ジョージ・いまさきもり の アンダンテ・カンタービレ

晴れた日は農業とウォーキングとライカ、雨なら読書と料理。
そして毎日ラジオがお伴です。

『不安社会を生きる(1)』 ~内橋克人さん京都講演会

2013年05月31日 | ラジオ番組

不安社会を生きる』

昨年80歳を迎えられた内橋さんが、戦争体験など、ご自身の経験を踏まえつつ
天寿を全うすることの大切さや、社会を変える社会転換の図り方について、
考え、生きる意味を、問い直します。

  (この要約は、 21012年10月28日に NHKで放送されたものの要約です。)

私は講演などで、全国を歩いているが、
京都の方々は、大変に勉強熱心な方が多いと思う。
どこに行っても、もちろん皆さん勉強熱心であるが、
京都の、この地に生きて、働いて、暮らしている方々には、
とりわけ、知識だけではなくて、その背景にある社会の流れを掴み取りたい、
というふうな、執念というか、拘り(こだわり)を強く感じる。

先日も、『日本人は何を考えてきたか』というシリーズものの番組で、
私は、この番組の案内役として、京都の町に取材に来た。
其の番組で、私が関係したのは、河上肇先生である。

京都の地では、京都府立図書館、それから京大図書館等を訪ねた。
図書館の中には、
思想犯として獄に入っていた時に、夫人に宛てて出された肉筆の手紙
といったものまで、全部を保存されている。

そこに入る時は、カバンを持って入ることは出来ない。
カバンの中に入れ、そのまま出てしまうかも知れないからである(笑い)。
ものすごく、厳しい管理が行われていた。
河上肇先生の残されたものは、
日本のその後の歴史に対する影響の大きさからいって、当然であろう。

岩国市の錦帯橋も歩いて、そしてそこから河上先生の生家も訪ねた。
この生家には、有名なエピソードがある。
先生は、京都の吉田神社の横に御住まいだったのであるが、
その生家に、先生がお亡くなりになった後、泥棒が入った。

その泥棒は、家の中を色々物色している間に、
「いやっ、これはひょっとして河上肇先生の家ではないか」と気が付いた。
それで、物色しながら確かめたら、やっぱりそうだと解った。

「河上肇先生の留守宅に、私は泥棒に入ってしまった」
「もう、悔やんでも悔やみきれない。 申し訳ない」
「ただ、この紙を書き残すために、紙1枚だけ頂く」と、いう事で、
泥棒が、『申し訳ない』と書いた紙が1枚残っているのである。

また、ここが京都だから、私は河上肇先生の話しからするのであるが、
色々な、お使いになった日常の文具その他が残っている。
その中で、いつも身に付けておられたのが、硯(すずり)である。
小さな小さな物であるが、それを持ち歩いて、硯をすって、さっと書かれた。
この硯の木の箱の蓋を開けると、その開けた裏蓋に、言葉が書いてあった。

その意味は、
この硯というものは、いつまでたっても、姿・形が変わらない。
すリ減って行くかもしれないけれども、何年使っていても、硯は硯の形をしている。
しかし、私の肉体は、
年齢と共に、しかも思想犯として獄中生活を4年間も強いられていたから
大変に弱ってしまった。
もう私の体は、この硯に比べて、見る影もなく衰えてしまった。
けれども、私の精神、心は、この硯と同じように、変わっていない。

4年間の獄中生活をしたけれども、もちろん転向(思想を改めること)はしていない。
出獄にあたって色々書かされたのは、当時としてはそれはしょうがない事である。
そういう中で、自分が正しいと思うこと、考えること、これは変わっていない。
つまり、『この硯に私の心は似ている、いとうれし』と書かれている。

先生は、一所懸命読んで、多くの漢詩も残している。
思想犯として捕らえられて、獄から出て来られて、
60歳から漢詩を書き始められた。

この漢詩が素晴らしい。なかなか読み説くことが難しい。
この時には、一海知義先生にご一緒して頂いた。
先生は、河上肇のいわゆる思想性ではなくて、作品、特に漢詩を研究された方である。

その旅の途中で、私は番組全体の案内役であるが、
それでお宅へお邪魔して、河上先生の様々な特徴を伺った。

つまり、『思想』という、この言葉は難しい言葉である。
物事の考え方である。直観的なものもあるし、それを一つ一つ理論づけていくものもある。
けれど、その思想の鍛えられ方である。
何度も何度も修羅場をくぐって鍛えた、そういう鍛えられ方をした思想家。

私は、その番組では、河上肇先生と、
もう一人、、一橋大学の先生で、
関東大震災のあと、被災地をゲートルを巻いて一軒一軒、一人ずつ被災者を回られた、
福田徳三さんという優れた先生と、
このお二人を対照しながら、番組のストーリーにして行くというものであった。

その中で、私が、何故、河上肇先生のお話しから始めたかと言うと、
受けた印象、思想の鍛えられ方、本当の意味の考え方、による。
何度もの修羅場、命の危険、その他様々なリスク・危機の中で鍛えられてきた。
その鍛えられてきた思想というものが、とても大切である。

そして、人々にとっての道標(道しるべ)となるのである。
どこに私たちは進んでいくのか?、
今、河上肇先生が居られれば、何を言われるだろうか、というのが、私の一番の関心事であるのだ。

あの有名な『貧乏物語』を上梓した13年後に、先生はこの著作を自己否定されて、
そして『第二貧乏物語』を書かれた。なんと言う偉大な先人であろうか。

出獄した1週間後が日中戦争が始まった時で、
獄から出ても、特高につけ回されてしまう。、
偉大な経済学者であり、そして文学者である、河上肇先生の漢詩の言葉の中には、
積憤(せきふん)という文字が出てくる。
積もり積もった憤りである。憤りを持つ、だから、河上肇なのであると私は思う。

積憤の漢詩を読せていただく。

形容枯槁眼※(「目+多」、第4水準2-81-94)昏  形容枯槁、眼(まなこ)※(「目+多」、第4水準2-81-94)昏(シコン)、
眉宇纔存積憤痕  眉宇纔に存す積憤の痕。
心如老馬雖知路  心は老馬の如く路を知ると雖も、
身似病蛙不耐奔  身は病蛙に似て奔るに耐へず。

姿・形は枯れてしまった。眼は、めやにが出て、読めないほど衰えてしまった。

眉と目元は僅かに残っているが、それは積憤の痕である。
   先生は67歳で亡くなるのだが、4年間、獄につながれ、思想的な弾圧を受けた。
   考え方がいけない、と言って検挙されるわけだから、
   そういう試され方、鍛えられ方をされた憤りである。

心は老馬のごとく、私はすべての道を知っているけれども、
   これは中国の故事にあり、
   ある日、道に迷ったご主人様を、道を知っている老馬が連れていって、
   目指す故郷に帰りついたという、故事を踏まえている。

身は病み衰えた蛙の如く、走るに耐えない。しかし憤は残っている。


深層崩壊という言葉がある。
いわゆる災害で、山が深い所から崩れていく、
表面の表層雪崩ではなく、深いところから崩れていく現象である。

この深層崩壊というのは、自然災害に対して使われる言葉であるが、
私は、今、日本社会、私たちが生きてる社会は、政治も含めて、
深層崩壊という危機にまさに瀕している、という事を、ここで強く言っておきたい。

積憤を感じる方がどれだけいるのか、
積憤、積もり積もった憤り。
それがなければ、本当の意味で社会を正すことはできない。

誰か、ある意味では、人々を納得させるような解ったような風な話しが、
世の中に蔓延っている。
しかしそうではなく、
怒りを持つ人、憤りを持つ人、そういう人々が、もし、いなければ
私たちの社会は、深層崩壊を避けることはできないだろう。

私は、そういう危機に面した社会を『不安社会』と呼んできた。
『不安社会を生きる』という著作を書いて、1990年代の後半に出版している。

『不安社会を生きる』、このテーマは、
再び、まさに、今日の私たちのもっとも重要な課題となっている。
この会場には、ご婦人の方も多く、高齢者の方も多く、、それだけの訳知りの方も多いと思う。

あなたは、怒っているだろうか?
物事を決める時、あるいは政治に対して私達に押し付けられる価値観、社会の在り方に対して
憤りを持っているだろうか?

こういう話をすると、
『君はいくつになっても、角がとれない』と言われてしまう。
つまり、いつも怒ってる。いかっている、と言われるのである。
私は、やはり人格ができていないのだろうか。
しかし、今回、河上肇先生の遺跡その他を色々拝見して、学ばせてもらって、
自分は決して間違っていない、と確信した。

河上先生は、いつも怒りを持って、世の中のあり方に憤り、
あるいは権力をもった上層の社会を統治する人々に対して憤り
積もり積もった積憤が、お顔に表れて、
67歳でお亡くなりになる前に、こういう漢詩を残されたのである。

この不安社会という時代に、
その逆である、安心社会とは何か、ということを、この後、お話するけれども、
決して決して宗教、あるいは心の話しをするのではない。

それには、私よりも、もっと適した高潔な人格を持つ方々がたくさんおられる。
私にはふさわしくない。
私は、魂の救済とか、宗教、あるいは言葉による癒し、などとは無縁である。

不安社会の構造ーなぜ不安なのか?
河上肇先生が書かれた『貧乏物語』、この中にその解き明かすべき由来がある。
なぜ不安なのか?。
90年代の半ばに書いた著作であるが、今も変わっていない。

思想において鍛えられる...。
河上肇あるいは福田徳三は鍛えられた人である。
この鍛えられ方を、皆さんも一緒に考えて欲しい。

ところで、森繁久弥さんが、3年ほど前にお亡くなりになった。96歳であった。
この森繁久弥さんが亡くなった時に、次男の達さんが、
『父は、自分の寿命をきっちり使い果たして旅立った』と、言われた。
いわゆる、天寿全うである。
88歳を過ぎたら、天寿全うだそうで、喜ぶべきことである。
森繁久弥さんは96歳で、天寿全うである。

さて、皆様方、今、天寿全うを喜べる人が、どれだけいるだろうか?

先般、NHKの番組で『首都圏スペシャル』という番組に、私は出演した。
その時のテーマが、 『死の不平等』であった。
死というものは、決して、今、平等ではない。
その中には、言葉はとても悪いが、孤独なまま亡くなっていく『孤立死』がある。
その実態とは?、どのようにして亡くなっていくのか?

あるいは、老老介護がある。
本来、介護を受けるべき高齢の人が 、父母の介護を担っている。
そういう死の不平等が、あちこちに山と在る。

一方で、数億円という一時金を支払って、心安らぐホームにお世話になる人もいる。
医者もいて、手厚い介護もしてもらえる、そういう所に、入る人もいる。
数億円である。あなたは入所できるか?、親を入所させられるだろうか?

私は、実母を13歳の時に亡くしているが、90歳を過ぎた継母がいる。
東京に実子である弟がいるが、同居することができる状況にない。
私達も、中々、面倒を見ることができない。
それで、ケアホームを探して探して、
やっと、首都圏のはずれに見つけて入所させたのであるが、母は気に食わない。

突然、うっぷん晴らしの、怒りが吹きあげる。それこそ積憤であろう。
そのケアホームには、いい名前が付いているのであるが、
実子である私の弟が、いつものように定期的に訪ねたところ、
ワーッと爆発して、
『何が、〇〇ホームなのよ』と大声で喚いたそうである。

そして春の彼岸の3月21日に亡くなった。
継母は、幸せな人生だったろうか?、不幸せな人生だったであろうか?
今は、死の不平等の時代である。

東京の都内で、老人ホームその他ケアホームを見つけることはできない。
余ほどの巨額の資金を出さないとできない。死の不平等である。
たくさんの死がある。旅立ち。しかし旅立ちの、不平等がある。

どういう社会になっているのか、について、お話しを進めよう

      ( 以下続きます )

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敦賀原発の活断層問題と日本原電の経営~5/29 NHKラジオ 金子 勝さんのお話

2013年05月29日 | ラジオ番組

『敦賀原発の活断層問題と日本原電の経営』  
         5/29 NHKラジオ 金子 勝さんのお話の要約です。

昨日の諸富さんのお話で、
日本原電の敦賀2号機を廃炉にすると経営が行き詰まる事や、
出資している電力会社や国を通して、国民に負担がかかってくる、事などを要約した。

今朝は、それを受けて、金子さんのお話の後半部分を要約した。

日本原電敦賀2号機を廃炉にすると、
直ぐに、不足する資金をどう補うか?、という問題が発生する。 

そのまま、ただ、日本原電の経営を破たんさせると、
出資金1千億円や債務保証している日本原電の銀行借入金が、
各電力会社の負担となって、大きく圧し掛かって来る。 

こうなると電力会社としては困るわけで、
八木誠電気事業連合会会長は
『廃炉などの取り扱いは、国などと協議して検討していくべきである』
などと、国に支援を求めるような発言までしている。

こうした構図は、90年代の不良債権処理問題とそっくりである。
1990年代には、
事実上、債務超過に陥っている企業に、銀行が追い貸しを続けて
それでも、もたなくなると、公的資金を小出しに入れて、
ずるずると、不良債権企業をもたしては傷を広げていった。

そして 、いざ破たんした時は、損失が大きく膨らんでしまっているために、
銀行危機を長引かせてしまった。
こういう教訓というのは、重く踏まえて行かないと、いけないのである。

ゾンビ化している企業に、
一切の利益も産まず、電力を買うこともできないにも拘わらず、基本料金を払って支える。
しかし、いざ廃炉が余儀なくされると、
『税金を投入して助けて下さい』というのは、一番悪いパターンである。 

このまま、ずるずると日本原電を延命させて行くと、
かつての不良債権処理問題と同じように、国民負担はかえって増えてしまう。 

取るべき方策は、当たり前のやり方、唯一つである。

現状で、原発を止めると、
利益を生まない一方で、メンテナンス費や減価償却費用などの経費がかかり、
電力会社の経営を圧迫する。
原発を廃炉にすると、上述したように、
簿価上の残存価値や廃炉引当金の積み立て不足額が特別損失として出てくるために、
経営破綻してしまう。
その結果、安全性を無視しても、原発を再稼働しようとする動機が働いてしまう。

そこで、
まず、減価償却の済んでいない残存簿価と、廃炉の引き当て不足額にあたる金額の新株を、
各電力会社に発行させる。
その株を国が引き受ける形で、電力会社に一種の公的資金を注入する。
こうして、国が電力会社の株主になったうえで、
各電力会社を、発電会社と送配電会社に『所有権を完全に分離する発送電分離』を行う。
その際、各電力会社が保有する原発を、日本原電に持参金付きで移していく。
つまり、原発を事実上国有化することである。 

こうすると、
既に、新株発行で、特別損失をカバーしているので、
原発を切り離しても、電力会社は財務上問題は出て来ないことになる。

そして初めて、
電力会社の経営状況に左右されずに、厳格な安全基準を設けて、安全投資のコストを勘案して、
『どの原発を廃炉にするか』を、冷静に判断することが出来るようになる。 

総じて
日本原電は、基本的に『廃炉専門会社』にしていく事になる。
各電力会社は、不良資産になっている原発を手放すことで経営を健全化することができる。
融資している銀行も、不良債権を処理できることになる。 

何故、こういう当たり前の不良債権処理策をとれないのか?
90年代の失われた20年の失敗の経験を、もっと真剣に学ぶべきである。


 
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活断層と電力会社経営問題~5/28 NHKラジオ 諸富 徹さんのお話

2013年05月28日 | ラジオ番組

『活断層と電力会社経営問題』   
              5/28 NHKラジオ 諸富 徹さんのお話の要約です。

原子力規制委員会が、5月22日、
日本原電敦賀原発2号機の真下を走る断層は、『活断層』だとする、
専門家会議の報告書を了承した。

原子力規制委員会という組織は、2012年9月19日に発足した。

それまでは、原発を推進する資源エネルギー庁、それを規制する原子力安全保安院が、
同じ経済産業省の中にあり、
どう見ても、推進側に引っ張られて、規制機関が充分にその役を果たせていなかった。

この、反省に基づいて、
新しいこの原子力規制委員会は、
委員の任命には、国会の同意を得なければならないとし、
また、組織自体は、国家行政組織法第3条2項に基づく委員会(俗称三条委員会)として、
内閣からも高い独立性が認められている。

こうした経過で設けられた委員会であるので、
今回、委員会が、政府や電力業界の意向等に左右されることなく、
純粋に科学的見地から判断を下せる組織であることを示した、と言えよう。

これは、原子力規制委員会に対する、国民の信頼を形成させて行くには、
重要な判断であったと思われるし、
今後、この規制委員会の判断に基づいて、各地の原発が選別されていく時代に入ったと言えよう。
 
日本経済新聞 電子版()5/25)によれば、

日本原子力発電が24日発表した2013年3月期の連結決算は、
営業利益が前の期比89.5%減の9億円だった。
保有する原子力発電所全てが停止中で、発電量はゼロだが、
販売先の電力会社から受け取る「基本料金」で収益を確保した。
ただ敦賀原発(福井県)2号機は活断層問題で再稼働の見通しが立たない状況。
廃炉を迫られれば、経営への打撃は大きく、先行き不透明感が増している。

13年3月期の売上高は、前の期比4.3%増の1524億円。
電気の販売先の東京電力や関西電力など5電力から、
原発の保守費用や人件費といった固定費を「基本料金」として1510億円受け取った。
合理化効果もあり、売電しなくても利益を確保した。
ただ最終損益は税負担が重かったことなどから、5億円の赤字(前の期は128億円の赤字)となった。

日本原電は沖縄電力を除く電力9社などが出資している原発専門の卸電力事業者。
東海第2原発(茨城県)と敦賀1、2号機の3つの発電可能な原発を保有しているが、現在は全て停止中だ。

記者会見した浜田康男社長は今期の基本料収入が1200億円程度になるとの見通しを示した。
原子力規制委員会が22日、敦賀2号機直下に活断層があるとする有識者会合の報告を了承したことについては
「6月末までの自主調査の結果を反映してほしい」と改めて主張。
ただ規制委の判断が覆る可能性は低いとみられる。

仮に敦賀2号機を廃炉にした場合は、廃炉費用と減損の発生で1千億円規模の特別損失が出る見込み。
日本原電の3月末時点の純資産は1650億円のため債務超過にはならないが大幅に減る。
敦賀2号機分の基本料収入が失われ、収益基盤は脆弱化する。
他の2原発についても、再稼働には7月に施行される原発の新規制基準に対応した設備の工事が必要。
すでに500億円の費用を見込んでおり、今後はさらに増える。

日本原電は、委員会の結論を現時点では受け容れず、独自の調査を進めている。
しかし、規制委員会の結論を覆すのは難しいだろう。
廃炉に追い込まれる可能性が高い。

また日本原電の他の2つの原発も、
敦賀1号機もまた、、直下に活断層の疑いがあるし、
東海第二原発は、地元が再稼動に強く反対しているので、いずれも再稼動が見通せない。
このまま推移すれば、日本原電の経営不安が顕在化する可能性が高い。

日本原電は、7月に自らの調査結果を公表する方針でいる。
それが、規制委員会に受け容れられなければ、訴訟も辞さない構えのようである。
しかし、それは、時間稼ぎにはなっても、問題の根本解決になることではない。

現時点で、収入が無いにも拘わらず、何故日本原電の経営がなりたっているのか?
その理由は、上述の日経の記事のように、
発電していなくても他の電力会社から1200億円の負担金が入って来るからである。
しかし、再稼動がずっと難しいとか、廃炉とかになれば、
他の電力会社がいつまでもそれを払えるか、という問題が起こってくる。

それと、日本原電は、いま銀行からの借金が1000億円あるが、
他の電力会社が債務保証をしているので、借り替えに応じてもらえている。
債務超過寸前の日本原電に、他の電力会社が、いつまで保証を続けられるというのか。

つまり、日本原電の経営危機は、他の電力会社にも大きな負担となる。
実際に敦賀第二号機が廃炉に決っても、
いくらの費用が掛かるかは、福島原発を見た通りで、膨大すぎて予測がつき難い。

まずは、日本原電が負担すべきとしても、
多分出来ないだろうから、出資している他の電力会社の負担となろう。
他の電力会社も、アップアップの状況だから、電気料金を上げるか、国に頼るしかない。
つまりは、国民が負担することになる。

いつかは、廃炉の時期が来る!、莫大な廃炉費用が必要になる時が来る!
これまでは、この事実を直視せず、先送りしてきたが、
今回の規制委員会の判断は、直視するきっかけを与えてくれた、と言える。

そして、原発を廃炉にすることは、原発会社の経営危機を産み、大きな負担が残る。
その負担をどのように、透明に、公平に、分担するのか、
そのルール作りにも目を向けて行かないといけない事も、教えてくれている。


  
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『雇用流動化を考える』 ~ 5/27 NHKラジオ 山田 久さんのお話

2013年05月27日 | ラジオ番組

『雇用流動化を考える』 ~
                        5/27 NHKラジオ 山田 久さんのお話の要約です。

 

安倍内閣は、産業競争力会議と規制改革会議で、
正社員のあり方の見直しを、テーマとされているようである。 

これは、正社員の流動化が低いことが、
成熟産業から成長産業に、人を移動させることを妨げていて、
結果として、経済の活性化ができない大きな理由だと、見られているからである。 

具体的には、
1.正社員では難しいとされてきた解雇ルールの緩和、
2.勤務地や仕事内容が限定されている限定型正社員・ジョブ型正社員の増加
などが議論の俎上に上っていて、
いかにして、摩擦なく、労働力の流動性を高めようか、という事である。 

ただ、流動化を高めると言っても、
解雇された人が、新たな職を得ることは、中々難しいのが現実である。 

其のためには、
好況期にこそ不採算事業の整理を行い、新しい事業の成長を進めることに、
すべての企業が取り組まないといけない。
理想的な事で言えば、企業経営者が、
好況期に、中期的な動向を見越して、早めの事業の構造転換に取り組む。
そして、企業内で人員再配置と再教育をして、解雇はしない。
ということである。 

あるいは、
企業同士で、事業を交換や売買をして、各企業はそれぞれの分野に特化して行き、
社員も、移って行く事業について移動させれば、解雇をする必要がない。 

その他、新たに、
官民共同出資の『人材ブリッジ会社』を設立するという手もあると、
山田さんは提案している。 

そのブリッジ会社(受け皿会社)の仕組みとしては、
企業が不採算事業から撤退したい時に、
不要となる人材といくらかの出資金を、受け皿会社に預ける。
受け皿会社は、受け容れた人材に職を世話したり、職業教育を行う。
まずは、これで、雇用が維持されることになる。 

そうこうしている間に、人材を預けた企業は、
新しい戦略となる事業を展開できるようになっているだろうから、
預けていた人材を戻してもらい、再雇用する、という案である。

その他、限定型正社員・ジョブ型正社員については、
彼等が所属する勤務地や事業部門から、企業が撤退する時には、
多くの場合、雇用契約が解除されることが想定される。 

となると、これら限定型、ジョブ型の正社員が増えていけば、
解雇される正社員も増えて来ることが想定される。
限定型・ジョブ型正社員を増やして行くのならば、
それなりに、解雇ルールを明確にしておくことが必要である。 

 
◆◆◆◆◆◆◆◆ いまさきもりの一言 ◆◆◆◆◆◆◆◆ 

研究所のエコノミストさんらしい、教科書的な、ちょっと物足りない
話でした



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主食のたんぱく質量を減らす(前)~私の最近の食事療法から

2013年05月25日 | 健康と滋養


このブログで、腎臓病について書いたのは、数回しかないが、
それでも、ほぼ連日、『腎臓病に優しいお菓子』の記事にアクセスがある。
少しでも塩分や、たんぱく質が少ない食品を探しておられる方の、
悲痛な叫びが聞こえて来るような思いになる。

私も、たんぱく質量の摂取制限をしているが、
そのせいで、この数ヶ月で3kgも体重が減少してしまった。
腎臓病は、とにかく、やっかいな病気である。

腎臓病が進んで最終段階に達すると、人工透析のお世話を受けないといけなくなる。
今、全国に30万人以上の方が受けているようである。

人工透析は、肉体的・精神的にも大変であるが、経済的にも大変である。
ただ、健康保険が適用されるので、個人負担は、月に1~2万円で済むが、
実際の医療費は30万円以上もかかり、年間では400万円以上にもなるので、
地域の皆さんに、大きな負担をお願いすることになってしまう。
全国では、年間に1兆数千億円の巨額になっている。

私の余生はと言えば、10年か15年くらいだろうが、
食事や運動、心の持ち方、医師の言い付けに留意して、
人工透析のお世話にならないように努めたいと思っている。

— — — — — — — — — — — — — — — — — — —

『主食のたんぱく質量を減らす(前)』

少しでもいいからお菓子を食べたい
栄養不足にならないように、滋養となる主菜や副菜をできるだけ多く食べたい

その為には、主食で摂るたんぱく質量を減らすのが、一番やりやすいと言われている。

普通に、朝・・・パン 5枚切り1枚だと、たんぱく質は、6g
      昼・・・うどん 1玉だと、たんぱく質は、6g
           夜・・・ご飯 小茶碗に1杯(160g)だと、たんぱく質は、4g
と、食べているとすると、主食で合計16gのたんぱく質を摂っていることになる。

これを、限りなく0gに近づける『たんぱく質調整食品』というのが売られている。

まず、パンについては、
   キッセイ薬品の『ゆめベーカリー 米粉食パン』
   1枚 約100g、260kc、たんぱく質0.5g 


 
次にうどんについては、
   三和化学の『生活日記 うどん』
   1玉 約200g 293kc、たんぱく質0.4g



ご飯については、
   三和化学の『生活日記 ごはん1/25』
   1/2パック 140g 238kc、 たんぱく質0.14g



以上のものに替えれば、
主食から摂取するたんぱく質量を、16gから1.04gに、
つまり、15g近くも減らすことができる。


腎臓病の食事療法では、
たんぱく質摂取は、30g~45gに制限されていることが多いから、
この差の15gは、とても大きい。

私も、体重を少し増やしたいので、これらの食品を食べ始めた。
これで、安心して、魚とか肉の量を確実に増やせている。

パンも、うどんも、ご飯も、どれをとっても、
たんぱく質量調整がしてある、とは思えないほど、旨い。美味である。
苦痛に思うことは、全くない。

ただ、どれも値段が高い。
特にパンが高価で、1枚183円。普通の食パンの6倍以上。

そこで、いつもの『ゴパン君』を使って、安価に、
この『ゆめベーカリー 米粉食パン』に近いものを作れないだろうかと、
意欲がモリモリと湧いてきた。

(続きは、近いうちに書きます)


国家戦略特区での税制優遇~5/24 NHKラジオ 田中直毅さんのお話

2013年05月24日 | ラジオ番組

国家戦略特区での税制優遇』
 5/24 NHKラジオ 田中直毅さんのお話の要約です。

誰が見ても、米国の代表的な企業であると思われるアップル社が、
実は、経営拠点を、米国ではなく、アイルランドに置いているという。

米国に拠点を置けば、35%の法人税が課せられるが、
アップル社は、アイルランド政府から特別な優遇措置を受けて、
わずか2%の納税でOKですよ、となっているようである。

アップル社は、生産も販売も技術開発も、
世界中、いたる所でやっていて、ネットで繋ぐ経営戦略をとっているから、
アイルランドの経営拠点といっても、
それは、名ばかりで、貸し事務所の1室に社員が数人いる程度であろう。
そうするだけで、法人税が格安というわけである。

今後、日本にも経済特区が各地に出来てくるだろうが、
もし、税制上、特に、法人税の優遇措置が講じられるようなことがあると、
日本各地にある企業が、優遇を受けられる特定の所に集まってしまう事になる。
しかも、企業の工場や研究所などは、ネットで繋げられるので、
そのまま別の場所に残しておいても、なんら支障はないわけである。

経済特区の本来のあり方は、
色々な規制緩和を行って、企業から革新の波を引き起こす事である。
そこに、法人税の減免を絡ませることは、望ましいことでない。



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株高円安の落とし穴、小泉政権時とそっくり~5/15 NHKラジオ 金子 勝さんのお話

2013年05月23日 | ラジオ番組

『株高・円安の落とし穴、小泉政権時とそっくり』
    5/15 NHKラジオ 金子 勝さんのお話の要約です。

15日の放送当日には、要約しませんでしたが、
本日23日、長期金利の上昇と株価急落がありましたので、急いでまとめました。
本日放送の、中北徹さんのお話も、まとめてありますので、そちら⇒もご覧下さい。

まずは、株高・円安が米国主導であるという事を確認しないといけない。
この20年間、米国を中心に、
1980年代後半は土地・不動産バブル、90年代後半はITバブル、
2000年代後半は住宅バブルと、
ほぼ10年おきに、大きなバブル循環を繰り返すようになっている。
バブルの崩壊の損失を取り戻すために、次のバブルを作り出している、という事である。

米国は、ここのところ、
直近の住宅バブル崩壊で落ち込んでいた、雇用や住宅投資などに見られる米国の経済指標が、
ようやく底打ちをしてきた。

その一方で、バーナンキFRB議長による、
前例のない量的金融緩和でばら撒かれた資金が、投機マネーになって、
景気回復期待をあおって、急激な株価上昇に結び付いている。
しかし、その急上昇は、実体経済とあまりにも乖離しているので、
これは、明らかにバブルの様相を呈しているといえよう。

日本の株式市場も、米国主導のバブル循環と、ほぼ同じサイクルを描いている。
今回の日本の急激な株高は、外国人投資家の大幅な買い越しによるもので、
米国主導で仕掛けられた株高と、見ることができる。
その背景には、
金融自由化とグローバリズムを受け入れきた結果、、
日本の株式市場で外国人投資家の比重が飛躍的に高まっている事がある。

しかも、グローバルスタンダードの名の下に、
『企業が所有する金融資産を時価評価する』国際会計基準が導入された結果、
株などの金融資産の価格変動が、直接、企業の決算を左右するようになっている。
株価の動向が、企業の決算に大きく影響するために、
失敗してきた政・官・財のリーダー達は、ひたすら株高・円安を期待するようになった。

しかし、それには大きな落とし穴がある。
まず、外国人投資家の資金を呼び込むには、
絶えず米国のスタンダードや、米国流の市場原理主義的な政策への、
同化を求められるからである。

しばしば、『マーケットの声を聞け』というような言葉が行き交うようになり、
それに応えて、政治家は、外国人投資家が好むような、
米国流の市場原理主義に基づく経済政策をとるようになる。

今起きていることは、
かつてそういう事が顕著であった小泉政権と、似たような展開になって来ている。

小泉政権当時、米国では、ブッシュ政権が、小さな政府論を展開していた。
小泉政権は、これを真似して、構造改革路線をとった。
そして、米国が要求する『年次計画要望書』から郵政民営化案を受け容れて、
『改革なくして成長なし』というスローガンを押し立てて進めた。
さらには、米国に従って、イラク戦争にまで参加してしまった。

当時も、金融緩和政策と円安政策を進めていたので、
これらの構造改革とセットになって、
最終的に、株価は1万6千円台まで回復し、1ドル 120円台まで円安が進んだ。

今回も、アベノミクスと呼ばれる、大規模な量的金融緩和政策がとられたのであるが
これは、バーナンキFRB議長の、大規模な量的金融緩和政策とそっくりである。

また、『年次改革要望書』をほとんど丸のみするようなTPPを推進しようとしているのも、
郵政民営化を受け入れたのと、そっくりである。

また、世論のそれへの反応も、これまた、そっくりである。
小泉政権期には、多くの人が、
『小泉構造改革で、成長が期待できる』と答えつつも、
『今はまだ、実感がない』とずっと最後まで回答していた。

今も、アベノミクスやTPPに対して、多くの人は
『改革が進んで、景気回復する』と期待しているのであるが、
それでいて、収入が上がるか?と問うと、
そこは冷めていて『思っていない』と答えている。そうでありながら、政権支持率は高い。

小泉構造改革の時、
目先の株高や円安に酔ってる内に、
雇用が壊れて、格差や貧困が広がり、地域の医療や介護が崩壊し
地域間格差も拡大してしまった。

しかし、株高や円安が剥げ落ちると、
もう取り返しのつかない事態に陥っていることに気がついた。
だが、もう、後戻りできない状態になってしまっていた。

今回の安倍政権が推進するTPPを、仮に受け入れたとすると、
様々な分野で米国基準というのが押し付けられてくる。

これは、郵政民有化を押し付けられた小泉構造改革と、そっくりの展開となるが、
その影響の大きさから言って、小泉構造改革の比ではない。

以下のようなシナリオを、直ぐに思いつく事が出来る。

例えば、まず、最悪の場合、農産物の関税が撤廃される。

また、日本の食品の安全基準も吹っ飛んでしまい、
ヘリコプターで農薬をばら撒かれたり、
遺伝子を組みかえられた農作物が大量に入って来る。

政府調達では、
公共事業の入札条件緩和で、地元業者への優先配分が難しくなるだろう。

また、医療関係では、
医薬品の知的所有権を延長して薬価を吊り上げ、健康保険財政を圧迫させる。
保険財政が悪化すれば、保険料の値上げや診療報酬の抑制をせざるを得なくなる。

その一方で、
米国製の高額な医薬品や医療機械の認可手続きを簡素化して
保険外の高額診療を拡大していく。
そうすると、医療保険分野を得意とする米国系の生命保険会社が儲かる事になる。

そして、大都市の民間病院は、保険外診療で儲けるように誘導される。
保険外診療が進められない地方の医療は、やがて崩壊してしまう。

これらの米国基準は、いわゆる『ISD条項』を背景にして推進されて行く。

アベノミクスの第3の矢、成長戦略についても、小泉政権の時と似ている。
小泉政権は規制緩和中心のやり方であったが、結局うまくいかなかった。

そのからくりは、
株価さえ上昇すれば企業決算は改善する、という仕組みにある。

いかにも、やったふりで、構造改革とか規制緩和とか言うのであるが、
結局、不良債権や本業の競争力低下を隠蔽してしまって、
中・長期的な課題の必要性を忘れさせてしまった。

企業は、ひたすら内部留保を貯め込み、
技術開発や製品開発における地道な努力を忘れてしまった。

まさに、小泉政権時代には、IT革命から決定的に乗り遅れてしまった。
スーパーコンピューター、半導体、CPUの開発技術とか、
新しい端末機器を始めとして、各種の電気製品まで、
日本製品は、この小泉政権時に、世界シェアを急速に落としてしまった。

今、日本原電とか東京電力とかはゾンビ化して、
安全性の乏しい原発が不良債権化している。
それにもかかわらず、肝心の電力改革は先送りされ、
新エネルギーとかスマート化を軸にした
新しい分散ネットワーク型の産業構造への転換が進みそうにない。

このままだと、小泉政権と同じように、
株高が剥げ落ちた時、企業の国際競争力はさらに低下している、
ということになりかねない。

さらに、株高に浮かれている間に、中・長期的な課題の解決を忘れさせて
つけの先送りが繰り返されて行く事が、起こるのである。

すでに、
戦時中と同じ、GDPの2倍を超える1100兆円の膨大な財政赤字とか、
使用済み核燃料の置き場所さえない原発の問題であるとか、
若者の約4割が失業者や非正規雇用になっている、雇用や貧困問題とか、
その他、少子高齢化問題、社会保障問題、等々、
本質的に解決しなければならない問題をすべて先送りさせてしまっている。

もう一度、この国が直面する本当の課題に向き合う必要が、今こそある。
安倍政権が逆戻りさせた時計の針を、早く正しい向きに直さないといけない。 

 
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安倍政権の経済政策と日本経済の行方~5/23 NHKラジオ 中北 徹さんのお話

2013年05月23日 | ラジオ番組

『安倍政権の経済政策と日本経済の行方』
              5/23 NHKラジオ 中北 徹さんのお話の要約です。

アベノミクスは、第一弾で円高の修正が行われ、局面が大きく展開して来た。
今後も一本調子で円安が続いて行くと、世界的に諸外国と摩擦を引き起こす恐れがある。 

他方で、日銀は異次元の超緩和を長期間続けることになるので、
後述するが、取り返しがつかない大きな弊害をもたらす可能性がある。 

総合的に見て、
アベノミクスの三本目の矢である規制緩和、成長戦略の推進を、
速やかに提示して、速やかに実行する、ということが極めて重要になる。
七月の選挙を待つのでなく、
早く政治、政府が主導権を発揮する事が求められている。

お忙しい方は、ここまで読んで頂ければ充分です。
長期金利が上昇して、1%に乗せてきました。
日銀も大慌てでしょう。
しかし、今朝の先生のお話は、従前と同じペースで、びっくりしました。
        ☆      ☆      ☆      ☆      ☆

 

目下のところ、株式市場は日経平均で1万5千円台、為替レートは 102円台に及んでいる。
当然海外から大量の資金が流れ込んでいるわけで
この結果、韓国、カナダ、ニュージーランドなどの国の通貨は暴騰して、
あわてて、中央銀行が政策金利の引き下げに踏み切る、という展開が続いている。 

この事は、アベノミクスを契機に、
世界的な規模で、金融の超緩和が進んで来ているということである。
と同時に、世界が通貨切り下げ競争に突入するという局面に達しているとも思われ、
このまま行くと、国際的な通貨の大混乱が発生する事が心配される。
     
為替はこういう状況にあるが、これに対して日銀の動きはどうかというと、
当面は金融政策に専念する腹づもりのようである。
つまり、今後2年間で貨幣供給量を2倍の 270兆円にすること、
そして、2年後の2015年度末迄に 2%のインフレを引き起こす、という政策のことである。 

実際のところ、日銀は、これまでも通貨供給量を増やしたことがあるが、
市中に出回る通貨の量は拡大せず、従って物価も上昇しなかった、という経過がある。

日銀が、今回、このような政策を具体的にどのように実施するかについては
まだ、当局からは、国民に十分説得できるような説明はない。 

とすると、結局は人々のマインド(気分)に働きかけて、インフレ期待に転換させるという、
言わば心理学の発想に政策のベースを求める、という
苦しい立場に立たさざるを得なくなっているのかもしれない。

 「いいや、そんな事はないよ」と言うかもしれないが、
結局のところは、
政府の発行する膨大な国債のほとんどを一気に日銀が引き受け、
それを通じて物価上昇を引き起こす、
つまり『国債バブル』のシナリオに立つということに、なりかねないだろう。 

最悪の場合は、日銀が赤字国債を引き受けるということによる物価上昇であるから、
『財政インフレ』というシナリオもあり得るわけである。 

また、日銀は、2%のインフレを引き起こす過程において、
『国債市場の動向をコントロールできる』、
つまり、長期金利の暴騰を抑制しながら実現していくと言っている。 

ところが、これを実現させようとすると、
新規あるいは追加で発行する国債を、日銀がすべて買い占めてしまわないと難しい。
つまりは、政府と日銀が市場を無視する恣意的な政策を取らざるを得なくなる。 

こをした政策は、いったん始めると、やめられない。
政策選択の幅を狭め、政策の出口を見失ってしまう、という危険がある。
これは、財政破たんを引き起こしているギリシャの状況とあまり変わらない面がある。
こういう恐さが潜んでいると、声を大にして指摘しておきたい。

 

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シェール革命と米国経済~5/22 NHKラジオ 十市 勉さんのお話

2013年05月22日 | ラジオ番組

『シェール革命と米国経済』
           5/22 NHKラジオ 十市 勉さんのお話の要約です 

米国は、シェールガス、シェールオイルの開発と増産で、
かつてのエネルギー輸入大国から、今や輸出国に一変しつつある。

シェールガス(天然ガス)については、
過去5年間で国内の生産量が25%も増えており、自給体制が確立している。
また、価格が安くて、原油と比べて(熱量比)1/4くらいなので、
このシェールガスを液化して、LNGを輸出する計画が目白押しの状況である。

シェールオイル(原油)においても、
過去5年間で国内の生産量は、50%も増えている。
米国は、5年前までは、国内需要の6割を輸入に頼っていたが、
今年はそれが、35%にまで減少すると見られている。
来年には、日量1千万バレルを超えて、
サウジやロシアと並んで、世界最大の産油国になると見られている。

さらに、石油製品(ガソリン・軽油・灯油等)でみると、
すでに純輸出国となっている。

安くて豊富なエネルギーを米国にもたらした『シェール革命』は、
米国経済の活性化に寄与している。

まず第一に、
米国の貿易赤字は、このところ年間6千億ドルであるが、
その内の半分が原油の輸入による分である。
その原油輸入が今後減って行くわけであるから、
貿易赤字は縮小して、それがドル高を引き起こす要因にもなっている。

第二に、石油・天然ガス関連の産業は裾野が広いので、
石油化学工業を始め、あらゆる方面の国内産業を盛り上げ、雇用増をもたらしている。
これで、米国の製造業が国内回帰の動きをする現象も見られている。

さて先日、米国政府はシェールガスをLNG化して、日本に輸出する事を認めた。
大阪ガスと中部電力向けのもので、2017年には輸入が始まりそうである。

その他にも現在申請中のものが2件あり、これらが順次認められれば、
日本は全輸入量の20%を、安価な米国産のLNGで賄うことが出来るようになり、
これは、火力発電のコストを引き下げる、という大きな効果がある。



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『リフレ派への警鐘』~5/21 NHKラジオ 内橋克人さんのお話

2013年05月21日 | ラジオ番組

『リフレ派への警鐘  
        5/21 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。 

円安・株高が速いペースで進んで、
多くの人が、景気好転への期待を膨らませているようである。
しかし、一方で、先行きに対する不安の声も、依然として強いように感じる。 

今、安倍政権のもとで進められている経済政策は、
リフレ派の理論に乗っかったものである。まず、その『リフレ派』とは何かを説明しておく。

リフレ派というのは、
『政府・中央銀行が、例えば、今後2年で2%物価を上げるように、
つまり人工的にインフレを起こすことを目標に、マネー供給量をどんどん増やしていけば、
円安・株高が起こり、設備投資が増えて、雇用も賃金も伸びて、
デフレ不況から脱却できて、皆がハッピーになる』、
そう唱える学者、研究者、それを実行に移す政治家のことである。

巨額の財政赤字を、ものともせず、
さらに巨額の赤字の国債を発行してその7割は仲間の日銀に買い取らせる。
政府・財務省・日銀の三位一体で、ぐるぐるお金を回しながら、
市場にマネーを溢れさせるというのが、その具体的な政策である。
そうしたリフレ派の理論に乗って、いま日本経済は動いているわけである。

今朝は、その『リフレ派』の方々が、しばしば学ぶべき模範だとして引き合いに出す、
昭和初期の高橋是清財政の真相について、述べてみたい。

1929年にニューヨークに端を発した世界恐慌は、日本にも波及してきて
あの凄まじい昭和恐慌の時代へと突入していくわけであるが、
高橋是清は、その3年後 1931年、満州事変勃発後の犬養内閣の大蔵大臣として入閣する。
(高橋是清は、何度も大蔵大臣に就任しているが、これが4回目であった)

彼は入閣するや否や、前の政権の経済政策をすべて劇的に一新してしまった事で知られている。
ちょうど、今の安倍政権の経済政策の急転換とよく似通っている。

あの時代も政権交代、つまり民政党から政友会へと政権が移った。
高橋是清が真っ先に手をつけたのが、前の政権の経済政策の全面的な否定であった。
前政権、つまり浜口雄幸内閣で、その大蔵大臣井上準之助が行った、
金解禁・緊縮財政等の政策を即日一新してしまい、
金輸出再禁止、軍備拡張、公共事業を柱に据えた積極財政へと一転させてしまった。 

さらに、高橋是清は、1932年(昭和7年)、5.15事件後の斎藤内閣でも
大蔵大臣として留任して、一段と積極財政を進めた。
それまで、1.2億円迄とされていた日銀券の発行発行限度額を、一挙に 10億円に拡大したり
あるいは、どんどん赤字国債を発行しては日銀に引き受けさせる、といった道も開いた。 

軍備拡張と時局匡救(きょうきゅう)予算を柱に据えた高橋財政のおかげで、、
円の為替相場は急落(円安)し、輸出も急拡大して
こうして、日本は世界で一番早く恐慌の暗い 淵から抜け出すことができた、とされている。 

この歴史を取り出して、現在のリフレ派の方々は、
早い時期から『高橋財政のモデルに習え』、そう唱えてきたわけである。
今、それが第二次安倍政権の下、まさに現実の政策となって蘇った、と言えるのではないだろうか。 

このように『高橋財政に学べ』と説くリフレ派であるが、
ただひとつ、その方々があまり触れられていない、暗い歴史的事実がある。 

それは、何よりも軍事費の膨張がすさまじかった事。
例えば、高橋財政の昭和7年度(1932年度)予算を見ると
歳出の実に47%以上が軍事費に、つまり半分が軍事費になだれ込んでしまっている。 

国民が貧しくて需要が上がらなくても、軍事費はどんどん吐けて行ってしまう、ということである。
こうして、凄まじい軍需インフレが起こり、経済の軍需化が一気に進んだ、という側面である。
つまり、代償が大きかったということである。

確かに景気回復は果たしたけれども、
いったん、勢いづいた軍の勢力は、もはや歯止めが利かなくなり、
恐慌に苦しむ農村などの救済を目指した匡救(きょうきゅう)予算も、
わずか3年足らずで打ち切らざるを得なくなった。

そこで、高橋財政の後期では、軍事費の抑制に急転換せざるを得なくなり、
これが青年将校の恨みを買い、そこで起こったのが、1936年2月26日の『2.26事件』である。
2.26事件で高橋是清も惨殺され、翌1937年が盧溝橋事件勃発という流れになっている。 

景気回復を果たしかもしれないが、その後どうなったのか
昭和恐慌というトンネルを抜け出て、
やっと人々は、前途に明かりを見ることができた、とそう思っただろう。
しかし、その先には、
もっと悲惨な、15年戦争という長いトンネルが待っていたわけである。 

ところで、今は亡き城山三郎さんの名作『男子の本懐』の主人公は
高橋是清ではなくて、昭和恐慌の引き金を引いたとされる、井上準之助である。

私は城山さんに、ある対談で
『なぜ高橋是清ではなくて、井上準之助なのですか?』と、尋ねたことがある。
この時、城山さんは、
『井上の緊縮財政は、
「当時の異様な軍の膨張・独走を抑えなければ、日本に未来はない」
と見抜いてのものだった。だから私は井上準之助(を主人公にしたの)です』
と、きっぱりとお答えになった。

結果は、井上準之助は1932年2月9日、背後から銃弾3発を撃ち込まれて、亡くなってしまう。
井上は、経費削減のため、背後に護衛官をつけていなかったのだが、そこを狙われたものであった。
『身に付けていたコートには、その3発の弾痕が生々しく刻まれていた』
と城山さんは涙ぐんでお話しになった。

『一国の運命を決めるものは、目先の景気・不景気だけではない』、
そういう確たる継承が、『男子の本懐』には、込められていたと強く思う。
 

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株高・円安の落とし穴~5/15 NHKラジオ 金子 勝さんのお話の要約

2013年05月15日 | ラジオ番組

『株高・円安の落とし穴、小泉政権時とそっくり』
    5/15 NHKラジオ 金子 勝さんのお話の要約です。

5月15日の放送当日には、要約しませんでしたが、
本日、5月23日、長期金利の上昇と株価急落がありましたので、急いでまとめました。

まずは、株高・円安が米国主導であるという事を確認しないといけない。
この20年間、米国を中心に、
1980年代後半は土地・不動産バブル、90年代後半はITバブル、
2000年代後半は住宅バブルと、
ほぼ10年おきに、大きなバブル循環を繰り返すようになっている。
バブルの崩壊の損失を取り戻すために、次のバブルを作り出している、という事である。

米国は、ここのところ、
直近の住宅バブル崩壊で落ち込んでいた、雇用や住宅投資などに見られる米国の経済指標が、
ようやく底打ちをしてきた。

その一方で、バーナンキFRB議長による、
前例のない量的金融緩和でばら撒かれた資金が、投機マネーになって、
景気回復期待をあおって、急激な株価上昇に結び付いている。
しかし、その急上昇は、実体経済とあまりにも乖離しているので、
これは、明らかにバブルの様相を呈しているといえよう。

日本の株式市場も、米国主導のバブル循環と、ほぼ同じサイクルを描いている。
今回の日本の急激な株高は、外国人投資家の大幅な買い越しによるもので、
米国主導で仕掛けられた株高と、見ることができる。
その背景には、
金融自由化とグローバリズムを受け入れきた結果、、
日本の株式市場で外国人投資家の比重が飛躍的に高まっている事がある。

しかも、グローバルスタンダードの名の下に、
『企業が所有する金融資産を時価評価する』国際会計基準が導入された結果、
株などの金融資産の価格変動が、直接、企業の決算を左右するようになっている。
株価の動向が、企業の決算に大きく影響するために、
失敗してきた政・官・財のリーダー達は、ひたすら株高・円安を期待するようになった。

しかし、それには大きな落とし穴がある。
まず、外国人投資家の資金を呼び込むには、
絶えず米国のスタンダードや、米国流の市場原理主義的な政策への、
同化を求められるからである。

しばしば、『マーケットの声を聞け』というような言葉が行き交うようになり、
それに応えて、政治家は、外国人投資家が好むような、
米国流の市場原理主義に基づく経済政策をとるようになる。

今起きていることは、
かつてそういう事が顕著であった小泉政権と、似たような展開になって来ている。

小泉政権当時、米国では、ブッシュ政権が、小さな政府論を展開していた。
小泉政権は、これを真似して、構造改革路線をとった。
そして、米国が要求する『年次計画要望書』から郵政民営化案を受け容れて、
『改革なくして成長なし』というスローガンを押し立てて進めた。
さらには、米国に従って、イラク戦争にまで参加してしまった。

当時も、金融緩和政策と円安政策を進めていたので、
これらの構造改革とセットになって、
最終的に、株価は1万6千円台まで回復し、1ドル 120円台まで円安が進んだ。

今回も、アベノミクスと呼ばれる、大規模な量的金融緩和政策がとられたのであるが
これは、バーナンキFRB議長の、大規模な量的金融緩和政策とそっくりである。

また、『年次改革要望書』をほとんど丸のみするようなTPPを推進しようとしているのも、
郵政民営化を受け入れたのと、そっくりである。

また、世論のそれへの反応も、これまた、そっくりである。
小泉政権期には、多くの人が、
『小泉構造改革で、成長が期待できる』と答えつつも、
『今はまだ、実感がない』とずっと最後まで回答していた。

今も、アベノミクスやTPPに対して、多くの人は
『改革が進んで、景気回復する』と期待しているのであるが、
それでいて、収入が上がるか?と問うと、
そこは冷めていて『思っていない』と答えている。そうでありながら、政権支持率は高い。

小泉構造改革の時、
目先の株高や円安に酔ってる内に、
雇用が壊れて、格差や貧困が広がり、地域の医療や介護が崩壊し
地域間格差も拡大してしまった。

しかし、株高や円安が剥げ落ちると、
もう取り返しのつかない事態に陥っていることに気がついた。
だが、もう、後戻りできない状態になってしまっていた。

今回の安倍政権が推進するTPPを、仮に受け入れたとすると、
様々な分野で米国基準というのが押し付けられてくる。

これは、郵政民有化を押し付けられた小泉構造改革と、そっくりの展開となるが、
その影響の大きさから言って、小泉構造改革の比ではない。

以下のようなシナリオを、直ぐに思いつく事が出来る。

例えば、まず、最悪の場合、農産物の関税が撤廃される。

また、日本の食品の安全基準も吹っ飛んでしまい、
ヘリコプターで農薬をばら撒かれたり、
遺伝子を組みかえられた農作物が大量に入って来る。

政府調達では、
公共事業の入札条件緩和で、地元業者への優先配分が難しくなるだろう。

また、医療関係では、
医薬品の知的所有権を延長して薬価を吊り上げ、健康保険財政を圧迫させる。
保険財政が悪化すれば、保険料の値上げや診療報酬の抑制をせざるを得なくなる。

その一方で、
米国製の高額な医薬品や医療機械の認可手続きを簡素化して
保険外の高額診療を拡大していく。
そうすると、医療保険分野を得意とする米国系の生命保険会社が儲かる事になる。

そして、大都市の民間病院は、保険外診療で儲けるように誘導される。
保険外診療が進められない地方の医療は、やがて崩壊してしまう。

これらの米国基準は、いわゆる『ISD条項』を背景にして推進されて行く。

アベノミクスの第3の矢、成長戦略についても、小泉政権の時と似ている。
小泉政権は規制緩和中心のやり方であったが、結局うまくいかなかった。

そのからくりは、
株価さえ上昇すれば企業決算は改善する、という仕組みにある。

いかにも、やったふりで、構造改革とか規制緩和とか言うのであるが、
結局、不良債権や本業の競争力低下を隠蔽してしまって、
中・長期的な課題の必要性を忘れさせてしまった。

企業は、ひたすら内部留保を貯め込み、
技術開発や製品開発における地道な努力を忘れてしまった。

まさに、小泉政権時代には、IT革命から決定的に乗り遅れてしまった。
スーパーコンピューター、半導体、CPUの開発技術とか、
新しい端末機器を始めとして、各種の電気製品まで、
日本製品は、この小泉政権時に、世界シェアを急速に落としてしまった。

今、日本原電とか東京電力とかはゾンビ化して、
安全性の乏しい原発が不良債権化している。
それにもかかわらず、肝心の電力改革は先送りされ、
新エネルギーとかスマート化を軸にした
新しい分散ネットワーク型の産業構造への転換が進みそうにない。

このままだと、小泉政権と同じように、
株高が剥げ落ちた時、企業の国際競争力はさらに低下している、
ということになりかねない。

さらに、株高に浮かれている間に、中・長期的な課題の解決を忘れさせて
つけの先送りが繰り返されて行く事が、起こるのである。

すでに、
戦時中と同じ、GDPの2倍を超える1100兆円の膨大な財政赤字とか、
使用済み核燃料の置き場所さえない原発の問題であるとか、
若者の約4割が失業者や非正規雇用になっている、雇用や貧困問題とか、
その他、少子高齢化問題、社会保障問題、等々、
本質的に解決しなければならない問題をすべて先送りさせてしまっている。

もう一度、この国が直面する本当の課題に向き合う必要が、今こそある。
安倍政権が逆戻りさせた時計の針を、早く正しい向きに直さないといけない。


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WTO新体制に思う~5/13 NHKラジオ 浜 矩子さんのお話

2013年05月13日 | ラジオ番組

『WTO新体制に思う』    
        5/13 NHKラジオ 浜 矩子さんのお話の要約です。

WTO(世界貿易機関)の次の事務局長に、
ブラジルのWTO大使、ロベルト・アゼベド氏が就任することが決った。

IMFとか G20とかの場でもそうであるが、
新興諸国の存在感というものが高まっている状況がある。
そういう中で、WTOが、やっと、
時代の状況にマッチした姿を取り戻すチャンスになって行くか、と期待ができる。

また、これで、従来の欧米主導ではない姿に変わって行く事ができれば、
これを梃にして、WTOが存在感を取り戻す最後のチャンスが到来したという事である。

今世界の貿易交渉は、WTOのような多国間での協議ではなく、
TPPのような個別国間の枠組みに、軸足を移している。
その FTA(自由貿易協定)という名前でまかり通っている貿易協定は
その実態は、『地域限定・排他貿易協定』と言うべきものである。

こういうものが蔓延することが、いかに危険だということは
1930年代に、保護主義が蔓延した時代の歴史が、我々に示すところである。

第二次大戦後、2度とそういう方向に足を振り込まないようにしよう、というので
GATT(関税及び貿易に関する一般協定)が誕生した。
GATT加盟国は、8度にわたる自由化交渉(ラウンド)を実施し、貿易の拡大に貢献したが、
このGATTを発展的に解消する形で、1995年1月、WTOが設立され、今に続いている。

そういう過去のおぞましい間違いの道に踏み込まない、ということが
非常に、このWTOに託されているわけである。

現在のWTOは、ドーハ・ラウンドを始めとする貿易交渉が、
先進国と新興国・途上国の間の対立が鋭さを増して、
10年以上経っても妥結の見通しが立っていないという、厳しい状況の中にある。
ブラジル人の新事務局長は、
それなりに正当性を持った主張をする事がができるので、良かったと思う。


これからのグローバル経済の時代に 向けて、
WTOが果たすべき役割を、もう一度ここで確認しておこう。

それは、まさに、「保護主義」、「国々のご都合主義」、「自分さえ良ければ主義」によって、
世界の市場・グローバル経済そのものが、切り刻まれて行く事に対する『防波堤』になる事である。

「国々のご都合主義」が前面に出れば、世界中が国家主義的な経済運営のバトルになってしまう。
今、日本に対する円安批判が出ているが、
これは、通貨という側面で「自分さえ良ければ主義」が出てきている事の一つの表れである。
『日本が通貨安を追求するなら、自分たちもやるぞ』、
みたいな感じで、通貨戦争・通商戦争となって行ってしまう恐れがある、という事である。

WTOは、このような事を阻むことのできる、唯一の国際機関であるから
未だかつて無いほど、存在意義は深まってしかるべき状況にあるといえる。

これまでも日本は、WTOの原理・原則に、かなり忠実に動くスタンスを取ってきた。
これは、米国がそうだと日本が思い込んでいたので、米国追従的にそうやって来た結果であるが、
結果的には、米国よりも、またどの国々よりも、
WTO主義つまり、オールラウンド・全方位的な自由な開かれた貿易というものに忠実であった。

こういう実績を持ち、世界の経済大国であり、世界に冠たる債権大国である日本が、
世界の国々に向かって、『もう一度、WTOに皆戻って行こう』、『WTOは重要だ』、と言えば
それなりのインパクトはあるはずであり、そういうリードをする大きな責任がある。

どうも安倍政権には、そのような姿勢が見られないが、
本来ならば、日本はそういうことを主導する位置づけにあると言える。


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日米関係と米中関係

2013年05月13日 | 社会について独り言

先週金曜日の寺島実朗さんのお話を聞かれましたでしょうか?
遅くなりましたが、昨日、要約を書いておきましたので、宜しければご覧下さい。

寺島さんは、このお話の中で、
『米国にとっては、日米関係より、米中関係の方がはるかにウエイトが高い』
と言われました。

仮に尖閣問題でドンパチが起きるようなことがあっても、
『安保条約で米国が日本を守ってくれる』ものと、国民の大半は思っているわけですから、
朝の目覚時計代わりのお話として、ピッタリでした。

今週は、こういうお話が、もう一度あるかもしれません。

私が購読している地元紙、静岡新聞に先週、山下一仁さんのお話が載りました。
題して『アメリカの見ているのは中国』。
経済サプリというコラムですが、多分、他の地方紙でご覧になった方もあろうかと思います。
この中で山下さんは、次のような事を言われました。

1.TPPなどの自由貿易協定の本質は、
  貿易や投資の優遇された条件を、参加国だけで認め合うことであり、
  参加するメリットも大きいが、参加しないデメリットも大きい。

平成23年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、
日本の野田首相が、ちょっとTPP交渉への参加に言及しただけで、
日本との貿易から排除されることを懸念したカナダ、メキシコは、
相次いで、その場で参加を表明したほどである、ということ。

2.TPPについての米国の最大の関心事項は、日本市場ではなく、中国である。

米国は、対中貿易をもっと盛んにしたいと願っているが、
知的財産権を守らなかったり、国営企業が傲慢で、まことに扱いにくい。
もっと、全うな貿易関係を樹立したいと願っている。

そこで米国は、まず中国のやり方が通用しない貿易ルールでTPPを立ち上げて、
中国を環太平洋の市場から排除させてしまおう、としている。

TPP参加国の市場から排除されて、中国は困るだろう。
より困らせるには、経済大国日本もTPPに参加させておく必要がある、
というのが、米国が日本をTPPに誘う、本音のところの作戦である。
困った中国は、
いずれは、米国ルールに則っての貿易に応じて来る、と読んでいるのだろう。

寺島さんのお話と共通して解ってくるのは、
今のままでは、
『日米関係は、米中関係を支え、補完する役割しか果たせない』、
という事になってしまいそうです。それでは困ります。

今週火曜日に山下さんが、もう少し詳しく話してくれると嬉しいですが。
今年、ここに来てやっと、8分間の朝のお話が待たれるようになりました。

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日本の国際社会でのバランスある立ち位置とは~ 5/10 NHKラジオ 寺島実郎さんのお話

2013年05月12日 | ラジオ番組

『日本の国際社会でのバランスある立ち位置とは』
        5/10 NHKラジオ 寺島実郎さんのお話の要約です。 

先週ワシントン・ニューヨークなど米国東海岸に出張してきた。
日本では、米国も日本の政府と同じように
『米国は、日米同盟を強化して、中国に向き合う』ものだと思い込んでいる節がある。
実際、これまで、
米国の新聞・メディアからもそれを、間違いだと指摘するような対応はなかった。
しかし、ここへ来て、そのニュアンスが変わってきていると、当地で実感した。

この5月1日に、米国議会の調査局から、
『日本の指導者の歴史認識は、日本のアジアからの孤立を招き、
それは米国にとっても国益を害する局面にまで来ている』
というレポートが発表されてしまった。
これは、この4月の末ごろから、米国の新聞・メディアで言われて来た事を追認するものとなった。 

どうして、このような意見が出てきているのか?
まず第一に、
韓国政府や中国政府のワシントンにおける強烈なキャンペーンが、その背景にある。

韓国については、
朴新大統領が訪米した時は、オバマ大統領との共同記者会見をしたし、
米国議会でのスピーチも行っている。

安倍首相が訪米した時は、共同記者会見が行われなかった。
議会でのスピーチもなく、CSISというネオコンのシンクタンクで話をして来ただけであった。
これは、多くの日本国民も、ちょっと安倍首相の位置付けが変だ、と思ったに違いない。

また、韓国は『従軍慰安婦』問題を盛んに強調し、
人権問題に意識の高い米国人をスパークさせようとしている。 

中国についても、
北朝鮮がミサイル発射を自粛したのは、米中間の深い協議が功を奏したと強調したり、
米国に配慮して、北朝鮮の銀行口座の封鎖をしたりしている。
つまり、米中間で東アジアの問題を制御していこうという空気を作りだそうとしている。

次に、2番目として、
日本外交では、米国と中国との関係の動きに無関心すぎることである。

上述したように、日本人は『米国は日米で連携して中国に向き合っている』と思うけれども、
米・中間の方が、コミュニケーションのパイプは、はるかに太い。
日本では、『United Nations 』を、『国際連合』と訳しているが、
中国では『联合国(れんごうこく)』と訳していて、
つまり、第2次大戦の『戦勝国連合』だという認識である。 
これは、中国だけでなく、本質的には米国においても同じ認識である。
米中間には『我々は、力を合わせて日本軍国主義を倒した』という共感があるのである。

したがって、例えば靖国問題というのは、
日本人にとっては、
日本の国のために命を捧げた人達に、ごく普通の気持ちで頭を垂れる所であるが、
しかし、戦勝国連合のサイドでは、
中国はもちろん、米国でも
靖国神社は、どんなに憎んでも憎みきれない軍国主義のシンボルであるから、
安倍さん、麻生さん、いい加減にしなさいよ、という事なのである。 

米国としては、日本は同盟国であるから大事だけれども、
同時に、日本が引き起こしたトラブルが高じて、米中戦争などの事態が起こってほしくはない、
というのが本音であろう。

今年も、7月の8日から、第5回目となる米中の『戦略経済対話』が行われる。
米中の10人以上の閣僚が一堂に会して、エネルギー戦略から安全保障まで
密度の濃い交流を深めることとなる。
米中間は、このような深い関係を、更に深めようとしている事をよく理解しておく必要がある。 

総じて、
今の日本は、『近隣の国には、とやかく言われたくない』というスタンスであるが、
ここは、『本当のアジアの指導者は何処に在るのか』を見せないといけない。

単なる自己主張でムカッとなっているだけでなく、
アジアを束ねる力を備え、尊敬され、信頼される日本を目指さないといけない。

戦後民主主義とは何だったのか、戦後的価値とは何だったのか、
今一度、前向きの文脈で考えて、
あまりカリカリしないということに、日本の方向感を持って行かないといけない。 


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『中国経済の行方』  5/9 NHKラジオ 関 志雄さんのお話

2013年05月09日 | ラジオ番組

『中国経済の行方』  5/9 NHKラジオ 関 志雄さんのお話の要約です。

中国では、景気回復基調が続いているが、
労働力不足に伴う潜在成長率の低下に制約され、そのペースは緩やかなものにとどまっている。

中国国家統計局によると、今年の第1四半期の中国のGDP成長率は前年比7.7%と、
昨年の第4四半期の7.9%を下回っている。
しかし、閏年に当たる昨年の第1四半期は91日あったのに対して、今年は90日しかないことを考えれば、
この数字は実際の成長率を幾分過小評価している可能性が高いと想われる。

実際、閏年の影響を受けにくい製造業の購買担当者指数(PMI)は、
昨年8月の49.2%を底に上昇に転じ、10月以降一貫して景気判断の分かれ目となる50%を超えている。

需要項目別では、2013年第1四半期のGDP成長率の内、
4.3%は最終消費、2.3%は資本形成(投資)、1.1%は外需(純輸出)によるものである。
これらの数字が示しているように、
成長のエンジンは投資から消費に移ってきており、外需も回復に向かっている。

まず、消費の面では、
新しい指導部が進めている綱紀粛正キャンペーンや倹約令を受けて、
党や政府機関による高額消費は低迷しているが、

農村の消費の伸びが所得の伸びとともに都市部を上回っており、
このことは消費全体の下支えとなっている。

一方、外需の面では、
世界経済の回復を背景に、2013年第1四半期の輸出は前年比18.4%と高い伸びを示している。
地域別では、
日中関係が冷え込んでいることを反映して対日輸出が低迷しているものの、
対新興国が引き続き好調であることに加え、対米国と欧州連合(EU)の輸出も持ち直しつつある。

景気回復のきっかけは、インフレの沈静化を受けて、
昨年年央から、政府が、マクロ経済政策のスタンスを、引き締めから緩和に転換したことである。

インフレ率は、今年の第1四半期には2.4%にとどまっているが、
景気回復とともに、再び高騰することが懸念されはじめている。
しかし、一般的にインフレ率は景気の遅行指標であり、
中国の場合、経済成長率との間のタイムラグが3四半期ほどであることを合わせて考えれば、
その可能性は低いと思われる。

中国政府が掲げる『7.5%のDGP成長率と、3.5%以内のインフレ率』という
今年の目標は達成されると見込まれる。

インフレ率が、経済成長率の一致指標ではなく、遅行指標であることに鑑み、
両者がそれぞれ何らかの基準値と比べて高いか、それとも低いかによって、
景気は、
1.「低成長、低インフレ」の「後退期」、
2.「高成長、低インフレ」の「回復期」、
3.「高成長、高インフレ」の「過熱期」、
4.「低成長、高インフレ」の「スタグフレーション期」という、四つの局面に分けることができる。

リーマンショック以降の中国における経済成長率の平均値は9.0%、インフレ率の平均値は2.7%である。
これらを基準とすれば、今年の第1四半期の中国経済は、
昨年の第3四半期と第4四半期に続いて、「低成長、低インフレ」という「後退期」にあった。
今年後半には、成長率とインフレ率はともに緩やかに上昇すると予想されるが、
いずれも基準値に届かず、「後退期」は続くだろう。

中国の成長率がこれまでと比べて低水準にとどまっていることは、
単に景気循環という短期的要因だけでなく、
労働市場の変化に伴う潜在成長率が低下している、という長期的要因をも反映している。

具体的に、1980年に導入された一人っ子政策のツケが回ってくるという形で、
中国の生産年齢人口(15歳~59歳)は昨年初めて減少に転じた。
また、これまで農村部が抱えていた余剰労働力も、ほぼ解消され、
発展の過程における完全雇用の達成を意味する「ルイス転換点」はすでに到来していると見られる。
これを背景に、成長率が従来と比べて大幅に低下しているにもかかわらず、
都市部の求人倍率は上昇し続け、今年の第1四半期には、史上最高の1.10倍に達している。

このように、労働力の供給に制約され、中国経済は高成長から中成長の段階に移ってきている。
それに伴って、
政府は成長率の低下による雇用の悪化をそれほど心配しなくて済むようになったが、
その一方で、景気が完全に回復しても成長率はもはやこれまでの高水準には戻らないだろう。

◆◆◆◆◆◆◆◆ いまさきもりの一言 ◆◆◆◆◆◆◆◆ 

労働力不足で、これまでのような高い経済成長は難しいというお話でした。
それで、海外へ無理やり侵略をしよう、と攻勢をかけているのでしょうか?
それより、近隣諸国と仲良くして共存を図る、懸命な選択をして欲しいものです。
中国もいよいよ難しい時期に差し掛かってきたようです。

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