという。

同社は1966年創業で、線径0・08〜13ミリのばねを中心に5千種以上を製造、販売している。
自動車部品関連企業への納品に加え、「他社がやらない仕事」にも着目し、
ばね特注品1個のオーダーや短納期の注文にも応じてきた。
この結果、多品種・小ロット生産が進み、納入先は年間450社に上る。

経営面でユニークなのは、社員の「ゆとりと幸せ」実現のための経営ビジョン2020を定めている点。
沢根社長(59)は
「業績はもちろん大事だが会社の数字と社員の幸せのバランスを取るのが経営。そのためのビジョン」
と説明する。


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『日豪の経済連携協定交渉について』~4/1  NHKラジオ 山下一仁さんのお話の要約

2014年04月01日 | ラジオ番組

『日本とオーストラリアの経済連携協定交渉(EPA)について』
                   4/1  NHKラジオ 山下一仁さんのお話の要約です。

山下さんのご専門のEPAのお話で、
いつも通り、確信に満ちた話振りで、首相への強い提言にまで及んだ。

円安の今は、牛肉の38.5%の関税を撤廃する好機である。
農家をいつまでも甘やかしていたら、
日本の自動車産業が、オーストラリアの市場を韓国に奪われてしまう。
言い出しっぺの安部首相が英断で、このEPAを仕上げないといけない。

NHKの朝早い放送だから、こういうことを言っても話題性はない。
もし、ツイッターで喋っていたら、たちまち炎上だろう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

日本とオーストラリアの経済連携協定(EPA)の交渉は
2007年の第一次安倍内閣の時に始まった。
それから7年経過するが交渉はまだまとまっていない。

この交渉を妨げているのは、日本の農産物の貿易自由化問題である。

米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖、等の農林水産物の重要品目を、
経済連携協定の除外または再協議の対象となるように、ごり押ししていることにある。

オーストラリアとの経済連携協定交渉の中で、特に大きな問題となっているのは、
日本がオーストラリアから輸入している牛肉にかけている38.5%の関税を、
どこまで削減するかということである。

本来、経済連携協定では、関税ゼロという完全撤廃が要求される。
しかし、オーストラリアは、牛肉についてそこまで求めていない。
つまり譲歩してくれて、半分の約20%にして欲しいと要求している。
これに対し日本は譲らず、削減するにしても僅かにして欲しいと主張している。
だから話がまとまらない。

日本の主張がおかしい。
決済価格を左右する為替レートを見てみよう。
米ドルについては、
2012年までは1ドル70円台であったが、最近は 105円くらいまで円安になっていて、
つまり、約38%円の価値が下落している。
これは牛肉の関税の 38.5%とほとんど同じである。

そうすると、
円高で外国産の牛肉の輸入価格が安かった時期に、
外国産の牛肉に十分競争できていたということであるから、
今の円安の為替レートで関税が削減されても、十分競争ができると考えられる。

仮にそれでも十分でないなら、、
農家に対しては、米国やEUが行っているように、財政から直接補償をすればよい。
高い関税をかけることだけが、日本農業の保護の手段ではない。
        
オーストラリアは、日本に年間牛肉を1300億円(12億ドル)輸出しているが、
逆に日本は、オーストラリアに自動車を7000億円(68億ドル)輸出している。

韓国は、オーストラリアと既に経済連携協定を結んでいて
オーストラリアに来年の一月から、自動車にかかる関税をゼロで輸出できるようになった。

日本の農業界がいつまでもかたくなな態度をとっていれば
オーストラリアの自動車市場を韓国に奪われてしまうことになりかねない。

オーストラリアの首相が今週来日する。
国会の農林水産委員会の決議にとらわれることなく、
安倍首相は、自分が始めたオーストラリアとの経済連携協定を妥結すべきである。 


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