ジョージ・いまさきもり の アンダンテ・カンタービレ

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国民の暮らしから~12/18 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約

2012年12月18日 | ラジオ番組

『国民の暮らしから
 12/18 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。

今回の選挙の結果からは、
国民の民主政権への失望が大変大きかったことが窺える。
つまり、政権交代直後の大きな国民的期待に、
民主党が応えられなかったということである。
政権交代に大きな期待を寄せた有権者ほど、裏切られた思いが強かっただろう。

政治への期待が冷めてしまって、
民主党排除とさえ言えるような厳しい雰囲気が、選挙前から広がっていた。
政党のあまりにもの多極化や投票率の低さも大きく響いたであろう。
これこそ、すなわち、民主政権への失望の裏返しであった。

一方、安倍自民党の取った戦法であるが、
景気好転を望む国民的願望に応えるキャッチフレーズを、強く前面に打ち出した。
無制限の金融緩和、インフレ目標の設定、日銀法改正等々を掲げ、
強烈な脱デフレ、景気対策を印象づける発言を繰り返していた。

これが経済界や中小企業に共鳴を呼び起こしたと思われる。
つまり、現在の厳しい経営環境の裏返しでもある。

更に遡れば、2002~2007年にかけての『いざなぎ超え景気』の
仕上げの 1年を担ったのが、安倍政権であった 。
当時を知る者にとっては、夢よ再び、という期待があったかも知れない。

しかし、ここで強調しておきたいことは、
今回、『見るべきを見る』という事が出来なかった有権者の危うさも、

また露呈されているということである。
圧勝した自民党にしても、いつか将来、今回の民主党と同じ轍を踏まないとも限らない、
そういう可能性も秘めている、という事である。

さて、今回の選挙では、日本を歴史的岐路に立たせる重大なテーマである、
1.憲法改正、2.TPP、3.エネルギー選択(脱原発か原発維持か)の3つが問われた。
しかし、これらの3つの争点について、
本当に国民の意思が問われたのだろうか? また、
国民の意思が示されたのだろうか? 
つまり、『見るべきを見る』事が出来たのだろうか?
いずれも強い疑問が残っている。

また、『いざなぎ超え景気』を懐かしむ経済人がいるかも知れないが、
実はそれは幻想である。
『いざなぎ超え景気』と呼ばれた長期の景気回復は、
財政出動がなくてもGDPの成長率が2.5%を達成した、とされるが、
実際は違っていて、後になって、この成長率は2.0%に下方修正された。

また、『いざなぎ超え景気』では、
マクロの数値は好況を示し、株価は8,000円台から18,000
円台まで上昇した。
しかし、『いざなぎ超え景気』は、
いわゆる『トリクルダウン理論』の虚妄性を証明したのものでもあった。

トリクルダウン理論とは、雨水が大地に滴り落ちるように、
金持ちがもっと大金持ちになってくれれば
底辺層の貧しき人々も豊かになれる、という米国発の理論であった。

日本でもしきりに言われたものであるが、そうはならなかったのである。
この『いざなぎ超え景気』の持続の中で、
逆に雇用者報酬は減少している、という事実を言っておきたいと思う。

この構造をそのままにしておいて、
いくら景気刺激策を展開しても、国民の暮らしは豊かにならない。
それで、政権交代への国民的要求が高まった、ということである。
まさに、『国は富めるも民は貧し』というのが現実だったのではないだろうか。

この時に、民主政権が、「格差を拡大する構造そのものを改革する」
という事を盛り込んだマニフェストを示したわけである。
そして、3年前の前回の総選挙では、まさに国民の意思表示があったのである。

前回の総選挙では
経済変動の影響が社会的弱者に集中する構造を、そのままにしておいて、
いかにGDP等の数値を膨らませてみても、
国民生活は向上しないという現実に、国民は気付いていた。

つまり、『いざなぎ超え景気』と言われた2002年以降、
小泉構造改革の下での景気拡大は、しばしば実感なき景気回復と言われたように、
早くから国民はその正体を見抜いていたのである。

これに対して、民主党がマニュフェストで、
個々の生活者を『豊か』にする事を追求し、家計部門を潤わせて、
国民の可処分所得を増やして消費を拡大させる政策を掲げたわけである。
つまり、先に国民生活を潤せば、
日本経済全体も自然に成長する、という考え方を示したのである。

高齢者介護とか、子育て中の女性、健康を損なった人々、
障害を持つ人々、非正規雇用の労働者、
こうした人々への社会的(公的)支援を謳ったのが、民主党のマニュフェストであった。

そういう期待が裏切られてしまった、と国民は実感してしまったわけである。
そして、国民の暮らしの厳しさは、
今も少しも変わっておらず、むしろ、もっと厳しくなっているのである。

そうした中で、今回の総選挙の結果、
リベラルが消え、新自由主義的改革が復活する事になって来たわけである。
社会的弱者にも自助を迫る、という考え方である。
今年6月現在で、全国で211万人が生活保護を受けている。この10年で2倍に増えた。
この人数は多すぎると言って、新政権が削減を図る方向は必死であろう。

厚労省が実施した国民生活基礎調査によれば、
生活が苦しいと答えた人は62%にも上っている。
また金融広報中央委員会の調査によれば、
貯蓄ゼロ世帯も、家族2人以上では29%、単身世帯では4割以上に上っており、
やがて本格的な『貯蓄ゼロ時代』が到来するのではと、予測されている。

さらに、現在の雇用総数(役職員を除く)は、5,111万人であるが、
そうち、非正規雇用が1,755万人にも達している。
非正規雇用の労働条件の厳しさは、誰も皆、承知しているところである。

そして、今年2月の厚労省の調査によると、
完全失業者の1/3が1年以上の長期失業者になっている。
失業保険を受けられない失業者が、全体の8割を占めており、
ブラジル、中国に次ぐ世界ワースト3の状況になっている。
まさに、不安社会のゆえんであると思われる。

日本の社会を、真に安心社会へと転換することは可能なのか?
『国民の暮らしから政治を考える』あり方が、今こそ求められている。


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